東方混沌記   作:ヤマタケる

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帝王城を荒し、優理花に説教を受けた篁と九十九。


第143話 神からの告げ

夜、女チームにて。

まだ寝ようとは思っていなかったユニ達が布団に座り、話をしていた。

 

「それにしても優理花さん、怖かったわ。」

 

「大人しい女性ほど怖いものはないぜ。」

 

「……思い出させないでくれ。」

 

「すまん、二人のバカが失礼した。テレビでも見て気分を変えよう。恐らく決戦のことを報道しているんじゃないか?」

 

「バカとはなんだ!」

 

叫ぶユニと魔理沙とは別に楓はテレビの電源を入れる。

 

「もうこれ現代なのか幻想郷なのか分かんねぇな……」

 

九十九が言った時だった。テレビを付けた瞬間にザーという音と共に画面に砂嵐が写された。

 

「・・・あれ、繋がらない?」

 

「どうなってるのよ、幻想郷と同じく復旧してないんじゃないの?」

 

「いや、そんな筈はないんだが・・・。」

 

そう言うと楓はテレビのリモコンのボタンをいくつか押す。しかしいくら押しても何も起こらない。ボタンを押す楓にユニが口を開く。

 

「故障してたの?」

 

「分からない・・・。」

 

「あー、こういうのはやっぱ―――。」

 

九十九は布団から起き上がり、テレビへと近づいた。

テレビの目の前に立つと、彼女はその手を振り上げた。

 

「―――斜め45度!!」

 

「何してんだお前は!!」

 

思わず突っ込む魔理沙。そんな中、楓がスマホをいじり始め、耳元にあてる。それを見た霊夢が楓に言う。

 

「誰に電話しているの?」

 

「悠岐にだ。テレビ写るのか聞く。」

 

「……やっべ、変な煙出たきた。」

 

「また優理花さんに怒られるわよ!」

 

すかさず九十九に言うユニ。そんな中、楓が悠岐に電話して数分もしないうちにガチャという音が聞こえる。

 

「もしもし、なんだ楓。」

 

「悠岐、聞きたいことがあるんだが、そっちのテレビは付くか?」

 

「テレビ?あぁ、付くさ。そして今百々達と鉄◯DASH見てる。」

 

「あれ、まだやってたのか。」

 

「話に着いていけないぜ・・・。」

 

「・・・そうか。実は私達のほうは繋がらなくてな、今九十九が壊したと思われる。」

 

「さっきまでは付いたのか?」

 

「いいや、付かなかった。九十九がやったから多分付かない。」

 

「そうか。なんならメルト・グランチにでも・・・あれ、テレビが砂嵐に・・・。」

 

「お、おい悠岐!電波が遠いぞ。」

 

そう言った瞬間、ツーツーという音が響いた。それを聞いたユニが口を開く。

 

「電話が切れた?」

 

「変だな。電波の状況が悪い訳でもないのに。」

 

カチャカチャとテレビを弄りながら九十九は言う。

 

「電波が悪い?」

 

「そうみたい・・・って、え?」

 

「どうしたんだ、霊夢。」

 

「私達のテレビ、画面が砂嵐になってないわよ。」

 

彼女の言葉を聞いたユニ達は一斉にテレビの画面を見る。そこには砂嵐になっておらず、何処か見知らぬ場所が写し出されていた。それを見たユニが言う。

 

「これって、ホラー映画であるようなやつ?」

 

「やめれ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フフフフ、ごきげんよう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

ユニが言った瞬間、突如辺りに女性の笑い声が響く。

 

「ひゃぁ!?」

 

「プププ、その反応面白いわねぇ、星熊九十九。」

 

「こ、この声・・・。まさか!?」

 

「そう、そのまさかよ。出野楓。」

 

その声が聞こえた瞬間、テレビの画面に腰まで伸びる銀髪に青い瞳、白いスーツを着た女性が写し出された。

 

「……なんだ、お化けじゃ無いなら怖がる必要もねぇな。」

 

「あなたは、エリュシオン!」

 

「ごきげんよう、気分はいかがかしら?」

 

「いまさっき悪くなったよ。」

 

「何のようだ?敵がこちらに繋げてくるとは私達の策を聞き出しにきたな?」

 

