東方混沌記   作:ヤマタケる

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九十九の危機を救った勇儀。


第174話 仲間と大軍

「か、母さん!どうして・・・。」

 

突如現れた勇儀を見て九十九は思わず声を上げる。そんな彼女とは別に勇儀は九十九の頭に手を置いて言う。

 

「何言ってるんだい、娘の命を守るのが親の役目だろう?世界は違えどアンタはアタシの大切な娘なんだよ。」

 

その言葉を聞いた瞬間、九十九の目からポロポロと涙が溢れ始め、遂には泣いてしまう。そんな彼女を見て勇儀が口を開く。

 

「泣いてるんじゃないよ、アタシの娘だろ?アタシの娘なら強くならないと。」

 

そう言っている中、舞う砂埃の中から頭から血を流しているエリュシオンが笑いながら姿を現した。そして言う。

 

「やってくれるじゃない、星熊勇儀。親子揃って腹立たしい。」

 

「おやおや、あの一撃喰らってまだ余裕そうじゃないか。こりゃ恐ろしい存在だねぇ。」

 

「私の邪魔すんならすぐに捻り潰すわ。さぁ、掛かってきなさい。」

 

そう言うと彼女はスライムを剣に変化させるとその刃先を勇儀に向ける。それを見た勇儀は突如笑い出し、言う。

 

「アッハハハハ!!」

 

「・・・何がおかしいの?」

 

笑い出す勇儀を見てエリュシオンは眉を潜める。そして勇儀が再び口を開く。

 

「アハハハ、勘弁してくれよ凶神さん。お生憎だけどアタシはアンタと1vs1でやり合う気なんてさらさらないよ?なんせ、アンタが強すぎてアタシじゃ相手にならないからさ。」

 

「ふぅん、じゃあ降参するってことでいいの?」

 

「そういう訳じゃないさ。」

 

「じゃあどうするの?」

 

「すぐに分かるさ。」

 

勇儀がエリュシオンにそう言った時だった。突如スペルカードを発動する音が聞こえたかと思うと紫色の槍のようなものと炎で形成された剣、紫色の弾幕に大きな柱がエリュシオン目掛けて放たれたのだ。それを見たエリュシオンは咄嗟に後退して攻撃を避ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待たせたわね。」

 

「お姉様、私も行くよ!」

 

「遅くなってごめんなさいね。」

 

「私達が来たならもう大丈夫だよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

声のする方向を見て九十九は彼女達の名前を叫ぶ。

 

「レミリア!フラン!紫!加奈子!」

 

彼女達の姿を見て思わず微笑む九十九。そんな彼女とは別にエリュシオンは4人を見て心の中で思った。

 

(傷がほとんど癒えている。恐らく八意永琳とゴールド・マーグルの治療によるもの。となると星熊九十九達もすぐに復帰してくる可能性が高い。速くて1時間、か・・・。)

 

そんなことを考えている彼女とは別に紫がユニの元へ降りる。そして彼女を優しく抱えて言う。

 

「よく頑張ったわね、ユニ。」

 

「ゆ、紫・・・。他の、人達、は・・・?」

 

「何心配してるのよ。あの現世の帝の策略よ?計画通りに決まってるじゃない。」

 

そう言うと彼女はある方向を見る。彼女に続いてユニも紫の見る方向を見る。そこには多少ボロボロになっている五大王、月の都の兵士達、そしてこの戦いに協力してくれた妖怪達が集まっていた。それを見て呆然となるユニとは別に兵士達の中からゆっくりと歩いてくる将軍、帝のセコンドがエリュシオンに笏を向けて口を開く。

 

「余の策略により幻獣達は壊滅だ。残りはエリュシオン、貴様だけだ!!」

 

そう言った瞬間、エリュシオンを囲むかのようにレミリア・スカーレット率いる紅魔館の妖精メイドやフラン達、白玉楼の西行寺幽々子や魂魄妖夢、迷いの竹林の藤原妹紅や上白沢慧音、月の都からの使者の綿月姉妹、そして五大王のゴールド・マーグル、メルト・グランチといった猛者達が集う。そんな中、1人の王、小宝剛岐が辺りに響くように叫んだ。

 

「医療班は怪我人の治療を最優先!!」

 

そう言った瞬間、ユニ達の元へそれぞれの人達が駆け寄る。霊夢の側に寄ってきたのは早苗だった。

 

「霊夢さん大丈夫ですか!?すぐに安全な場所へお連れします!」

 

「は、速く早苗・・・毒が・・・。」

 

霊夢は早苗の肩を借りながら兵士達のいる方へと向かっていった。魔理沙の元にはアリスが寄る。

 

「魔理沙大丈夫なの!?すぐに治療場に連れて行くわ!」

 

「ア、アリス・・・。」

 

