「な、何だ?今の声・・・。」
突如何処からか聞こえた不気味な声に啓介とカオスは動きを止めてしまう。そんな中、カオスが口を開く。
「成る程、番人が来たか・・・。」
「番人だと!?テメェ、番人を誘き寄せることが目的だったと言うのか!!」
「その通りなのだが、思ったより来るのが早すぎる。黒田輝宗と先代巫女が暴れすぎているからだな。」
「じゃあ、まさか番人は今・・・。」
「恐らく、暴れすぎている二人の元へ行き、捕食するつもりなのだろう。」
その頃、大魔王こと黒田輝宗と先代巫女は番人が来ることに気がつかずに戦いを続ける。
「痛いか?魔王さん。水分のないこの世界で出血したら傷口が蒸発してその左手に激痛が走ってることだろうね。」
「貴様もその頬の傷が染みるだろう?互い様ぞ。」
「あんたとは一緒にしてもらいたくないね。私は掠り傷だけどあんたは手に穴が開いているだろう?」
「手に穴が開いている?ハッ、それがどうした?例え我が手に穴が開こうとも、我が戦えないという道理はなし。故に貴様は我が切り札を知らぬ。」
「切り札だって?知らないね、そんなの。」
「フッ、ならば見せてくれようぞ。貴様が我を侮辱したことを後悔させてくれるわ。」
そう言うと彼は自分の体に力を入れ始めた。その瞬間、彼の背後に徐々に黒い塊となり、最終的には上半身だけの魔神となった。それを見た先代巫女が口を開く。
「へぇ、それがあんたの切り札か。驚いたね、こんな力があんたの中に秘められていたなんてね。」
そう言うと先代巫女は魔神を召喚した大魔王の元へ走っていく。そして蹴りを入れた。しかし、彼が痛がるような感覚はない。よく見ると魔神の左腕が彼女の攻撃を防いでいた。
「なっ!?」
「フフフハハハ。」
そのまま魔神は先代巫女を掴み、地面に叩きつけた。
「ガハッ、なんて力なんだ・・・」
吐血しながら先代巫女は大魔王の様子を見る。そして、あることに気づいた。それは大魔王が笑うと魔神が笑い、大魔王が腕を動かすと魔神も腕を動かす。
(まさか、大魔王と魔神は一心同体なのか?ならば奴のみを責めるか・・・)
心の中で語った先代巫女は両手の間に青い光を溜め、大魔王に放つ。
「無駄ぞ。」
そう言うと大魔王は腕を動かす。それと同じように魔神も腕を動かし、先代巫女が放った攻撃を防ぐ。その瞬間、先代巫女が大魔王の背後に回り、スペルカードを発動する。
「夢想封印!!」
「チッ!」
すぐさま大魔王は攻撃を防ごうとした。しかし、先代巫女が狙ったのは大魔王ではなく彼の背後にいる魔神だった。彼女の攻撃が魔神の顔に当たった瞬間、大魔王は開いている左手で顔を抑え始めた。それを見た先代巫女が口を開く。
「ハハハ、やっぱりね。あんたとその魔神は一心同体。あんたを攻撃すれば魔神にもダメージが当たり、魔神を攻撃すればあんたにダメージが当たる。そんなことだと思ってたよ。」
「ま、まさか貴様!我が力を理解したと言うのか!!」
「そんなのすぐに理解出来るよ。著し過ぎるんだよ。」
「認めぬ・・・我が女如きに負けるなど、断じて認めぬ!!」
そう言うと大魔王は腕に力を溜め、先代巫女に向かって降り下ろした。
「そんなもの、私が常識破壊で・・・!?」
先代巫女が大魔王の攻撃を防ごうとした時、彼女はあることに気づき始める。
(まさか、あれは常識破壊を越えた常識?)
