場所は変わって無縁塚。そこではユニ達とかくかくしかじか話し合って見回ることになった百々と九十九がいた
「……かくかくしかじか?」
「メメタァ。」
と、二人の目線に何かを行う人の影が見えた。
「……森近?」
「あ、ほんとだ。香霖じゃん」
「ん、百々に九十九かい?」
「ったく……。またガラクタ漁りか。」
「アンタは今の状況知ってんのかよ……」
百々と九十九は揃ってため息をついた。二人に気づいた彼は行っていたことをやめ、二人を見て言う。
「いいや、今回は違うよ。ここら、少しの間に彼岸花が増えたなって思って。」
「……言われてみれば、そうだな。」
「……本当に増えてんのか?」
小さなことにも気づく百々と細かなことには目も向けない九十九。2人は全く反対の反応を示した。
「それに、どうやら一部の人には今の状況のことが伝わってないらしい。」
「……それマジか?」
森近の言葉に九十九は驚きの声を上げる。あれだけ派手にドンパチやっているのにこの状況が伝わってないのだ。
「……情報の撹乱か?」
「僕が聞く限り、撹乱はなかった。予想だけれど、何者かの妨害だと思うよ。」
「彼岸の世界へようこそ。」
「!?」
「ッ!?その声は……!」
「……やっぱ誰かいたのか。」
思わず声を上げる九十九と霖之助とは別に百々は冷静だった。二人が言った瞬間、彼岸花の中から巨大な彼岸花が姿を現した。
「な、なんだあれは!?」
「デカい……彼岸花!?」
驚愕する二人に対し、九十九は憎しみの視線でその彼岸花を睨みつけた。
「やっぱりアンタかメメントモリ!!!」
突然現れた巨大な蕾の彼岸花が咲いたかと思うと中から緑色の肌を持ち骨が透けて見える背丈の高い女性が姿を現した。
「伊吹百々、星熊九十九。あなた達って本当に邪魔。」
「俺たちが邪魔?……そんなことした覚えはないが……」
「香霖、アンタは今すぐ逃げろ。」
九十九が『メメントモリ』と呼んだ女性の言葉に百々は首を傾げ、九十九は彼女を睨みつけたまま森近にそういった。
「わ、分かった。気をつけて。」
そう言うと彼は何処かへ走り去ってしまった。彼が去ったのを見たメメントモリは百々を見て言う。
「久しぶりね、伊吹百々。私を覚えているかしら?」
そう言う彼女の後ろには妹紅と慧音が彼岸花に巻きつかれていた。
「藤原!?上白沢!?てめぇが誰だか知らねぇが、二人を離しやがれ!」
怒鳴る百々とは別にメメントモリはクスクス笑いをして口を開く。
「別に、理由があって狙った訳ではないわ。お母さんのことをこれ以上知られないようにしただけよ。」
「……メメントモリ、コイツはアンタの事も、アンタ以外の闘神の事も、ましてやアンタの母の事も覚えちゃ無いよ。」
メメント・モリから視線を外すことなく、九十九は百々の前に彼を庇うように立った。それを見たメメントモリが表情を変えずに言う。
「フフフ。昔と大分変わったのね、星熊九十九。あの時のあなたは私達闘神に怯える子だったのに。」
「あの時からあんなに時間が経ってるんだ。誰だって変わるよ。私だって変わるさ。」
「九十九、お前……」
百々は知っていた。彼女、星熊九十九は普段男言葉で会話をするがそれは自分を強いと見せるための虚偽だということ。彼女が自分を『私』と呼ぶ時、彼女が女言葉で会話をする時、それは彼女が起こっている印だと。そんな彼女とは別にメメントモリが言う。
「お母さんの優先目的はあなたと琥珀・イーグナーウスの始末。だから、すぐに始末させてもらうわ。それに伊吹百々。」
「な、なんだよ……」
「敵ではあるけど忠告しておくわ。あなたに嫉妬しているのは私だけではないわ。」
「……嫉妬?」
「百々、アンタは気にしないで。メメントモリ、アンタの嫉妬はそろそろ打ち止めになるのよ。私があなたを殺すから。」
「そううまくいくかしら?私の他にもドゥームやニルヴァーナがいるのよ?」
メメントモリは微笑みを浮かべる。微笑みのはずなのに、百々と九十九は言い様のない恐怖を感じ取った。死神がすぐそこまで近づいているような恐怖を。
「だからどうしたの!無理なんて決めつけないで!!」
「なら、やって見せなさい。」
そう言うとメメントモリは二人に向かって緑色の弾みたいなものを飛ばし始めた。
「「舐めるなッ!!」」
2人は鬼としての全力で地面を全力で殴った。それにより起こった風圧が飛ばされてきた弾幕のようなものを吹き飛ばした。
「フフフ。」
そう言った瞬間、メメントモリは緑色のレーザーを八方向に放った。
「嘘、レーザー!?」
「どいてろ九十九!!」
