東方混沌記   作:ヤマタケる

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蓬莱の力を借りて九十九はアクアドラゴンを召喚し、水溜りの奥へと進んでいく。


第162話 水中の幻獣

水溜りの中に入るとそこは多少の光しか当たらない、薄暗い空間だった。アクアドラゴン達はその少しの光を頼りに奥へと進んでいく。と、悠岐が突然辺りを見回し始めた。

 

「どうしまして?悠岐さん。」

 

そんな彼の様子を見て九十九が声を掛ける。声をかけられた悠岐は辺りを指差す。それを見た九十九は皆に聞こえるように言葉を発した。

 

「皆さん!周りに何かがいます!警戒を!!」

 

彼女の言葉を聞いたユニ達は慎重に辺りをは見回し始めた。その時だった。突如アクアドラゴンが奇妙な動きをし始めた。まるで何かに襲われてもがいているような動きになった。

 

「これは一体・・・。浦島!周辺の様子を探ってください!」

 

スマホから飛び出した少年と亀が九十九の指示に従い、アクアドラゴンの元へと向かっていった。少年と亀がアクアドラゴンを見た瞬間、目を見開いた。そこにはアクアドラゴンの体に噛みつく無数の巨大な魚の姿があった。

 

「がぽ!がぽぽぽ!がっぽ!」

 

アクアドラゴンが暴れてしまったせいで百々はアクアドラゴンの体から離れてしまう。

 

「百々!こんなにたくさんのピラニアが・・・これは全て幻獣?はっ、浦島、お願いします!」

 

彼女の指示を聞いた少年は離脱してしまった百々を抱えて九十九の元へと泳ぎ寄る。

 

(うーん、これはマズイかな。やれやれ。「私は水中の中でも地上のように動ける。」)

 

能力を使用し、暁は一人歩きながら巨大魚の元へ向かった。暁が歩いてくるのを見た瞬間、巨大な魚はアクアドラゴンからすぐに離れていき、どこかへ泳いでいった。

 

「アクアドラゴンから離れた?どういうことなのでしょう?」

 

「うーん、何もしてないんですけれどね。」

 

と、辺りを見渡していた霊夢がある方向を指差す。そこには百々と九十九が見たであろう、光が差し込む場所があった。それを見た九十九が口を開く。

 

「光を見つけました。突入します!」

 

九十九がそう言った瞬間、ユニ達の目の前に先程の巨大なピラニアよりも巨大な影が通った。

 

「大きい!!」

 

そう言うと暁は下を見る。その瞬間、彼は目を見開く。そこには先程の巨大ピラニアに加えて巨大なワニのような影が数十体泳いでいた。

 

「ア、アクアドラゴン!全速力でここを抜けますよ!!」

 

九十九の言葉を聞いて光のある場所へと急ぐアクアドラゴン。しかし、巨大な存在達が黙っているわけにはいかない。巨大なワニがアクアドラゴンの尾に噛みつき、水中の更に深い場所に引き摺り込もうとしていた。

 

「処理班頑張りますよ。来い、『雷切』。」

 

過去にも使用した神威の刀『雷切』をまた嘘によって創り出す暁。しかし幻獣達は暁を無視しながらアクアドラゴン達に群がっていく。

 

「嘘つきを舐めないでください。『超強次元斬』!!」

 

彼の放った超強次元斬をくらってアクアドラゴンに噛みついていたのと群がっていた幻獣達の目が一斉に暁の方へ向いた。その瞬間に暁が九十九に言う。

 

「九十九さん行ってください!!」

 

「アクアドラゴン!ここを抜けてください!最大速度!!」

 

アクアドラゴン達はヨロヨロになりながらも九十九の指示を聞いて全速力で光の場所へと向かった。

 

(暁、必ず戻ってくるのよ・・・。)

 

そう願い、霊夢は光のある方向を見る。幻獣達に囲まれた暁は落ち着いて口を開く。

 

「さぁかかってきなさい、ワニもどきとピラニアもどき。」

 

ワニに続いてピラニア達も暁を睨みつける。その数は30匹は軽く越している。そんな状況の中、暁は冷静になって言う。

 

