東方混沌記   作:ヤマタケる

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エリュシオンとの交戦の中、霊夢を庇った暁が突如喉元から血を流し、倒れてしまう・・・。


第172話 絶望

「暁!!!」

 

倒れた彼の名前を叫ぶ魔理沙。と、影裏が汗を流しながら言う。

 

「何が起こったんだ?何故アイツの首から・・・まさか、土蜘蛛の糸の力か!?」

 

「生憎と、私の土蜘蛛の糸にそんな効果はない。」

 

考察する影裏にエリュシオンが言う。そして喉元から血を流して必死に空気を取り込もうとする暁に目を向けて口を開く。

 

「アンタはどうせ姉思いだから庇うことは読めていたわ。そして他の子を狙ってはすぐに動かないのも分かっていた。だから霧雨魔理沙を狙うフリして博麗霊夢を狙う、これもフェイクにしてアンタを狙ったのよ?確かアンタは嘘を現実にする的な感じの能力なんだっけ?なら嘘がつけないよう喉を斬らせてもらったわ。あえてすぐに死なないように、長く苦しむように調整したけどね。」

 

そんな中、琥珀が彼に近づき、言う。

 

「こりゃ酷いね。すぐに治してあげないと。」

 

暁の傷を治そうと琥珀が文字を浮かべようとした時だった。突如銃声が響いたかと思うと文字を浮かべようとした琥珀の本の翼と右腕に銃弾が貫いた。

 

「・・・え?」

 

あまりの速さに状況を把握できない琥珀。そんな彼の撃ち抜かれた右腕から血が垂れ始める。そんな彼にエリュシオンが勢いよく近づき、頭を掴んで地面に叩きつける。

 

「ぐあっ!!き、君もがっ!!?」

 

彼女に言おうとした琥珀であったが突如口の中に何かを詰められて言葉を遮られてしまう。すぐに吐き出そうとする琥珀であったがエリュシオンは頭を地面に抑えたまま何処からか取り出した鎖を彼の口、手足に縛りつけ、話せず身動きも取れない状態にした。

 

「ン〜!!」

 

暴れて振り解こうとする琥珀だがキツく縛られているのか、自力で解くことはできなかった。そんな彼にエリュシオンが離れ、言う。

 

「文字を操る、それがアンタの能力。下手に殺せばアンタは妖精だからすぐに蘇る。だから敢えてアンタを殺さず、文字を操れないようにしたわ。頼れる二人がいなくて大変ねぇ。」

 

そう言う彼女はユニ達を見下すような目で笑みを浮かべる。そんな彼女を見た百々が握り拳を作り、言う。

 

「・・・ふざけんじゃねえ!!!」

 

そう言うと彼は勢いよくエリュシオンに向かっていく。それを見た霊夢が口を開きながら彼の後を追う。

 

「奴は任せたわ百々!私は暁と琥珀を助ける!!」

 

彼女の言葉を聞いた百々はコクリと頷き、エリュシオンに拳を向ける。

 

「これでも食いやがれ!!鬼の全力の拳じゃぁぁぁぁい!!!」

 

そう言って彼は渾身のパンチをエリュシオンにぶつける。しかし彼女はそんな彼の渾身の一撃をなんと右手の指一本で受け止めてしまった。

 

「な、にっ!!?」

 

「百々、数千年前にも言った筈よ。怒りに身を任せてぶつける拳は大した力にならないって。それにね、」

 

そう言いながらエリュシオンは彼女を横切ろうとする霊夢に軽く目を向ける。そして再び言う。

 

「私は何億年と色んな奴らを見てきたけど、こんなのでどうにか戦況を覆せると思ってるの?」

 

そう言う彼女の左手には銃が握られており、銃口からは紫色の毒々しい光が漂っていた。そしてその銃口は霊夢に向けられていた。

 

「え?」

 

「マズイ、霊夢!!」

 

咄嗟に霊夢の名を叫ぶ百々であったが遅く、銃口に漂っていた毒々しい光はレーザーとなり、そのまま霊夢に直撃した。

 

「きゃぁぁぁ!!」

 

