東方混沌記   作:ヤマタケる

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エリュシオンの動きを掴むことができず、更にはパチュリーが謎のウイルス、凶神ウイルスによって苦しめられてしまう。


第177話 凶神ウイルス

「凶神ウイルス、ですって・・・?」

 

彼女の発したウイルスの名前に声を上げる妖華。そんな彼女にエリュシオンが辺りを見ながら口を開く。

 

「これはね、私が人間達を滅ぼすために私の体内で作り出した超危険なウイルスよ。感染した時の主な症状は・・・そうね、周りの奴らを見ればすぐに分かるわ。」

 

彼女の言葉を聞いて紫達は辺りを見回す。そこには先程の妖精メイドのように体全身が紫色に染まり、息を引き取った兵士やその場に蹲り、苦しむ妖怪や月の都の兵士、中には仲間に攻撃するモンスターやナイトメア、ドラゴン達の姿も見られる。

 

「な、なんだこれ・・・。」

 

「まるで地獄だ。」

 

萃香と妹紅が目を見開いて口を開く。そんな中、エリュシオンが銃を眺めながら言う。

 

「更にこのウイルスには特殊な力を持つ子の力を大きく抑制することができる。そうね、簡単に言うなら別の姿に変身できる奴の変身する力を強制的に使用不可能にしたり不老不死の力を抹消したりすることができるわ。」

 

「・・・なるほど、そう言うことだったのですね。」

 

彼女の言葉を聞いて依姫が口を開いた。そのまま話す。

 

「月の都の兵士の1人が蓬莱の薬に手を出した。それによって永久刑を執行する筈だったんですが、突如として命を落とした。その元凶はあなただったのですねエリュシオン!!」

 

彼女の怒声が響くと同時にエリュシオンの顔に不適な笑みが浮かぶ。そして口を開く。

 

「その通り、私は裏の世界の存在。表の世界の均衡を乱し、全てを滅ぼすのが私の狙い。幻想郷を先に滅ぼそうと現世との境の結界を壊したのに中々食らいついてくるから骨が折れたわ。でももうそんなことを気にしなくていい、全ては私が終わらせる。この愚かで身勝手な『人類』という愚生物を滅ぼすためにね。」

 

「・・・そのためならば人類に手を貸す者は誰であろうと殺す。そう言うのね?」

 

彼女の言葉に紫が眉を細めて言う。そんな彼女にエリュシオンが指を鳴らして指を差し、言う。

 

「イエス。そしてここに集う者達は皆人類存続、あるいは世界の崩壊を防ぐために私と戦う者達。私と戦い、死を恐れることのない勇敢なる者達。」

 

そう言って一呼吸おくとエリュシオンは体から更に紫色のウイルスを辺りに放ち、周辺の景色を紫色に染め上げた。そして口を開く。

 

「私は一度だって負けたことはないわ。だからここにいるアンタら全員1人残らず殺してあげる。どこからでもかかってきなさい。」

 

そう言うと彼女は銃と剣を構える。それを見て紫達は一斉に構える。と、マスターハンドが口を開いた。

 

「気をつけて、奴のこの空間内は一変何の影響もないように見えるけどこれは微々たる量のウイルスだ、長時間奴と戦っていると僕らの体に影響が出始めて不利になる。」

 

「その前に奴を倒すのだ。我々が奴から勝利を掴み取るにはそれしかない。」

 

2人がそう言うとエリュシオンが銃口を彼らに向けて言う。

 

「それはそれは言うは易し、行うは難しよね?今まで打ち砕かれることのなかった千年殃禍に終止符を打たれたんだからねぇ。」

 

「・・・。」

 

彼女の言葉に黙る2人。そんな2人とは別にエリュシオンは話し続ける。

 

「アンタらは所詮はただの別のモノに染まった人間なら妖怪なりに倒された化身。そんなアンタらに私を倒すことなんて出来ない。勿論、アンタらの主人様もね?」

 

「我々が敗北したのは我々が弱かったからではない、今を生きる者たちが強かっただけの話。ガイルゴール様もそれを認知しておられる。」

 

「・・・ねえ化身さん。あなた達の主人は今どうなの?」

 

エリュシオンと話している化身達に紫が口を開いた。そんな彼女にマスターハンドが言う。

 

「ガイルゴール様は、千年殃禍での傷がほとんど癒えておられない。奴と戦うにはかなりきつい状態だね。」

 

「・・・アタシ達でなんとかするしかないって感じか。」

 

「世界を破滅へ導く凶神、その力は底知れない。我々でなんとかするしかあるまい。」

 

