東方混沌記   作:ヤマタケる

165 / 183
巨大な存在を倒すことに成功した3人は元の部屋へと戻り、ユニ達と合流する。


第160話 家畜

「すごい仕掛けね。」

 

「恐らく一種の結界だと思います。しかしこんな規模の結界を作り上げるとは・・・。」

 

ユニの言葉に暁が言葉を投げつける。そんな中、他の人達がそれぞれの部屋であったことを話し始めた。

 

「私とユニと悠岐は大仏みたいなもの、名前は忘れたがそいつと戦った。そいつは悠岐が倒してくれた。けど、不思議なことに部屋もその大仏も全部白かった。」

 

「奇遇だな、俺達が倒した奴も周りの風景も全て真っ白だった。」

 

「俺達も同じだな。変な四角い建物も化け物も、全部真っ白だった。」

 

「私と暁も同じよ。神殿みたいなところもドラゴンみたいなのも全部白かったわ。」

 

楓、影裏、百々、霊夢が話している中、琥珀が影裏に言う。

 

「そういや君が言ってたさっきのやつの名前、言ってなかったね。」

 

「ん?あぁ、そういや言ってなかったな。アイツはなんて言うんだ?」

 

「ワルプルギスの夜。彼女はそう呼ばれている。」

 

「ワルプルギスの夜か、確かに聞いたことがある名前だったな。ようやく思い出したよ。けど、アイツのことはあまり深く考えないほうが良さそうだ。」

 

「ワルプルギスの夜って言うのか?アイツは。あれは結構悍ましく、恐ろしかったぜ。」

 

「魔法少女の成れの果て、さ。魔理沙、君もああなりたくなければ気をつけることだね。」

 

「き、気をつけるぜ・・・。」

 

3人が話している中、霊夢が暁を見て言う。

 

「そういえば暁、私達が戦ったあのドラゴンはなんでいうの?」

 

「あれはゼローグって言います。奴を打ち倒すのは私たちではなく、同じドラゴン。私は彼らの力を借りたにすぎませんよ姉さん。」

 

「そう・・・。」

 

と、霊夢と暁が話しているのとは別にユニが百々と九十九に問いかける。

 

「ところで、百々君と九十九ちゃんは何と戦ったの?」

 

「なんか、白くて四角い奴としかいえねぇ。」

 

「四角い奴?ガストのことか?」

 

百々の言葉に悠岐が推理する。そんな彼に九十九が口を開く。

 

「ガストは前に見たことがあるけれど・・・それとは少し違ったかな。他のガストより大きかったし足の数も多かったし。」

 

「それじゃあウルガストか。」

 

九十九の言葉を聞いてすぐに楓が推測した。彼女の推測に魔理沙が言う。

 

「ウルガストってネザーでカオスと戦ってた時にいたあのバカでかいやつのことか?」

 

「あぁ、そうだ。」

 

「あぁ、あれがウルガストか。変な奇声ばかりあげるやつだった。」

 

二人の言葉に百々が口を開く。そんな中、悠岐は一人壊れた木の扉の先を見つめる。それを見た霊夢が彼に言う。

 

「どうしたの悠岐?そんなに真剣に見つめて。」

 

「なんかあの奥から異様な雰囲気を感じてな・・・。幻獣と言うより別の何かを感じる。」

 

「どっちにしろ、気をつけるに越した事はないですね。」

 

彼の言葉に暁が口を開いた。その後にユニ、魔理沙、楓、百々、九十九、琥珀、影裏も立ち上がり、奥の空間を見つめる。と、百々が口を開いた。

 

「さぁ、行こうぜ。」

 

「あぁ。」

 

「えぇ。」

 

「・・・。」

 

百々の後に続いてユニ達は壊れた木の扉の奥へと足を運んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奥に進むとそこは先程のマグマの部屋とは全く異なり、静かさが漂う空間となっていた。その中でユニ達は恐る恐る辺りを見回しながら進んでいく。と、ユニが唐突に口を開いた。

 

「ここの空間、一体なんの意味があるんだろう?幻獣が入るにしては狭すぎるし、寝たりするのにも広すぎるし・・・。」

 

「それは僕も思ってたよ。あの年層ババァが何のためにこの空間を作ったのかってね。」

 

「周りに何もないからなぁ。本当にここは何のためにあるんだぜ?」

 

ユニに続いて琥珀、魔理沙も口を開く。と、先頭を歩っていた百々が何かを見つけて足を止める。

 

「?どうした百々。」

 

彼に声をかける悠岐。そんな彼に百々は無言である方向を指差す。そこにはポツンと少し錆びている緑色の扉があった。それを見た悠岐が口を開く。

 

「・・・なんだこれ?手入れしてなさそうな扉だな。」

 

「でも周りにはここ以外行ける場所がありません。」

 

「ならここに行くしかないのか。」

 

悠岐、暁、楓の3人が言う中、ユニが扉を開けて中に入った。

 

「なっ、おい待てよユニ!」

 