「なーに、決戦の前夜だからどんな気分なのか聞きにきただけよ。」

 

「不快な気分だぜ。」

 

「私も同じね。」

 

「気分は最悪だよ。ただ、ぶっちゃけると眠い。」

 

「まぁまぁ、そう言わずに。折角だからアンタ達にある子と会わせようと思っただけよ。」

 

「ある子?」

 

「……どいつだ?」

 

「おいでなさーい、テルヒ。」

 

そう言った瞬間、エリュシオンの隣に大きく、青い毛に覆われていて赤い目をした狼が現れた。それを見た楓と九十九が思わず口を開く。

 

「こいつは!?」

 

「テル、ヒ?……てめぇ、分かっててそいつを出しやがったな!」

 

「久しぶりだな、星熊九十九。そして若き幻想郷の守護者よ。」

 

「お、狼が喋った!?」

 

驚く霊夢と魔理沙とは別にユニは冷静に言う。

 

「私、あなたを知っているわ。あなたは、ガイルゴールとの戦いで巨大妖怪のところにいた・・・。」

 

「ほう、覚えてくれていたとはありがたい。」

 

「……あぁ、久しぶりだな犬っころ。」

 

「今でも脳裏に浮かぶぞ、九十九。アルカディア、蓬莱、マグ、メル、エルドラドの死に様がな。」

 

クスクスと笑いながらテルヒは口を開いた。

 

「アルカディア?蓬莱?」

 

「……友人だよ、あっちにいた頃のな。」

 

始めて聞く言葉に首を傾げるユニに九十九が簡潔に説明する。そんな二人とは別にテルヒが再び口を開く。

 

「いやしかしあの小娘はよく私に対抗したものだ。私では手に負えなかったよ。」

 

「なら生きている筈じゃ・・・。」

 

生きている筈じゃないのか?と言おうとした楓に九十九が口を開いた。

 

「殺せないなら、殺せる奴が殺せばいい。カナンはエリュシオンに殺されたんだよ……。」

 

「えっ!?」

 

思わず声を上げる霊夢。そんな中、エリュシオンが笑みを浮かべて言う。

 

「そう♪私があの小娘の首の骨を折って殺してあげた。出来ればアンタの見ているところでやりたかったけれどね。」

 

ギリッという音が九十九の口から聞こえた。

 

「これが分かるか、エリュシオン。」

 

テレビの前へ、『赤』『青』『緑』『黄』『紫』の計5色、6つのスマホを掲げた。それを見て先に口を開いたのはユニだった。

 

「すまーとふぉん?」

 

彼女に続いてスマホを見たエリュシオンは目を細めて言う。

 

「なるほど・・・。あの時アンタに遺品を残していったのね。よほどアンタとの信頼関係があったようだ。」

 

「あぁ、カナンが最後の力を振り絞ってな。アイツの描いたキャラが私に持ってきてくれたんだ。」

 

「即座に殺しておくべきだったな、エリュ。」

 

「・・・。」

 

テルヒの言葉にエリュシオンは何も言わなかった。そんな二人に九十九が口を開く。

 

「この遺品に誓ってエリュシオン、テルヒ、お前らは私がこの手で殺す。」

 

「ほう、私を殺すと。テルヒなら可能なのかもしれないけれど私はどうかしらねぇ。五大王の力を越えなきゃ私には勝てないわよ。それに、アンタは百々が私を倒すための切り札だと思っているようだけれど、今の百々に私は愛着がないからね。」

 

「なっ!?」

 

衝撃的な言葉を聞いて声を上げる楓と魔理沙。そんな二人とは別に九十九は冷静に言う。

 

「……自分ではそう思ってても、極限状態で同じことが言えるといいな。」

 

「そうねぇ、フフフ。」

 

と、ユニが唐突に口を開いた。

 

「エリュシオン!このテレビの画面を写しているのはあなたなんでしょ?悠岐君や百々達はどうなってるのよ!」

 

「そのついでにあのテレビ直してくれよ。」

 

九十九は後ろにあるテレビだったものへと視線を一瞬だけ向けた。ユニの言葉を聞いたエリュシオンは何故かふてくされたような顔をして言う。

 