勇儀、メルト・グランチが話している中、エリュシオンが片手に拳銃を、もう片方の手に剣を構えて口を開いた。

 

「さぁ再開しましょう♪私が1人1人アンタ達を可愛がってあげるから。」

 

「上等よ!!」

 

「ここで食い止めて見せるわ。」

 

彼女の言葉に反応して向かっていくのは諏訪子と豊姫。諏訪子は地面に手を当て、蛇や化身を召喚してエリュシオンに向けて放ち、豊姫は化身に合わせて弾幕を放つ。それを見た彼女は銃口に緑色の光を漂わせるとそのままレーザーとして放った。彼女から放たれたレーザーは化身と弾幕を一気に消し飛ばし、そのまま2人目掛けて放たれる。

 

「紅符『スカーレットシュート』!」

 

「禁忌『カゴメカゴメ』!」

 

「人符『現世斬』!」

 

「華霊『ゴーストバタフライ』!」

 

「地獄『無限の狭間』!」

 

エリュシオンの放ったレーザーに対抗するためにレミリア、フラン、妖夢、幽々子、小町の5人の少女が一斉にスペルカードを使用して攻撃を放つ。5人の放った攻撃はレーザーと衝突してその場で爆発を起こす。

 

「ここで近距離詰めるとするかねぇ!」

 

「私も行く!」

 

「んじゃ俺もやるぜ!」

 

煙で視界が悪い状況の中、勇儀といつの間にか白沢に姿を変えた慧音、篁が一気にエリュシオンとの距離を詰める。煙が少し消えてきたかと思うとその中から剣の先端が姿を見せる。

 

「そこか!!」

 

そう言うと篁は鎖鎌の先端の小さい鎌をエリュシオンがいるであろう方向へと投げる。剣を避けて勇儀と慧音が彼女がいるであろう場所に拳と頭突きを構える。その瞬間、煙が完全に消えたかと思うとそこにはエリュシオンの姿はなく、鎖鎌は空を切っており、剣はゆっくりと地面に落ちた。

 

「なっ、にっ!?」

 

「消えた!?」

 

「つい1秒前まではね。」

 

驚く慧音、勇儀とは別に篁の背後から声が聞こえたかと思うとそこにはエリュシオンが1枚のスペルカードを取り出しており、右手には雷を纏う大槌が握られていた。

 

「うぉっ!?」

 

咄嗟に背後を振り向く篁ではあるがそれよりも早くエリュシオンがスペルカードを発動してしまった。

 

「雷槌『ミョルニル』」

 

雷を纏った大槌の一撃は篁の鳩尾を捉えてしまう。

 

「ぐがぁぁぁ!!!」

 

その一撃を喰らった篁は勢いよく吹き飛ばされる。

 

「篁!!」

 

「お兄様!!」

 

すぐさま彼の元へ妖華と妹子が駆け寄る。そんな中、紫とメルト・グランチがエリュシオンの前に立ち、スペルカードを使用した。

 

「堺符『四重結界』!」

 

「炎防『聖炎なる盾』」

 

その瞬間、エリュシオンを囲むように紫色の結界と炎が現れた。

 

「こんなの、ちっぽけな小細工に過ぎないのに・・・。」

 

そう言うとエリュシオンは片手で結界を殴りつけ、手を大槌を一本の剣に変化させて振る。その瞬間、結界が粉々に砕け、炎が辺りから消えてしまう。

 

「ここだ。」

 

「くらいな!」

 

その一声と共にマスターハンドとクレイジーハンドが青いレーザーをエリュシオンに向けて放った。

 

「次から次へと・・・。」

 

そう言いながらエリュシオンは瞬時に2人の放ったレーザーを避ける。

 

「そこだ!!」

 

そう言いながら妹紅が背中に火の翼を生やしてスペルカードを発動していた。

 

「『虚人』ウー!」

 

(体勢が悪い、流石にこれは避けられないか。)

 

そう心の中で呟いたエリュシオンは彼女の放った攻撃を左手の甲で弾き飛ばした。弾かれた攻撃は地面に着弾してそのまま爆発する。エリュシオンの弾いた左手の甲は音を立てて赤く腫れ上がっていた。

 

「チッ、軽く火傷しちゃったか・・・。」

 

そう言いながらも表情を変えないエリュシオンは口角を上げたまま口を開く。

 

「さぁ、楽しみはまだまだこれからよ。世界の終末、必ずこの目で見届けてこの手で終わらせるんだから。」




エリュシオンを追い詰めていく紫達。だが彼女はまだ余裕を見せている。隠された恐ろしい能力とは!?
次作もお楽しみに!

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