「・・・あの光の場所に結界術を使いました。言葉が理解できるとは思いませんが、私を倒さない限りこの結界は開きませんよ。」

 

彼の言葉を理解していないのか、幻獣達が一斉に暁に襲いかかる。まさにその時だった。突如辺りに何かの雄叫びが響いた。それを聞いた幻獣達は下を見始めた、そのまま逃げるかのように何処かへ泳ぎ去ってしまった。

 

「・・・何の声でしょうか。」

 

幻獣達が泳ぎ去った後、暁の背後に突如巨大な影が通った。その影は先程のワニを超える、見たことのない影だった。

 

「さ、三十六計逃げるに如かず!」

 

暁は急いで結界を解除し、急いで光の元へ走り出した。

 

「マテ。」

 

まるで暁に話しかけるかのように辺りにその声が響いた。

 

「誰だか知りませんけど、今私は巨大な影から逃げてる最中でして!」

 

「チガウ。」

 

よく聞くとその声は巨大な影から発せられていたのに暁は気がついた。

 

「・・・その影でしたか。何の御用で?」

 

「・・・ツイテコイ。」

 

そう言うと巨大は影はアクアドラゴン達が向かっていった光の場所へと暁を案内するかのように泳ぎ始めた。その影に暁が口を開く。

 

「まぁ、向かいますよ。私もそこを目指していましたし。」

 

「・・・。」

 

暁の言葉に何も言わずに影は光のある場所へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、水から上がったユニ達は何かの部屋の入り口付近のところで息を整えていた。

 

「はぁ、酷い目に遭ったぜ・・・。」

 

「( ˘ω˘ )」

 

魔理沙が感想(?)を述べている中、百々は一人目を閉じていた。それを見た悠岐は呆れながら言う。

 

「ったく、こんな時に百々は呑気な奴だな。」

 

「・・・あれ、息してない?」

 

「え?」

 

「死んだ?」

 

琥珀の言葉を聞いて楓と影裏が反応する。そんな二人に琥珀は百々の腹に手を当てながら言う。

 

「ほら、腹部が上下してない。」

 

「百々は死んだの?」

 

少し慌てながら話す霊夢に琥珀が冷静に言う。

 

「水が詰まってるだけかも。誰か彼のお腹に衝撃を。僕は腕の再生があるからね。」

 

「こんな時こその九十九じゃないのか?」

 

そう言って悠岐は九十九を見る。彼の言葉を聞いた九十九は自分の体を見ながら言う。

 

「蓬莱となっている今はいつもより火力が低くて・・・。」

 

「なら仕方ねぇ、俺がやるか。」

 

そう言うと悠岐は百々の前に立つ。そして右手に握り拳をは作ると、

 

「ファ○コン、パーンチ!!」

 

渾身の一撃を百々の腹にくらわした。

 

「げふぅぅぅ!!!」

 

悠岐の渾身の一撃を食らった百々は体の中に詰まっていた体力の水を噴水のように吐き出す。

 

「・・・あれ、死んだはずの父さんは?」

 

突如訳の分からないことを言い出す百々に影裏が言う。

 

「父さん?何言ってやがんだお前は。目を覚ませよ、今はエリュシオンの城の中にいるんだろ?」

 

「そーだった。変な川の向こう側に父さんがいてよ。手を振ってたんだ。あれは三途の川だったんだな。」

 

「・・・それは夢か?」

 

「多分な。んで、道はあったのか?」

 

「さっき抜けてきたのよ。今は暁を待っているの。」

 

「ふぅん。なら、一休みか。」

 

影裏、楓、百々、霊夢の3人が話している時だった。突如水溜りから暁が勢いよく飛び上がった。

 

「暁君!」

 

「お待たせしました。暁、帰還しました。」

 

「随分と派手な登場だな・・・。」

 

悠岐が言った瞬間、水の中から巨大な生き物が姿を現した。それはワニでもなくピラニアでもなかった。

 

「な、なんじゃありゃ!!」

 

「で、デカイ!!」

 

「飯にちょうどいいな。」

 

魔理沙、楓の反応とは全く違う反応をした百々を見て一同はずっこける。そんな中、巨大な生物は百々を見て言う。

 

「ホウ、スイブントナマイキナコトヲイエルヨウニナッタノダナ。」

 

