東方混沌記   作:ヤマタケる

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九十九の過去、エリュシオンの幻獣のことを話した三人。


第141話 凶神の不安

「・・・・。」

 

場所は大きく変わる。そこは幻想郷でもなく、現世でもなく、四角世界(マインクラフト)でもない。強いていえば表の世界ではない、裏の世界である。そこにある巨大な城、鋼鉄城にてエリュシオンが一人部屋でぼーっとしていた。

 

「・・・・はぁ。」

 

一人溜め息を吐く彼女の頭の中には6人の存在が浮かんでいた。自分の大切な家族の闘神達のこと、そして心から愛している一人の少年、伊吹百々のことだった。と、彼女は頭を抱え始めた。そして口を開く。

 

「他に方法は無かったのかしら・・・。もっといい策があればドゥームとニルヴァーナもメメもカルマも死なずに済んだと言うのに。そしてアカシャも裏切る計画を立ててはいなかった筈。私の教育が至らなかったから?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何を一人で嘆いているのだ?エリュ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、彼女の部屋の奥から男の声が響く。それを聞いたエリュシオンは後ろを振り返り、言う。

 

「あら、テルヒじゃない。今日は眠れないの?」

 

「眠れるも何もエリュの嘆きを聞いたからには側に居てやらねばと思ってな、ついつい来てしまった。」

 

「フフ、いいわ。おいで。」

 

彼女が言った瞬間、部屋の奥にいた存在、テルヒが姿を現した。その姿は青と白の毛の模様に赤い目、地面から肩までの高さは2mほどあり、体長は4m越えの狼だった。テルヒはエリュシオンの座っている椅子の隣に座る。エリュシオンはテルヒの頭を撫でながら言う。

 

「テルヒ、私はどこか間違っているのかしら?私の計画も教育もあらゆること全てが・・・。」

 

「私はエリュを心から信じている。エリュに間違いないなどない。」

 

「そうよね・・・。」

 

「・・・何か不安なのか?」

 

「えぇ、まぁね。」

 

そう言うと彼女は座っている椅子の前にあるキーボードを打ち込み始める。しばらく打ち込んでいると二人(二人って良いのかな?)の前に宙に浮かぶ画面が映し出された。それを見たテルヒは目を細めて言う。

 

「エリュ、これは?」

 

「表の者達が何を企んでいるのか見てみるの。あの子達には絶対に気づかれないから。」

 

そう言った瞬間、画面にたくさんの人が集まっていてその人の前に立って話す女性の姿が表示されていた。それを見たテルヒが口を開いた。

 

「ビオラ・ハイラルド。失明したとは聞いていないがエリュがやったのか?」

 

「えぇ、そうよ。あの子の能力は正直に言うと厄介なの。私のあの貫通ゲイボルグを唯一防ぐことの出来る能力だから削除させてもらったし、片方の視力も失わさせてもらった。そして、部下も失わさせてもらったわ。」

 

「確かにビオラ・ハイラルドの能力は厄介だ。だが、他にも面倒な奴はいるのではないか?」

 

「五大王も私が本気を出せば何の問題はないわ。」

 

「だがエリュ、五大王だけとは限らぬぞ。あのガイルゴールや龍神、バベルが来ないとも限らぬ。そして百々が記憶を取り戻さないとも限らぬ。」

 

「私もそれなりの対策はするつもりよ。」

 

「それで奴等の話によるとどうやら早朝に我々の城へ攻め込むようだな。」

 

「早起きする私達には何の問題もないわ。それに城から半径6kmの範囲には空間移動出来ないようにしてあるからあの子達がすぐにやって来ることはないわ。」

 

「城へ侵入された時の対処は?」

 

「城をある程度改造しておいたの。私はね、分かるの。ここへ来るのは一部の子だけ。」

 

「というと?」

 

「幻想郷の守護者のアイアルト・ユニこと八意百合姫、博麗霊夢に霧雨魔理沙、西田悠岐に出野楓、星熊九十九に琥珀・イーグナーウス、博麗暁、そして百々。」

 

「何故そう思うのだ?」

 

「あの子達は私が大人数専用の罠を仕掛けると思っているわ。そこであの子達を先に行かせて私の討伐に向かうと思う。そこで少し改造して簡単には行かせないようにしたの。」

 

「なるほど。それで、どのような改造をしたのだ?」

 

「うふふ、最終決戦でのお楽しみよ。あの子達が苦戦するようなものを用意したわ。」

 

「それを越えられたら私も戦うようなのか。」

 

「当たり前じゃない。私の計画は必ず成功させて見せるわ。例えどんな奴が来ようともね。」

 

「フッ、エリュらしいな。私はその根性が好きだ。」

 

「ありがとう、テルヒ。」

 

そう言うと彼女は立ち上がった。彼女と同時にテルヒも立ち上がる。そして二人は部屋を出ると城の展望台のような場所に出て夜空を眺める。と、エリュシオンが口を開く。

 

「幻獣達の準備は大丈夫?」

 

「問題ない。アイツらも表の者達を倒したくてウズウズしているのだから。」

 

「そう、それなら良かったわ。とりあえず何が起こるのか分からないから厳重に警戒することね。」

 

「エリュ、1つ聞きたいことがあるのだが。」

 

「ん?何?」

 

「エリュにとって最も厄介だと思われる相手は誰だ?」

 

「私にとって面倒な存在?結構いるのよねぇ。星熊九十九や琥珀・イーグナーウス、博麗暁以外にもね。」

 

「他に?」

 

「五大王の一人で、奥の手を持っている存在よ。」

 

「・・・ゴールド・マーグルではないな。では小宝剛岐か?いや、違うな。ではメルト・グランチ・エンペラー?それともセコンド?」

 

「ぶっぶー、全員違いまーす。」

 

「全員違う?では厄介だと言うのは?」

 

「そう、唯一残っている五大王の一人、アイアルト・モルトよ。」

 

そう言う彼女の額には少量ではあるが汗が垂れていた。




エリュシオンとテルヒ。何食わぬ会話をしている二人は何を企んでいるのか。
次作もお楽しみに!

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