スキマ妖怪、八雲紫と共に過ごしてきたユニはもう16歳になっていた。そんなある日、紫がユニに言った。
「忘れてたけれど、あなたにはたくさんの人達に会ってもらうわよ。まずは色々な人達のことを覚えないとね。」
「紫の知り合いと?いいけど、まずは何処に行くの?」
「ついてきなさい、案内してあげる。」
そう言うと彼女はスキマを開いた。そしてユニと共にその中へ入っていった。
スキマから出た場所はごく普通の神社だった。そして二人は中へ進んでいく。と、紫がユニの肩を軽く叩きながら言った。
「賽銭箱にお金を入れてきなさい。」
「え?ちょっと待って。ここに来て急に!?」
「そうよ。そうしないとここの巫女が凄い形相でやって来るからね。」
「そ、そんなに怖い巫女なんだ。じゃあ入れてくるわね。」
そう言うとユニはゆっくりと賽銭箱の近くに寄った。そして賽銭箱の前に立った時だった。突如神社の中から気配を感じ、ユニは中を見る。そこにはじっと彼女を見つめる巫女がいた。少し怯んだものの、それでもユニは賽銭箱に小銭を入れた。
「ヨッシャアァァ!」
突然神社の中から巫女が現れ、賽銭箱の中にある小銭を手にした。この光景にユニは呆然と見ているしか出来なかった。そんな彼女の元へ笑いながら紫が寄ってきた。そして言った。
「フフフ、相変わらずお金には目がないのね、霊夢は。」
「れ、霊夢?」
「何、私がおかしいと言うの?」
「ねぇ、紫。お金に目がないってことはつまり・・・」
「そう、霊夢は貧乏人なのよ。堕落している性格じゃあ一生賽銭を入れてくれる人はいないでしょうね。」
「紫、それは失礼よ。それに、そこにいるあんた誰?」
「あぁ、自己紹介してなかったわね。私の名前はユニ。」
「ユニね、覚えとくわ。それよりもあんた、何か面白いこと出来ないの?」
「面白いこと?そうねぇ、こんなのはどうかしら?」
そう言うとユニはスペルカードを取り出した。そして発動した。
「呼符コールザエニー」
そう言った瞬間、彼女の左側に小さな渦が現れた。そしてその中から出てきたものに霊夢は思わず奪おうとした。
「それよこせぇぇっ!」
「えっ、ちょ、何!?」
だがユニの方が反応が速かったため、ユニはそれを上に上げた。空振りした霊夢はそのまま5m程勢い余って飛んだ。そんな彼女にユニは言う。
「ちょっと、急に飛んで来たらびっくりするじゃない!本当にあなたって人はお金に目がないのね。」
そんな彼女の左手にあったものは、万札の束である。束の厚さを見るとおそらくは200万円はあった。それを欲しがる霊夢はまだ札束に目を向けていた。そして再び奪おうとした。だがその瞬間、ユニは札束を紫に預けた。そしてそのまま紫は札束をスキマの中へ入れ、すぐに閉じた。
「ああっ!私のお金がぁ!」
突然札束が消えたため、霊夢はその場で崩れてしまった。そして立ち直ったのか、霊夢は突如として起き上がり、ユニの肩を掴みながら言った。
「あんたの能力、言ってもらおうかしら?」
「べっ、別にそんなに慌てなくてもいいでしょ?まあ、言うけど私の能力は『あらゆるものを呼び寄せる程度の能力』よ。つまり、物であろうと生物であろうと呼び寄せることが出来る。」
「へぇ、不思議な能力ね。でも、あんたに説得すればいつでも札束を出してくれるんでしょ?」
「いつでも札束を出せるけれど、堕落しているあなたには出さないわよ。」
「チッ、ケチな女ね。」
「さて、ここからは霊夢に案内してもらいなさい。私は眠くなったから寝るわね。おやすみ~♪」
「あっ、ちょっと紫!?」
ユニは紫を追おうとしたが既に彼女はスキマの中へ入っていった。そして深い溜め息を吐いた霊夢はユニの肩を軽く叩いて言った。
