東方混沌記   作:ヤマタケる

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無縁塚で出会う悠岐、楓と百々、九十九。不安で仕方ないが・・・。


第119話 メメントモリ再び

頭を押さえながら悠岐はある方向を見る。そして百々と九十九に言う。

 

「さぁてどうするお二人さん。紅魔館とこの周辺から嫌な気配がする。」

 

「どう分かれる?」

 

楓が言った瞬間、百々と九十九が不安そうな表情を浮かべて言う。

 

「楓、アンタ大丈夫か?」

 

「霊力がほとんど感じられないな。……怪我でもしかのか?」

 

二人に言われた楓は胸に手を当てて言う。

 

「あぁ、琥珀に少し怪我を癒してもらった。完全に治った訳ではないが動けるくらいまでなら。」

 

「あまり無茶するなよ。ニルヴァーナにやられたダメージはでかい。」

 

「そ。……ニルヴァーナ、ね。」

 

そう呟く九十九の顔は晴れなかった。そんな彼女に悠岐が言う。

 

「九十九、お前ニルヴァーナを知っているのか?」

 

「……いや、名前だけだ。名前だけ……。」

 

「名前だけ、か・・・。」

 

「話は後にしよう。今はどちらに行くかだ。悠岐はどちらにいく?」

 

「そうだな、俺達は紅魔館に行こう。無縁塚は二人に任せていいか?」

 

「無縁塚ってと、またあの彼岸花女とやり合うことになるのか……。」

 

そう言う百々の声色は少し暗かった。

 

「もうあのババアと殺り合うのは勘弁だが……。」

 

「ババア?それは闘神のことか?それとも・・・。」

 

「二人には申し訳ないがいいか?」

 

「あの闘神……ん、何だ?」

 

「どした?」

 

二人は顔を上げて楓に視線を向ける。

 

「二人にまた無縁塚を任せて。」

 

「ん、なんじゃありゃ。」

 

そう言うと悠岐はある方向を指差した。

 

「え?」

 

声を上げた二人は悠岐が指差す方向を見る。そこには長身で腰まで伸びる銀髪、青い瞳の女性が立っていた。

 

「なんだあいつは!?」

 

「気をつけろ、エリュシオンだ!!」

 

楓の言葉をを聞いた瞬間、悠岐、九十九は咄嗟に身構える。そして九十九は口を開く。

 

「とうとう来やがったな!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ずいぶんと身長の高い女性だな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

十人十色とは言うものの、百々の反応だけがズレており彼以外がズッコケた。

 

「言うことが違うだろうが!!」

 

そう言うと彼は百々に一発チョップをいれた。

 

「イテッ!」

 

「いまそんな場面じゃないから!!」

 

九十九も続けて拳を腹に叩き込んだ。

 

「ゲブォ!?」

 

「馬鹿者!!」

 

二人に続いて楓も百々の頭を叩いた。

 

「いでぇ!!」

 

四人のやり取りを見たエリュシオンは少し掻いていた汗をハンカチで拭き、言う。

 

「やれやれ、まさかあなたがこんなボケキャラとはねぇ、百々。」

 

「……えっと、どなたですか?」

 

涙目になりながらも問いかけに答える。

 

「あぁ、そうだったわね。アカシャに記憶を奪われたから私のこと覚えてないのね。」

 

「アカシャ?」

 

「……記憶を奪うことの出来る闇の闘神の事だ。」

 

九十九が楓の疑問に答えるように解説を入れる。

 

「闇の闘神!?闘神は3体じゃないのか?」

 

「違うわよ悪魔。闘神は5体いるの。」

 

驚く悠岐とは別にエリュシオンは冷静に答える。と、九十九が口を開く。

 

「炎の闘神ニルヴァーナ、水の闘神ドゥーム、木の闘神メメント・モリ、光の闘神カルマ、闇の闘神アカシャの5体だ。全員なかなかにめんどくさい能力を持ってるぞ。」

 

「その内の一人がニルヴァーナか。」

 

「そうよ、悪魔の小娘。あの子達は私の可愛い子供達。故に、星熊九十九のいた幻想郷を滅ぼした元凶よ。」

 

「なんだと!?」

 

その言葉に悠岐と楓が九十九に視線を向ける。

 

「……もう過去の事だ。だからそんな目で見るな。私は大丈夫だ。」

 

そう答える九十九とは別にエリュシオンは不気味な笑みを浮かべて言うなれば

 

「本当に大丈夫なのかしら星熊九十九。アンタは心を深く傷つけられている筈よ。なんせ、目の前でアンタの家族や大切な仲間、そして世界が滅ぼされたのだから!!」

 

