ユニ、暁、影裏の治療を終え、一同は鋼鉄城を見る。鋼鉄城の入り口は数十メートルはあるであろう巨大な鋼鉄の門が聳え立っていた。これを見たユニが口を開いた。
「随分と大きな門ね。」
「恐らく幻獣やアカシャも通れるようにとこれくらいのサイズにしたんだろうな。」
彼女の言葉に続いて九十九がある程度の推測をする。そんな中、魔理沙が門を見ながら言う。
「なぁ、この門って開けられるのか?この人数でも開けるのは困難だと思うぜ。」
「何言ってんだよ魔理沙。こういうのは力尽くでこじ開けるんだよ!」
そう言うと百々は1人先に走って鋼鉄の門を押し始めた。
「一人でいけるわけないだろ!俺達も手伝うぞ!」
影裏の言葉に続いて霊夢、魔理沙、悠岐、楓、九十九、暁も続けて門を押す。しかし10人の中でも力のある8人が頑張って押してた門はピクリとも動く様子はなかった。
「ハァハァ、こりゃあ俺たちだけじゃ開けられるようなものじゃねぇぞ。」
息切れしながら言う悠岐とは別に楓は扉を軽くコンコンと叩き、口を開いた。
「殴ろうとしたり斬ろうとするものではないな、硬すぎる。」
「んじゃあ俺たちの力だけで押し上げるしかねぇのか。」
楓の言葉を聞いて影裏はそう言う。そして8人が再び門を押し開けようとした時だった。
「みんな見て!」
というユニの声が聞こえ、8人は一斉にその方向を見る。
「ここに人が通れるくらいの扉があるよ!」
琥珀の言葉を聞いた瞬間、8人はズッコけた。
「・・・私達が頑張って押し上げようとしたのにこんなところに普通の扉があるなんて聞いてないわよ!」
「見つけてしまったのであれば仕方ありません。怒りを抑えましょう、姉さん。」
「・・・えぇ、そうね。」
暁の言葉を聞いて仕方がなさそうに答える霊夢。そんな中、ユニは扉のドアレバーに手を掛け、レバーを下に下ろす。
「・・・開いてるわ。普通なら閉めてる筈なのに・・・。」
「まるで僕達がエ・・・彼女に迎え入れられてるような感じだね。」
「・・・よし、行くわよ!」
そう言うと彼女は扉を押し開ける。扉の奥に広がっていたのは真っ暗な空間だった。
「なんだこれ・・・。真っ暗じゃないか!」
「とりあえず中に入ってみるか。」
魔理沙の言葉に続いて百々が城内へズカズカ入っていく。彼に続いてユニ達も中へ入っていく。全員が中へ入った瞬間、一人でに扉が閉まった。
「扉が閉まった!?」
「・・・琥珀の言う通り、迎え入れられてるようだな。」
九十九と影裏が言った後に楓が口を開いた。
「しかし扉が閉まると本当に真っ暗だな。悠岐、明かりをつけられるか?」
「一応懐中電灯は持ってきてるからつけてみるか。」
「なんで持ってるんだよ・・・。」
百々の言葉を気にすることなく悠岐は懐中電灯の電気を付ける。そこに広がるのはただっ広い空間が広がっていた。
「ここは・・・ロビーか?」
「にしてはおかしいですね。こんな暗い場所を用意して何になるのですか?」
「さぁな。エリュシオンのことだ、変な趣味なんだろう。」
楓、暁、九十九が話している中、一人ユニがある方向を見て腰を抜かしていた。そんな彼女を見て百々が口を開く。
「ユニ、どうした・・・!?」
ユニの見ている方向を見た瞬間、百々は言葉を失った。彼を見て悠岐は二人が見る方向へ懐中電灯の光を照らす。そこには多くの棚があり、棚の上には無数の頭蓋骨が順序良く並べられていた。それを見た霊夢が目を見開きながら口を開いた。
「な、何よこれ・・・。頭蓋骨?」
驚く霊夢とは別に楓は頭蓋骨に近づき、凝視する。そんな彼女に影裏が声を掛ける。
「お、おい楓!なんかやばい気がする!戻ってこい!」
影裏の言葉に気にせず楓は頭蓋骨を見ながら言う。
「これらは全て本物の頭蓋骨だ。恐らくエリュシオンを倒そうと試みた兵士達の死体から取ったものなんだろう。何故ここに並べてあるのかは知らないが・・・。」
「ここをパッと見る限り数千はある。こんなに沢山の人が犠牲になってしまったのか・・・。」
楓の言葉に続いて魔理沙が口を開いた。と、琥珀が辺りを見回しながら口を開いた。
「しかし不思議だね。これだけの人が死んだというのに怨念が感じられない。」
「怨念?」
