東方混沌記   作:ヤマタケる

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激戦でエリュシオンに敗れた神奈子。諏訪子一人を残してエリュシオンはまた何処かへ行き、邪魔者を排除していく。


第114話 地霊殿を襲う怪物

場所は変わって地霊殿付近。そこではユニ達とかくかくしかじか話し合って見回ることになった悠岐が一人で独り言を言いながら歩いていた。

 

「ったく、ユニの奴、俺と楓を一人で行かせるなんて。まぁ考えは悪くないが・・・。だが、これで良かったのか?少し不安だな。」

 

ぶつぶつ言いながら彼は地霊殿の中へ入っていく。中に入った彼は大声で口を開く。

 

「おーいさとり!さとりはいるかー?」

 

彼が叫んだ瞬間、鳥が羽ばたくような音が辺りに響いたかと思うと彼の前に一人の少女がやって来た。背中にカラスのような翼を生やし、胸には赤い目が飛び出ている少女だった。と、少女が悠岐に言う。

 

「悠岐さん、お久しぶり!急にどうしてここへ?」

 

「よぉ空。さとりに用がある。さとりを呼んできてくれないか?」

 

「さとり様?さとり様は今悪夢で魘されているこいし様を見てるよ。」

 

「悪夢?こいしが悪夢を見るとは珍しいな。」

 

「それが数週間続いててさとり様が何とかしようとしてるんだけれどどうしようもならなくて・・・。」

 

「そうか・・・。分かった、悪夢なら俺が何とかしよう。」

 

「うにゅ!?そんなこと出来るの!?」

 

「出来るさ。お前達は知らないかもしれないが、カオスが霊夢に悪夢を見させてた時にも悪夢を取り除いたのは俺なんだ。」

 

「そ、そうだったんだ。じゃあちょっと待っててね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「モオォォォォォォォォォ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如辺りに響く牛の鳴き声を聞いて二人は動きを止めてしまう。

 

「な、何!?」

 

「牛?」

 

その時だった。突如外から二人に向かって突進してくる巨大な生物が現れた。

 

「ゲッ!!」

 

「デカっ!?」

 

声を上げるものの、二人は咄嗟に避ける。突進を避けられた生物は急ブレーキし、二人を見る。と、空が生物を見て言う。

 

「あ、あれは幻獣!?」

 

「知ってるのか?空。」

 

「さとり様が言ってたんだよ。幻獣は様々な種類がいて全て人や妖怪を捕食する恐ろしい生物だって。」

 

「エリュシオンが送ってきたかもしれねぇ。さとりの元へ行く前にこいつを討伐するぞ空!」

 

「分かった!」

 

そう言うと彼は刀を構え、空は制御棒を構える。と、悠岐が幻獣を見て言う。

 

「あの幻獣の種類はバッファローか。ならば赤いものに反応して突進してくる筈だ。空!あいつは俺が引き付ける。その間にお前がやれ。」

 

「分かったよ悠岐さん!」

 

その瞬間、幻獣が悠岐を見て唸り始めた。それに気づいた悠岐は服の中から赤いハンカチを取りだし、言う。

 

「オラ来いよデカブツ。ここにお前が好きなのか嫌いなのか分からねぇが赤いものがあるぞ~。」

 

そう言いながら彼はハンカチを上に上げ、左右に揺らす。

 

「モオォォォォォォォォォ!!」

 

それを見た幻獣は悠岐に向かって走り出す。

 

「今だ空!!」

 

彼の言葉と同時に空はスペルカードを発動する。

 

「爆符メガフレア!」

 

彼女の制御棒から放たれた攻撃は一直線に幻獣の元へ向かう。

 

「モ!?」

 

それに気づいた幻獣は後退しようとするがブレーキが効かずに空の攻撃を食らう。

 

「でかした空!!」

 

そう言うと悠岐は攻撃を食らった幻獣の元へ向かっていく。

 

「モオォォォォォォォォォ!!」

 

再び雄叫びを上げるバッファロー型の幻獣。そんな中、悠岐は幻獣の頭の上に乗り、刀を構えて言う。

 

「八雲クシナダの踊狂。」

 

