と、カルマを黙ってじっと見ていた悠岐が唐突に口を開く。
「ようやく会えたな、カルマ!!」
「ゆっ、悠岐君!?」
彼を見て少し驚いた表情を浮かべるユニ。そんな中、カルマが笑みを浮かべて言う。
「あぁ、君か。成長した君を見れるなんて嬉しいねぇ。」
「黙れクソ野郎。テメェ、俺に何をしたか忘れちゃいないよなぁ?」
「え?」
「……何をしたのですか?」
再び驚くユニと悠岐に問い掛ける暁。そんな彼の問いに答えたのは悠岐ではなく楓だった。
「悠岐は幼い頃に車という現世の移動手段に轢かれたんだが、轢いた奴がカルマだったんだ。」
「なんですって!?」
驚く霊夢とは別に百々と九十九は鼻をほじるような感覚で口を開く。
「……そんな事でそんなに怒るか?」
「普通は怒んないよなぁ……」
「彼は貴方たちみたいに耐久がぶっ飛んでませんからね?」
「せやった。」
暁の台詞を聞いて悠岐に共感した百々。そんな中、カルマが再び口を開く。
「勿論忘れないとも。母さんの命令でやったのに殺し損ねて母さんに怒られたからね。」
「母さんの命令だと?」
「またエリュシオンか……」
カルマの言葉に魔理沙と九十九が反応する。そんな二人とは別に悠岐が口を開いた。
「なるほど、エリュシオンの命令か・・・。よし分かった。テメェをぶっ殺したらエリュシオンの野郎もぶっ殺す!!」
「あぁ、その通りだ悠岐!!私も奴にやられたことを忘れちゃいない!!」
「私もやってやるよ。こいつらへの恨みなら誰にも負ける気がしねぇ!」
「うーん、この場違い感……」
悠岐に続いて楓、九十九が殺気を溢れさせる中、その間に挟まれていた琥珀がボソリと呟いた。
「私も戦うよ!!」
「仕方ないわね。」
「やってやるぜ!」
そんな3人につられてユニ、霊夢、魔理沙も殺気を溢れさせる。みんながやる気になる中、ニルヴァーナが心の中で百々に語る。
(おいおい百々、流れに合わせろよ。男らしくないじゃねぇか。)
(いや、なんかやる気がな……。)
(あの腹出してる可愛い子ちゃんも乗ってるんだぜ?まけていいのか?)
(ユニに負けるも何も、そんな勝負はしてないからな)
それに。とニルヴァーナへ心の言葉を続けた。
(九十九と過ごす内に勝負事があんまり好きじゃなくなったんだよ。あいつが色々とめんどうな事を持ってくるからな。)
少し首を傾げたニルヴァーナは再び語る。
(九十九の影響を受けたか。なるほどな。まっ、取り敢えず乗りにはのっとけ。雰囲気漂わせるといい感じになるかもしれねぇからな。)
(ま、それは言えてるわな。)
そう言って百々は自身の後ろにスキマを開き、そこから大量のナイフを取り出した。
「俺もやってやるよ。久々のナイフ術だ。手加減は難しいぞ。」
「みんなやる気みたいだね。では始めようか。」
そう言った瞬間、カルマの目が光だしたかと思うと彼は高く飛び上がり、光を辺りに放った。その瞬間、先程まではなかった筈の図書館が現れた。それを見た百々が口を開いた。
「うーん、紅魔館の大図書館?」
「記憶の図書館、オブリビオン!」
そう言うと彼はゆっくりと図書館へ降りた。
(あ、紫の記憶だ。……黙っとこ。)
「ここに私らの記憶も保存されてんのか?」
「その通りさ、星熊九十九。表の者達の記憶や情報は全てここに保管されている。僕のとっておきの場所さ。」
「・・・そこに俺の記憶もあるのか。」
「どうかな?君のような悪魔の記憶はあったかな?」
笑みを浮かべてながら話すカルマとは別に九十九が口を開く。
「コイツをボコボコにしてゆっくり探せば分かるだろうよ。この空間の維持は百々がやってくれるだろ。」
「んぇ?あ、おう。任せとけ!」
(彼、話聞いてなかっただろうなぁ……。)
暁のため息が誰にも気づかれることなく図書館に溶けていった。
「ここには僕やドゥーム、メメントモリが集めた記憶がある。どの記憶も生み出す輝きは美しい。」
「記憶が美しいと言うのは同意しかねるかな。」
今まで沈黙を貫いてきた琥珀がカルマの言葉に反応した。
「中でも愛情や友情が混ざりあった記憶が美しい。僕はそんな君達の記憶が欲しいよ。」
「なんですって?」
カルマの言葉に反応する霊夢とは別に琥珀は目を細めて言う。
「……どうして闘神は僕の話を無視するのかな。」
(お前が俺達闘神に無視されるのは母さんの影響だろうな。母さんがお前を嫌ってるから俺達も母さんに共感したんだろう。)
琥珀の言葉にニルヴァーナは心の中で語った。
(確かに嫌われるようなことはいっぱいしたけどもそれで子供にも嫌われるなんて教育の仕方間違ってない?)