慌てる九十九に続いて霊夢達も扉の中に入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オイ何してんだ!!早くここから出せ!!」

 

「私達をここから出しなさいよこのガキども!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中に入った途端に部屋中に男と女の怒声が響く。部屋の中は真ん中の通路を挟み、右側に上半身裸の男達が牢屋に閉じ込められており、反対側の左側には水着を着ている女達が同様に牢屋に閉じ込められていた。その光景を見た霊夢が唖然としながら言う。

 

「な、何よここ・・・。」

 

「牢屋、なのか・・・。にしてもすごい数の人が捕まってるな。」

 

霊夢の言葉に影裏が口を開く。と、その時だった。突如男の牢屋から長い物が伸びてきたかと思うとそれはユニの首襟に引っかかった。

 

「うっ!」

 

「ユニちゃん!?」

 

咄嗟に気づいた琥珀が引っ張られたユニの方を見る。そこには4人の男達に牢屋越しに四肢を掴まれ、身動きが取れなくなるユニの姿があった。男の一人がユニの顔に顔を近づけ、言う。

 

「なぁ、嬢ちゃん。俺達をここから出してくれやしないか?でないと痛い目に会うぜ?」

 

そう言った瞬間、男はユニの首元を舐める。首元を舐められたユニはビクッと体を震えさせる。その瞬間、悠岐、暁、百々、影裏がそれぞれユニの四肢を掴む手に蹴りを入れる。

 

「いってぇ!!」

 

蹴りを食らった男達は手を押さえて後退する。その瞬間にユニに声をかけた男に琥珀が文字を浮かべる。

 

「こんなところでは使いたくないんだけれどね、文字よ。」

 

そう言った瞬間、『眩』の文字を浮かべた彼はそのまま文字を男の目に放った。目に放たれた文字は男の前で眩い光を発した。

 

「うおっ、眩しい!!」

 

思わず目を押さえてうずくまる男。その間にユニは咄嗟に牢屋から離れ、九十九に飛びついた。

 

「っと、大丈夫かユニ!」

 

ユニを優しく抱きしめて九十九が声をかける。

 

「うっ、ひっぐ・・・九十九ちゃん。怖かったぉ・・・。」

 

そう言うユニはガタガタと体を震わせ、涙も流してひどく怯えていた。そんな彼女を見て九十九は再び優しく抱きしめる。そんな中、悠岐が男達の牢屋に刀の先を向けて言う。

 

「オイ、お前ら俺達の仲間に何手を出そうとしてやがる。もう一度そんなことしてみろ?今度はお前らの四肢を斬り落としてやるからな。」

 

そう言う彼の目は赤く染まっており、男達に恐怖を覚えさせた。

 

「あの〜、すいません。」

 

その声が聞こえ、悠岐達はその方向を見る。そこは左側の牢屋で先程騒いでいた女達とは異なり、とても静かな牢屋だった。その声を聞いた悠岐達はそこへ向かう。そこにはまるで全て終わったかのように落ち込む女性と少し緊張しているのか、おずっとしている少女達の姿があった。と、1人の少女がユニ達の前まで近づき、頭を下げてから口を開いた。

 

「ごめんなさい、あの連中はいつもそうなんです。誰か知らない方々がくるとああやって脅してくるんです。話を聞かない者には酷いことをするんです。」

 

「ということはさっき騒いでたあの女達もか?」

 

彼女の言葉に魔理沙が口を開く。魔理沙の問いに少女はすぐに答える。

 

「えぇ、同じです。みんな欲求不満なんです。結局自分が死ぬことに変わらないのに・・・。」

 

「・・・どういうことか、説明してもらってもいいかな?」

 

彼女の言葉に琥珀が口を開く。少女は一呼吸置いてから口を開いた。

 

「ここに捕まってる人達は元々帝都に住んでいた住民や兵士の方々だったんです。けれど突如強大な霊力を持ったあの存在がこの城を乗っ取ったことにより、帝都が崩壊してしまいました。多くの住人や兵士の方々が彼女に挑みました。けれども、勇ましく戦った人達は二度と戻ってくる事はありませんでした。そして私達は彼女に降伏してしまい、今に至るんです。」

 

「そんなことがあったのか・・・。にしてもどうしてお前達はここに捕らえられているんだ?」

 

「あれを見れば分かります。」

 

楓の問いかけに少女は天井付近を指差して言った。彼女が指差す方向をユニ達も見る。そこには赤い文字で『養人場』と書かれていた。それを見た影裏が目を見開きながら言った。

 

「な、養人場(ようじんじょう)だって・・・?」

 

「じ、じゃあつまりあなた方は・・・。」

 

暁の問いに少女は落ち着いて口を開いた。

 

「私達は、エリュシオンにとって家畜なんです。」

 

彼女の言葉を聞いた瞬間、ユニ達は目を見開く。そんな彼女達とは別に少女は話を続ける。

 

「ここへ捕らえられた人達は皆、ある程度大人になった瞬間に死ぬことが確定してるんです。先程怒声を上げてたあの方々が頃合いでしょう。」

 

