東方混沌記   作:ヤマタケる

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メメントモリに知恵と力で押すメルト・グランチの強さは四人の力を凌駕していた。


第122話 ニルヴァーナの思い

突如として爆発音が辺りを包む。その音に気絶していた百々は目を覚ました。

 

「っ!ば、爆発……?おい九十九、起きろ!」

 

自身の隣で同じように気絶している九十九に声をかける。

 

「んぁ!?……百々か。なんだ?」

 

「どっからか爆発音が聞こえるんだよ。」

 

その声に九十九も目を覚まし、続く百々の言葉に警戒心を強めた。

 

「お、百々に九十九。」

 

「起きたのか。」

 

二人が起きたのに気づき、冷静に言う二人の前にはメラメラと炎が燃え盛っていた。それを見た百々と九十九はぽかんとなりながら口を開く。

 

「ほ、炎?」

 

「どうりで暑いわけだ……。」

 

と、楓が笑みを浮かべながら言う。

 

「よろこべ二人とも。最強の助っ人がメメントモリと戦っている。」

 

「最強の・・・。」

 

「助っ人?」

 

「あいつだ。」

 

そう言うと悠岐はある方向を指を指す。指を指す先には長身で後ろ髪を束ねていて左手を背に回していて右手に刀を持っている男がいた。と、楓が言う。

 

「あのオッサン、敵になれば厄介だが仲間になると凄く心強い。」

 

「あぁ、グランチさんか。」

 

「あぁ、グランチのおっさんね。」

 

二人とも助っ人の姿を確認し、納得したように手を打った。それを聞いた悠岐と楓は少し驚いたような表情をして口を開く。

 

「お前ら、あいつを知っているのか?」

 

「お前達とは初対面の筈なのだが・・・。」

 

「なんでも知ってる妖精さんから聞いたんだよ。」

 

「ご丁寧に対処法付きでな。もう忘れちまったけどよ。」

 

「そうか・・・。」

 

四人が話している中、メルト・グランチが四人を見て言う。

 

「諸君、下がっていたまえ。闘神との戦いのフィナーレとする。」

 

「わ、分かった。」

 

「分かってると思うけどあの女はそう簡単に死なないからな。絶対に殺せよ。」

 

「あいあい、雑魚兵は後ろに逃げますよー。」

 

「ククク。」

 

笑い声を上げるとメルト・グランチは背に回していた左手を前に出した。と、彼の左手に紫色のオーラが漂い始めた。

 

「・・・?」

 

「やべっ!!」

 

「もっと離れろ!!あれを食らったら人溜まりもない!」

 

それを見たメメントモリは首を傾げ、逆に悠岐と楓は目を見開きながら言う。

 

「ほら、後ろに下がってな。『いまは遙か理想の城』」

 

どこからか取り出した盾を構える九十九。すると、彼女の背後に白亜の城が現れ、百々、楓、悠岐を包んだ。そんな中、メメントモリがメルト・グランチに言う。

 

「あなたが何をしようが、私はお母さんのためならばまだ戦う!」

 

「終いだ、闘神。」

 

そう言った瞬間、辺りに謎の威圧が響く。それを感じた楓が口を開いた。

 

「来るぞ、かつて私も悠岐も食らったあの技が!!」

 

「これでも食らいな・・・。」

 

「爆暗闇のフレア。」

 

そう言った瞬間、メメントモリを中心に紫色の炎の一撃が辺りを襲った。

 

「きゃぁぁぁぁぁぁ!」

 

爆破の勢いは無縁塚全体を多い尽くすほどの威力を引き起こし、九十九がみんなを包んでいた盾にはヒビが入る。それを見た百々が口を開く。

 

「爆破がやべぇ……。この城が無かったらヤバかったな。」

 

「あいつは現世を支える王の一人だ。あれくらいは容易く出る。」

 

百々と楓が話している中、メルト・グランチは眉間に皺を寄せて言う。

 