「男共は知らないわよ。繋げようとしたら誰かが先に繋げてるみたいだし。それじゃあ私はここら辺で失礼させてもらいましょうかね。明日、楽しみにしているわよ。」

 

「期待している。」

 

そう言った瞬間、プツンという音と共にテレビの画面が切れた。

 

「切れちゃったぜ。」

 

「エリュシオンのやつ、挑発しに来たのか?暇人だな。」

 

「暇人かもな。テレビ直ってるし。」

 

「そう言えば、悠岐君達のほうは誰かが先に繋げてるって言ってたわよね?それって一体?」

 

「さぁな。とりあえず私は明日に備えて寝る。まだ仲間に言葉を言ってないしな。」

 

そう言うと楓は布団に潜り込んでしまった。

 

「私も寝る。……この直ったテレビ、使うのも恐ろしいな。」

 

九十九も同じく布団へと潜り込んでしまった。

 

「それじゃあ私達も寝ましょう。」

 

「そうね。」

 

「おやすみ~。」

 

そう言うと三人は布団に潜り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

変わって男チーム。そこでは唐突に電話が切れ、テレビが砂嵐になったのを見てパニックになる百々達がいた。

 

「オイオイどういうことだ?テレビが切れるわ電話切れるわで何が起こっているんだ?」

 

「こっちに聞くな!俺は『てれび』すら分かってないんだぞ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・フム、どうやら繋がったようだな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

辺りに男の低い声が聞こえた。

 

「……誰かな?」

 

琥珀の言葉を聞いた瞬間、悠岐はテレビに目を向ける。そこには貴族の服を着ていて腰まで伸びる金髪の大男が画面に写されていた。

 

「もしや、DIO!?」

 

「ええ加減にせぇや?」

 

「はい。」

 

琥珀の言葉を聞いて黙ってしまう暁。そんな中、悠岐がテレビに写る男を見て口を開いた。

 

「ガイルゴールじゃねぇか。お前確か2万年の眠りについた筈なんじゃ・・・。」

 

「クレイジーからお前達が極秘任務をすると聞いて繋げた。すまなかったな。生憎、女達の所には繋がらない。恐らくエリュシオンに先越されたな。」

 

そう言うとガイルゴールは大きく息を吸い込み、口を開いた。

 

「お前達には少し昔の話をするのと健闘を祈る言葉を告げにきた。」

 

「お前らしくないな。」

 

「昔話か、それは僕も知ってるものかな?」

 

「琥珀、それはお前も知らない遥か昔のことだ。」

 

「琥珀も知らないとは随分昔だな。」

 

「そうだね、恐らく先代なら知ってるかもしれないけどさ。」

 

「とりあえず話そう。昔、表の世界には余も含む4体の神がいた。」

 

「4体の神?」

 

「……どの神話?」

 

悠岐と暁の言葉に耳を傾けずにガイルゴールは話し続ける。

 

「それぞれ余、龍神、バベル、ドラゴンカオスがいた。我々は話し合い、余は宇宙を支える神。バベルは四角世界を支える神。龍神は幻想郷を支える神。そしてドラゴンカオスは現世を支える神となった。」

 

「……名前しか聞いたこと無いね。」

 

「このまま表を4体で支えられる。そう願っていた。だが、ある出来事が起こった。」

 

「出来事?」

 

同時に声を上げる悠岐と百々。

 

「突如としてドラゴンカオスが姿を消した。」

 

「消えた!?何故だ?」

 

少し驚いた声を上げる悠岐だがすぐに冷静さを保った。

 

「理由は簡単だ。お前達が明日戦う者に殺された。」

 

「ですが、どうやって?」

 

「奴の能力、覚えているか?」

 

「・・・能力を削除する能力!」

 

すぐに声を発したのは悠岐だった。

 

「そうだ。ドラゴンカオスはエリュシオンの能力によって力を失い、そのまま殺された。」

 

「……現世に住み博麗大結界を見守る『魄霊』の日記にはいつも通りの平和な日々が綴られていました。そのドラゴンカオスが現世を支えるとしたら、何かが起こるはずでは?」

 

「だが起きなかった。エリュシオンがドラゴンカオスを信仰とする者達全てを殺した他、何らかの方法を使ったのだ。」

 