「どういうことなんだ?」

 

百々の問いに少女は少し怯えながら口を開く。

 

「ある程度大人になった瞬間、エリュシオンのペットである幻獣達の餌にされるんです。」

 

「餌!?」

 

餌という言葉を聞いてユニ達は思わず声を上げる。そんな中、琥珀が先程の牢屋を見て言う。

 

「なるほど、それであんなに牢屋に閉じ込められているんだね。」

 

と、ある疑問を抱いたユニが少女に問いかけた。

 

「でも、あんなに一気に幻獣の餌にしたらいずれ底が尽きるんじゃないかしら?エリュシオンはそれを分かって・・・。」

 

「いいかいユニちゃん。彼女達はあの年層ババァの家畜なんだ。豚や牛で例えてみよう、家畜を増やすためには何をする?」

 

琥珀からの問いにユニは普通に答える。

 

「何をするってそりゃ家畜を増やすためには・・・!!!」

 

と、何かに気がついたユニは顔を青くして口を押さえた。そんな彼女に少女が言う。

 

「そうです、エリュシオンは私達餌を増やすために子作りをさせるんです。無理矢理妊娠させ、出産させる。しかも1人ではなく3人も子供を作らせるんです。私には姉がいましたが先日3人目を産んでしまい、幻獣達の餌となりました・・・。」

 

そう言う少女の目からは涙が溢れ始める。それを見たユニ達も同情し、目を下に向ける。と、影裏が頭を押さえて口を開く。

 

「クソだな、クソほど胸糞悪い。俺みたいな復讐者(アベンジャー)でも分かるくらい胸糞悪い。エリュシオンの野郎、本当に許せない存在だな!!」

 

彼に続いて悠岐も口を開く。

 

「胸糞悪いのは当たり前だ。そんな胸糞悪いことを平気でやるエリュシオンを俺は許せない。絶対にぶっ殺してやる。」

 

「私も2人に同感だ。大切な人の命を何とも思わず、ゴミのような扱いをするあのババァは私も許さない。友の仇と一緒に倒す。」

 

影裏、悠岐、九十九が意思を話す中、ユニが少女の前まで行き、口を開いた。

 

「待ってて、私達が絶対にエリュシオンをやっつけてみんなを助けてあげる。約束するわ。」

 

「ほっ、本当ですか!?」

 

彼女の言葉を聞いた少女は目を見開いて口を開いた。彼女に続いて落ち込んでいた女性や他の少女達も目を輝かせてユニ達を見る。そんな彼女達にユニが再び言う。

 

「あの人達を助けることに抵抗があるし、無茶な戦いにはなると思う。けれど私達は諦めずにエリュシオンと戦う。そして自由を束縛されてるあなた達を必ず救って見せる。そうでしょみんな?」

 

そう言うとユニ達は笑みを浮かべて霊夢達を見る。霊夢達は皆同じ意見のようで頷いた。そんな彼女達に少女が口を開く。

 

「気をつけてください、エリュシオンはとんでもない存在です。非常に危険な戦いになるかもしれません・・・。けれど私達はあなた方を信じます!どうかご武運を!!」

 

そう言うと少女とその後ろにいる人達が頭を下げた。と、百々が少女に言った。

 

「そんじゃあエリュシオンは俺達に任せな。それと聞きたいことがあるんだか、ここからエリュシオンの所までどうやって行くんだ?」

 

「あっはい、私はエリュシオンのところは分からないですが、テルヒの場所なら分かります。」

 

『テルヒ』という言葉を聞いた瞬間、九十九の体がピクリと反応する。そんな彼女とら別に少女は話を続ける。

 

「まずあの扉に行ってください。その奥にオスカーの部屋があります。オスカーの部屋を抜けると巨大なホールのような空間があります。そこがこの城の中心となっている場所です。そこに着いたら長い階段を1番上まで登ってください。そこにテルヒのいる部屋があります。」

 

「おっしゃ、そうと決まれば行くぞ!」

 

そう言ったのは九十九だった。そんな彼女に少女が再び口を開いく。

 

「気をつけてください!オスカーの部屋に行って帰ってきた人は誰もいないです!もしかしたらあなた方もその帰らぬ人達と同じ運命を辿るかもしれません!!」

 

「大丈夫ですよ、私達はそれらを覚悟してここへきていますので。」

 

そう少女に暁が言った。暁に続いて霊夢が少女に言った。

 

「ありがとう、色々話してくれて。ここから先は私達に任せなさい。」

 

「はい、ありがとうございます!きっと、きっとみなさんなら越えられない存在を超えられる気がします!どうか、頑張って・・・。」

 

少女の言葉を聞いたユニ達は笑みを浮かべて頷いた。そしてユニ達は牢屋を後にしてオスカーの部屋と呼ばれる場所は向かった。




少女の話を聞いてますます打倒エリュシオンのことを頭をするユニ達。ユニ達の向かうオスカーの部屋で待ち受けるものとは!?
次作もお楽しみに!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。