その瞬間、大魔王の攻撃が先代巫女を捉えていた。そのまま先代巫女は壁に衝突し、地面に崩れる。
「ハハハハハ!もはや貴様など我の相手に過ぎぬ!さっさと死ねい!」
大魔王がなんとか起き上がろうとする先代巫女に向かって腕を降り下ろそうとした。その瞬間、先代巫女は目を大きく見開いた。彼女が見ているのは大魔王ではなく彼の背後。そして口を開く。
「魔王さん、どうやら私とあんたの戦いは一旦お預けのようだね。番人が来てしまったよ。」
彼女の言葉を聞いた瞬間、大魔王は後ろを振り返る。そこには大きさ20mほどあり、体の形は四角で両側と下の部分に触手が生えている化物がいた。それを見た瞬間、大魔王が目を大きく見開きながら言う。
「ウルガスト・・・・」
大魔王がそう言った瞬間、ウルガストが長い舌を出し、大魔王に巻きついた。
「なっ、何故我が!!」
「あんたは暴れすぎたんだよ。魔神も召喚しちゃってね。番人にとってあんたが一番目立っていたみたいだしね。」
ウルガストから逃れようと大魔王は必死に抵抗するが何も変わらなかった。そんな彼に再び先代巫女が言う。
「無駄だよ、ネザーの民となった私達に、番人に勝てることなんてないんだよ。」
「解せぬ、解せぬわぁぁぁぁぁっ!」
そう大声を上げた大魔王であったが、そのまま彼はウルガストに飲み込まれた。それを見た先代巫女が口を開く。
「霊夢、私の役目は終えたよ。カオスのことはあんたらに任せるよ。」
そう言った瞬間、ウルガストの舌が先代巫女に巻きつき、そのまま飲み込んだ。
その頃、ユニ達はアヌビス、ペルセポネに追いつかれないようにキングウィザースケルトンの元へ走っていた。
「ねぇ、楓。キングウィザースケルトンが何処にいるか分かるの?」
「奥から気配を感じる。キングウィザースケルトンがそこにいるのは間違いない。急ごう!」
霊夢に言われたため、ユニ達は急いでキングウィザースケルトンの元へ向かう。と、突然楓が足を止めた。
「どうしたの?楓ちゃん。」
彼女の突然の行為を理解することが出来ず、ユニは思わず声を発する。そんな彼女に楓が言う。
「この壁の向こう側にキングウィザースケルトンの気配がする。だがこれ以上遠回りして見つけ出す暇はない。私の能力で手間を省こう。」
そう言うと楓は左手を前に差し出した。そして右回りに手首を回す。その瞬間、壁が動き始め、向こう側にある部屋が現れた。
「何っ!?」
部屋の中を見た瞬間、ユニ達は驚きを隠せなかった。何故ならそこには既にキングウィザースケルトンの頭を取ったアヌビスとペルセポネがいた。そんな二人にユニが口を開く。
「あなた達!一体どうやってここまで・・・」
「何、簡単なことだ。カオス様が私達にここまでのルートを示してくださったのだ。」
「カオスが?そんな馬鹿な!」
「これが現実だぞ小僧。妾の主の邪魔はさせぬ!」
「では私達はここで失礼させてもらう。」
「させないわ!呼符コールザエニー!」
彼女が言った瞬間、ユニ達の背後から直径2mほどの空間が現れ、そこから身長190cmほどで全身黄色でレスラーがはいているような赤いパンツ、頭は熊のような形で筋肉が著しくなっているものが現れた。それを見た魔理沙が思わず口を開く。
「・・・・なんだこれ・・・」
「分からないわ、アリスの家から持ってきたのだけど、これが何なのか全く分からなくて・・・」
二人が話している中、突如黄色いものが起き上がり、ユニを見ながら口を開いた。
「・・・チョーダイ。」
「え?なんて言ったの?」
「ハチミツ、チョーダイ。」
その瞬間、ここにいる一同が驚きを隠せなかった。なんせ、動きそうにないものに自分の意思があるからだ。と、楓が言う。
「成る程、これは土人形か。随分とリアルに出来ているな。」
「土人形?ということは楓ちゃん、これはゴーレムなの?」
「そう言うことになるな。取り敢えずゴーレムは望みを叶えてもらえれば言うことを聞くらしいな。」
「それなら任せて、アームストライク!」
そうしてユニは空間から甘い臭いを漂わせるハチミツの入ったビンを土人形に渡した。その瞬間、土人形は猛烈な勢いでそれを飲み始めた。
「す、すごい飲みっぷりね。」
思わずユニ達は唖然となってしまう。そんな彼女達とは別にハチミツを飲み干した土人形がユニに言う。
「ボク、キミノイウコトナンデモキク。ダカラドンドンボクヲタヨッテネ。」
「うん、ありがとう。そうさせてもらうわ。ところで、あなたの名前は?」
「ゴメン、ボクニナマエハナインダ。」
「そうなの?なら私が決めるわ。ピンでいいかしら?」
