東方混沌記   作:ヤマタケる

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テルヒを倒し、下の階へ行きあの子の待つ場所へと向かうユニ達。


第166話 希望の少女

薄暗い空間で下へ続く階段を降りるテルヒとユニ達。と、魔理沙が霊夢に小さい声で言った。

 

「なぁ霊夢、私達はめられてないか?」

 

「はめられてる?どういうことなの?」

 

「なんか、そんな予感がするぜ。百々もアイツとの戦いで洗脳されたかもしれないだろ?」

 

「そうかもしれないけれど、私はそうは思わないわよ?なんとなくだけれど表情で分かるわ。」

 

「そうか〜?私はちょっと不安だぜ。」

 

「まぁいざって時こそよね。もしテルヒの言っている、『あの子』がやばい子だったら咄嗟に戦う。それでいいでしょ?」

 

「そうだな。そうしようぜ!」

 

そう言って二人はみんなの後を追う。そんな二人に部屋を最後に出た琥珀が言う。

 

「二人とも何かコソコソ話してたみたいだけれどどうかしたの?」

 

「魔理沙が嫌な予感がするって言ってるの。まぁエリュシオンの城だし、何かあってもおかしくないって。」

 

「なるほどね。あながち間違いではないと思うよ。けれどこれから行く場所に関しては問題ないよ。」

 

「どうしてそう言い切れるんだ?」

 

「何故かって?そんなの決まってるじゃないか。あの部屋にいる子は、『希望の少女』って言われてるからね。」

 

「決まってるじゃないかって言われても私達には分からないわよ。それに希望の少女?」

 

「行けば分かるよ。」

 

琥珀に言われるまま二人は下へと降りる。しばらくしてテルヒが扉の前で足を止め、ユニ達の方を見て言う。

 

「ここだ。」

 

扉はテルヒがギリギリ入れるサイズの高さで扉の上には何か文字が記されている。と、楓が口を開いた。

 

「なんだこの文字は・・・見たことがないぞ。」

 

「お前達には分からぬよ。」

 

そう彼女に言ったテルヒは扉をノックし、言った。

 

「私だ、お前に会わせたい奴を連れてきた。入るぞ。」

 

「はーい!」

 

テルヒの声を聞いて部屋の中から聞こえたのは幼い少女の声だった。その声が聞こえた瞬間、テルヒは扉をゆっくりと開ける。

 

「気をつけろよ、霊夢。」

 

「分かってるわ。」

 

霊夢と魔理沙は警戒してユニ達の後に続いて部屋の中に入る。

 

「な、ここは・・・。」

 

部屋に入った瞬間、ユニ達は驚きを隠さなかった。部屋の中には様々な形や色をした積み木に多くの本が本棚に収納されていたり、紫色のカーテンのあるベッドがある部屋、いわゆる子供部屋がそこにはあった。その真ん中で紫色の袖の長い服に金髪で頭には紫色のリボンのようなものをつけた一人の幼い少女が積み木を積みながらユニ達を見ていた。と、少女が突然声を発した。

 

「ち、ちょっとテルヒ!!その怪我どうしたんだドラ!?」

 

「ん?あぁ、これか?これはさっき気を緩めて階段から転んでしまったんだ。私としたことが情けないものだ、ハッハッハッ。」

 

「笑い事じゃないドラ!!全く、しょうがないドラね〜。」

 

そう言うと少女は部屋の隅にあった箱を持って行くと中から布のようなものを取り出すとそこに消毒液と書かれたビンの中身を染み込ませ、それをテルヒの傷口に塗り始めた。

 

(絶対転んであんな傷にはならないだろ・・・。)

 

ユニ達全員が心の中でそう思った。その間に少女はテルヒの傷口に優しく包帯を巻き終えていた。そして言う。

 

「よし、これで大丈夫ドラ。傷口にばいきんが入ってないみたいだったからとりあえず一安心ドラ。これからは気をつけるドラよ?」

 

「いつも悪いな。あ、そうだそうだ。お前に会わせたい奴がいるんだ、私の後ろを見てくれ。」

 

そう言うとテルヒは部屋の中に入り、部屋の前に立つユニ達の姿を見せた。それに続いてユニ達も部屋の中に入る。

 

「あ、どうもこんにちは〜。」

 

そう軽く挨拶するユニ。そんな彼女とは別に少女は目を輝かせていた。

 

「ほ、ほぉ・・・。こいつが、あの凶神の、城にいる、子かぁ・・。」

 

「・・・影裏?」

 

そう言う影裏の様子に九十九は何か異変を感じた。彼の顔はどこか嬉しそうな表情をしており、鼻息も荒くなっていた。と、少女がユニ達の元へ走って来た。

 

「さぁ、おいで!」

 

先頭にいたユニと悠岐を跳ね除けて影裏は走ってくる少女に手を差し伸べた。が少女は彼をスルーして後ろにいた百々に向かって、

 

「ドラ!!」

 

そう言って彼に飛びついた。

 

「うおっ!?」

 

「ノォォォォォォ!」

 