珍しく琥珀本心の言葉だった。そんな彼にニルヴァーナはきっぱりと言う。
(そういうのは俺じゃなくて母さんに言ってくれ。)
(ごもっとも)
ニルヴァーナからカルマへ目線を変えると琥珀は再び口を開いた。
「無視されたんだ。大人として子供は叱ってあげなくちゃね。」
珍しくやる気の琥珀である。彼にとってカルマからの言葉など気にならないのだろうか。それを見た百々が口を開く。
「珍しくやる気に溢れてんな……。いや、それよりもそんな記憶を奪ってどうする気だ。鑑賞か?」
「簡単さ。母さんの計画の糧となるんだよ。」
「エリュシオンの計画の糧だと?」
「記憶を糧に?」
彼の言葉にピクリと反応する楓と九十九。そんな二人にカルマは言う。
「そうさ。何のためかは分からないけれど母さんは計画の糧とするから集めてこいって言ったんだ。」
「何も聞かされてないのね。操り人形と変わらないんだ、君たちは。」
「操り人形だと?」
琥珀の言葉に反応したカルマは少しイラついた表情を浮かべた。そして再び言う。
「母さんが僕を人形扱いするだと?そんなのは有り得ない。母さんは僕達闘神を心から愛してる。そんな母さんが僕達を人形扱いするものか!!」
「操り人形じゃないならただの駒かな?困ったら簡単に捨てられる捨て駒ね」
「おぉう、煽りよる……。」
「何がこいつをこんなに動かすんだよ……。」
琥珀とカルマの言い合いを見て驚いた表情を浮かべる百々と九十九。そんな中、カルマがまた言う。
「調子に乗るな!!随分と君は僕を苛立たせるね。母さんが嫌う理由もよく分かるよ。」
「嫌われて結構。君たちを見てるとどうしてもムカついてきてね。家族ごっこは楽しいかい?」
これでも琥珀は聞き上手として人里では通っている。人里の人間が今の琥珀を見たら度肝を抜かすだろう。
「私もカルマには少なからずムカついています。」
そんな琥珀に乗るように暁も声を上げた。
「なんですかあのクエスト超めんどくさいんですよ。しかも適正当たらないし苦労してクリアしてもパッとしないスペックしやがって。お前なんて素材で十分だよ。」
「……暁?」
「何でもないです。」
霊夢の言葉に我に返る暁。
((暁の闇を見た気がした……))
百々と九十九の心が一致した。そんな中、カルマが口を開いた。
「チッ、君達と話していたら時間が過ぎてしまった。それじゃあ始めるよ。」
そう言った順調、カルマの着ていたブレザーが消え、彼の体の一部が紫色になり、胸部には大きな目が現れた。そして彼の手元に一冊の本が飛んでくる。と、ユニが口を開く。
「なんだろう・・・。私、彼を知っている気がするわ。」
「それは中々に同情するな。でもアカシャとかでない分マシだろうな。」
「九十九ちゃん、手を貸そう。今回だけは僕も全力だ。」
文字の翼を呼び出し、臨戦態勢を取る琥珀に話をしながらもカルマへ警戒を緩めない九十九であった。
「なら私は少し気を抜かせてもらいましょう。まだ前回の戦いの疲れが抜けてませんからね。」
「こっちもサポートに回るぞ。このままニルヴァーナ戦とかになったら目もあてらんねぇし。」
自身の背後に巨大な笛を呼び出し、指揮棒を持った暁とナイフを先程取り出した大量のナイフを自身の周囲に浮遊させる百々はそう言った。
「先に攻撃させてもらうぜ!!」
そう言うと彼は刀をカルマに振り下ろす。
「彼の場合はこれが良さそうだね。」
そう言った瞬間、彼は左手に青い石を取るとその石にキスをした。その瞬間、彼の体が青い光に包まれた。
「食らいやがれ!!」
そのまま彼は刀を振り下ろす。しかし彼の攻撃は光の中から現れた大男の鎖によって防がれていた。
