永遠亭に到着したチルノ、大妖精、ルナ、サニー、スターは息が切れていた。恐る恐る大妖精は後ろを振り返る。もうカックン達は追いかけてこなかった。
「良かったぁ、もう追いかけてこないよ。」
「あれは一体何なの?私は今まであんな妖怪を見たことないわよ。」
「知らないわよ、ルナ。あんなやつ見たことも聞いたこともないし。」
「と、とりあえず中に入れてもらいましょう。」
スターの言葉で五人が中へ入ろうとした時だった。竹林の奥から何者かがこちらへやって来る音が聞こえた。五人は思わず足を止めてしまう。
「ま、まだ追いかけてたよ・・・」
「ど、どうしよう・・・」
五人は先程起こったことを思い出してしまい、足がすくんでしまった。そしてついに五人の元まで何者かがやって来た。
「何してるんだお前ら?」
やって来たのはここまでチルノ達を追いかけてきたカックンではなく、悠岐だった。五人の不可解な行為に彼は唖然となっていた。
「あら?あなた達まだこんなところだったの?さっき青龍を呼んで助けてあげたでしょ?」
「あ、あの龍を呼び寄せたのってユニちゃんだったの?」
「そうだけど・・・さ、ちょっと怪我人がいるからここを通させてもらえる?」
ユニに言われたため、五人は通り道をどいた。そして悠岐が抱える少女を見る。彼が抱えていたのは右腕を切り落とされ、腹部を撃ち抜かれたアリスだった。それを見たルナ、サニー、スターは同時に彼女の名前を言う。
「アリスさん!」
そのまま三人も悠岐とユニの後をついていく。それにつられてチルノ、大妖精も後をついていった。
「・・・これは酷い傷ね。私が治療しておくわ。」
「ありがとう、永琳。」
アリスの治療は無事終了したものの、彼女はまだ動ける状態ではなかった。そんな中、ユニは悠岐の方を見る。彼は刀をぐっと握りしめており、目は赤く染まっていた。そんな彼にユニは言う。
「悠岐君、やっぱり行くんだね。」
「当たり前だ。アリスをやられたままほっけるかよ。」
「・・・だよね。許せないよね。」
「ユニ、俺はこれからギラヒムとドールクの元へ向かう。絶対に邪魔はしないでくれよな?」
「勿論、邪魔なんかしないわよ。あなたの大切な使命を奪うつもりなんてないわ。」
「ユニ、お前は紅魔館に行くといい。確か、ドールクの部下のじ久がそこを奇襲しているって言ってたな。」
「レミィ達が危ないってことね、分かったわ。」
そう言うと二人はそれぞれの場所へ悠岐は走っていき、ユニは飛んでいった。チルノ達はそれを黙って見ていることしか出来なかった。
「さて、ここが博麗神社か・・・」
そんな中、ガノンドロフの部下のザントが博麗神社へやって来ていた。魔法の森を抜けた彼はすぐに博麗神社へ行き、そこにいる人を倒そうと考えていた。
「来たわね。」
「待ってたぜ!」
前から声が聞こえたため、ザントは前を向く。そこには茶髪と黄色の髪の少女、霊夢と魔理沙がいた。それを見たザントは言葉を発する。
「ほう、まさか博麗の巫女と白黒の魔法使いがいきなり相手とはな・・・。私も少し気を引き締めねばならないな。」
「魔理沙、気をつけて。見た目からしてあいつはタダ者じゃないわ。」
「分かってる、だからいつも以上に注意しないとな。」
「さぁ、行くぞ!」
そう言うとザントは二人に向かって紫色の弾を飛ばしてきた。二人はそれを二方向に分かれて避ける。最初にザントが目をつけたのは魔理沙だった。彼は彼女に紫色の弾を連射する。魔理沙もそれを箒に乗りながらかわす。
「箒を使って私の攻撃を避けるとは・・・卑劣にも程がある。」
少し腹が立ってきたザントはさらに多く紫色の弾を連射する。魔理沙はそれに追いつかれないようにかわす。と、彼女がかわした先にザントが先回りして曲刀を構えた。
「げっ!」
だがザントの攻撃が魔理沙に命中するよりも先に霊夢の放った封魔針がザントに命中していた。
「くっ、博麗の巫女がいたか・・・」
「あんた、油断したようね。魔理沙に夢中になりすぎよ。」
「くっ、流石の私も2対1は辛いな。ならばお前達にとっておきのものを見せてやろう。」
そう言うとザントは宙に浮かび始めた。そして彼は何かをため、自分の背後に赤い旋盤を出現させた。その瞬間、辺りが水に覆われ、場所が博麗神社から湖の中に移動した。
「なっ、水!?」
「ま、マズイ。ここは・・・」
「苦しいか?これはガノンドロフ様から頂いた力だ。これでお前達を圧倒してやろう。」
そう言うとザントは水中の中で二人に向かって紫色の弾を連射してきた。霊夢と魔理沙は攻撃を避けようとするが水中にいるため、中々速く動くことが出来なかった。そのままザントの攻撃が二人に命中した。
「むぐぐ・・・(マズイ、息が・・・)」
「ゴポッ・・・(速く上がらないと・・・)」
息が出来なくなった二人は急いで水中から上がろうとするが、
「無駄だ。ここは私の世界、地上に上がることなど不可能だ。」
「!?」
嘘だと感じた二人は彼の言葉を無視して水中から上がろうとする。だが泳いでも泳いでも中々地上に辿り着くことが出来なかった。
「無駄だと言っているのが分からないか?」
そう言うとザントは上へ上がろうとする霊夢と魔理沙の足を掴み、上がるのを阻止した。
「ゴポッ・・・(も、もう無理・・・)」
霊夢と魔理沙は息が限界になり、意識が朦朧となった。それを見たザントは再び背中に赤い旋盤を出現させた。その瞬間、水が一瞬にして消え、先程三人がいた博麗神社に戻ってきた。そんな中、二人の服は水浸しになっていた。そんな中、ザントが二人に魔術をかけた。
「うっ!?」
「な、なんだこれ・・・」
その瞬間、霊夢と魔理沙の体が十字架の形になり、二人はその場から動くことが出来なくなった。そんな中、ザントが二人に近寄り、言う。
「これが私の力だ。お前達のような人間など私の眼中にない。お前達などガノンドロフ様の養分に成り果てればよいのだ。」
「そんなになってたまるか!」
魔理沙がザントに断言する。そんな彼女を見て彼は顔を彼女の耳元まで寄せると、顔を覆っていた被り物の口の部分を開き、言葉を発する。
「そんなお前はあの女によく似ている。私はそんな輩が欲しい。」
そう言うとザントは魔理沙から放れた。その瞬間、ザントの体がみるみる大きくなっていき、遂には神社よりも大きな体になった。それを見て二人は目を大きく見開く。そんな中、ザントが二人に言う。
「去らばだ、博麗の巫女と白黒の魔法使いよ。」
そう言うと彼は右足を上げ、そのまま二人に向かって叩きつけた。
「くっ、こんなところで負けるわけには・・・」
霊夢と魔理沙、絶体絶命のピンチ!果たしてどうなってしまうのか!?
次作もお楽しみに!