「カオスは2年前まで現実世界にいた悪魔族の首領の名前なんだ。」
「悪魔族ということは、黒田輝宗と同じ存在なの?」
「黒田輝宗?」
ユニから出た『黒田輝宗』という聞き覚えのない名前を聞いた霊夢は思わず声を発する。そんな彼女に悠岐が言う。
「大魔王のことさ。黒田輝宗は『大魔王』であって悪魔族ではないんだよ。似ているように感じるけど違う。そしてカオスは2年前にマーグルによって現実世界から追放され、何処かへ封印された・・・筈だったんだよ。」
「筈だった?というのは?」
「霊夢に悪夢を見させていたということはカオスが幻想郷に入り込んだ可能性が高いということだ。」
「何ですって!?」
霊夢とユニは同時に声を上げてしまう。そんな二人とは別に悠岐が話を続ける。
「恐らくだが、カオスが異変を起こすかもしれない。その時に備えて俺達は準備をしなければならない。」
「死者が出る確率は?」
「・・・あり得る。もしかしたらユニ、お前が死ぬかもしれないし、最悪、皆、命を落とすかもしれない。」
「そのために楓が来たってこと?」
「良く分かったな、その通りだよ。あいつはちょうど六道を制覇した後だったから好都合だったんだ。」
「カオスの能力って何なの?」
「霊夢、それはまだ分からない。奴と対峙してからなら分かるな。」
「悠岐君、カオスってどれくらい強いの?」
「五大王に挑もうとするくらいだから相当な力の持ち主なのは確かだ。気をつけないとな。」
「ねぇ、二人とも。そろそろ寝ない?」
霊夢の言葉を聞いて悠岐とユニははっとなり、外を見つめる。既に外は月が怪しく輝いており、辺りは暗くなっていた。そんな中、悠岐が言う。
「そ、そうだな。そろそろ寝ないと体に悪いしな。それじゃあ寝ますか。」
彼が言っている間にユニは自分の布団に潜り込み、寝息を立てて眠っていた。そんな彼女を見た二人が声を上げる。
「ちょっ、あんた寝るの早くない!?」
「疲れてたのか?いくら何でも寝るのに1秒もかかってないぞ!?」
彼が言った瞬間、辺りに沈黙が訪れた。その瞬間、悠岐の額から汗が流れ始める。そんな彼に霊夢が口を開いた。
「そろそろ寝ましょう。そしてさっきのことはもう忘れましょう。」
「・・・そうだな。」
そう言うと彼は自分が寝る部屋へ行き、布団を敷いて中に潜った。後に霊夢も着替え、ユニの隣に布団を敷くと電気を消して悠岐に言う。
「おやすみ、悠岐。」
「あぁ、おやすみ霊夢。」
そのまま悠岐は寝息を立てて眠ってしまった。霊夢もこのまま悪夢を見ることなく、眠りについた。
魔法の森の霧雨店でも楓が魔理沙に悠岐と同じことを行い、同じことを話していた。
「気をつけろ、カオスが来るからには死を覚悟した方がいい。」
「分かってるぜ。地王の時も魔王の時も同じ覚悟で望んでいたぜ。」
「そうか。それならいいんだが・・・。」
「ん?楓、何か不安なことでもあるのか?」
「・・・いや、ない。さ、もう今日は遅い。早く寝よう。」
「あ、そうだな。そろそろ寝ようぜ。」
そう言うと二人は布団を敷き、見つめ合いながら同時に言葉を発する。
「おやすみ。」
そのまま二人は寝息を立てて眠ってしまった。魔法の森にも沈黙が訪れた。
その夜、玄武の沢にある一体の悪魔がおり、その男は空を見上げると口を開いた。
「復活を遂げるとはなんて気分がよいのだ・・・。復活を遂げたからには我が軍を呼び戻し、五大王に復讐してやろう。その前にここを制圧してから現世を攻めるか。どんな輩がいるのか、楽しみにしているぞ。幻想郷。」
そう言うと悪魔は何処かへ飛んでいってしまった。それをある一人の男が悪魔に気づかれないように見ていた。
玄武の沢に現れた怪しい悪魔。果たしてその正体とは!?そして別の場所で異変の予感が!?
次作もお楽しみに!