「ふむ、参ったな。本来の力の3分の1も出せていない。やはり扱いが難しい。」

 

「あの、な!少しはてか、手加減し、ろ!!」

 

元気な百々たちとは違い、九十九だけは爆破をもろに受けたかのようにボロボロだった。そんな彼女にメルト・グランチは笑みを浮かべて言う。

 

「ククク、だが3分の1であろうともう闘神は戦えぬようだな。」

 

そう言うと彼はある方向へ顔を向ける。

 

「うぅ、痛い。痛いわお母さん・・・。」

 

彼が目を向けた先には爆発で大怪我を覆ったメメントモリの姿があった。

 

「鬼でよかったホント!」

 

メメントモリに一度目をやった九十九はそう言葉を漏らした。

 

「た、助けて・・・。お母さん・・・。」

 

「生憎だが、卿の母親は取り込み中でね、助けることは出来ない。故に卿はもうきえそうではないか。」

 

彼の言うとおり、メメントモリの体が徐々に消えかかっていた。それを見た九十九がメメントモリに言う。

 

「メメントモリ、アンタの罪を閻魔様に精算してもらうんだな。……アイツらを殺した罪を!」

 

 

「・・・ククク、それはどうかしらね?閻魔様は罪を精算してくれるかしらね?」

 

そう言う彼女の頭の中には百々のことでもなく九十九のことも浮かんでいなかった。浮かんでいたのは一つの思い出だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やっぱり、あなたのことしか浮かばないわ。あなたは私にとって一番大切な人であり愛しいお母さんよ。

 

「メメ、アンタは美しい。私が見た中で一番ね。その美しさ故にアンタは色んな相手を魅了することが出来る。その性格を維持していきなさい。私はそんなアンタが好きだから。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

過去の思い出を振り返ったメメントモリは上に手を伸ばし、涙を流しながら口を開いた。

 

「大好きよ、お母さん。」

 

そう言った瞬間、メメントモリは光の塵となって消えていった。それを見たメルト・グランチは四人を見て言う。

 

「大丈夫だったかね?」

 

「あぁ、俺らは大丈夫だけども、九十九が巻きこまれたな。」

 

百々の言葉を聞いたメルト・グランチは九十九を見て言う。

 

「星熊九十九だったかな?すまないな。力を抜いたつもりだったのだが・・・。」

 

「いやあの技、『いまは遙か理想の城(ロード・キャメロッド)』は私が守ると認識したものには絶対の守りを与えるがその分自分に対しての加護がほとんど無いからな。自業自得さ。」

 

「そう、か。故に伊吹百々と星熊九十九よ。」

 

「ん?」

 

「あ?」

 

「私は君達と以前何処かで会ったことがあったかな?」

 

彼の言葉にピクリと反応する悠岐と首を傾げる楓。そんな二人とは別に百々が口を開く。

 

「どうしてそう思うんだ?」

 

「以前君達と似たような者と会ったのだよ。過去に私と八雲紫で起こした先代異変。その中で君達とよく似た者を雇っていた記憶があるのだ。」

 

「ふーん。でも私はグランチのおっさんは知らねぇぞ?」

 

「上に同じく。琥珀なら何か知ってそうではあるがな。」

 

「恐らくそれはない。闇の闘神アカシャの影響で全ての者達が一部の記憶を奪われているらしいからね。」

 

「アカシャか。あいつは何考えてるか分からないから嫌いなんだよな。」

 

遥か過去、滅ぼされていく幻想郷で動こうとせずに突っ立ていたアカシャを思い出しながら九十九はそう言う。

 

「無論、私も琥珀という妖精も例外ではない。」

 

「そうなのか・・・。」

 

悠岐が言った瞬間、楓がメルト・グランチに言う。

 

「オッサン、話変わるがオッサンはこれからどうするんだ?」

 

「人里へ向かい、里を襲うエリュシオンの傀儡を処理する。」

 

「あと残ってる闘神?は何人なんだ?」

 

