その頃、幻想郷では紫が多くの人達にカオスのことを伝えていた。まず始めに彼女が訪れたのは紅魔館だった。紅魔館へ訪れた紫は館の主、レミリア・スカーレットと会談をする。
「あなた達に言っておくわ。今後、カオスという嘗て現実世界から追放された悪魔族の王がここへやって来るわ。そのために少しでもいいから対策をしておくことを勧めるわ。」
「へぇ、悪魔族の王様ねぇ。面白そうね、ここへ来たらたっぷりと遊んであげようかしら。」
「奴はあの五大王に逆らった中々の実力者よ。少しでも気が緩んだら負ける。」
「スキマ妖怪、奴には何が適正なの?」
レミリアと紫の話に突っ込んできたのはパチュリーだった。そんな彼女に紫はレミリアと話しているように答える。
「さぁねぇ。私も戦ったことないから知らないわ。でも、光王のマーグルさんに聞けば分かるかもね。」
「あの男が自分から幻想郷に来ることなんてないと思うのだけれど?」
「それは仕方ないじゃない?あちらの都合もあるのだから。」
「パチェ、とりあえず奴は闇を司る筈だから闇に対応出来る魔法を作ってちょうだい。」
「・・・なるべく頑張るわ。」
「まぁ、せいぜい死なないようにしなさいね。」
そう言うと紫はスキマを展開し、そのまま目玉だらけの空間の中へと消えていった。
次に彼女が訪れたのは白玉楼だった。そこには熱心に修行をする妖夢とそれを見つめる幽々子の姿があった。そんな中、幽々子の隣からスキマを展開し、彼女の隣に腰を下ろした紫は幽々子を見つめながら言う。
「どうして私がここに来たのか分かる?」
「紫のことだから、そうねぇ・・・。お茶会かしら?」
「残念、正解は異変のことを話に来たの。」
「異変、ですか?」
紫の言葉を聞いて修行をしていた妖夢が突っ込んできた。そんな彼女に気にせず紫が口を開く。
「いづれカオスという悪魔族の王がやって来るわ。そのために少しでもいいから対策した方がいいと思うの。」
「カオスねぇ。面倒な奴が来たものね。妖夢、気をつけなさいね。」
「はい!この妖夢、幽々子様のために全力を尽くします!!」
「フフフ、それじゃあ頑張ってね。」
そう言うと紫は再びスキマを展開し、そのまま目玉だらけの空間の中へと消えていった。
次に彼女が訪れた場所は太陽の花畑だった。スキマを展開した紫はちょうど花達に水を与えていた幽香に近づき、口を開く。
「今後、カオスがやって来るわ。充分に警戒しなさいね。」
「カオスねぇ・・・」
「それじゃあ死なないように頑張りなさいよ。」
「ねぇ、紫。」
スキマの中へ入ろうとした紫を幽香が呼び止めた。呼び止められた紫は振り返り、言う。
「どうしたの?幽香。」
「私と勝負しない?」
「しっ、勝負!?」
「勘違いしないで欲しいわ。別に何もあなたと弾幕勝負するつもりじゃないのよ。ただね、あなたと競争で勝負したいの。」
「競争?」
「そう、どちらが多くのカオスの軍勢を倒せるかってね。」
「・・・・負けたら?」
「そんなの、決まってるでしょ?触手の刑よ。」
「・・・・い、いいわ。受けてたとうじゃない。」
「フフフ、楽しみだわ。早くカオスの軍勢は来ないかしらねぇ・・・。」
そう言うと幽香は背伸びをしながら花畑の中へと消えていった。それを見た紫は溜め息を吐き、口を開く。
「全く、こういうことには熱心なんだから、あの子。」
そう言うと紫は目玉だらけの空間、スキマの中へと消えていった。
場所は変わって月の都。この都を支配する陛下、月夜見に彼を補佐する都久親王、細愛親王、そして彼らの手下である綿月豊姫、綿月依姫、稀神サグメに守られているこの場所が崩壊することは一切ない。そんな平和が続く月の都でもカオスに関わることが起こっていた。それはある1通の手紙から始まった。
「失礼します、お二方に地上から手紙が届いております。」
呑気に茶を飲んでいる都久親王、細愛親王の元へやって来たのは依姫だった。彼女の右手には2通の手紙が握られていた。
「よこせ。」
都久親王はそれだけ言うと依姫から手紙を取った。そして彼はもう1通を細愛親王に渡した。二人は真っ先に宛先を確認した。
「我々に用がある地上の者と言えば五大王の方々以外では思い当たらないのだが・・・」
「とりあえず、見てみるとするか。」
「なっ!?」
「何故だ・・・」
二人は思わず声を発してしまう。そこに書かれていた宛先は八意思兼と書かれていた。そして都久親王が口を開く。
「何故八意思兼が我々に手紙などよこすのだ!?何故我々との関係を立ち切った八意思兼が?」
「都久殿、状況は把握出来ないが、とりあえず中身を読んでみるか。」
「そ、そうだな。細愛殿。」
そう言うと二人は同時に手紙の中身を開いた。その手紙にはこう書かれていた。
ご無沙汰してます、都久親王、細愛親王。実はあなた方に知らせなければならないことがありましたのでレイセンに頼んでお届けしました。今、地上ではカオスという悪魔族の王が復活したのです。恐らく奴らは後に今あなた方がいる月の都をも乗っ取る可能性があります。月の都が乗っ取られないためにも私は地上に豊姫か依姫を送ることを推薦します。未熟者である彼女ら二人にとっては貴重な任務になるでしょう。故に月の都を守るための一歩にもなりうると考えたからです。豊姫か依姫を送るか送らないかはあなた方の自由です。それでは、あなた方のご健闘をお祈り申し上げます。 八意思兼
手紙を読み終えた瞬間、都久親王は手を震わせながら手紙をぐしゃぐしゃにし、依姫に言った。
「依姫、豊姫を連れて地上へ向かえ!!」
「都久親王!?」
「都久殿、どうしてこんなことを・・・」
「細愛殿、知らないのか?カオスは嘗てあの五大王の方々に逆らった者だぞ。そんな輩がここへ来てみろ、たちまちここはすぐにやられる。その前に豊姫と依姫を地上へ派遣させ、カオスの進行を妨げるのだ。」
「そ、そうだな。」
「それに月には綿月姉妹がいなくともサグメがいる。心配する必要はない。」
「都久親王、細愛親王、私達はこれより、地上へ向かいます。」
「気をつけろ、どんな輩がいるのか知ったことじゃない。」
「はっ!」
そう言うと依姫は二人のいる部屋から出ていった。二人は彼女を部屋から見守ることしかしなかった。
豊姫の元へ向かった依姫は彼女に地上への派遣について語った。それを聞いた豊姫は目を大きく見開いた。そして言う。
「あら、地上に行けるなんて、いい機会じゃない。それに、またあの巫女とも会えるしね。」
「ですが油断は禁物ですよ。一度月にやって来たあの妖怪より優れた妖怪がいるのかもしれません。」
「大丈夫よ、私達に勝てる妖怪なんてそうはいないんだから。」
「そう、ですよね。」
「さ、地上へ行くわよ、依姫。」
「はい!」
そう言うと二人は満月の海へ飛び込み、地上へと向かっていった。その様子を遠くから月夜見、都久親王、細愛親王、サグメが見ていた。
月から豊姫と依姫が地上へ向かい、地上ではレミリアや幽香などがカオス撃波のため、動き始める。
次作もお楽しみに!