アリスと別れたユニは魔法の森の東側へ向かっている途中、あることに気がついた。それはチルノ達が何処かへ行った後、2、30体ほどのカックンがチルノ達を追いかけていったのである。
「まさか、カックン達はチルノ達を!?マズイわ、早く何とかしないと・・・。」
ユニは少し悩んだものの、咄嗟に思いつき、すぐにスペルカードを発動した。
「呼符コールザエニー、あいつらを倒して、四神青龍!」
ユニが叫んだ瞬間、彼女の右側に直径5mほどの空間が現れた。そしてその中から全身青い鱗で覆われた、体長10mほどの龍、青龍が現れた。青龍はユニの目の前で浮き、彼女を見つめる。そんな青龍にユニは言う。
「チルノ達を追いかけるカックン達を倒して。方角は南よ。」
「グガァァァァ!」
彼女の言葉を聞いた瞬間、青龍は雄叫びを上げながらチルノ達が逃げていった南へ飛んでいった。
「うわぁ!何なのよあいつらはぁぁぁぁ!」
魔法の森の南地点ではユニの言葉通り、覇王軍の下僕の妖怪、カックン達が妖精達を追いかけていた。
「捕まえろ!絶対に逃がすな!」
チルノ、大妖精の他、ルナ、サニー、スターもカックン達に捕まらないように全速力で逃げ続けた。カックン達は足が無い分スタミナの消費が少なかった。それに対してチルノ達はスタミナの消費が激しかった。そんな中、チルノがあることを思いつき、言う。
「そうだ、あたいがこいつらを倒せばいいんだ、よぉし!」
そう言うと彼女は後ろを振り返り、スペルカードを使った。
「氷符アイシクルフォール!」
彼女の放った攻撃はカックン達に命中した。だがカックン達は何事も無かったかのようにチルノ達を追いかけてきた。
「き、効いてない!?」
「チルノちゃん、逃げよう!」
大妖精はすぐに彼女に呼び掛けた。だがチルノは足がすくんで動くことが出来なかった。それを見たルナ、サニー、スターがそれぞれスペルカードを使った。
「月符ルナサイクロン!」
「虹光プリズムフラッシュ!」
「流星プチコメット!」
三人の攻撃はカックン達に命中したものの、結果はチルノと同じだった。それを見たカックンの一体が口を開く。
「おいおい、まさか妖精ごときが俺達を倒そうなんて考えてないよな?」
「ひぃぃぃっ!」
五人は腰が抜けてしまい、地面に座り込んだ。それを見たカックン達はゆっくりと五人に近寄る。五人は逃げようとするが足がすくんで動くことが出来なかった。
「グガァァァァァ!」
突如として空から雄叫びが辺りに響いた。それを聞いたカックン達は上を向くよりも先に雄叫びを上げた生物がチルノ達の周りに群がるカックン達を一体も残さずに焼き殺した。
「な、何?何が起こったの?」
戸惑う五人とは別に空からチルノ達の前に一体の龍、青龍が降りてきた。そしてじっとチルノ達を見つめる。
「わ、私達を食べるつもり!?」
思わずルナが頭を抱えながら叫ぶ。それを聞いた四人は逃げようとする。だが青龍はそんな彼女達を黙って見ていた。そして青龍は空を見ると、そのまま何処かへ飛んでいった。チルノ達はそれを呆然と見ていた。
「は、早く行こう。またあの妖怪達が来るかもしれないから。」
「そ、そうね。さぁ、行きましょう。」
大妖精の言葉に我に返った四人はゆっくり起き上がり、永遠亭へ飛んでいった。
青龍が空を飛んでいるのを見てユニは安堵の息を吐き、一言言った。
「ありがとう、青龍。」
そう言うと彼女は右手を上に上げた。その瞬間、上空に先程ユニの隣に現れた空間が再び現れた。それを見つけた青龍はそこへ躊躇うことなく入っていった。青龍が入りきった後にユニは空間を閉じた。そして再び辺りを見回した。
その頃、アリスは魔法の森の西側を探索していた。今のところ、彼女のところでは何も異常は無かった。
「おかしいわね、さっきチルノ達に妖怪達が追いかけてたって言うのに・・・」
そして彼女が道を通ろうとした時だった。ひっそりと二人の男の話す声が聞こえたため、彼女はこっそりと草影に隠れてその様子を見つめる。そこには大きな椅子に座る大男、ガノンドロフと彼の前で膝をつく男、ザントがいた。
「ガノンドロフ様、ついに召喚のトライフォースの持ち主を特定出来ました。」