「私の受けた報告ではドゥームは倒されたと聞いた。メメントモリは私が倒した。ということは残り3体か。」

 

「ってことは、『ニルヴァーナ』と『カルマ』に『アカシャ』か。めんどくさいのが残ったなぁ……。」

 

残った3人の能力をある程度知る九十九はため息をつく。そんな彼女にメルト・グランチは背を向けて言う。

 

「諸君なら倒せると優理花も言っていた。彼女の言葉を信じたまえ。では私は失礼するよ。」

 

そう言うと彼は霧のように消えていった。

 

「行ってしまった。」

 

「聞いてた通り嵐のような人だな。」

 

「あぁ、あいつはよく分からない男なんだ。」

 

百々と楓が話している時だった。突如四人の背後から地面に着地する音が響いた。

 

「!?」

 

「何奴!?」

 

「……うっわぁ。」

 

他のメンバーが驚く中、九十九だけが気の抜けた感想を漏らした。つまり、その人物は彼女だけが知っているわけで―――

 

「ヨォ、ボーイズ&ガールズ。」

 

「だ、誰だ?」

 

「また会えたな、闘神ニルヴァーナ!!」

 

「随分とファンキーな人だな……。」

 

やはり場違いな感想を抱く百々であった。

 

「ヨォ、デビルガ・・・ん?お前は・・・。」

 

そう言うと闘神ニルヴァーナは視線を悠岐、楓から百々、九十九へ向ける。それに気づいた九十九が言う。

 

「はぁ……。久しぶり、ニルヴァーナ。」

 

「何をしてるんだ九十九!!そいつから離れろ!!」

 

九十九は楓の言葉に手をヒラヒラとさせるだけだった。

 

「アンタ何してんだ?」

 

「何してるって私の・・・。」

 

「私の台詞だ!ってか?」

 

「なっ!?」

 

心を読まれて驚く楓とは別にニルヴァーナは九十九の背後へ移動する。それを見た悠岐が言う。

 

「テメェ、九十九に何するつもりだ!」

 

「ニルヴァーナ、次のお前のセリフは『セクハラに決まってるだろ!』だッ!」

 

「セクハラに決まってるだろ!・・・はっ!?」

 

「!?」

 

(九十九の奴、ヴァンの十八番を?)

 

驚く悠岐とは別に楓は目を細めて心の中で語る。

 

「分かっててやらせると思うのか!?」

 

そう言って九十九は背後にいるニルヴァーナの大事な場所に向けて蹴りを放った。

 

「ペェェェェェェェェイン!!」

 

そう叫ぶとニルヴァーナは大事な場所を押さえながら膝をつく。

 

(うーわ、容赦ないなこいつ。)

 

(見てて○ャン玉痛くなる……。)

 

その様子を見て悠岐と百々は苦笑いをして心の中で語る。そんな二人とは別にニルヴァーナは悶えながら言う。

 

「いてぇよ!俺に痛みはいらねぇ!」

 

「遺言は、それでいいんだな?」

 

手をパキポキと鳴らしながらニルヴァーナへと向かう九十九。それを見たニルヴァーナは彼女に言う。

 

「ちょ、ちょっと待て九十九!別に俺はお前らと戦うために来た訳じゃない!」

 

ピタリと、九十九が歩みを止める。

 

「戦いをしに―――」

 

「―――来たわけじゃない?」

 

九十九の言葉を百々が引き継ぐ。そんな二人に再びニルヴァーナが言う。

 

「あぁ、そうさ。俺はお前らに母さんの計画を話に来ただけだ。」

 

その言葉を聞いた九十九は拳を下ろした。そして言う。

 

「アンタ、自分の親を、アレを裏切るの?」

 

「俺は裏切るつもりはない。母さんにばれないようにお前らに話すだけだ。」

 

「それを裏切りって言うんじゃ……。」

 

幸運にも、百々の呟きがニルヴァーナに届くことはなかった。そんな彼に気にせずニルヴァーナは再び口を開く。

 