スルーされたショックで影裏は地面に膝をついた。そんな彼とは別に少女が百々にくっつきながら言った。

 

「久しぶりドラ百々!さぁ、私と遊ぶドラ。」

 

「え、ちょ、ちょっと待てパンドラ。俺達は今日は用事があって来たんだよ。」

 

「え、パンドラ?」

 

彼が少女の名前を言った瞬間、悠岐と楓が呆然となりながら言う。そんな二人にテルヒが少女パンドラを見ながら言う。

 

「あぁ、そういやお前達は知らないんだったな。コイツの名はパンドラ、エリュの娘だ。」

 

「そうなのか・・・ってちょっと待てテルヒ。お前今なんて言った?」

 

「ん?エリュの娘だって言ったが?」

 

「えええええええ!?」

 

九十九の言葉に再び言ったテルヒの一言を聞いてユニ達は驚きを隠さずに大きな声を上げた。そんな一同に百々が口を開いた。

 

「うん、まぁ色々事情があって娘になったんだ。」

 

「そうドラよ、お母さんは強くて優しいお母さんドラ!たまに厳しいこと言うけれど・・・。」

 

「エリュは家族が1番と言うからな。」

 

「そ、そうなのか・・・。」

 

3人が話しているのを見てユニ達は唖然となる。そんな中、暁が影裏に言った。

 

「そういえば影裏、どうしてパンドラを見て鼻息が荒くなってしまったんですか?」

 

「え?そ、そんな訳ないだろ!!俺がそんな風になるわけ・・・。」

 

「表情もどこか嬉しそうになってたな。もしかしてお前、ロリコンなのか・・・?」

 

「な、な、な、んな訳ねぇだろ!!」

 

暁、楓に問い詰められる影裏はどこか焦っていた。そんな彼を見てパンドラは百々から降りてテルヒの後ろに隠れ、小刻みに震え始めた。それを見たテルヒが口を開いた。

 

「お前、パンドラを狙っていたのか?そうとあれば私は容赦せぬぞ?」

 

「だからちげぇって言ってんだろ!!」

 

慌てて言う影裏とは別に霊夢は本棚を眺めながら言う。

 

「それにしてもすごい数の本ね。これらには何が書かれていたりするの?」

 

「それドラか?それらには無くなっちゃった世界のことについて書かれてるドラよ。」

 

霊夢の質問に答えるパンドラ。その瞬間、九十九が本棚に近寄り、パンドラに言う。

 

「な、なぁパンドラ。これ一冊読んでもいいか?」

 

「いいドラよ?どうかしたドラか?」

 

「い、いや。ちょっと気になることがあってな・・・。」

 

そう言うと九十九は『幻の終焉』と『(うつつ)の終末』という題名の本2冊を取り出し、本を開いた。それを見たユニ達は後ろから本の中身を見る。そこに書かれていたのは里のような場所が多くの巨大な生物によって燃やされたり、人や妖怪が食い殺されていてる描写だった。中には拳銃と剣を持つ一人の女性に勇敢に挑む3人の少女の姿も描かれている。それを見た魔理沙が口を開く。

 

「これって・・・私と霊夢とアリス?」

 

「どういうことなの?どうして私と魔理沙とアリスが?」

 

「・・・これは、私のいた幻想郷の出来事だ。」

 

「九十九のいた幻想郷?」

 

九十九の一言に悠岐、楓、暁、影裏が声を発する。そんな4人とは別に九十九はページを一枚めくる。そこに描かれていたのは館や山、多くの神社や寺が燃えてしまっている描写だった。そしてそこに書かれていた言葉は、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『生存者は誰一人としていない。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉を見た瞬間、九十九は歯をギリッと噛み締めた。対する霊夢と魔理沙は驚きの表情を浮かべていた。そんな中、暁が絵を見て言う。

 

「これは紅魔館でこれは妖怪の山。そしてこれは命蓮寺でこれは博麗神社・・・。」

 

「エリュシオンは九十九の育ちの世界、つまり裏の世界の幻想郷を滅ぼしたってことか・・・。」

 

楓の一言を気にせずに九十九はもう一冊の本を取り出して開いた。そこには遊園地のような場所に6人の男女が青い巨大な腕を持つ巨人や紫色の化け物、巨大な生物や狼と戦っている姿が描かれていた。それを見た影裏が口を開く。

 

「これは、裏の世界の現世?」

 

彼の言葉をスルーして九十九はまたページをめくる。そこには体の一部が欠けて倒れている男女達が描かれており、その近くに銀髪の女性が描かれている。そしてその隣に『生存者は2人』と書かれている。それを見たユニが口を開いた。

 

「生存者の1人は九十九ちゃん、もう1人は誰だろう?」

 

「私の他に1人生き残ったのか・・・。一体誰なんだ?」

 

「この絵はエリュシオンと幻獣達、そして闘神達によって滅ぼされた現世か・・・。」

 

悠岐がそう言った瞬間、百々が部屋の隅を見つめ始める。そして口を開いた。

 

「そういやこの部屋にあの箱あったっけ?」

 