「なっ、でけぇ男!?」
「フン!」
「うおっ!?」
力で押し負けた彼はユニ達の元まで吹っ飛んだ。それを見た暁がボソッと呟く。
「……やはりドゥームですか。雷切で斬る必要ありますか?」
「チッ!やっぱやって来やがったか!皆、気をつけろ!コイツはニルヴァーナ、メメントモリ、ドゥームのような何かを召喚出来っからな!!」
はじめから知っていた九十九はその情報をその場にいる全員へと伝えた。巨大な笛を操る暁は自身の右側にドゥームを斬り裂いた刀、雷切を呼び出しながら言った。
「私がやってやるぜ!!」
そう言うと魔理沙はスペルカードを発動する。
「彗星ブレイジングスター!」
彼女の攻撃を見たドゥ・・・カルマは左手に緑色の石を取るとその石にキスする。その瞬間、彼の体が緑色の光に包まれ、中から出てきた彼岸花が魔理沙を攻撃した。
「ぐっ!!」
攻撃された魔理沙は地面に崩れる。それを見た百々が言う。
「彼岸花のババアか!花なんてこれで切れてろ!」
そう言って手に持ったナイフを彼岸花へ投げつける。何本かは彼岸花のツタを切り裂いたが、また別の何本は明後日の方向へ飛んでいった。
「面倒ねぇ。」
そう言った瞬間、メメントモリの体が赤い光に包まれた。その中から銃弾が飛んできてユニ達を襲った。
「きゃあ!!」
「この銃弾・・・まさか!!」
叫び声を上げるユニと攻撃のパターンを振り返る楓。そんな中、暁が口を開いた。
「ニルヴァーナが2人?来るぞ遊馬!」
「遊馬ってどなた?」
そんなことを言いながらも暁は百々の言葉を無視してニルヴァーナへ向けて笛を向ける。その中から飛び出した複数のホーミング弾がニルヴァーナ(本体含む)へ襲いかかった。
「ちょっ待てよ!!俺は戦いに参加しないぜ!?」
そう言いながらニルヴァーナ(本体)はホーミングを骸骨を犠牲にして避ける。そんな彼とは別にもう一人のニルヴァーナ(カルマ)はホーミングを銃弾で打ち続ける。それを見た暁は再び口を開く。
「やはり撃ち落とされますか。ですが今回はあまり能力を使いたくはないのでこれ以上は難しいですね。百々さんは?」
「こっちもそうだな。もしカルマを打倒したとしてもニルヴァーナが襲ってくる可能性も考えないといけねぇからな。」
「喋ってないで手を動かせサポーター!!!」
会話をする2人へ九十九の怒号が響く。
「覚悟しろっ!!」
そう言うと楓はニルヴァーナに変身したカルマに斬りかかる。ニルヴァーナ(カルマ)は楓の攻撃を避けながら撃ち続ける。彼女も銃弾を避けながら攻撃する。
「いいねぇ。」
そう言うとカルマは後退すると同時に体から緑色の光を発光させた。それを見た九十九が百々に言う。
「メメントモリか、百々!」
「おうさ了解!」
カルマがメメントモリへ変身するタイミングに合わせて百々はナイフをまた投げた。
「くっ、読んでいたのね。」
そう言うと彼女は彼岸花の蕾を出し、ナイフを防いだ。
「暁いくわよ!!」
「もちろんです。『魔笛を鳴らせ!』……気持ち多めですので、お気を付けて。」
「わかってるわよ!!」
そう言うと霊夢はメメントモリに変身したカルマ目掛けて弾幕を放った。
「色々と面倒ね。」
そう言うと彼は青い光を発光させた。それを見た九十九が口を開いた。
「今度はドゥームか!さっきからポンポン変わりやがって!」
「何か変だな。何か企んでいるのか?」
と、何かをいい忘れていたのか、九十九の頭の中にニルヴァーナの声が響く。
(やっべ、戦いに気をとられて言い忘れてた!!気をつけろ九十九!カルマがやってるのはただの時間稼ぎだ!!)
