東方混沌記   作:ヤマタケる

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エリュシオンとテルヒは最終決戦に向けて策を考えていた。


第142話 篁vs九十九

「九十九ちゃん、起きて九十九ちゃん。」

 

「……んあ?」

 

一人の少女に揺らされた九十九は目を擦りながら起きる。そんな彼女を起こしたのは優しく、明るい少女、ユニだった。と、ユニが九十九に言う。

 

「あ、やっと起きた。随分と寝てたわね。まぁ昨日いろいろあったし仕方ない、かなぁ。」

 

「今、何時……?」

 

「今?10時よ。」

 

「10時……10時!?」

 

ユニの言葉を聞いた九十九は驚くようにユニに問いかける。

 

「え、えぇそうよ。」

 

「やっべぇ!悠岐たちに呼ばれてんの忘れてた!」

 

「悠岐君達なら今庭にいるわ。早く行きましょう!」

 

二人が庭へ向かう音が城の中に響く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少女移動中・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、来た来た。随分と寝てたな、九十九。」

 

庭に着くとそこには庭のベンチに腰を降ろす悠岐と彼に耳掻きをしてもらっている楓、そして彼の隣には霊夢、魔理沙がいた。

 

「夜中に少しな……。っと、それよりも残りの男衆はどうした?」

 

「暁と琥珀は飯食いにいった。百々は多分もう少ししたら来るんじゃないか?」

 

「まだ時間はかかりそうだよ、彼。」

 

「琥珀じゃないか。暁はどうした?」

 

後ろから聞こえた琥珀の声に、楓はすぐに返答し、悠岐はそっちの方へと顔を向ける。そこにはなぜかぷちキャラ化された琥珀がいた。

 

「彼は本体と一緒に食事中さ。」

 

ぷち琥珀を見た悠岐は驚きながらも彼に言う。

 

「お前ちっさ!!ところで、百々は知らないか?」

 

「仕方ないだろう?『ケーキ爆食いして動けなくなったからもう少し時間がかかる』とかいうアホみたいな伝言を伝えるためだけにリソースは使えないからね。百々は誰かと一緒にここへ向かってるのを見たよ。」

 

「誰かと?」

 

「ひょっとしてアイツか?」

 

首を傾げる楓とは別に悠岐は冷静に言う。と、琥珀が再び口を開く。

 

「君の中での『アイツ』が誰だかわからないけど、男性だったとは報告しておくよ。じゃあね。」

 

ぷち琥珀はそう言って消えた。彼のいた場所には『式』の文字が刻まれた紙が落ちていた。それを見た魔理沙が口を開いた。

 

「式?」

 

「確か百々ってあの人と仲良いわよね、私あんまり関わったことないけど。」

 

「式神のことだろーよ。ほんっとに器用だなアイツ……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「庭ってこの辺だよな?百々。」

 

「おうよ。っと、ほらいたいた。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

九十九が言った瞬間、ユニ達の所へ二人の男がやって来た。男の一人を見た瞬間、魔理沙が口を開く。

 

「あ、あいつは!!」

 

「よォ、お前確か霧雨魔理沙だよな?そしてお前が博麗霊夢。」

 

「は、初めましてって言うべきかしらね?小野塚篁さん。」

 

「お待たせ―。」

 

「おせぇぞ百々。お前篁と何してたんだ?」

 

「髪、赤くて長い・・・。」

 

楓の呟きは誰も聞こえることはなかった。そんな彼女とは別に百々が悠岐に言う。

 

「何もしてねぇよ。厠の帰り道で会ったから連れてきたんだ。」

 

「そんなとこかな。そんじゃ百々、やるか。」

 

「何やるの?」

 

「篁のことだから1つしかないだろ。」

 

ユニの疑問に悠岐が答える。そんな中、百々が口を開く。

 

「おうとも。サクッとやって休もうぜ。」

 

「そんじゃあ始めようか!!」

 

そう言うと篁は巨大な鎖鎌を取りだし、構える。篁の行動に合わせて、百々も同じように拳を構える。と、何かを思い出した霊夢が口を開いた。

 

「篁さんって確か幻想郷最強の魂狩人(ソウルハンター)よね?そんな彼に百々が勝ち目あるの?」

 

「勝ち目はないけど負けることもないッ!!」

 