「母さんは一番俺を信用している。俺の嘘とかはバレない筈だ。」

 

「……ま、こっちとしてもそれが知れるのは助かるか。殺されなきゃ今度飯でも奢ってやるよ。」

 

「感謝するぜ九十九。んじゃあこっちに来な。」

 

そう言うと彼は無縁塚の岩の方へ向かっていく。

 

「あいよ。……セクハラしたら切り落とすから。」

 

「しねぇって。」

 

九十九とニルヴァーナが話している中、楓が百々に言う。

 

「いいのか百々?あいつを信頼して。」

 

「分かんない……けど。」

 

一度言い淀んでから百々は言葉を続ける。

 

「なんか、アイツは信用していいってどっかで思えるんだ。なんでかわかんないけど。」

 

「今は信じよう。そして後に殺す。」

 

悠岐の言葉が聞こえなかったのか、ニルヴァーナは後ろを見て百々に言う。

 

「あ、そうだ。お前にも用があるぜ。記憶を無くしたデビルボーイよ。」

 

そう言うとニルヴァーナは服の中から赤い光を取り出した。

 

「赤い、光?なにこれ、弾幕か何かか?」

 

「記憶さ、お前の奪われた記憶だ。」

 

「記憶、だって?」

 

ニルヴァーナの言葉に百々は信じられないような顔になる。そんな彼にニルヴァーナは言う。

 

「あぁ、俺とお前との日々の記憶だけだがな。」

 

「……ちょっと待ってくれ。俺は、お前を知ってるの……か?」

 

「今は知らねぇ。だが、これをお前に返せば知っている。」

 

「……そう、か。だから俺はお前を信じてみようと思えたのか。」

 

「ま、とりあえずこれはお前に返すぜ。」

 

そう言うと彼は無理矢理百々の口を開けさせた。

 

「……ふぁ!?」

 

そのまま彼は赤い光を入れ、飲み込ませた。

 

「ふぁふぇふぁ……んぐっ。……あんまり美味くないなこれ。」

 

「旨い訳ないだろ百々!!」

 

そう言うと彼は百々の頭を叩いた。

 

「痛っ!いきなり何すんだよニル!」

 

「え?」

 

百々が発した、『ニル』という言葉に悠岐と楓が反応する。そんな二人とは別にニルヴァーナが言う。

 

「クヒヒヒヒ、思い出したようだな百々。」

 

ニルヴァーナに言われ、百々は頷いた。

 

「あぁ、なんで忘れてたのか悩むほどな」

 

「にしてもニルヴァーナ、よくアカシャから取り返せたなこの記憶。」

 

先程まで何かをしていた九十九が戻ってきた。そんな彼女にニルヴァーナが真剣な顔をして言う。

 

「奪ってきたのはアカシャからじゃない、カルマからだ。」

 

「カルマね。ならワンチャンあるか。」

 

「あぁ、そうだな。」

 

そう言うとニルヴァーナは岩の麓の穴を見て言う。

 

「ここの穴なら全員入れそうだ。ここで話そう。」

 

「感謝しろよな。広げてやったんだからよ。」

 

「あぁ、感謝するぜ九十九。」

 

そう言うと彼は悠岐達を先に入れさせた。

 

「あー、肩やばい。」

 

九十九もそんなことを口走りながら悠岐達に続いてく。

 

「ほら、俺らもさっさと行こうぜ?」

 

「そうだな。」

 

そう言うとニルヴァーナは中へ入り、自分の来ていたマントで外を隠した。




メメントモリを倒したメルト・グランチ。百々達にエリュシオンのことを話そうとするニルヴァーナ。一体何故なのか・・・。
次作もお楽しみに!

余談:今朝モンストでモンコレやっていたので気分で引いたら5体目のベートーヴェンが出ました(´・ω・`)
2月(くらい?)からFINAL FANTASYコラボが来るのでユウナ当てるためにオーブ貯めます!

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