「ピン?イイヨ!ボクコレカラピン、ヨロシクネ!」
「えぇ、よろしくね、ピンさん!」
ユニ達とピンが話している中、アヌビスとペルセポネは気づかれないようにこの場から立ち去ろうとした。
「ニガサナイヨ、オマエラ。」
その声が聞こえた瞬間、二人の目の前にピンが現れた。
「何っ!?」
そのまま二人は対応することが出来ず、ピンによって殴り飛ばされた。
「流石ピンさん、やるじゃない!」
「エヘヘ、アリガトウ!」
「ゴフッ、何なのだあの土人形は!!」
「妾の体に傷をつけるとは・・・。やってくれるではないか!!」
「お前達、こんなところで何をしている?」
男の低い声が聞こえた瞬間、アヌビスとペルセポネは後ろを振り返り、膝をつく。そこには先程まで啓介と戦っていたカオスがいた。それを見た悠岐が口を開く。
「カオス、テメェ、啓介はどうした!!」
「我が逃げてきただけだ、死んではおらぬ。そんなことよりアヌビスとペルセポネよ、一体何をしていた?我が立てた計画を忘れたと言うのか?」
「いえ、そういうつもりではないのですが・・・。あの小娘と小僧達に手こずってしまいまして。」
「言い訳など通じぬと言いたいところだが本当のようだな。ならばここは一時撤退とし、幻想郷に戻ったら有頂天を攻めるぞ。」
「はっ!」
「待ちなさい、カオス!!あんた、有頂天を攻めるって・・・」
「さらばだ小娘と小僧達。幻想郷で再び会おう。」
そう言った瞬間、カオスはアヌビス、ペルセポネを連れて一瞬にして姿を消した。
「クソッ!」
そう言うと悠岐は壁を殴り付けた。そんな彼に楓が口を開く。
「幻想郷に戻ろう。」
「ああ、分かってる。」
「ウゥゥゥゥゥゥゥ・・・・」
その瞬間、何処からか突如不気味な声が辺りに響いた。それを聞いた瞬間、楓と悠岐の顔が急変した。そして楓が口を開く。
「みんな、急いでネザーゲートに戻るぞ。番人が来た!」
「番人?番人って?」
首を傾げる霊夢に悠岐が答えた。
「ウルガストだ。通称ガストの突然変異種。そいつに喰われたら一生ネザーから出られなくなる!」
「それはマズイぜ!急いで戻らないと!」
そう決心した瞬間、楓達は来た道を全速力で戻り始める。と、魔理沙が走りながら楓に言う。
「ウルガストは倒せないのか?」
「倒せないことはないが倒している暇はない。ここは逃げたほうがましだ!」
そしてユニ達はやっとの思いでネザー要塞の外へ出た瞬間、悠岐が口を開いた。
「カオス達が入ってきたネザーゲートが壊されていやがる。」
悠岐が指を指す方向を見たユニ達は驚きを隠せなかった。何故ならネザーゲートが粉々に砕かれていたからだ。
「おーい、お前らー!」
突如声が・・・聞こえたため、ユニ達はその方向に目を向ける。そこには啓介がいてユニ達に手招きをしていた。それを見たユニ達は急いで彼のいる場所に向かう。啓介の元に辿り着いたユニ達は啓介の元へ来る。そして啓介が口を開く。
「お前らが入ってきたネザーゲートがまだ生きている。そこに急ごう!!」
啓介に言われたため、霊夢、魔理沙、ユニは宙に浮かび、悠岐、楓、啓介、ピンは走りながらネザーゲート目指す。
「ウゥゥゥゥゥゥゥ・・・・」
「チッ!もうここまで来たのか!」
声が辺りに響いたのと同時に啓介が声を発する。彼の見つめる先にはガストよりはるかに大きいウルガストがいた。それを見た魔理沙が叫び始める。
「なんだあれぇぇぇぇぇぇ!」
「あれがウルガストだ。」
パニックに陥る彼女に啓介が冷静に答えた。そんな中、悠岐が口を開いた。
「マズイな、このままじゃ追い付かれる。ネザーゲートまでもう少しだって言うのに!!」
「ボクガノコル。ミンナハサキニイッテ。」
そう言ったのはピンだった。そんな彼にユニが口を開く。
「大丈夫なの!?ピンさん。相手はネザーの番人なのよ!?まさかあなた一人で挑むつもり?」
「そうはさせないぜ、ピン。俺も残る。」
そう言ったのは啓介だった。彼に続いてスティーブも彼の隣に並ぶ。それを見た悠岐が言う。
「お前ら、大丈夫なのか!?」
「安心しな、俺達は必ず戻ってくる。お前らは先にカオスを止めろ。頼んだぜ。」
「・・・分かった。死ぬなよ。」
「アタリマエダヨ!」
ピンが言った瞬間、霊夢、魔理沙、ユニ、悠岐、楓はネザーゲートへと向かっていった。誤認が行った後、啓介とピンが言う。
「さ、始めようか。番人狩りの時間だ。」
「ボクノチカラガタメサレルトキダ。タノシミダナァ。」
そんな三人の顔には笑みが浮かんでいた。
啓介、ピン、スティーブがウルガストとの戦闘に入る。果たして三人は生きて帰れるのだろうか?
次作もお楽しみに!