「何らかの方法?」

 

「それは余にも分からぬ。余が気づかぬ内にやられたのだから。」

 

「確かにそういった魔術や魔法は存在する。……と、言うよりも存在しすぎて特定できないね。」

 

「百々なら何か知ってるんじゃないか?」

 

「お前達はエリュシオンに記憶を奪われている。知っていることはなかろう。」

 

そんな百々はというと、頭から煙を吹き出させていた。

 

「す、すまん。頭脳労働は九十九の仕事だったからな……。俺に聞かれても答えらんねぇよ。」

 

「・・・すまんな。」

 

「可能性があったのだがな。ドラゴンカオスが死なずにいられる唯一の方法が。お前達はアラヤを知っているな?」

 

「あぁ、知ってるさ。」

 

「?」

 

「……Fate、か」

 

首を傾げる百々とすぐに理解する悠岐と暁。そんな中、ガイルゴールは再び口を開く。

 

「アラヤがいち早くドラゴンカオスの元へ行けばドラゴンカオスは死なずに済んだ。遅れたのは何かしらの理由があるからなのだろう。」

 

「理由なんて、ないと思うよ。」

 

ガイルゴールの言葉に、琥珀が自身の考察を投げた。

 

「ドラゴンカオスを殺したのがあの年増ババァなら、アラヤなんて簡単に騙せると思う。そもそも地球の知識と繋がる僕に、地球への悪影響を一切与えずに僕個人へ呪いを付けられるからね。多分だけど、ドラゴンカオスが生きてる確率はほぼないと思うよ。」

 

「なるほどな。よく考えたな、琥珀。」

 

「所詮、ただの考察。事実は小説よりも奇なりって言うし、ホントにそうとは限らないけどね。」

 

「では昔話はここまでとしよう。ここからは余がお前達に言う言葉だ。」

 

そう言うとガイルゴールは再び大きく息を吸い込み、言う。

 

「心して行くのだ。エリュシオンは余が分からぬ恐ろしい何かを隠し持っているに違いない。もしかすると余や龍神、バベルまでも来る可能性が高い。だがそれでも、お前達には期待している。」

 

「・・・あぁ、期待しててくれよな。」

 

「期待しないで舞っててください。」

 

「文字がおかしいよ、暁君。」

 

「すいません。」

 

「よく分かんねぇけど、殴ってぶっ飛ばせばいいんだろ?この何でも屋に任せな!」

 

やる気に満ちた四人を見たガイルゴールは笑みを浮かべ、言う。

 

「ふむ、どうやらやる気のようだな。期待しても問題なさそうだ。女衆にこの言葉を送れないのは残念だが、お前達が代わりに伝えてくれ。ではさらばだ。」

 

そう言った瞬間、プツンという音と共にテレビの画面が切れた。

 

「……あ、電話。はいもしもし。」

 

と、突然暁が誰かと電話をし始めた。

 

「うん、うん、……ふぁ?本当のことなんですか?……はい、はい。分かりました。おやすみなさい、姉さん」

 

電話を終わらせた瞬間、百々と悠岐が彼に言う。

 

「……霊夢か?」

 

「何があった?」

 

「そうですね。先程エリュシオンからテレビ電話みたいな物があったらしく……。」

 

「女達に繋がらないのはエリュシオンの影響か。」

 

「なので少し情報交換をしたいとの事でした。誰か代表者を1人、食堂に送ってくれとの事です。」

 

「俺が行こう。」

 

率直に口を開いたのは悠岐だった。そんな彼に暁が言う。

 

「お願いします。私は明日のためにも御札を作っておきます。」

 

「よろしく。僕はそうだね……百々君がいい加減処理落ちしそうだから助けてくるよ。」

 

「分かった。」

 

そう言うと悠岐は部屋を出ていった。

 

「あ、もうダメ……。」

 

部屋の扉を閉めると同時に中からそんな声が聞こえた。

 

「・・・眠かったんだなきっと。さて、食堂に行くか。」

 

そう言うと彼は食堂へとへと向かっていった。




エリュシオンの挑発にガイルゴールの祈願。事態は大きく変わってしまうのか!?
次作もお楽しみに!

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