(こんっのバカ!そういうのは先に言いやがれ!)
ニルヴァーナからの念話を聞いた九十九はニルヴァーナへ怒鳴りながらも反撃の手を考えていた。
(クッソ!弱点が違いすぎて決定打が与えられねぇ!)
「な、何これ!?」
そう叫んだのはユニだった。見ると彼女の足が徐々に黒くなっていた。
「お、俺もだ!」
「何なんだこれは!!」
黒くなっていたのはユニだけではなく悠岐と楓も同じだった。と、九十九が口を開く。
「……やられた。因果の法則か。」
「1人で納得してないで説明しろ!」
全員の足が黒に染まっていく中、ポツリと1人の妖精が呟いた。
「……え?僕はハブ?」
「まんまと引っ掛かったね、人間達。これが因果の法則。自分の行った報いを自分自信で受けるんだ。けれどもこれは人間にしか通用しないから妖精の君には効かなかったんだね。」
「あー、良かった。流石に戦闘中もハブられたら琥珀さんは泣いてしまいますよ。」
オヨヨヨと泣いた振りをする琥珀。
「人以外?なら!!」
そう言うとユニは鈍い動きでもスペルカードを発動した。
「呼符コールザエニー。力を貸して、ピンさん!!」
彼女がスペルカードを発動した瞬間、彼女の隣に直径2mほどの空間が現れたかと思うと中から身長2mほどで全身黄色でマッチョの体に熊のような耳をしたものが現れた。
「再現『主に空を飛ぶ程度』。手札だけなら誰にも負けねぇぞ。」
霊夢の能力を再現し、百々は因果から逃れた。
「クライヤガレ!」
そう言うと中から出てきた土人形、ピンはカルマに一発パンチを食らわした。
「何っ!?」
唐突に殴られたカルマはそのまま図書館の本棚まで吹っ飛ぶ。それを見たユニと悠岐が言う。
「流石ピンさんね♪」
「あぁ、便りになるぜ。」
「プニキ?……いや、流石に違いますよね」
そんな世迷言を言いながらも暁は吹っ飛ばされたカルマを視線で追ってみるとカルマの目の前に琥珀が浮いていた。
「休んでる暇は無いよ。」
本棚に倒れるカルマへ琥珀は『傷』と『痛』の漢字を打ち込んだ。
「ぐっ!?」
思わず声を上げるカルマ。そんな彼とは別に楓が口を開く。
「琥珀はカルマに何をしたんだ?」
「文字を打ち込んだんです。言葉を操る力を持っている彼が操る文字は、文字通りの意味を打ち込んだ存在に与えるんです。」
「さっきアイツは『痛』の漢字と『傷』の漢字を打ち込んでたな。」
楓の疑問に暁が解説し、九十九が鬼の身体能力で琥珀が打ち込んだ文字の説明をした。そんな中、カルマが口を開いた。
「くっ、・・・よくもやってくれるね。母さんが処理しようとする理由も分かるよ。」
「怪我をさせる訳でもなく、ただ『痛み』というものを存在に割り込ませる。効くでしょ?」
カルマの言葉に対し、煽るように琥珀は答えた。
「頭上注意ってな!」
霊夢の能力を再現し、カルマの認識から逃れ真上まで飛んできた百々がカルマへとナイフを投げつけた。
「しばらくそこから動くな。」
それらはカルマの服を貫通し、本棚へ突き刺さった。
「なっ!?」
思わず声を上げるカルマ。そんな彼とは別にピンが図書館の奥にある柱に向かってパンチをした。
「コワレロォォォォォ!!」
その瞬間、ピシピシという音と共に柱が砕け散った。それを見た九十九が口を開く。
「……あれ、これヤバくない?」
「みんな下がれ!!」
「あいよっと、琥珀は俺が回収しておく!」
楓の言葉と共に悠岐はカルマの近くにいた琥珀を抱えて柱が倒れないような場所まで運ぶ。
「動けなかった奴らが動けてるところを見るにあの柱が能力の源ってわけか。ピン!その柱でここにいるカルマを潰しちまえ!!」
逃げながら百々はピンへとえぐい司令を出した。
「ワカッタヨ!!」
そう言うと彼は柱を持ち上げるとそのままカルマに叩きつけた。それを見た楓と悠岐は呆然となりながら言う。
「な、なんて馬鹿力なんだ・・・。」
「・・・えぐい。」
「やっぱあれプニキだ。でもなんでプニキが……。」
「……暁?」
「あ、いえ、なんでもないですよ姉さん。」
霊夢の言葉に再び我に返る暁。そんな彼に悠岐が言う。
「暁、現世のことは幻想郷の人には分からんぞ。」
「そうですね。どうしても知っていることとなると気になってしまいまして」
「……てかニルヴァーナは?」
「それよりもカルマを倒せてんのか確認した方がいいんじゃねぇか?」
(馬鹿お前ら!!そんなんでカルマを倒せると思ってんのか!!)
