第20話 二人の半人半悪魔
ガノンドロフの撃破後、ユニ達は博麗神社に集まっていた。そんな中、ユニがセコンドに言う。
「セコンド様、本日はこちらへ来ていただき、本当にありがとうございます!」
そう言うと彼女は頭を下げた。それを見たセコンドは声を上げて笑いながら言う。
「ハハハ、何を言う。これしきのことなど余の定めとしては当然のことよ。」
その瞬間、ユニもセコンドにつられて声を上げて笑い始めた。辺りには二人の愉快な笑い声が響いた。霊夢達はそれを苦笑いで見ていた。そして笑い終わった後、セコンドがユニ達に言う。
「友よ!苦難の時があればいつでも余を呼ぶがよい。まぁ少しは黒き友にも協力してもらうといい。では、また会おう!」
そう言うとセコンドは自分から空間を作り上げ、そのまま現実世界へ帰って行った。セコンドの言葉を思い出した瞬間、魔理沙は後ろを振り返る。そこには彼の言う通り、悠岐がいた。魔理沙が彼に言う前にユニが彼に言う。
「悠岐君は帰らないの?」
「俺は少し幻想郷に残ってることにするよ。久しぶりにここを見回りたいからな。」
「そう言えば悠岐君、アリスの怪我はどうなったの?」
ユニの言葉を聞いた瞬間、魔理沙の体がピクリと反応した。そんな彼女とは別に悠岐が言う。
「ああ、アリスなら命に別状はないとさ。右腕は完全に回復したらしいしな。」
彼の言葉を聞いた瞬間、魔理沙はほっと溜め息を吐いた。
その瞬間、突如として空から何者かが落ちてきた。その者は霊夢を踏みながら言う。
「あ、すまん。人がいることに気づいてなかった。」
霊夢の上に乗っかってきたのは腰まで伸びる黒髪でノースリーブの黒い服、両手には黒のグローブがはめていて腰には冷気が漂う刀をかけていて赤い目の少女であった。彼女を見た瞬間、ユニと魔理沙は目を大きく見開くことしか出来なかった。そんな中、悠岐が少女に言う。
「オイ、どの面下げて現れやがったテメェ。」
悠岐の言葉を聞いても少女は笑みを浮かべたままだった。そして霊夢から降りると悠岐と対峙する。そんな中、踏まれたことに怒りを覚えた霊夢が少女にスペルカードを発動した。
「夢想封印・瞬!」
その瞬間、辺りは光に包まれた。光が消えた瞬間、霊夢は驚きを隠せなかった。
「何故驚いている?これを避けられるのは当然だろう?」
何故ならそこには間違いなく夢想封印・瞬が命中したはずの少女が無傷で平然と立っていたからである。そんな中、悠岐が霊夢の肩を軽く叩き、言う。
「俺に任せな。」
「待って、あいつは敵なの?」
「あいつか?あいつは敵じゃねぇよ。敵になると厄介だが。」
そう言うと彼は少女と対峙する。悠岐と対峙する少女は彼に言う。
「久しぶりだな、元気にしてたか?悠岐。」
少女が悠岐の名前を言った瞬間、三人の体がピクリと反応した。そして霊夢がユニに言う。
「なんであの女が悠岐の名前を知ってるのよ?」
「分からないわ。でも、過去に何かある人だってのは間違いないわね。」
ユニと霊夢が話している中、悠岐が口を開いた。
「お前も、随分勇ましくなったじゃねぇか、楓。」
三人は確かに少女の名前を聞いた。どうやら赤い目の少女の名前は『楓』と言うらしい。そんな中、楓が言う。
「久しぶりの剣の交え、やるか?」
「面白い。半人半悪魔同士の戦いも悪くないしな。」
悠岐の言葉を聞いて三人は驚きを隠せなかった。楓が悠岐と同じ半人半悪魔だと言うことが今だに信じられなかったからである。
「ねぇ、悠・・・」
霊夢が悠岐に言おうとした瞬間、二人の姿が一瞬にして消えた。二人は三人から少し離れた場所に移動し、同時に攻撃していた。
「ぐっ!」
「はっ!」
二人の攻撃は互いの右肩に命中していた。二人の肩からは血が飛び散る。
