迷いの竹林では急遽駆けつけた悠岐の手によって慧音はピンチを免れた。
「オイ小僧、この俺の顔に傷をつけたな!」
木々をどかしながらギラヒムが悠岐と慧音の方へやって来た。それを見た慧音は目を大きく見開いた。彼女に対して悠岐は眉を潜めた。そんな中、ギラヒムが悠岐に言う。
「テメェみたいな小僧は俺が成敗してくれる!俺のこの顔を傷つけたテメェを今ここでぶっ殺してやる、覚悟しろ、小僧!」
「その言葉、そのまま返すぜ、ギラヒム!!」
「何っ!?」
「俺は今ちょうどテメェを倒したくてウズウズしていた。そしてテメェがいた瞬間、俺は好機だと感じ、テメェを奇襲しにきた。」
「俺がテメェのような小僧に何をしたと言うのだ?俺には覚えがないな。」
「あるだろ?テメェ、アリスをあんなに傷つけやがって、絶対許さねぇからな!!」
そう言うと彼は漆黒の刃を構え、ギラヒムに向かって走り出した。それを見た慧音が彼に言う。
「無茶だ、悠岐!そいつは剣の構えを見ていれば攻撃を止められる!よせ悠岐!」
彼女の言葉通り、ギラヒムは右手を構え、受け止める体制に入った。そのまま悠岐はギラヒムに向かっていき、ギラヒムは受け止めようとした。
「なん・・・・だと・・・」
声を発したのはギラヒムの方だった。彼の右手に切り傷がつき、そこから少量だが鮮血が飛び散る。思わずギラヒムは後退してしまう。だが悠岐はそれを逃がす筈もなく、ギラヒムを蹴り飛ばした。そのまま彼は木に衝突し、吐血した。
「何故だ、何故この魔族長である俺が人間の小僧に負けなければならないのだ!」
そう言うと彼はゆっくりと立ち上がった。悠岐の強さに慧音はただ呆然と見ていることしか出来なかった。彼女は心の中でこう思っていた。
(・・・・怒ってる。悠岐の中から大量に出てくる憎悪。悠岐、お前はアリスのためにここまで果たすというのか。)
そんな中、ギラヒムが笑みを浮かべながら悠岐に言った。
「テメェみたいな小僧にはとっておきの処罰法で地獄に送ってやる。この俺が人間ごときに不覚なんてない!絶対にあり得ない!!」
そう言った瞬間、ギラヒムの回りにクリスタルの渦が漂い始め、地面が徐々に浮き始めた。悠岐はそれを黙って見ており、慧音は宙に浮かび、二人の戦いを見ることにした。そんな中、クリスタルの渦から全身金属のような姿になったギラヒムが現れた。そして言う。
「お前には『無限奈落』を味合わせてやる!俺に端に追い詰められ、地獄へと落ちていく。そしてこの俺を怒らせたことを後悔するがいい、小僧!!」
その瞬間、ギラヒムの姿が消えたかと思うと悠岐の背後に現れ、そのまま彼の左の脇腹を蹴った。
「ぐっ!?」
突然の攻撃に悠岐は反応出来ず、脇腹を抑えたまま吐血する。これを見たギラヒムは笑みを浮かべながら言った。
「どうした?テメェの力はこんなものか?俺はまだ力を出してないぞ。」
「ってぇ。考え事をしていたのに急に攻撃しやがって。だがそのお陰か、俺はこの『無限奈落』の対処法を思いついたんだ。」
「何だと!?」
「簡単なことさ。『無限』を『有限』に変えればいいこと。」
その瞬間、悠岐は漆黒の刃を取りだし、ギラヒムに向かって刀を降り下ろした。すぐさまギラヒムは彼の攻撃を両腕で防いだものの、あっという間に端に追い詰められていた。
「何て力だ・・・あの小僧に何の力が・・・」
彼が続きを言おうとした瞬間、悠岐が彼の目の前まで来ていた。そして彼はギラヒムに突きを食らわした。その瞬間、ギラヒムは自分が地獄に落ちないように新たな床を作った。そのままギラヒムは新しい床に背中から落ちた。それを上の床から見ていた悠岐が口を開いた。