自身の前に立つ九十九を引っ張り、自分の後ろに立たせた。
「ちょっと、百々!!」
「目には目を、ビームにはビームを!!」
百々の手には、森近に無理を言って作らせたミニ
「これでも食らっとけ!威力制限無しマスタァァスパァァァク!!」
ミニ八卦炉から放たれたマスタースパークはメメントモリの放ったレーザーを見事打ち消し、そのままメメント・モリを襲った。
「きゃぁぁぁぁぁぁ!」
「……ふざけてるの?メメント・モリ」
「あら、ばれちゃったの?」
わざとらしく言うメメントモリの前には縛られ、傷ついた妹紅と慧音の姿があった。
「てめぇ、そいつ等を身代わりにしやがったな!!」
「……性格の悪そうなアンタがやりそうな事ね。」
「私のレーザーを制限なしで打ち破ったのはあなたでしょう?伊吹百々。私は近くにあったものを使った、ただそれだけよ。」
クスクスと笑うメメント・モリに百々は何も言えなくなっていた。反論しようにも、彼女が言うことは正論なのだ。
「百々、アイツの言葉に耳を傾けないで。大丈夫、2人は絶対に救うから。」
そういう九十九の手には1本の日本刀が握られていた。
その日本刀はとても長く、約1mはあると思われる。それを見たメメントモリは何かを思い出しながら言う。
「見覚えのある刀ね、星熊九十九。一体どこで手に入れたのかしら?」
「この刀は英雄の一人から借り受けたものよ。銘を
そう言って九十九はメメントモリに向けてその刀を向けた。
「さぁ、メメントモリ。貴方は並行世界から呼び出される3つの剣撃を避けられるかしら?」
「・・・フフッ。」
九十九の言葉を聞いてもメメントモリは笑みを浮かべるままだった。
「その笑顔を崩してみせる!『英霊憑依:佐々木小次郎』!!」
刀を構え、九十九は走り出した。そんな彼女とは別にメメントモリは二人に見えるように見覚えのあるカードを取り出した。
「ッ!スペルカード!!」
「毒光『死苦の凱旋』」
「マズっ!能力再現『時間停止』!!」
百々の言葉が聞こえたと同時に九十九の姿が消えた。彼女に放ったハズのスペルカードは当たること無く虚空を紫に侵食した。
「あら、消えた?」
そう言いながらメメントモリは百々のいる方向へ顔を向ける。本来そこいるはずの百々もその場から煙のように消えていた。
「・・・近くに隠れているわね?」
百々と九十九を探そうとしたメメントモリはようやく藤原と上白沢を捕えていたツタの違和感に気づいた。
「!?」
捕えていたハズの2人は消え、そこには切断されたツタが転がっていた。
「・・・逃げたわね。」
「誰が逃げたって?」
上から声がした。
「なっ!?」
メメントモリの先程の浮かべていた笑みが一瞬にして消えた。空には鴉天狗の翼を生やした百々が藤原と上白沢を抱え飛んでいた。
「・・・逃がさないわよ。」
そう言うと彼女は百々に再び緑の弾みたいなものを飛ばした。
「おっと!」
その翼をはばたかせて風を生み出しその弾幕をまた吹き飛ばした。
「おいメメントモリさんよ」
「?」
ニヤリと百々は笑いながら言葉を続けた。
「俺にかまけといていいのか?」
「気配遮断解除。」
九十九の声が己の間近から聞こえた。
「しまった!!」
「倒せるとは思ってない。でも、これで一矢報いる!喰らえ、『燕返し』!!」
メメントモリを3つの斬撃が襲った。並行世界から呼び出されたその斬撃3つは同時に放たれ、回避不能の一撃となって彼女を襲った。
「ぐっ!?」
メメントモリの体から紫色の血が飛び散る。そのまま彼女は地面にうずくまる。
「ナイスだ九十九!さっさと逃げるぞ、能力再現『時間停止』!!」
また百々の言葉と同時に彼らは煙のように姿を消した。
「時は動き出す。」
動かされた時を一人の女性がメメント・モリに向かって歩いてくる。周りを見渡すも、彼女たち以外には誰もいない様だった。
「・・・逃がしたわね、メメ」
「ごめんなさい、お母さん」
メメントモリを責めるようにその女性は言った。しかし、メメントモリはそれが責めている訳では無いことを知っている。
「いいわ、次殺ればいい。さ、行くわよ。」
そう言うと女性はメメントモリを連れて何処かへ消えようとした時、空から1枚の羽根がゆっくりと落ちてきた。恐らく百々が能力再現で使った翼が抜けたのだろう。それを見た女性が羽を拾い、不気味な笑みを浮かべて口を開く。
「待っててね、百々。私があなたの望む世界を作ってあげるから。」
メメントモリとの戦いで力を見せつけた百々と九十九。そこへ一人の女性がやって来る。その人物とは・・・。
次作もお楽しみに!