レーザーをまともに食い、叫び声を上げた彼女はそのまま数メートル転がり、地面に倒れた。

 

「霊夢!!!」

 

思わず彼女の方を見て叫んでしまう百々。

 

「バカ百々、油断すんな!!」

 

咄嗟に叫ぶ楓。それを聞いてはっとなった百々はすぐにエリュシオンの方を見るがその時、既にエリュシオンの足の甲が彼の目の前にあり、そのまま彼女は百々の頭を蹴り飛ばした。あまりの強さに百々の首は胴体から吹き飛んでしまう。頭が無くなった百々の体はヨロヨロと地面に崩れる。

 

「博麗霊夢、幻想郷でその名を知らない者はいない。アンタは大した修行をしてないみたいね?かつての先代が見たらさぞ呆れるでしょうね。」

 

「お前、百々に対して色々思ってるんじゃなかったのかよ!!」

 

思わず声を上げる魔理沙。そんな彼女にエリュシオンが口を開く。

 

「お生憎、今の百々は好きになれない。だから頭を吹っ飛ばしても何も心は傷つかない。」

 

そう言うと彼女はニヤリと不気味な笑みを浮かべる。

 

「そんなの、ただの自分勝手じゃねぇかよ!!」

 

そう言いながら影裏はブツブツと詠唱を唱え始める。と、詠唱を唱えようとした彼の背後へエリュシオンが瞬時に移動したかと思うとそのまま彼の首に腕を回し、そのまま首を締め上げる。

 

「ガッ・・・。」

 

彼女の拘束から逃れようと影裏は必死に抵抗するが鉄のように固く、放すことができない。と、エリュシオンが彼の耳元で囁く。

 

「倒すべき相手に何も抵抗できずにやられていくのはどんな気持ち?」

 

そう言った瞬間、辺りにゴキっという鈍い音が響いたかと思うと影裏のエリュシオンの腕を掴む両手がだらんと垂れる。

 

「影裏!!」

 

彼の名を叫ぶ悠岐。そのまま影裏は地面に倒れる。そんな彼とは別にユニと楓がエリュシオンに向かっていく。

 

「いい加減にしなさいよ!!」

 

「仲間をこんな目に遭わせるなんて、絶対に許さない!!」

 

そう言う二人の目には怒りが宿る。そんな二人に彼女が笑いながら口を開いた。

 

「アッハハハハ!!何が仲間ですって?自分のことも守ることのできないアンタ達が言えることなのかしらねっ!!」

 

そう言うと彼女は左手に持っていた拳銃を刀に変化させるとそれを二人に振り下ろす。

 

「ユニ、楓、危ないッ!!!」

 

何か危険なことを察知した悠岐は咄嗟に二人を突き飛ばし、刀を構える。刀を振り下ろそうとしていたエリュシオンは既に彼の背後におり、刀を下ろしていた。そして言う。

 

「アンタが1番いい例ね、西田悠岐。アンタは他人は守れても自分を守ることが出来ないみたいだから。」

 

そう言った瞬間、悠岐の体のあらゆる場所から血が飛び散り始めた。そのまま悠岐はゆっくりと地面に倒れる。倒れゆく彼にエリュシオンは再び口を開く。

 

「これが嘗て幻想郷を破滅の危機から救った英雄とは、聞いて呆れる。アンタは誰かを庇い、自らを捨てことしか頭が無かった。だから防御面が疎かになってこんな目に遭うのよ。敵にアドバイスしてあげる私に感謝するといいわ。」

 

ニヤニヤしながら言うエリュシオンとは別に楓とユニが勢いよく向かう。

 

「何が感謝よ!!」

 

「粉々に斬り刻んでやる!!」

 

二人の猛攻を見たエリュシオンはまず楓の振りかざす刀の太刀を右手の指2本で受け止めると、勢いの止まらないユニの腹に回し蹴りを叩き込む。

 

「ガッ!!」

 

腹を蹴られた勢いでユニは吐血し、勢いよく吹き飛んだ。

 

「ユニ!!ぐっ!?」

 