「ほう、それは興味深いな。それは一体誰なのだ?」
「はい、アイアルト・ユニという少女でございます。」
「えっ!?」
彼の言葉を聞いた瞬間、アリスは思わず声を上げてしまった。何故なら召喚のトライフォースの持ち主がユニだというのが信じられなかったからである。はっとなった彼女は咄嗟に口を塞ぐが既にザントとガノンドロフがアリスの隠れている草影を見ていた。
「何者だ、出てこい!!」
ザントの言葉を無視してアリスはその場からすぐに離れた。それに気づいたザントは一度ガノンドロフに頭を下げて言った。
「少しお待ちを願います。先程の者をすぐに排除しますので。」
そう言うと彼はアリスが逃げていった方向に向かって思いきり叫んだ。
「そっちに向かったぞ、ギラヒム!!」
ザントの声を聞いたギラヒムはじゅるりと音を立てながら自分の唇を舐めた。そして言う。
「ほう、こちらにやって来るのは人形使いのアリスちゃんか・・・たっぷり遊んであげないとね。」
そう言った瞬間、ギラヒムの姿が一瞬にして消えた。
丁度その頃、紅魔館でも異変が起こっていた。いつも通りにレミリア達は紅茶を飲むだの、くつろいでいた。そんな中、門から爆発音が響いた。それに気づいたレミリア達はすぐに美鈴のいる門へ向かった。
「よお、やって来たか。レミリア・スカーレット。」
そこにいたのは大きさがユニと同じくらいあり、角が2本生えていて短い手足に大きな目に口の妖怪がいた。それを見たレミリアが言う。
「なんだか下僕って感じの妖怪ね。強そうとは思わないわ。」
「フン、そんなこと言ってられるのは今だけだぜ?いずれこのじ久様によって苦しむことになるからな。」
「その言葉、そのまま返してあげる。覚悟しなさい!」
そう言うとパチュリーはスペルカードを発動した。彼女に続いてフランも発動する。
「火符アグナシャイン!」
「禁忌カゴメカゴメ!」
二人の攻撃を見たじ久は容易くかわす。二人に続いて美鈴と咲夜もスペルカードを発動する。
「華符破山砲!」
「時符プライベートスクェア!」
じ久は二人の攻撃を見た左手に持っていた刀で彼女らの攻撃を全て弾いた。その間にレミリアが彼の背後に回り、そして殴り飛ばした。
「はあっ!」
「ぐほっ!?」
彼女の攻撃を食らったじ久はくの字の体制になりながら吹き飛び、木に衝突した。
「ゴフッ、やるじゃねぇか。」
吐血しながらも彼は笑みを浮かべたままレミリア達を睨む。そんな彼とは別にレミリアが言う。
「今の内よ、フラン、美鈴、小悪魔、やりなさい!」
彼女の言葉を聞いたフラン、美鈴、小悪魔は一斉に彼に攻撃を放とうとした。
だが三人はじ久に攻撃が当たるギリギリで手を止めていた。それを見たパチュリーが三人に言う。
「フラン、美鈴、こあ、何をしているの?さっさとそいつを倒しなさいよ。三人とも!!」
呆れたパチュリーが三人に近づき、体を揺らそうとした時だった。何かおかしいと感じたレミリアが咄嗟にパチュリーに言う。
「パチェ、三人から離れて!!」
「レミィ、どうしたの?急にそんなことを・・・」
パチュリーは首を傾げながらレミリアに言う。だがその瞬間、美鈴の右ストレートがパチュリーの腹部にクリーンヒットした。
「えっ、嘘・・・」
何も考えることが出来ず、パチュリーは壁に叩きつけられ、地面に崩れながらそのまま吐血した。
「ちょっと美鈴、パチュリー様になんてことを!!」
「待って咲夜、今は美鈴はいつもの美鈴じゃないわ。」
「いつもの美鈴じゃないってどういうことなんですか?」
「見れば分かるわよ。」
レミリアに言われたので咲夜は美鈴達を見る。彼女の目は赤く染まっており、明らかに普通ではなかった。共犯が誰なのかは分かっており、レミリアは共犯に言葉を発する。
「じ久、三人に何をしたの?」
「何をした、だって?簡単なことさ。俺の能力を使っただけだからな。俺の能力は『妖怪を操る程度の能力』。」
「それでフランと美鈴と小悪魔を操っているってことね。」
「納得してる暇なんかないぜ?なんせお前達はここで消えてもらうからな、アヒャヒャヒャ!」
じ久の能力に苦しむレミリア達。さらにアリスに悲劇が!
次作もお楽しみに!