「ここで亡くなった兵士達の彼女への怨念だよ。彼女か幻獣、あるいは闘神に殺されたんだ、怨念が残ってここで霊が出てもおかしくないのに全く気配を感じない。」
問いかける百々にすぐに答える琥珀。彼の言葉を聞いて楓が辺りを見回し、口を開く。
「確かに気配が感じられない。成仏したとは思えない。」
と、悠岐がある方向を照らして言う。
「おい、あれ見ろよ!扉があるぞ。」
そう言う彼が照らす場所には一つの鉄の扉があった。それを見て影裏はズカズカと近づきながら言う。
「この奥に奴がいるかもしれない。みんな心して行くぞ。」
そう言うと彼はドアノブに手を取った。その瞬間、ジューっという音と共に影裏の手が赤くなった。
「あっちィィィィィィ!!」
そのまま彼は手を押さえたまま辺りをゴロゴロ転がり始めた。それを見たユニが溜め息をついて言う。
「全く、何やってんのよ影裏君。しょうがないわね。」
そう言ってユニがドアノブを触ろうとした瞬間、楓が咄嗟に彼女の手首を掴んでドアノブに触るのを阻止した。
「ど、どうしたの楓ちゃん!」
ユニが言うと楓は黙って首を横に振った。そして悠岐を見て言う。
「悠岐、ここは任せる。」
「あぁ、任せな。」
そう言うと彼はドアノブを掴んだ。その瞬間、彼は少し驚いたような表情を浮かべ、口を開いた。
「こりゃ熱いな。まるで内側から熱されてるような感じだ。」
そう言いながら彼はゆっくりとドアノブをひねり、扉を開けた。扉の向こうに広がっていたのはだだっ広い空間で正面には4つの絵が描かれた木の大扉があり、右側、左側それぞれに2つの吊り橋があり、その先にそれぞれ形の異なる扉があった。そして下には灼熱のマグマが音を立てていた。
「な、なんだこれ・・・。」
「城の中にマグマ!?」
辺りの情景を見て驚きの声を上げる百々と魔理沙。二人に続いて楓も辺りを見回しながら言う。
「これは予想外だな。まさか城の中にマグマを入れてくるなんてな。」
「あのマグマの影響であのドアノブが熱されていたのね。」
彼女に続いて霊夢も言う。そんな中、琥珀が正面の扉を指差し、空いている手で自分の額から流れる汗を拭って言う。
「多分行先はあそこだろうね。ここの空間は暑苦しいから早く先へ進もう。」
「そうですね。いつまでもここにいると脱水症状を起こしてしまいます。」
暁が言うとユニ達は木の大扉の前まで歩いて行った。そして目の前に着くと悠岐が絵を見ながら言う。
「なんじゃこの絵は。銅像みたいなものにドラゴンにタコみたいなもの、そして女の人が逆さまになったような感じだが、何を意味してるんだ?」
「全く分からないな。」
悠岐に続いて九十九も言う。そんな中、ユニは必死に大扉を押して開けようとするがピクリとも動かない。
「んもう、何よこれ!全く動かないじゃない。見た感じ、さっきみたいに小さな扉とかはないみたい。」
彼女が言う中、大扉を殴る百々と刀で扉を斬ろうとする影裏。しかし二人が何をしても大扉は傷一つつかない。
「どうなってんだよ・・・。斬れないし壊れもしないぞ。」
「こりゃいくらやっても無駄だな。」
影裏と百々が話している中、暁が扉を凝視しながら口を開いた。
「これは一種の結界でしょうかね?」
「結界?どう言うことなの?」
「ある特定の条件を満たさなければこの扉が開くことは無さそうです姉さん。となるとその条件を満たすためには・・・。」
そう言うと彼は左右の4つの扉を見た。暁に続いてユニ達も扉を見る。と、何かを察した琥珀が口を開く。
「なるほど、あの扉達の先にこの結界を解除するための仕掛けがあるって訳ね。」
「可能性としてはそれが1番だと思います。ここはみんなで手分けして扉の先に向かいましょう。」
暁が言った瞬間、ユニ達はコクリと頷いた。
「俺はユニ、楓と行動する。」
「任せた。私は影裏と琥珀と行くぜ。」
「分かったわ。それじゃあ私は暁と共に行動するわ。」
「んじゃ俺は九十九と行動する。みんな、気を付けろよ!」
「おう!」
そう言うと一同はそれぞれの扉へ走っていき、扉の奥へと進んでいった。
手分けして大扉の結界を解除する仕掛けを解除しに行くユニ達。そこへ待ち受けるものは果たして・・・。
次作もお楽しみに!