「ハァ、ハァ。」
ザントに見つかってしまい、全速力で逃げるアリスはユニのいる東側へ向かっていた。彼女に助けを求めるためである。2対1の状況では彼女は逃げることしか出来なかった。
「ユニ!助けてユニ!」
アリスは大声を出しながらユニに助けを呼んだ。だがまだ彼女との距離が離れているため、ユニが来そうになかった。そしてアリスが東側へ到着する瞬間だった。突如として白髪の男、ギラヒムが彼女の目の前に現れたのだ。
「なっ!?」
「こんにちは、アリスちゃん!」
彼女は突然自分の目の前に現れては何の対応もすることが出来なかった。そのままギラヒムは右手に魔族の剣を握り、アリスの右腕を切り落とした。
「!?」
切られた右腕からは鮮血が飛び散る。と、背後から突然銃声が響いたかと思うと何者かがアリスの腹部を撃ち抜いた。
「かはっ!?」
「何っ!?」
突然の何者かの奇襲を予期していなかったギラヒムはただ目を大きく見開くしか出来なかった。
「あ、あぁ・・・」
そんな彼とは別にアリスは吐血しながらそのまま地面に倒れた。右腕を切られ、急所を撃ち抜かれては彼女はもうどうしようも出来なかった。そんな彼女とは別にギラヒムは銃弾が飛んできた方向を見る。
「チッ、外したか。」
そこにいたのは体は人間と同じで鰐の頭をしていて緑のコートを着ていて左手には拳銃を、右手には刀を握っているドールクがいた。そんな彼にギラヒムは言う。
「これはこれはドールク君、また会ったね。こんなところで会うということはきっと私達は運命の赤い糸で結ばれているんだね。」
「ギラヒム、テメェ、何でこんなところにいるんだ。」
「ここにいる理由?決まってるじゃないか。マスターの命令で内密にしていたことをこのアリスちゃんにばれてしまったからね、彼女を細かく切り刻もうとしたんだけれども君が止めをさしてしまった。つまり君はいいところ取りをしたんだよ。」
「だからどうした?俺が狙ってたのはこの小娘じゃなくてテメェなんだよ。」
「ほう、それは意外な発想だな。君は幻想郷を支配するのが目的じゃないのかい?」
「俺はそのためにまず邪魔なテメェをぶっ殺すんだよ。覚悟しやがれ!」
そう言うとドールクは刀と拳銃を構えた。それを見たギラヒムはクスクスと笑いながら魔剣を構えた。
「いいだろう、相手してあげるよ。ちょっとだけならね。」
そう言うと彼はゆっくりと歩きながらドールクに近づいた。それを見たドールクは拳銃を発砲する。ギラヒムはそれを魔剣で弾いていく。
「くらいやがれ!」
その声が聞こえた瞬間、ドールクが上から刀を降り下ろしていた。ガキンッという音が辺りに響いた。
「フフフフフ。」
「なん・・・・だと・・・」
ドールクはギラヒムのとった行動に驚きを隠せなかった。何故ならギラヒムは空いている左手の中指と人差し指でドールクの刀を受け止めていたからである。驚く彼にギラヒムが言う。
「その刀、あまり私の好みではないな。まあ、それは別として君の構えを見れば私は何度でも君の攻撃を止められるよ。」
「そうか、だったらこいつはどうだ!」
そう言うとドールクは左手に握っていた拳銃をギラヒムに突きつけた。
「何っ!?」
目を大きく見開いたものの、ギラヒムは拳銃の銃弾が当たる前にドールクの刀を放し、魔剣で彼の攻撃を防いだ。
「フン、やるじゃねぇか。」
「君もね。」
二人は笑みを浮かべながら一歩も譲ることなく戦う。そんな中、アリスの声を聞きつけてユニがやって来た。
「あ、あれは!!」
ギラヒムとドールクが戦っているのを見てユニはすぐに気づかれないように草影に身を隠した。そしてあることに気づく。
「ア、アリス!!」
ユニは二人が戦っている中、地面に倒れるアリスの姿を確認した。右腕を切り落とされ、腹部を撃ち抜かれた後を見て二人にやられたのだと彼女は察した。
(今ギラヒムとドールクは交戦状態、あの状況でアリスを助けられるのは相当困難なこと。速い人と言えば・・・そうだ!あ、でも彼は・・・仕方ない、やむを得ないわね。)
心の中で決心したユニは二人に気づかれないようにスペルカードを発動した。
「呼符コールザエニー。」
そして彼女は呼び寄せる者を頭に思い浮かべ、そして呼び寄せる者の名前を口にした。