「イヒヒッ。」
「フフフ。」
互いに攻撃を受けても笑っていた。それを見た三人は鳥肌がたった。始めに悠岐が楓から漆黒の刃を抜き、彼女に降り下ろす。楓はすかさず攻撃をかわす。彼の攻撃で地面がへこんだ。続いて楓が左手で氷柱を作り上げ、そのまま悠岐に投げつける。
「おっと!」
声を上げるものの、悠岐は空いている左手で氷柱を弾いた。そして楓に向かって蹴りを入れる。彼女はそれを素早く見切り、避ける。と、悠岐の回し蹴りが楓の目の前まで来る。
「くらいな!」
彼の攻撃を楓は両腕をクロスさせて防ぐ。それでも彼女は5mほど地面を滑る。立て続けに悠岐が上から刀を降り下ろす。楓はそれもすかさず避ける。そして彼女が再び氷柱を左手に持った瞬間、悠岐の左手のパンチが彼女の腹部に命中した。
「ぐっ!」
そのまま彼女は木のある方へ飛ばされる。その間に悠岐が左手に青いオーラを溜めて技を放つ。
「波動弾!」
彼の放った攻撃は楓が木に衝突し、砂埃があがるのと同時に砂埃の中へ入っていく。その瞬間、楓が持っていた冷気が漂う刀が悠岐から見て左側に転がった。そんな中、魔理沙が独り言を呟いた。
「悠岐のやつ、相手が女であろうと容赦ないぜ。」
「悠岐君の因縁の相手かもしれないからね、手加減なんてないと思うよ。」
魔理沙の独り言にユニが自然に答える。砂埃が消えたところには木に寄り掛かりながら座りこむ楓がいた。彼女の頭からは血が垂れている。それに構わず楓が言葉を発する。
「ハハ、流石悠岐だな。容赦なくいくとはな。私も、負けてられないなっ!」
そう言うと彼女は咄嗟に転がっている刀に右手を伸ばす。その瞬間、彼女の右手の甲にナイフが刺さった。
「なっ!?」
「ヒヒッ。」
楓がナイフを抜く前に悠岐の右足が彼女に迫っていた。先程ナイフを投げたのは彼である。彼は笑みを浮かべながら座りこむ楓に蹴りを入れようとする。
その瞬間、楓は左手に隠し持っていた短刀を迫りくる悠岐の右足の甲に突き刺した。彼は反応することが出来ず、そのまま右足の甲を貫かれた。彼の右足の甲からは鮮血が飛び散った。
「えっ!?」
それを見た三人は目を大きく見開いた。悠岐も同様、目を大きく見開きながら心の中で呟く。
(あれ?こいつ、こんな短刀持ってたっけ?いいや、そんなことより・・・)
悠岐は楓の短刀から右足の甲を引き抜くとそのまま彼女との距離を置いた。そして再び心の中で呟く。
(波動弾の軌道を変えられた・・・。確かあいつは『道を操る程度の能力』の持ち主だったな。波動弾の軌道を変え、多少のダメージは避けたか。さっきの夢想封印・瞬も軌道を変えたという訳か。氷と炎なら相性は俺の方が有利。だが波動と道筋であればやつの方が有利か。)
彼と同じくして楓も息を荒くしながら心の中で呟いていた。
(流石悠岐だな、パンチの威力が伊達じゃない。波動弾は避けられたものの、ナイフは予想外だった。少し力を振り絞らないとな・・・)
その瞬間、悠岐からは赤い炎のオーラが、楓からは水色の氷のオーラが漂い始めた。それを見たユニが咄嗟に二人に言う。
「二人とも伏せて。恐らくあの二人の攻撃がぶつかった瞬間、物凄い衝撃が起こる筈だから。」
「ちょっ、冗談じゃないわ!私の神社壊されたら面倒だと言うのに!!」
そう言うと霊夢は急いで悠岐と楓の元へ向かう。彼女につられてユニも二人の元へ向かっていく。
「お、おい!霊夢、ユニ!」
魔理沙は手を伸ばしながらただ呆然とするしか出来なかった。その間に悠岐と楓が同時に攻撃を放った。
「波動の誓い、フレアバースト!!」
「氷電『凍りついた稲妻』!」
その瞬間、辺りは激しい爆風に襲われた。
ますます激しくなる悠岐と楓の戦い。果たして博麗神社の運命は!?
次作もお楽しみに!