そう言うと百々は部屋の隅に置いてある11個の箱に近寄る。その瞬間、パンドラが百々の前に立ち、言う。

 

「ダメドラ!!この箱を開けちゃダメ!!」

 

「・・・え?」

 

パンドラが慌てたように言い、百々は唖然となる。そんな中、魔理沙がパンドラに言う。

 

「どうして開けちゃダメなんだ?」

 

「お母さんはこの箱を開けると世界に絶望が降り注ぐって言ってたドラ。そんなこと絶対にさせない!みんなを不幸にしたくないドラ!」

 

それを聞いた瞬間、百々は箱から離れた。と、しばらく黙っていたテルヒが唐突に口を開いた。

 

「おっと、パンドラを見ていたらすっかり忘れていた。百々、お前達の目的はこの城の1番上だろう?」

 

テルヒの言葉を聞いた瞬間、ユニ達はピクリと体を反応させる。そんなユニ達とは別にパンドラがテルヒに言った。

 

「1番上って、お母さんのこと?」

 

「そうだぞパンドラ。今日百々達がここへ来たのはエリュに会うためだ。エリュに用事があるみたいでな。」

 

「そうだったんドラね。なら遊ぶのはまた今度ドラね。」

 

そう言うとパンドラは部屋の真ん中にポツンとあるスイッチを押した。その瞬間、本棚がガタガタと動き始めたかと思うと壁に埋まっていき、本棚がなくなった場所に扉のようなものが現れた。

 

「すごい仕掛けだな・・・。」

 

そう呟く魔理沙と影裏。そんな2人を気にせずパンドラは壁にあるスイッチを押した。その瞬間、扉がゆっくりと左右にスライドした。そして口を開く。

 

「この隠しエレベーターでお母さんの部屋の前まですぐに行けるドラ。みんなこれに乗って行くドラ!」

 

「・・・いいの?アンタこんなことして・・・。」

 

「勿論ドラ。なんせみんなはお母さんのお客さんだからドラ!」

 

問う霊夢にパンドラは元気よく言った。と、テルヒがエレベーターに入り、言う。

 

「さぁ、来るのだ。パンドラ、お前はここで待っていなさい、私はすぐに戻る。」

 

「うん、分かったドラ。百々、用事が済んだら私と遊ぶドラよ?」

 

「あぁ、分かってるさ。」

 

そう言うと百々はテルヒに続いてエレベーターに乗る。彼に続いてユニ達もエレベーターに乗る。全員が乗ったのを確認したパンドラはスイッチを再び押した。そして言う。

 

「みんな、頑張るドラよ。」

 

そう言った瞬間、エレベーターの扉がゆっくりと閉まった。扉が閉まったエレベーターの中で楓が口を開く。

 

「いい子だったな、パンドラ。」

 

「あぁ、どこかの闘神とは大違いだ。」

 

彼女の言葉を聞き、言葉を発する魔理沙。と、テルヒが口を開く。

 

「パンドラはいい子だ。私も闘神達も、エリュも気に入っている。敵であるはずのお前達のことも思うことができるからな。」

 

軽く話している内にエレベーターはピンポーンと音を立てて止まった。

 

「案外速く着くもんだな。」

 

そう悠岐が言うとエレベーターはゆっくりと開く。開いた場所に広がっていたのは薄暗い空間に巨大で様々な絵が彫られている扉があった。それを見たユニが口を開く。

 

「いよいよね。」

 

「ここに奴がいるのね・・・。」

 

「よく分からないけど、少し緊張してきたぜ。」

 

「最初から覚悟はできてるさ。」

 

「必ず倒す。」

 

「世話になったんだ、やらなきゃいけないんだ。」

 

「私も同じさ。」

 

「僕も早くこの呪いを解いてもらわないとね。」

 

「油断は出来ませんね。」

 

「世界の除け者は排除しねぇとな。」

 

ユニに続いて霊夢、魔理沙、悠岐、楓、百々、九十九、琥珀、暁、影裏が一言発する。そんな彼らにテルヒが言う。

 

「私が同行するのはここまでだ、後はお前達で行くんだ。お前達だけでエリュを倒せるとは思わないが・・・だが抗い続けるのだ。諦めは敗北の証、抗いは勝利への一歩。お前達の戦いに希望あることを願っている。」

 

そう言うとテルヒは壁にあるスイッチを押した。その瞬間、ゴゴゴという音と共に巨大な扉がゆっくりと開き始めた。それを見た百々はテルヒに言う。

 

「待ってろよ、必ず首輪をつけてやるからな!」

 

そう言うと彼は扉の奥へ走っていった。彼に続いてユニ達も部屋の奥へと入っていく。ユニ達が入っていった瞬間、ゴゴゴと再び音を立てて扉がゆっくりと閉まった。それを見届けたテルヒは背を向けて一言発した。

 

「・・・生きて帰ってくるのだぞ。」




パンドラとの再会を話した百々。そしていよいよユニ達はエリュシオンのいる部屋へ!!
そこで待ち構えているものとは!?
次作もお楽しみに!

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