彼女の名を叫ぶ楓にエリュシオンは頭を掴み、口を開く。

 

「アンタの力、どんなものなのか見せてみなさい。」

 

そう言うと彼女は懐からリンゴのようなものを取り出すとそれを楓の頭に押し付けた。

 

「がぁぁぁぁぁ!!?」

 

その瞬間、リンゴに吸い寄せられるかのように楓の体に宿る霊力が吸われていく。彼女はリンゴから離れようとするがエリュシオンが彼女の足を踏みつけ、逃げられないようにする。

 

「あ、あぁ・・・。」

 

逃げることのできなくなった彼女はそのまま脱力し、倒れてしまう。リンゴを見ながらエリュシオンは再び口を開く。

 

「うーん、まだまだ解放するには程遠い霊力ね。悪くはなけど。」

 

そう言う彼女に向かって数多の星々が放たれた。それを見たエリュシオンは容易くかわし、放たれた方向を見て言う。

 

「ちょっと、鑑賞の邪魔をしないでよ。」

 

そう言う彼女の見つめる方向には息を切らし、カタカタと震えながら箒に跨り、宙に浮く魔理沙がいた。と、魔理沙が言う。

 

「よくも・・・よくも私の大切な仲間達をこんな酷い目に遭わせてくれたな!!お前だけは、何がなんでも絶対に許さない!!!」

 

「アッハハハハ!!何を強がっているの?自分に正直になりなさい、本当は私が怖くて仕方ないんだって。」

 

エリュシオンが言った瞬間、魔理沙はギリッと歯を食いしばり。目を見開かせて叫んだ。

 

「調子に乗るな!!彗星『ブレイジングスター』!!」

 

スペルカードを発動した彼女は勢いよくエリュシオンに向かっていく。放たれる弾幕を避けながらエリュシオンが言う。

 

「頑張っているのは認めてあげる。けど実力の差がありすぎる。そんなの、私に当たったところで大したダメージにはならないわ。」

 

そう言うと彼女は弾幕を避けながら黒いスペルカードを取り出し、再び言う。

 

「折角だからアンタにもう一枚のスペルカードを使ってあげる。」

 

そう言った瞬間、彼女の持つ黒いスペルカードが黒く禍々しく光り始めた。

 

「黒渦『ギャラクシー・フィニッシュ』」

 

その瞬間、彼女の前に黒い渦が現れたかと思うとエリュシオンはその中に入り、一瞬にして渦と共に姿を消した。

 

「なっ、何処だ!?ええっと、こういう時は・・・。」

 

そう言って魔理沙は後ろを振り返り、そこれミニ八卦路を向けて再び言う。

 

「大体後ろから出てくるのが定番だぜ!!」

 

そう言った瞬間、後ろを見る彼女とは別に正面から黒い渦が現れたかと思うとそこからエリュシオンが姿を現した。そして言う。

 

「残念、正面でした。」

 

「げっ、そっちかよ!!」

 

咄嗟に彼女から距離を取ろうとするが急にエリュシオンに引き寄せられてしまい、逃げられなかった。そんな彼女にエリュシオンが言う。

 

「誰もこの黒渦(ブラックホール)からは逃れられない。」

 

そう言いながら彼女は紫色の光を右手の握り拳に漂わせる。そしねそのまま拳を彼女にぶつける。強力な一撃を食らった魔理沙は勢いよく地面に叩きつけられ、大量の砂埃が舞う。ゆっくりと地面に降りたエリュシオンは一人の少女を見て言う。

 

「さぁ、残るはアンタだけよ。星熊九十九。」

 

そう言う彼女よ目線には一人スマホを持って立ち尽くす九十九の姿があった。そんな彼女にエリュシオンが再び口を開く。

 

「アンタはゆっくり私の手で殺してあげる。無謀な爆絶級の高校生達と同じようにしてあげるわ。」

 

「・・・掛かってこいよ、今の私は昔とは違うってことを見せてやる。」

 

 




絶望的な力で一瞬にして戦闘不能にされてしまったユニ達。九十九に勝機はあるのか!?
次作もお楽しみに!

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