呑気に話している九十九、暁、百々、悠岐にニルヴァーナが九十九一人に心の中で語る。それを聞いた九十九は返事を返す。
(分かってるよ。ただ動きが無いからな。こっちも下手に動けねぇんだ。……てかお前、無事だったんだな。)
(思いっきりホーミングの餌食になったぞ。まぁ大して効かなかったけどさ。)
「すごい力だね、君達。」
「……やっぱり倒せてないよね。」
なんとなく予想していた九十九はこの一言を呟く。そんな中、カルマが口を開く。
「それに、僕が欲しいのは勝利じゃない。記憶なんだ。」
そう言った瞬間、ユニ達の体から血が飛び散った。
「えっ!?」
「君の力、使わせてもらったよ、琥珀・イーグナーウス。」
「別に構わないけど、まだまだ甘いね。薄皮1枚しか裂けてないよ。」
ユニへ『回』と『復』を打ち込みながら琥珀は言う。自分の体が回復したのに気づいたユニが琥珀に言う。
「あ、ありがとう琥珀君。」
「ヤバイ、ユニチャン。」
「どうしたの?ピンさん。」
「サッキハシラヲモッタトキニアイツニヤラレチャイケナイトコロヤラレチャッタ。」
「まさか、こか……」
「やめろ、もぐぞ。」
「はい……。」
あるNGワードを言おうとした百々に九十九が驚愕の言葉を発する。そんな中、ピンが二人に言う。
「ボクニソンナノナイヨ。ニンギョウダカラ。」
「うーん、この緊張感の無さ。待ってくれるなんて、優しいねカルマくん。」
「勿論だとも。もう準備は整ってるからね。」
そう言った瞬間、ユニ達の背後には謎の機械が浮いていた。それを見たニルヴァーナが九十九に言う。
(気をつけろ!!記憶を奪われるぞ!!)
「……やっぱそうするよなお前は。」
ニヤリと九十九は笑った。
「・・・?」
「ここまでで、ある時からずっと会話に参加せず攻撃もあまりしなかったやつが1人だけいるよな?」
首を傾げ続けるカルマ。そんな彼とは別に九十九はその1人に叫ぶ。
「さぁ、全力でやっちまえ魔理沙!!」
「任せとけ!!恋符『マスタースパーク』ッ!!!」
カルマの後方から巨大な光がカルマやユニ、機械の全てを巻き込まんとして撃ち込まれた。
「ぐはあっ!!」
「うわぁっ!」
危機一髪で避けたユニとは別にカルマはもろ魔理沙のマスパを食らった。
「え、ちょ……。」
「あ、避けるの忘れて……。」
逃げることを忘れていた百々と琥珀はそのまま巻き添えを食らった。
「アホタレ!!」
思わず叫ぶ楓とは別にニルヴァーナが心の中で百々に言う。
(クヒヒヒヒ、俺の仮の名前を笑ったからバチが当たったんだな。)
「まぁ、死なないからいっか。」
マスタースパークが消えた後、そこには食らう前と変わらない姿の百々が立っていた。と、魔理沙が辺りを見ながら言う。
「あれ、琥珀は?」
「さっき溶けてたぞ。」
ほら。と言って百々は先程まで琥珀の立っていた場所を指さす。
そこには一言、『少ししたら戻ります』と書かれていた。
「やることが琥珀らしいわね。」
「……PSがありますね。」
暁の言葉を聞いて感心していた霊夢はその場所を見る。
『PS。念の為カルマには一撃失神を沢山打ち込んでおきました。数で言うと50くらい』
「・・・どんだけ失神させるつもりだよ。」
思わず突っ込む悠岐。そんな中、カルマの様子を見ながら百々が言う。
「だからあっちでビクンビクンしてるのか……。てかあれ生きてんの?」
「あー、やりすぎたか?」
頭をポリポリとかきながら言う魔理沙。
「見事な戦術だったわねぇ。」
「その声、まさか!!」
突如辺りに響く声に反応する楓。そんな彼女とは別に九十九が言う。
「エリュシオン!」
突如現れた女性、エリュシオンに一同は目を向ける。と、エリュシオンが口を開く。