彼は霊夢の言葉に対し、そんなことを堂々と言った。

 

「それは堂々と言えることじゃないわよ・・・。」

 

「鎖鎌?でかいな。」

 

「キラー鎖鎌。」

 

楓が鎖鎌の大きさに呆然としていた時、ボソッと腹をさすりながら歩いてきた暁が言った。

 

(流石に意味不明なんだけど……。)

 

そんな彼の後ろにが何とも言えない顔の琥珀がいた。と、楓が暁に言う。

 

「なんか言ったか?暁。」

 

「いえ、何でもありません。それよりこれ、どういう状況なのですか?」

 

「まぁ、色々とあってな。」

 

「あっ……(察し)。まぁ、なにも聞かないよ。」

 

「今にも九十九ちゃんが飛び出して行きそうだけど、あれはいいのかい?」

 

と、篁がじっとしている百々を見て目を細めて言う。

 

「どうした?来ないのか?百々。」

 

「……いや、背後から視線を感じてな。」

 

「誰だ?」

 

「私だ。」

 

「九十九?」

 

百々の背後にいた九十九を見た篁は目を細める。そんな彼に九十九が言う。

 

「いや、場違いなのは分かってるんだがな。どうしても鬼の血と喧嘩屋としての血がな……。」

 

「そういやお前、何でも屋やる前は喧嘩屋だったけな。」

 

九十九の言葉に一人納得する百々。そんな中、篁が口を開く。

 

「ほう、俺とやるつもりか?」

 

「楽しそうだからな。」

 

「お前とやるのは初めてだな。」

 

「おっ、乗り気じゃん。百々との邪魔したから断られると思ってたんだけどな。」

 

「戦うなら誰とでもいいさ。それに、俺はお前の実力も見ておきたいところだしな。」

 

「そーかい。なら付き合ってもらうか。」

 

チラリと百々を見る九十九。彼はどこからか取り出したのか、酒を手にしていた。と、楓が二人を見て言う。

 

「楽しみだな、死神と鬼の戦いは。」

 

「酒……は飲めないのか。水でも飲むか?楓。」

 

「飲む。」

 

「妖怪の山にあった湧き水だ。うめぇぞ。……ちゃんと妖力は抜いてあるから安心しろよ。」

 

「俺は九十九と篁の様子でも見ようかな。」

 

「巻き込まれないようになー。」

 

「別れるのか。ならそっちに行きますか。」

 

悠岐、楓、百々、暁がやりとりしている中、篁が口を開いた。

 

「俺は見ての通り鎖鎌を使うがお前は素手でいいのか?」

 

「まずはね。下手に武器使っても絡み取られるだけだろうしな。」

 

「ほんじゃ、来いよ。」

 

そう言うと彼は空いている左手首をクイクイと動かして挑発した。

 

「んじゃあまぁさっそく―――」

 

九十九は己の拳を地面に叩きつけ、その反動で隆起した地面で篁へ攻撃を仕掛けた。それを見た魔理沙が言う。

 

「やっぱり鬼はあんなこと出来るからすげーよな。」

 

「おもしレェ。」

 

そう言うと彼は鎖鎌を地面に刺した。その瞬間、隆起した地面を止めた。と、百々が唐突に口を開いた。

 

「というかアイツはここが他人の家だと覚えているのか?」

 

「・・・。」

 

「・・・。」

 

「・・・。」

 

「・・・。」

 

「……。」

 

「……。」

 

「……。」

 

百々は一度深呼吸をして、

 

「死んだな、アイツ。」

 

そう言った。

「当たり前だ。メルト・グランチの敷地荒らした奴は優理花さんに殺されるんだから。」

 

楓の体は何かに怯えているように震えていた。百々の言葉に気にせずに九十九が口を開く。

 

「やるじゃねぇか。なら今度のはどうだ?」

 

右手に弾幕を展開し、九十九はそれを鬼の力で投げた。それを見た暁は思わず呟く。

 

「……野球のおねーちゃんかな?」

 

「ほう。」

 

そう言うと彼は今度は鎖鎌を地面に刺したまま左手を構え、

 

「オラァッ!!」

 

九十九の投げた弾幕を殴り、別の方向へ飛ばした。それを見た暁が再び口を開く。

 

「ホームラン?」

 