始終九十九に不気味な笑みを浮かべながらエリュシオンは言った。

 

「九十九・・・」

 

彼女の名前を言う楓。そんな彼女とは別に九十九は冷静に口を開く。

 

「……何言ってんだ?鬼も生きてんだ、いつかは死ぬもんだろ。ただ死期が早まっただけなのに何を怒るんだ?」

 

彼女、星熊九十九は人と鬼の間に生まれた半鬼半人という存在だ。百々がヒトを主軸としているのなら彼女は鬼を主軸としている。彼女の死生観は鬼のそれそのものだったのだろう。と、エリュシオンが口を開く。

 

「別に私は怒ってはいない。アンタを煽りたい、ただそれだけよ。」

 

「テメェ!!」

 

そう言うと悠岐はエリュシオンに刀を向ける。それを見た九十九は悠岐に言う。

 

「やめときな。アンタじゃソイツには勝てないよ。」

 

「なっ!?」

 

「やってもないのにか!?」

 

「……や、やめた方、がいいと、思うぞ。」

 

今まで黙っていた百々が口を開いた。彼は顔に汗を浮かべ、身体を震わせていた。

 

「まぁ、私は今アンタ達と戦うつもりはないけれどね。戦ったとしても私が勝つのは必然。」

 

「・・・なんだとテメェ。」

 

悠岐は楓の一言に反応する。そう、彼は知っていたのだ。出野楓、彼女が「テメェ」という言葉を発した時、彼女は怒っているのだと。

 

「楓、待てって言ってるでしょ」

 

 

呼び止めるように九十九が楓に言う。そんな彼女とは別にエリュシオンは口を開く。

 

「そんなに私と遊びたいの?フフフ、まだダメ。私の子と戦ってからじゃないと。おいでなさい、魂の牢獄を愛でし木の闘神、メメントモリ。」

 

そう言った瞬間、エリュシオンの背後から巨大な彼岸花の蕾が現れ、中から彼女より背丈の高い女性が姿を現した。女性を見た悠岐は声を上げる。

 

「あいつは!!」

 

「うっわ、また出たよあのババア。」

 

そう言って九十九はまた『物干し竿』を手に持つ。

 

「彼岸花の人ならどうにか……!」

 

百々も九十九をサポートする様に背中に翼を出現させる。と、エリュシオンが口を開く。

 

「さっきはやられたけど今回のメメはそうはうまくいかないわよ。なんせ、私が少し力を貸したのだから。ね、メメ。」

 

「えぇ、お母さん。」

 

二人で話すエリュシオンとメメントモリとは別に九十九は物干し竿を構えながら言う。

 

「だからどうしたってんだ。今回は4人もいるんだぞこっちは。」

 

「フフフ、さぁメメ。話は後でよ。あの四人を始末しなさい。」

 

「分かったわ、お母さん。」

 

その瞬間、エリュシオンは霧のように消えていった。それを見た楓はチッと舌打ちをし、言う。

 

「・・・逃げたか。」

 

「・・・さぁ、始めましょう。」

 

そう言った瞬間、メメントモリの回りに白い巨大な円球が現れた。

 

「で、デカ!?」

 

「全員、俺の後ろに来い!!」

 

「フフフ、恐れなくていいのよ。これは攻撃ではなくただの妨害のもの、重力バリアよ。」

 

「重力バリアだと?」

 

その言葉に楓は反応する。そんな彼女とは別に九十九が言う。

 

「全員アレに触れんなよ!動けなくなるかんな!!」

 

九十九の言葉に全員が頷く。……一人を除いては。

 

「ごめん……。既に遅いんだけど……」

 

「このバカァァァ!!!」

 

あまりの愚かさに思わず声を上げてしまう九十九。そんな彼女とは別に悠岐はやれやれのポーズをとり、言う。

 

「やれやれ。」

 

そう言うと彼は重力バリアに触れないように百々を引っ張り出した。

 

「そらよっと!」

「アベ!?」

 

引っ張り出された百々はそのまま地面に叩きつけられた。……いやまぁ、仕方の無い事だが。

 

「さ、さんきゅ。っと、捕まってみて分かったが素早く動ける奴ならどうにか動けそうだったぞ!!」

 

「確か、俺の知り合いに一人重力バリアに対応出来る奴がいた・・・。」

 

「話は後だ悠岐。まずは重力バリアを突破するぞ!!」

 

そう言うと楓はメメントモリの元へ向かっていく。




再びメメントモリと戦う百々、九十九と初めて対立する悠岐と楓。四人に勝機はあるのか!?
次作もお楽しみに!

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