「アリスを助けて、西田悠岐!」
彼女が言った瞬間、ユニの右側に直径2mほどの空間が現れた。そしてその中から猛スピードで黒い髪に黒のコートを来ている青年が倒れているアリスを救出した。あまりにも彼の動きが速すぎるため、ギラヒムとドールクが気づく様子はなかった。そして青年はユニの隣に来た。そして彼女を見ながら言う。
「お前がモルトの妹のユニか。」
「えぇ、そうよ。初めまして、西田悠岐君。」
「おう、初めまして。さ、そんなことより永遠亭に行くぞ。二人の戦いに巻き込まれたら面倒だからな。」
そう言うと悠岐はアリスをお姫様抱っこしながら永遠亭に向かった。アリスを抱えているのにも関わらず彼の動きは素早かった。そんな彼の後にユニもついていった。
「ハァァァァァ!」
アリスがいなくなったことにも気がつかないギラヒムとドールクは戦闘を続けていた。ギラヒムは声を上げながらドールクの方へ走ってきた。そして彼の腹部を切りつけた。
「チッ!」
彼の不可解な動きをドールクは読むことが出来ず、腹部に切り傷を被う。そんな彼とは別にギラヒムは再び彼に向かって走ってきた。ドールクはそんな彼の動きを見切り、拳銃を発砲した。彼の攻撃はギラヒムの右肩に命中した。
「おおっと!」
肩を撃ち抜かれたため、ギラヒムは肩を抑えながら後退りした。だが彼は笑みを浮かべていた。そして二人同時に地面を蹴り、同時に攻撃しようとした時だった。
突如として辺りに爆発音が響いた。それを聞いた二人は思わず手を止めてしまう。そして爆発音が響いた方向を見る。そこは人里だった。
「ほう、あれは君の仲間の・・・クリーフル君だったかな?恐らく彼の仕業のようだね。」
「クリーフルらしくないやり方だが、まあ技を見ていればあいつだってすぐに分かるな。」
「さて、時間だ。君との決着は二の次とさせてもらうよ。だからそれまでは死んじゃ駄目だよ。次戦う時は全治100年で済ませてあげる。それじゃあ、またね~。」
そう言うとギラヒムは何処かへ消えていった。それを呆然と見ていたドールクはある方向を向き、言う。
「古明地さとりを攻めるか。紅魔館はあいつに任せているからな。」
そう言うとドールクは地霊殿へゆっくりと歩いて行った。二人ともアリスのことをすっかり忘れて。
魔法の森奥地ではガノンドロフとザントがまだいた。そんな中、ザントがガノンドロフに言う。
「ガノンドロフ様、先程草影にいた者をギラヒムが排除したようです。」
「後でギラヒムにご苦労と伝えておけ。さぁ、ザント。お前も行くがよい。全てを我が物とするために!!」
「はっ!」
そう言うとザントは何処かへ消えていった。それを見たガノンドロフは笑みを浮かべながら言った。
「覇王の小僧、お前には幻想郷は譲らぬ。故に召喚のトライフォースもな。」
「うわあああああああ!」
「助けてぇぇぇぇ!」
人里ではクリーフル率いる覇王軍の一部隊が人里を奇襲していた。
「一人も逃がすな、全員処罰しろ。」
逃げる人達をカックン達は一人も残さないように追いかけ回した。
「見つけたわよ、覇王クリーフル!!」
突然声が聞こえたため、彼は後ろを振り返る。そこには霊夢、紫、妹紅の三人がいた。それを見たクリーフルは眉を潜めて、言う。
「あのなぁ、俺が今何をしてるのか分からないのか?俺はテメェらの相手をするほど暇じゃねぇんだよ。カックン、こいつらの相手をしろ。」
そう言うと彼は周りに群がっていたカックン達を呼び寄せた。そして三人に奇襲するように命じた。
「じゃあな、博麗の巫女、不死鳥、そしてスキマ妖怪。」
そう言うと彼は霧のように消えていった。クリーフルが消えた瞬間、カックン達が一斉に三人に襲いかかった。
その瞬間、大勢の鬼が三人の前に現れ、カックン達に奇襲した。それを見た霊夢は一人の少女に言う。
「ありがとう、萃香。」
「これくらい大丈夫だよ!霊夢達は地霊殿か博麗神社に行ったほうがいいよ。さっきザントとドールクを見かけたんだよ。」
「博麗神社が!?私は博麗神社に行くわね。」
「分かった、私は地霊殿へ向かう。」
「私は適当に誰かを倒すわね。」
そう言うと三人はそれぞれの場所へ飛んでいった。
次々と集まる幻想郷の人達!そしてまた何かを企むガノンドロフ。
次作もお楽しみに!