「野球だったらな。だがこれは野球じゃねぇ。喧嘩なんだ。」

 

「優理花さんに怒られても私は知らないぞ。」

 

「……あ、弾幕が花畑に。」

 

「花畑!?これはマズイ、あのオバサンがカンカンになって来る!!楓逃げるぞ!!」

 

「あぁ、ってえぇ!?」

 

そう言うと彼は楓を抱えて何処かへ走り去ってしまった。

 

「ちょっと悠岐君に楓ちゃん!?」

 

二人の名を言うユニはただ呆然と見ることしかしなかった。

 

「ちょいと直してくるかぁ……。」

 

「手伝うよ。」

 

「サンキュ。」

 

百々と琥珀はそう言って飛んで行った弾幕を追った。そんな中、霊夢が口を開いた。

 

「なんか私達取り残されたんだけど。」

 

「まっ、いいじゃないか。私達は大人しくして二人の戦いでも見てようぜ。」

 

「……もうこれ以上被害が出ないように結界でも張るべきなのでしょうか?」

 

霊夢に対して暁はそう問いかけた。

 

「お願い、暁。」

 

「分かりましたよ、姉さん。」

 

そう言って暁もその場を離れていく。そんな中、篁と九十九の戦いはエスカレートしていた。

 

「おもしレェぞ九十九!お前なら百々より楽しませてくれるのかもな!」

 

そう言いながら篁は鎖鎌を九十九に何度も振り下ろす。

 

「そう言いながら全く近づいてこねぇのな。」

 

おろされた鎖鎌を回避しながら九十九は呆れ気味にそう言う。

 

「果たしてそうかな?」

 

そう言った瞬間、九十九の足に篁の持つ鎖鎌の鎖が絡まった。

 

「っと、やられた!」

 

「油断したな、九十九!」

 

そう言うと篁は鎖鎌を引っ張る。引っ張られた影響で九十九は転ぶ。

 

「ただでは転ばねぇぞ!!」

 

足にある鎖鎌を引っ掴み、九十九はそれを思いっきり自分の方へと引いた。

 

「ぬおっ!?力比べか。」

 

そう言うと篁も鎖鎌を思いっきり引っ張る。鬼と霊。本来であれば勝つ方など火を見るよりも明らかなのだが、鬼は転んで力が入らず、霊は両足で地面に立っており、力比べの行方が分からないものとなっていた。と、魔理沙が口を開いた。

 

「二人って戦うイメージが強いからここで見れて良かったぜ。」

 

「結界張ってる身としましては、二人のパワーが強すぎまして維持大変なんですよね。」

 

「もう終わらせる?メルト・グランチか優理花さん呼んでくるわよ。」

 

「あ、それに関しては大丈夫です。おそらくどちらかがそろそろ来る頃だと思うので。」

 

暁の言葉を聞いた二人は同時に九十九と篁の方を見る。九十九も篁も正座をして、優理花に叱られていた。

 

「全く、あなた達は明日が最終決戦だと言うのに何ですか?勝手に私達の敷地内で暴れて、花畑荒らして。どうするつもりですか?」

 

静かに言うのが逆に恐ろしいのか、二人は震えていた。

 

「とりあえず花畑は元の姿を取り戻しましたよ。」

 

そんな優理花に琥珀がそう報告してきた。

 

「ありがとうございます、琥珀。それで、九十九に篁、どう責任を取るのですか?」

 

「……ここに、ナイフが一本あります。」

 

百々の言葉を聞いた優理花は彼からナイフを取り上げ、言う。

 

「いいですね、これを使って二人の腱でも斬ってしまいましょうか。」

 

「腱を斬る!?」

 

「……切腹じゃなくていいんですか?」

 

反応の違い過ぎる二人であった。

 

「切腹ならこれを使いましょう。」

 

そう言うと彼女は鋭利な刃をした刀を取り出した。

 

「不肖九十九、腱を切って切腹させていただきます。」

 

「オイ九十九!!本当にやるつもりなのか!?」

 

「先に行かせてもらいます。篁さんはよく考えてくださいね。」

 

九十九は百々からナイフを受け取り、それで自身の腱を切り裂いた。その後、刀を手に取り、切腹した。それを見た霊夢は目を見開いて言う。

 

「うわぁ、本当に切腹したわよ。」

 