「魔法の森に行くわよ。そこに私の友達がいるから。」
「へぇ、どんな人なのか楽しみね。」
そして二人が魔法の森へ向かおうとした時だった。
「おーい霊夢、お酒はまだかぁ!!」
突如背後から声がしたため、二人は後ろを振り返る。そこには猛スピードで霊夢に向かってくる鬼の少女がいた。そして少女は霊夢に飛び付いた。ユニはそれを唖然と見ていることしか出来なかった。
「ちょっと萃香、今日は我慢って言ったじゃない。」
「そう言って霊夢は1週間もお酒くれてないんだよ!?もう我慢出来ない!」
「ね、ねぇ霊夢。この子は?」
「あぁ、言ってなかったわね。こいつは伊吹萃香、お酒好きの鬼よ。」
「お酒好きねぇ。幻想郷には欲に満ちた人ばかりいるのね。」
「おいっ、そこの女!私にお酒を買え!」
「わっ、私!?めんどくさいわね。」
そう言いながらも彼女はスペルカードを取り出し、発動した。
「呼符コールザエニー。」
そして霊夢の時と同様、彼女の左側に渦が現れ、その中から焼酎の瓶が一本現れた。そしてユニはそれを萃香に渡した。
「わーい、ありがとう!あんた優しいね!誰かさんとは違って!」
「萃香、消し炭にされたいの?」
「わー、嘘だよ!そう言えばあんたの名前は?」
「私の名前はユニよ。ヨロシクね、萃香。」
そしてユニは萃香に笑顔を見せた。それに返事を返すかのように萃香も笑顔を見せた。そして萃香は博麗神社の中へ入っていった。
「・・・さ、行こっか。」
「そ、そうね。」
そして二人は魔法の森へ向かった。
魔法の森に着くと霊夢はユニに語りかけた。
「ここには人形使いと魔法使いがいるの。まぁ、魔法使いの方はちょっと危なっかしいと思うけどね。」
「私も注意したほうがいい?」
「いい。」
そして話している内に一軒の家に辿り着いた。そして霊夢は家の扉をノックしながら言った。
「魔理沙、いるんでしょ?魔理沙~?」
霊夢が呼び掛けて2秒も経たない内に家の扉が勢いよく開いた。そして霊夢は6m程吹っ飛んだ。ユニはそれを目を見開きながら見ていた。そして彼女は霊夢の側に駆け寄った。そして混乱している霊夢に言った。
「大丈夫?」
「だ、大丈夫に決まってるじゃない!博麗の巫女がこんなので泣くと思ってるの!?」
「思いっきり涙目になってるけど?」
「あー悪いぜ、霊夢。久しぶりの客かと思って張り切っちゃったぜ。それで、隣にいる人は誰だ?」
「私の名前はユニ。あなたと同じ、人間よ。」
「へぇ、人間か。まっ、取り敢えず能力を見せてもらおうか。」
「能力ねぇ、じゃあこれを見せてあげる。」
そう言うとユニはスペルカードを取り出した。そして二人の前で発動した。
「宝符ゲートオブバビロン。」
そう言った瞬間、彼女の背後に金色の空間が現れた。そしてその中から数えきれない程の刀、槍、斧が出てきた。それには霊夢も魔理沙も驚きを隠せなかった。そんな中、ユニは驚く二人に言った。
「どう?凄いでしょ。」
「何よこれ、これを一斉に飛ばされたら絶対に防げないじゃない。」
「や、ヤバすぎるぜ。」
「さて、次の場所に案内してよ。あっそうだ、魔法使いさん。あなたの名前は?」
「あぁ、私の名前は霧雨魔理沙、普通の魔法使いだ!」
「まっ、何でもいいけどね。霊夢、次は誰に会わせてくれるの?」
「おいっ、私をスルーするなっ!」
「後でゆっくりと話を聞くから待ってて。」
「じゃあ次は人形使いのところに行くわよ。」
魔法の森の奥へ進むと魔理沙の家よりも少し豪華な家が姿を現した。そして魔理沙は家の扉をノックしながら言った。
「お~いアリス。会わせたい人がいるんだ~。」
魔理沙が言った瞬間、家の中から黄色の髪の少女が現れた。そして彼女はユニを見ながら言った。