その瞬間、彼の持つ刀から緑色の光が放たれたかと思うとそのまま幻獣の頭に刀を刺した。

 

「モオォォォォォォォォォ!!」

 

その瞬間、幻獣は悠岐を振り下ろそうと頭を振るが徐々に体がよろけ始め、遂には倒れてしまった。と、空が悠岐に言う。

 

「こいつは死んだの?」

 

「脳天を仕留めたから死んだと思うぞ。」

 

「そっかぁ。そんじゃあさとり様のところに行こう。」

 

「あぁ、そうだな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少年少女移動中・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さとりの場所に着いた悠岐と空は先程起こったことをさとりに話した。それを聞いたさとりは頷きながら言う。

 

「なるほど、先程の上が騒がしかったのはこれの影響だったのですね。」

 

「あぁ、そうさ。勝手に暴れて悪かったな。」

 

「いえ、守ってもらえれば大丈夫なので。」

 

「さとり様、こいし様のことを話したほうがいいんじゃないですか?」

 

「そうね、話そうかしら。」

 

燐に言われたため、さとりは悠岐に話し始めた。

 

「実は数週間前からこいしが謎の悪夢を見るようになって毎晩魘されているんです。」

 

「どんな内容の悪夢なんだ?」

 

「こいしは怖い女の人が自分をじっと見て不気味な笑みを浮かべて『食べてあげる』と言うらしいです。」

 

「食べる?」

 

「えぇ、こいしや私の周りには夢の中で見た女性はいないらしいです。」

 

「う~む、エリュシオンの可能性があるな。」

 

「エリュシオン?聞いたことがあります。昔、琥珀という妖精から彼女のことを聞いたことがあります。ですが彼は名前を教えてくれませんでした。」

 

「琥珀は確かエリュシオンに呪いを掛けられて名前を言えば記憶を消されるらしいな。」

 

「あと、確かですがパルシィや勇儀さんも彼女の名前を出していました。」

 

「さて、こいしの様子を見ようか。」

 

「そ、そうですね。こいし!来なさい。」

 

彼女の声を聞いてこいしが扉を開けてやって来た。彼女を見た悠岐は目を細めて言う。

 

「震えてるな。それほど怖かったのか。それに、悪夢を取り除く時は寝てなきゃ出来ないのに今回は起きていても出来そうだ。」

 

「本当ですか?ではお願いしてもよろしいですか?」

 

「任せな。」

 

そう言った瞬間、さとりは席を立ち、その場所にこいしを座らせた。

 

「さぁ、やるぞこいし。」

 

「・・・痛い?」

 

「痛くはない。少し長いかもしれないが。」

 

そう言うと彼はこいしの額に手を置く。と、何かを感じたのか、悠岐が口を開く。

 

「あれ?すぐに取れたぞ。」

 

そう言うと彼はこいしの額から手を離し、持っていたものを見せる。それを見たさとりが口を開く。

 

「これが、悪夢の正体ですか。」

 

「霊夢の時よりも楽に取れたな。」

 

「これで安心して眠れる?」

 

「多分な。」

 

「わーい!」

 

そう言うと彼女は手を上げながらはしゃぎ始めた。それを見たさとりは笑みを浮かべて悠岐に言う。

 

「ありがとうございます。これで安心して眠れます。」

 

「礼はいいさ。」

 

と、部屋の中に誰かが入ってきた。部屋に入ってきた人物を見てさとりが口を開く。

 

「どうしたの?燐。」

 

「悠岐さん、いますか?」

 

「燐?俺はいるが。」

 

「ハァ、ハァ・・・。急いで人里に行って下さい。」

 

「人里?どうして?」

 

「あなたの大切な方が負傷して運ばれたらしいです。」

 

「・・・!!まさか。」

 

そう言うと彼は席を立ち、外へ向かう。そんな彼にさとりが言う。

 

「どうしてのですか?」

 

「すまないさとり。少し用を思い出した。また後で話そうぜ。」

 

そう言うと彼は人里へ走っていった。




幻獣の驚異、こいしの悪夢。エリュシオンの企みとは・・・。
次作もお楽しみに!

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