香霖堂に到着した一同は中へ入ると悠岐と楓の治療を始めた。そんな中、霖之助が言う。
「僕は最近幻想郷の様子が変だと思って色々調べてみたんだ。そしたら、どうやら幻想入りを果たした者がいることが分かって急いで無縁塚へ向かったんだけど、生憎、姿は見当たらなかった。」
「カオスだ。アヌビスが自分で『カオス様』と言っていたからな。」
霖之助の言葉に楓が言う。彼女に続いて悠岐も口を開いた。
「奴は危険だ。急いで退治したほうがいい!」
「だが悠岐、お前は今傷を覆っているのだぞ!?そんな体で行けるというのか?」
「だったら慧音、このまま幻想郷がカオスによって支配されてもいいと言うのか!!」
「二人ともやめて!!」
二人に言い合いを止めに入ったのはユニだった。そんな中、霖之助が言う。
「ユニの言う通りだ。二人とも、この状況で仲間割れは良くない。」
彼の言葉を聞いた瞬間、二人は黙り込んでしまった。
「・・・・?」
そんな中、突然魔理沙が何かに気づいたのか、窓の外を見始めた。そんな彼女に霖之助が言う。
「どうしたんだい?魔理沙。」
「今、音聞こえなかったか?」
「いや、僕には何も聞こえなかったけど・・・。」
魔理沙は必死で霖之助に説得するが彼は何も聞こえなかったという。そんな中、楓が窓を指差しながら魔理沙に言う。
「さっき、霖之助に背負ってもらってる時に神霊廟に誰か二人が対峙していたのが見えたんだ。」
楓の言葉を聞いた瞬間、何かを思い出したかのように霖之助が言う。
「確か、あの寺の仙人のやり方が間違っていると言ってもう一人の仙人が説得するって言ってたな。」
それを聞いた瞬間、悠岐が咄嗟に口を開いた。
「青餓が神子にやり方が違うって言い訳ないだろ!」
「いいや、彼女じゃない。」
「え?」
霖之助の言葉に誰も唖然となった。それに気にせず、霖之助が再び口を開いた。
「妖怪の山の仙人が彼女に説得しに言って、今二人で戦ってるのかもしれない。」
彼の言葉を聞いた瞬間、ユニ達は顔を見つめ合い、同時に声を発した。
「華扇!!」
それは魔理沙と慧音がアヌビスの元へ向かう前のことだった。神霊廟の外でそらを眺めていた仙人、豊聡耳神子がいた。彼女は今、出掛けている布都と青餓、芳香と屠自古の帰りを待っていた。
「はぁ、早く帰って来てくれませんかね・・・?」
と、彼女は何者かの気配を感じ、後ろを振り返る。そこにはピンク色の髪に頭部にシニョンキャップ、包帯に包まれた右腕に鎖付きの枷がはめられている左腕、そして胸元の牡丹の花飾りと、そこから伸びる茨模様が外見の少女がいた。少女は神子を見つめながら口を開いた。
「こんにちは、欲に溺れた仙人。」
「・・・・なんですか貴女は。」
「私は茨木華扇。あなたのような人を騙して仙人になった者とは違う本物の仙人です。」
「鬼という欲望の塊が本物を名乗るとは・・・・。世も末ですね。」
「あなたがそれを言いますか?自身の欲を優先したあなたが。それは鬼と同意着では?」
「・・・・話が並行線ですね。」
「逃げるんですか?と、言いたいんですがその様ですね。」
「ここは幻想郷のルールに則って解決しませんか?」
「スペルカードルール・・・勝ったほうが正しい、と?」
「さぁ、行きますよ。鬼から成った邪仙。」
「来なさい、欲にまみれた邪仙。」
華扇が言った瞬間、少し辺りに沈黙が漂った。そして風が吹き、葉が舞った。その瞬間、二人は同時にスペルカードを取りだし、発動した。
「龍符『ドラゴンズグロウル』!!」
「光符『グセフラッシュ』!!」
二人が攻撃を放ち、同時に攻撃がぶつかった瞬間、力が互角なのか、すぐに爆発した。爆発の衝撃で辺りに砂埃が舞う。神子は目を細めて様子を見る。
「なっ!?」
神子は砂埃が消えた光景を見て目を見開いた。そこに華扇の姿が無かったからである。華扇は既に神子の背後に移動しており、スペルカードを発動していた。
「鷹符『ホークビコーン』」
その瞬間、神子は咄嗟に攻撃をかわした。華扇の放った四つの虹色の光は空中に止まり始めた。
「!?」
「あれに気をとられている場合ですか?」
華扇の声にはっとなった神子は彼女の方を見る。華扇は既に神子目掛けて大型の鷹を飛ばしていた。神子は咄嗟に避けようとするが反応するのが遅かったのか、鷹の翼によって頬に擦り傷を覆った。
「くっ・・・」
神子の頬から血が垂れ始める。それに気にせず神子は剣を取りだし、華扇に向かっていく。
「はぁぁぁぁぁっ!」
だが華扇は動こうとしない。ただ自分に向かって剣を振ろうとする神子を見るだけ。そして神子が目の前まで来た瞬間、華扇は冷静に口を開いた。
「あなたはあの光が何の意味もないと思っているようですが、それは間違いですよ。」
彼女が言った瞬間、神子は背後から飛んで来た弾幕をくらった。
「なっ、にぃっ!?」
神子はそのまま地面に倒れる。そんな彼女を華扇が見下ろしながら言う。
「ホークビコーンは多くの弾幕が凝縮された四つの虹色の光を空中に漂わせ、それに鷹を突進させることにより光から弾幕を放つという仕組みなのです。」
「茨木華扇っ、まさか貴女は・・・」
「そう。私はあなたを狙ったのではなく、あの光を狙っていたのです。ちょうどあなたの頬に傷が出来たのでまさに一石二鳥と言ったところですね。」
そう言うと彼女は再びスペルカードを取り出した。そして発動した。
「包符『義腕プロテウ・・・!?」
スペルカードを発動しようとした瞬間、華扇の持っているスペルカードが真っ二つに切れ、彼女の右肩に剣が刺さる。
「フッ、貴女もスペルカードがこのようなことになることを考えておいたほうが身のためですよ?」
「くっ・・・」
華扇の右肩から血が飛び散る。それに気にせず華扇は左腕にはめられている枷の鎖で神子の頭を殴りつけた。そのまま華扇は右肩を左手で抑えながら神子との距離をあけた。
「中々やりますね、茨木華扇。」
そう言うと神子はヨロヨロになりながらもゆっくりと立ち上がった。彼女の頭から血が垂れる。そんな中、華扇が口を開いた。
「私も驚きましたよ、豊聡耳神子。まさか私のスペルカードを切ってしまうなんて。新しい戦術を考えたようですね。」
「別に考えたわけではありません。恐らく私の咄嗟の判断だったのでしょうね。」
「咄嗟の判断でそんなことが出来るとは・・・。流石は太子と呼ばれた仙人。ただ者ではありませんね。」
「貴女も鬼から成っている仙人なので中々力があるようですね。先程の鎖の攻撃は痛かったです。」
「私もあなたにやられた肩の傷がひどく痛みますよ。」
「誉め合いをしている場合ではないですよね?」
「勿論ですとも。さ、続きを始めましょう。あなたのやり方は間違っていると、認めさせてもらいましょう。」
始まってしまった仙人同士の戦い。一体どうなる!?
次作もお楽しみに!