「根性あるぜ九十九。」

 

「・・・そんじゃあ俺も行かせていただきます。」

 

そう言うと彼も彼女同様、腱を斬り、切腹した。と、百々が優理花に言う。

 

「……とりあえず血ふき取って布団に投げてきますね。この怪我なら九十九は夕方前には回復すると思いますので。」

 

「お願いしますね。」

 

そう言うと彼女は城の中へと入っていった。と、魔理沙が篁を見て言う。

 

「篁は大丈夫なのかよ?」

 

「……こまっちゃんに連絡しとくか?」

 

そんなことを言いながら九十九を引きずって行った。

 

「任せたわよ。死神なら切腹ぐらいなら死なないから。」

 

「あいよー。」

 

霊夢の言葉に了解の旨を示すためか、九十九の足を持っていない方の手を上げた。と、魔理沙が呟いた。

 

「オッサン、怒るだろうなぁ。」

 

「琥珀、そこにいるんでしょ?悠岐と楓は何処に行ったの?」

 

そう言うと霊夢は魔理沙の後ろにいる琥珀を見ながら言った。彼女の言葉を聞いた琥珀はすぐに返答する。

 

「さあね。今回は本当に知らないよ?なんでったって花畑の様子を見に行ってたんだから。」

 

「悠岐君が言ってた、あのオバサンのこと気になるわね。」

 

「誰のことなの?」

 

「え、BBA?」

 

「知ってるの?」

 

「それとも知らない?」

 

「あるいはどっちでもないとか!?」

 

ユニの言葉に思わず三人はずっこけた。突っ込むことなく琥珀が口を開く。

 

「さて、どっちでしょうか?」

 

クスクスと笑いながら琥珀は3人に問いかけた。

 

「知っている!!」

 

「即答ね・・・。」

 

即答したユニと魔理沙に思わず呆れた表情を見せる霊夢。そんな中、琥珀が再び口を開いた。

 

「君が知ってると思えば知ってるし、知らないと思えば知らないよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのジャガイモ畑の老婆のことだろう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

琥珀の後ろから唐突にメルト・グランチが現れ、話に首を突っ込んだ。

 

「メルト・グランチ様!」

 

「後ろに立つのやめえもらえませんかねぇ……。」

 

「そうだぜ、辞めてやれよオッサン。あんたが後ろに立つと琥珀がチビに見えてしまうだろ。」

 

「ほう、これは失礼した。」

 

魔理沙に言われたメルト・グランチはゆっくりと琥珀の隣に移動する。と、琥珀が魔理沙を見て言う。

 

「魔理沙もけっこうなチビだよね。」

 

「わっ、私はお前ほどチビじゃないぜ!!」

 

「私ってユニと同じくらいよね?」

 

「えぇ、そうよ。」

 

「魔理沙って楓より大きいの?」

 

「お、大きいに決まってるぜ!!」

 

「帽子脱いでも同じこと言えるのかな?」

 

「うっ・・・。」

 

琥珀に図星を突かれた魔理沙は言葉を詰まらせてしまう。そんな中、メルト・グランチが口を開いた。

 

「そういえば優理花を見なかったかね?」

 

メルト・グランチの言葉に琥珀は無言で例の惨状を指さした。それを見た彼は顔に手を当て、言う。

 

「・・・何となく察したよ。さ、もう中に入って寝たまえ。」

 

「まだ昼なんですけど!?」

 

ユニ、魔理沙、霊夢の三人が同時に突っ込む。そんな三人とは別に琥珀が言う。

 

「神となった人間さんは確かに明日最終決戦と言った。でもそれが明日になった瞬間かもしれないからね。」

 

「はぁ、んじゃあ部屋に戻るわよ魔理沙、ユニ。」

 

「分かったぜ。」

 

「うん。」

 

そう言うと三人は部屋に戻っていった。と、琥珀はメルト・グランチを見て言う。

 

「さて、僕も戻ろうかな。また明日、戦場で会いましょう、メルト・グランチ。」

 

「極秘任務、期待しているよ。琥珀・イーグナーウス。」

 

「はいはい。」

 

そう言うと二人それぞれの部屋へと向かっていった。




帝王城の敷地内で勝手に暴れてしまった九十九と篁。最終決戦は大丈夫なのか!?
次作もお楽しみに!

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