そう呟くと魔理沙はゆっくりと目を閉じ、そのまま気を失ってしまった。それを見たアリスはすぐに人形達を使って魔理沙を運んで行った。悠岐、楓の元にはメルト・グランチが寄る。そして口を開く。

 

「随分と彼の状態が酷いな。息はあるのかね?」

 

「あるに決まってる、さ。」

 

「それと出野楓よ、あの少年は?」

 

そう言うとメルト・グランチは1人の少年を指差す。少年を見た楓はすぐに口を開く。

 

「影裏破紡。アラヤに雇われていてエリュシオンをたおすために来たらしい。」

 

「成程、アラヤ殿の使いか。なれば生かさねばならないようだな。」

 

そう言うと彼は指をパチンと鳴らす。その瞬間、彼の背後に1人の男が膝をついて現れた。その男にメルト・グランチが言う。

 

「彼を医療場に運びたまえ。」

 

「御意。」

 

そう言うと男は影裏を担いで医療場へと走っていった。それを見た楓はヨロヨロになりながらメルト・グランチの背に乗る。楓を背負ったメルト・グランチはそのまま倒れる悠岐を片腕で担いでそのまま医療場へと向かっていった。続いて琥珀。彼の元には太陽の畑の妖怪、風見幽香が近づいて彼に纏わりついている鎖の拘束を解いた。

 

「はぁぁ、やっと抜け出せた。ありがとう。」

 

「別に、これくらいどうってことないわ。私はすぐにでも奴と戦いたいのだから。」

 

そう言うと彼女は琥珀を後にしてエリュシオンの方へと向かっていった。

 

「僕は運んでくれないのかい!?」

 

「あなた大した傷を覆っていないじゃない。それくらい包帯巻けば十分よ。」

 

「お、おっしゃる通りで・・・。」

 

そう言うと琥珀は医療場へと向かっていった。最後に百々と暁。彼らの元にやってきたのは帽子を被った1人の男と1人の鬼だった。帽子を被った男、マーグルは暁を担ぐと頭のない百々を見つめる鬼の少女、萃香を見て言う。

 

「・・・悲惨な目に遭わされたな。」

 

「勿論、あいつは絶対に許さない。大切な息子をこんな目に遭わされたんだから。悪いけど光王さん、百々を頼んでいい?」

 

「任せな。そして行ってこい。」

 

そう言うとマーグルは百々をも担ぐとそのまま医療場へと向かっていった。それを見届けた萃香は紫の隣まで歩み寄る。そして口を開く。

 

「行くよ、あんな奴を生かしちゃおけない。」

 

「えぇ、そうね。」

 

そう言うと紫はスキマを展開させ、そこにユニを入れ込んだ。そのまスキマを閉じるとエリュシオンの方を見る。大勢の現世の者達に囲まれてもなおエリュシオンは笑みを浮かべたままでいた。そんな彼女にセコンドが口を開いた。

 

「諦めよ、もう貴様に味方する者はいない。」

 

「お生憎、私は幻獣達が突破されてしまうことも想定済み。だからこんなに囲まれても何とも思わないわ。」

 

そう言うと彼女は右手を上げて指をパチンと鳴らした。その瞬間、ゴゴゴと大きな音が辺りに響いたかと思うと鋼鉄城の巨大な扉がゆっくりと開き始めた。そしてその中から数多くの幻獣達が姿を現した。

 

「なっ、幻獣達はまだいるのか!!?」

 

「いいや、幻獣達だけじゃない!!」

 

妹紅が驚きの声を上げる中、慧音が扉の奥を指さして言う。奥からは幻獣達のみならず、様々な姿のドラゴン達や赤い髪を自在に変化させる少女達、リザードマンやオーク、ゴーレムを摸したような異形な怪物達が次々と姿を現す。それを見たセコンドが口を開く。

 

「奴め、ストライクワールドのモンスターやナイトメア達をも配下につかせたと言うのか!!」

 

「そう、私が与えた条件を呑んでくれてね。」

 

そう言うエリュシオンはニヤニヤと笑みを浮かべる。と、萃香が妖怪達の前に出て言う。

 

「あんな奴らすぐにやっちまえ!!」

 

彼女の掛け声と共に妖怪達が声を上げて大軍へと向かって行く。

 

「月の都の誇りにかけて、兵士達よ、出陣なさい!!」

 

「行くが良い、誇り高き余の兵士達よ!!」

 

萃香に続いて豊姫、セコンドが声を上げて兵士達を出撃させる。と、エリュシオンが笑いながら言う。

 

「ククク、さぁアンタ達は私が存分に相手してあげる。たっぷりと楽しみなさいな?」




ユニ達の危機を救ったセコンド達。現れるエリュシオンの増援。
次作もお楽しみに!

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