「やれやれ、純狐らを倒してカルマの様子を見に来てみればこの有り様なんて・・・。」
「……ビクンビクンしてますね。」
「・・・ごめんね、カルマ。アンタの苦しむ姿は見たくないの。」
そう言った瞬間、辺りに銃声音が響いた。それを聞いた百々は目を見開きながら言う。
「自分の子供を……殺した?」
「・・・本当に、ごめんね・・・。」
そう言うエリュシオンの目には涙がポロポロと零れていた。
「……やりすぎた?」
コッソリと戻ってきた琥珀が涙を流すエリュシオンを見てそう呟いた。と、エリュシオンが唐突に口を開いた。
「・・・よくも私の大切な息子であるカルマをあんな目にあわせたわね。絶対に許さないわよ。残りの子で終わらせてやるわ。」
「そうはさせるか!!」
そう言うと楓は刀を構え、エリュシオンに向かっていく。
「友の復讐だ!死ねエリュシオン!」
彼女に続いて九十九もエリュシオンに向かっていく。
「ププッ。何その攻撃、そんなので私を倒せると思っているのかしら?」
そう言うとエリュシオンは右手に持っていたスライムを取り出すとそれを刀に変化させて二人の攻撃を防いだ。
「なっ!?」
「ウザってぇなそれ……。」
「お黙り。」
そう言うと彼女は左手に握り拳を作り、楓の腹を殴り、立て続けに右足で九十九の腹を回し蹴りした。
「ぐっ!?」
「ゲホッ!」
そのまま2人はユニや百々たちのいる方へ吹き飛ばされた。
「九十九!!」
「楓ちゃん!!」
直ぐ様二人の元へ悠岐とユニが駆け寄る。そんな中、エリュシオンが笑みを浮かべて言う。
「互いに友達も守れない奴に私を倒すことなんて出来ないわよ。絶対にね。」
「くっ、なんて力だ・・・。」
歯を食い縛りながら言う楓ではあるが力の差を体感し、少し震えていた。
「……エリュシオンさん今回はここら辺で見逃してくれませんか?」
暁の言葉に反応したエリュシオンはクスクスと笑い、言う。
「私に頼み?生憎だけど無理ね。アンタ達はカルマをあんな目にあわせた。見逃すわけにはいかないわ。」
「そのカルマを復活できるとしてもですか?」
「そんな程度で私が見逃すと思う?」
「えぇ、思っています。貴方はとても子供思いです。それは先程、彼へ流した涙と苦しめられる彼を楽にするため己の手で殺したことで証明されていることです。」
「確かに私はカルマやメメ、ドゥームを愛しているわ。あの子達の死を考えると心が痛くなる。」
「それでも、子供を殺した私たちに対する憎しみが勝っている……と?」
「だからこそ・・・だからこそ私はあの子達のためにも計画を成功させる。そのためならば復活なんて必要ないわ。」
「……そうですか、残念です。貴方ならば私が考える裏のことも分かっていたと勝手に思っていたのですが……。仕方ありませんね。『因果の闘神は永久の眠りにつく。黄金郷を消せ。さもなくば彼の者が戻ることはありえない』。」
暁がそう言うと、そこにあったカルマの死体が消えていった。
「・・・。アンタ達、一人忘れてないわよねぇ?」
唐突にエリュシオンがユニ達に言う。彼女の問いに楓が答える。
「・・・ニルヴァーナか?」
「ぶっぶー、違いまーす。」
「……アカシャだろう。」
「せーいかーい♪」
(まさか母さん、あいつを!?)
九十九からよ答えを楽しそうに言った瞬間、エリュシオンは左手に紫色の光を宿し、再び言う。
「おいでなさい、記憶を屠りし闇の闘神アカシャ。」
カルマの撃破に成功したユニ達。しかしそこへエリュシオンが現れて最後の闘神を繰り出す。果たしてユニ達の運命は!?
次作もお楽しみに!
p,s,
今回かなり長く書いてしまいました。少々読みづらい箇所があるかもしれません。ありましたら後程教えてもらえると幸いです。これからも東方混沌記をよろしくお願いいたします。