「やっぱりな。自分が落ちそうな時にだけ床を作る。もう『無限』から『有限』になってるな。よし、このまま行けば・・・」
そう言うと彼は漆黒の刃を構え、そのままギラヒムが倒れている床へ降りた。そして起き上がろうとするギラヒムの胸に漆黒の刃を突き刺した。彼の威力は計り知れないもので、次々とギラヒムが床を作るがそれを意図も簡単に壊し、遂には地面にまで達した。彼が地面に落ちた瞬間、辺りに砂埃が舞った。そんな中、悠岐はギラヒムから漆黒の刃を抜き、彼に言う。
「おい、起きろよ。こんなもので魔族長は死なないだろ?」
彼が言った瞬間、腹が立ったギラヒムはすぐに起き上がり、指を鳴らした。その瞬間、彼の前に横幅が長い斧のような武器が現れた。それを見た悠岐はギラヒムに言う。
「でかい武器を持ってるねぇ、こいつは面倒だな。」
そんな彼とは別にギラヒムは声を上げながら悠岐に斧を降り下ろした。その瞬間を狙っていた悠岐は彼の斧を粉々に刻み、ギラヒムの左腕を切り落とした。
「な、にぃっ!?」
ギラヒムの左腕からは鮮血が飛び散る。そんな彼とは別に悠岐はギラヒムに言う。
「悪い、嘘憑いた。全然面倒じゃなかった。」
そう言うと彼は地面に落ちていた魔族の剣を上に投げ、そのまま斧と同様、細かく切り刻んだ。ギラヒムはそれを黙って見ていることしか出来なかった。そんな中、悠岐がギラヒムに言う。
「魔族長ギラヒム、お前は人間を舐めすぎた。俺はそんなお前を許さない。故に俺はアリスを怪我させたドールクも倒す。」
「・・・・あえて言おう、小僧。例え俺が死んだとしても我がマスターがいる限り、この世界はマスターのものだ。お前達のものではない。」
「だったら俺はお前のマスターをぶっ殺してやるよ。」
そう言うと彼は漆黒の刃をギラヒムの喉元に突きつけた。そして言う。
「じゃあな、魔族長。地獄で罪を償え。」
彼が言った瞬間、漆黒の刃が彼の喉を貫いた。その瞬間、彼の喉から血が飛び散り、そのままギラヒムは息絶えた。悠岐は自分の顔についたギラヒムの血を笑みを浮かべながら舐めた。そして悠岐は漆黒の刃をしまうと木の近くで気を失っている妖夢をお姫様抱っこした。そして慧音を見ながら言う。
「永遠亭に行こう。妖夢と慧音の傷を癒してもらわないとな。」
「そ、そうだな。」
そう言うと慧音は立ち上がり、悠岐と肩を並べながら歩き出した。そんな中、慧音が悠岐に言う。
「なぁ、悠岐。お前いつ来たんだ?」
「ギラヒムとドールクが戦っている時にユニに呼ばれてきたんだよ。それでついでにあいつらを倒そうかなぁって思っただけさ。」
「そ、そうか。」
二人が話している中、妖夢が目を覚ました。そして、彼女は悠岐にお姫様抱っこされてるのに気がつき、顔を赤くしながら言う。
「あ、あの悠岐さん!こ、これって・・・」
「あはは、久しぶり、妖夢。今怪我してるんだから無理すんなよ。」
彼が言った瞬間、妖夢は大人しくなった。と、悠岐が突然ある方向を見た。それにつられて慧音も彼の見る方向を見る。そして妖夢が悠岐に言う。
「悠岐さん、どうしたんですか?」
「・・・悪霊の気配がする。強い魔力を持った悪霊だ。」
彼が見つめている方向は博麗神社だった。そんな中、悠岐が二人に言う。
「だが今は二人の治療が先決。急いで永遠亭に行こう。」
彼が言った瞬間、慧音は深く頷いた。そのまま三人は永遠亭へ急いだ。
ギラヒムを見事倒した悠岐。果たしてこのまま敵を倒すことが出来るのか!?
次作もお楽しみに!