「しかも喋った!?」

 

驚くユニとは別に百々は巨大な生物に言う。

 

「うるせーや。こっちとら臨死体験してきたんだ。そんくらいの冗談言わせろっての。」

 

「フフフ、ソレモマタオマエラシイ。」

 

二人が話している中、悠岐が百々に言う。

 

「百々、コイツは何なんだ?」

 

「ん、ああ自己紹介しろよ。仲間が混乱してっから。」

 

「そうだな。では話そう。俺の名前はオスカー。見ての通り、幻獣だ。」

 

「コイツ、普通に話せるのかよ・・・。」

 

「え、お前普通に話せたの・・・?」

 

オスカーという巨大な生物が普通に話しているのを見て驚きを隠せない百々と影裏。そんな二人とは別にオスカーは話を続ける。

 

「我が主のおかげでな。ワニやピラニア達がすまなかったな。アイツらはお前達を侵入者と認識していてな、そこを俺が客と誤魔化しておいた。」

 

オスカーはどうやらユニ達に手を貸すつもりらしい。それを聞いた九十九がオスカーに言う。

 

「い、いいの?エリュシオンにばれたらあなたが・・・。」

 

「我が主は今堕落した天使と交戦している。気づくのはおそらくお前達がテルヒと戦っている時であろう。」

 

「ルシファーですか?」

 

「ルシファーが!?」

 

オスカーに問いかける暁と驚きの声を上げる楓。そんな二人とは別にオスカーは話を続ける。

 

「そうだ。ルシファーに勝ち目はないと思うがな。」

 

「ルシファーってやつに勝ち目がなかろうが関係ねぇ。アイツは一人だ。たった一人じゃ勝てる戦いなんてないことを教えてやるよ。」

 

「・・・頑張るといいさ。しかし、よくここまで来れたものだな。」

 

「当たり前よ!私達は強いんだから!」

 

オスカーの言葉に反応するユニ。そんな彼女にオスカーは話を続ける。

 

「これまで多くの人間達がこの城へ潜り込み、我が主を討とうとしていた。だが、主の元へ辿り着いた者は誰一人いなかった。皆この俺の部屋で命を落としていった。初めてだ、ここを抜ける者が現れるのは。」

 

「つまりそれは俺達が今までこの城に乗り込んできた奴の中で1番すごいってことだよな?」

 

「勿論だ百々。さ、俺のことは後にして先に行くといい。テルヒがお前達を待っているぞ。」

 

その言葉を聞いた瞬間、九十九はすぐに先へ進み始めた。そんな彼女を止めるかのようにオスカーは再び口を開く。

 

「まぁ少し待て、爆絶なる者よ。」

 

「・・・それをどこで聞いたの?」

 

いつの間にか元の九十九に戻った彼女がそう言う。九十九の問いにオスカーはすぐに答える。

 

「我が主からお前達のことはある程度聞いている。一応警告しておくぞ、この先に長い螺旋階段が続いている。その階段の途中に扉があるのだがその扉には決して触れるな。扉の中には異様な生物が入れられているらしいからな。そして階段は1番上まで登り、すぐにある扉に入るんだ。そこにテルヒの部屋がある。」

 

「助言ありがとう、オスカーさん。」

 

オスカーの助言を聞いたユニは隣の部屋の入り口へと体を向ける。彼女に続いて霊夢達も部屋の入り口に体を向ける。と、悠岐がオスカーに言う。

 

「ところでオスカー、お前は他の幻獣とは全く異なる生物みたいだが・・・お前は一体何の種族の生物なんだ?」

 

「・・・俺はモササウルスという恐竜だ。」

 

「恐竜!?」

 

オスカーの言葉に魔理沙と霊夢が声を上げる。そんな彼女達とは別に楓がオスカーに言う。

 

「そんな昔からいたんだな・・・。」

 

「まぁな。さ、行け。」

 

その言葉を聞いてユニ達は隣の部屋へと走っていった。それを見届けたオスカーは水の中に潜っていった。




水中の幻獣達をオスカーの助けによって抜けることに成功したユニ達は先の部屋へと向かう。そこで待ち受けるのは果たして!?
次作もお楽しみに!

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