「なんだか見ない人を連れてきたのね。初めまして、私はアリス・マーガトロイドよ。ヨロシクね。」
「私の名前はユニよ、こちらこそヨロシク。」
「ところで、彼女の能力は?」
「知りたいか?ならばこの私が教えてやるぜ!」
「魔理沙、それはあんたが言うんじゃなくてユニが言うことでしょ?」
「だって、さっきスルーされたから・・・」
「まぁ、気を取り直して改めて言うわね。私の能力は『あらゆるものを呼び寄せる程度の能力』よ。」
「何ですって!?それはびっくりね。」
「なぁ、アリス、そんなに驚くのか?」
「『あらゆるものを呼び寄せる』ということは下手すれば神をも呼ぶことの出来る能力。」
「神までも!?」
「そう♪私はあらゆるものを呼び寄せることが出来るの。凄いでしょ?」
「か、敵いそうな自信が無いぜ。」
「試さなきゃ分からないでしょ?試しにやってみなさいよ、魔理沙。」
「わっ、私がやるのか!?」
「当たり前でしょ?あなたがやらないで誰がやると言うの?」
「ならやってやるぜ!」
そして魔理沙とユニの勝負が始まった。始めにユニが魔理沙に挑発するかのように言った。
「手加減は無用よ。本気でかかってきなさい!」
「上等。それじゃ、早速攻撃させてもらうぜ!」
そう言うと魔理沙はスペルカードを取り出した、そしてユニに見せながら発動した。
「恋符マスタースパーク!」
そのままレーザーはユニに向かっていく。そのままユニのところで爆発した。マスタースパークの衝撃で砂埃が舞う。魔理沙はじっと様子を伺った。
「なっ!?」
砂埃が晴れた光景を見て三人は驚きを隠せなかった。何故ならあの衝撃を受けてもユニは無傷だったからだ。そんな彼女の右手には見覚えのある日傘が握られていた。思わず魔理沙はユニに言う。
「お前、それは幽香の日傘だぞ!?勝手に持ち出していいのかよ!」
「フフフ、そう思うでしょう?でも違うの。これはクローン。本物そっくりのクローンなのよ。さっきの『剣符アームストライク』の金世界で出来る物は全てクローン。でも威力はこれを持っている本人と同じくらいか、あるいはそれを越える力を持っている。」
「なっ!?」
「じゃあ、試してあげる。」
そう言うと彼女はスペルカードを取り出した。そして驚きを隠せない魔理沙に放った。
「恋符マスタースパーク。」
彼女の放ったマスタースパークは明らかに魔理沙のマスタースパークの威力を遥かに越えていた。そして彼女の攻撃で先程よりも強い衝撃が三人を襲った。
「ありゃりゃ、やり過ぎたかな?」
心配になったユニは魔理沙の元へ向かう。彼女の体はボロボロだった、ユニはそんな彼女の元へ寄ると手を差し出した。そして言った。
「これからどんどん強くなって行きましょう。」
「・・・・・あぁ、勿論だぜっ!」
そう言うと彼女はユニの手を握った。そしてそのまま起き上がった。その様子を見ていた霊夢にユニが言う。
「さて、次は何処に案内してくれるの?」
「そうね、紅魔館にでも行こうかしら。そこには物凄く凄いヤツがいるから。」
「へぇ、それは楽しみね。」
「よしっ、そうと決まれば行こうぜ!なっ、アリス?」
「悪いけど、私は家にいるわ。三人で楽しんで行ってね。」
「ちぇっ、つまんないの。」
「さ、行くわよ。」
そう言うと霊夢は飛んだ。そらを見たユニは魔理沙の箒に乗った。そんな彼女に魔理沙が言った。
「しっかり掴まれよ!私は少しやり方が荒いからな!」
「分かったわ!」
そのまま三人は紅魔館へ飛び立って行った。
女の子を主人公にしてみました。残酷な描写ってタグにやったのにただの日常生活みたいになってしまった。
さて、次作は紅魔館へ向かいます。
次作もお楽しみに!