「さぁて、女達からは誰が来るんだ?」
そんなことを言いながら悠岐は集合場所である食堂へと向かっていた。
「霊夢はめんどくさがりだから来ないし魔理沙はすぐに寝そうだし。九十九か楓がユニの誰かが来るのかな?」
そう言うと彼は食堂の扉をゆっくりと開ける。中には一人の少女が1つの椅子に座っていた。
「あ、悠岐君!」
悠岐の存在に気づいた少女は彼を見るなり、椅子から立ち上がり、駆け寄る。彼女を見た悠岐は口を開いた。
「ユニじゃねぇか、お前が頼まれたのか。」
「うん、霊夢はめんどくさがってやらないで魔理沙と楓ちゃんと九十九ちゃんはすぐ寝ちゃったから私が行くことになったの。」
「そうか。そんじゃ、始めようか。」
そう言うと二人は誰もいない食堂に座り、話を始めた。
「私のところはエリュシオンから挑発のようなテレビ電話みたいなのが来たの。明日が決戦だからって私達の調子を聞きにきたわ。でも、策は聞かれることはなかったよ。」
「策が知られないなら問題ない。俺達はガイルゴールからテレビ電話が来た。」
「ガイルゴールが!?・・・そっか、悠岐君達の所へエリュシオンのテレビ電話が繋がらなかったのはガイルゴールが繋げていたからなのね。」
「あぁ、そうさ。昔のことを話されたよ。他にも龍神やバベルが来るかもしれない戦いになるとさ。」
「龍神様やバベルも来る戦い?かなり危険じゃない。」
「だが、ガイルゴールは俺達に期待してくれるようだ。俺達は奴の期待に答えなきゃな。」
「徹夜かね?」
その声が聞こえた瞬間、悠岐とユニは声のする方向を見る。そこには長身で後ろ髪を縛っていて両腕を背に回している男がいた。男を見たユニが口を開く。
「メルト・グランチ様。いえ、徹夜ではありません。少し情報交換です。」
「情報交換?何のだね?」
何も状況を把握していないメルト・グランチに悠岐が口を開いた。
「実はさっきユニ達のところにエリュシオンがテレビ電話で話してきたんだ。そして俺らはガイルゴールからテレビ電話が来た。」
「エリュシオンとガイルゴールが?一体どうやって?」
「それが分からないんです。それで、何か挑発のようなことを言ってきたんですが全く挑発にならなかったです。」
「エリュシオンからあまり情報は得られないか。それでガイルゴールの方は?」
「ドラゴンカオスっていう現世にいた神のことを話された。ソイツはエリュシオンに殺されたらしい。」
「神を殺すのは神か・・・。」
「あら、起きていたんですね。」
その声が聞こえたのと同時に食堂に一人の女性が入ってきた。彼女を見たユニが言う。
「優理花さん、こんばんは。」
「はい、こんばんは。悠岐君に楓ちゃん。ちょっとグランチさんに用事があって来たの。」
そう言うと優理花は二つの古い紙切れを出した。
「優理花、これは何だね?」
「先程管理部隊の永崎さんが見つけたものです。いつからあるのか分からなくて・・・。」
「見せたまえ。」
そう言うと彼は優理花から紙切れを取り、じっくりと眺め始める。少ししてメルト・グランチは眉間を細めて言う。
「・・・何か、あるんですか?」
唐突にユニが口を開く。
「ふむ、これは見た方が早いのかもしれないな。」
そう言うとメルト・グランチは悠岐と楓に紙切れを渡した。紙切れを見た悠岐は紙に書かれた文字を読み上げる。
「『いざや惑え、修羅が咎罪。哀れ、死せる。
首を傾げながら言う悠岐とは別にユニはもう1つの紙切れに書かれた文字を読む。
「『煉獄炎ニ、其ノ身焦ガセバ、肝胆砕キテ、唯祈ルベシ。恨ミ悲シミ、澱固マリテ、我ヲ喪イ、業深キ身ノ。映ル鬼神ノ、眼ノ光。刹那ニ命火、消ユルトゾ聞ク。アナ恐ロシヤ、御事ハ誰ゾ。夢々彼ト眼合ワセルナカレ』何でしょうか?これは。」
「私の思うにこれは古代から伝わる言い伝えだと思います。ですが、これが何を意味しているのかは分からないんです。」
「俺らにもさっぱり分かりません。恐らく、百々か暁なら何かしら知っているかもしれません。」
「なるほど、百々君と琥珀君ですか。彼らなら分かるかもしれませんが明日が決戦なので控えましょう。」
「そうだな。では黒き刀にユニよ、今日はもう寝なさい。明日の決戦に備えるのだ。」
「分かりました。それでは失礼します。」
そう言うと悠岐とユニは食堂を出ていった。それを見た優理花はメルト・グランチを見て言う。
「いよいよ、明日ですね。」
「・・・あぁ、そうだな。我々は明日、この世界の命運を掛けた戦いに挑む。恐らくは多くの犠牲が生まれることだろう。彼らには世界のためならば命を捧げる覚悟を持たなくてはならない。」
「・・・グランチさん、本当に行くのですか?」
「・・・そうだとも。私は卿のために戦わなくてはならない。そして世界のためにも戦わなくてはならないのだよ。優理花、卿は現世に残ってほしい。卿の悲しむ顔を見せたくないのでね。」
「・・・分かりました。行きたい気持ちは山々ですがあなたを信じます。絶対に、帰って来てくださいね。」
「あぁ、勿論だとも。」
そう言うと二人は食堂から出ていった。
エリュシオンとガイルゴールのテレビ電話の情報交換。紙切れに書かれた謎の暗号。一体何を示すのか?
次作もお楽しみに!