東方混沌記   作:ヤマタケる

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現世にやって来たエリュシオンはセコンド達の乗る車に攻撃を仕掛けた。


第104話 桁外れの能力

場所は建物の屋上。そこではエリュシオンが隣の建物へ飛び移りながら移動していた。と、何かを見つけた彼女が口を開く。

 

「フフフ、前方にはセコンドとビオラ・ハイラルド二人しかいない。ヴァン・グレイダーは何処かに隠れているわね。」

 

そう言うとエリュシオンはビオラとセコンドの方を見て言う。

 

「ごきげんよう、地王セコンドに女王ビオラ・ハイラルド。アンタ達に会うのはこれが初めてかしらね?」

 

「其の方がエリュシオンか。」

 

「いかにも、私がエリュシオン。エデンから追放された者よ。」

 

「エリュシオン、あなたは何故この世界を滅ぼすつもりなのですか?」

 

「何故?理由はただ1つよ。この世に生きる人間達全てが気にくわないから。私は昔、ココ・ヘクマティアルという偽名を使って武器商人のふりをして表の世界を生きてきた。」

 

「ココ・ヘクマティアル?聞いたことのある人名です。確か、武器商人の方で突然の敵軍の奇襲攻撃によって命を絶った筈の・・・。」

 

「そう、それが私。しかもその敵軍が知り合いだったのを聞いて身体中の憎悪、憤怒が沸き上がったのよ。そうして数年後、私は敵軍の基地に侵入し彼らを一人も残らずに始末したわ。」

 

「あの事件のことか。その黒幕が其の方だというのだな、エリュシオン。」

 

「然り。私はこの世が嫌い。故に人間も嫌い。そして私のお気に入りと同じ存在も嫌い。だから私は子供達と共に裏の世界の幻想郷を滅ぼしたわ。」

 

「なっ、裏の世界の幻想郷を!?」

 

「そこに私のお気に入りと同じ存在がいたからね。けれども、表の八雲紫がそいつを助けた。」

 

「それは一体・・・。」

 

「それは会ってからのお楽しみよ。なんなら幻想郷にでも行ってみなさい。」

 

そう言った瞬間、エリュシオンは後ろに目を向ける。彼女の背後にはヴァンが戦闘体制に入っていた。それを見たセコンドが心の中で言う。

 

(ヴァンの存在に気づいていたか・・・。)

 

セコンドを気にせずエリュシオンは後ろを振り返り、ヴァンに言う。

 

「アンタが最初に殺されたいの?」

 

「私はセコンド様や陛下、亡き友のために戦う。死ぬわけにはいかない!」

 

「亡き友?あぁ、仲間を庇ってクレイジーハンドに殺された山下啓介のことね。下らない。」

 

彼女が言った瞬間、ヴァンは銃を構える。それを見たエリュシオンが口を開く。

 

「さぁ、始めましょうか。」

 

そう言った瞬間、ヴァンはエリュシオンに向かって発砲した。それを見た彼女は笑みを浮かべながら攻撃を避けていく。

 

「ヴァンの攻撃が当たらない!?」

 

二人の戦いを見て驚愕しながらビオラが口を開く。そんな中、セコンドが口を開く。

 

「あの様子を見る限り、奴は侮れぬ相手だな。」

 

話す二人とは別にエリュシオンはヴァンの攻撃を避けながら口を開く。

 

「どうした?その程度の攻撃では私にダメージなんて与えられやしないわよ。」

 

「クソッ!!」

 

思わず悔しさの声を上げるヴァン。そんな彼とは別にエリュシオンは笑みを浮かべながら言う。

 

「さぁ、もっと私との戦いを楽しませてちょうだい。ヴァン・グレイダー!!」

 

そう言った時だった。突如エリュシオンに向かって大量の針が飛んできた。

 

「!?」

 

それを見たエリュシオンは少し慌てるも冷静さを取り戻して針を避ける。

 

「これは、ヴァン・グレイダーのニードルスパイラル!!」

 

口を開きながらも彼女は攻撃を避け続ける。そんな彼女とは別にヴァンは攻撃し続ける。と、ビオラが口を開く。

 

「セコンド様。今のところ、どちらが勝っていると思いますか?」

 

「余が見る限りではヴァンが奴を押している。だが油断大敵。形勢逆転されるかもしれぬ。」

 

二人が話している中、エリュシオンは攻撃を避けながら口を開く。

 

「随分と面白い戦いを見せてくれるわね、ヴァン・グレイダー。アンタになら見せていいかもね。」

 

「ようやく出すか、お前の能力を!!」

 

「さぁ、知るといいわ。私の能力はまさに全ての世界を支配するのに相応しい能力だということを!!」

 

「出してみろ、エリュシオン!!」

 

ヴァンが言った瞬間、エリュシオンは服の中から一枚のカードを取り出した。

 

「抹消『努力の消滅』」

 

そう言った瞬間、彼女の持っていたカードが光だした。しかし何も起こらない。それを見たセコンドが口を開く。

 

「そうか、ヴァンは吸血鬼だから奴の攻撃が効かないのだ!!」

 

「なっ!?」

 

思わず声を上げるエリュシオン。そんな彼女とは別にビオラがヴァンに言う。

 

「今ですヴァン。奴を倒すんです!!」

 

「くらえ、ニードル・スパイラル!!」

 

そう言った瞬間、ヴァンは目を見開くエリュシオンに攻撃を放・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とうとしたが異変が起こった。ヴァンは攻撃が放てなかった。それを見たビオラが彼に言う。

 

「何をしているのですヴァン。早く奴に攻撃を!」

 

「ヴァン、何を躊躇っているのだ!!」

 

二人がヴァンに言う中、彼は目を見開いたまま動かなかった。そんな中、エリュシオンが笑みを浮かべながらヴァンに言う。

 

「どうやら、技を放てないようね。ヴァン・グレイダー。」

 

そう言うと彼女は服の中から一冊の本を取り出し、開いた。開いた本の中から銀色の光る石が現れた。それを手に取ったエリュシオンは石に唇をつけた。その瞬間、石が銀色の杭へと変化した。

 

「ヴァン、逃げて!!」

 

「・・・はっ!!」

 

ビオラの言葉にヴァンは我に返る。だが既に遅かった。エリュシオンの投げた銀の杭が彼の心臓を貫いた。そのまま彼は勢いで吹っ飛んだ。

 

「ヴァン!!」

 

二人が同時に彼の名前を呼ぶ。そんな二人とは別にエリュシオンは笑みを浮かべて言う。

 

「フフフ。さぁ、次はアンタ達よ。」

 

彼女が話している中、建物の屋上でヴァンは心の中で一人語っていた。

 

(何故攻撃を放てなかったんだ・・・。待て、考えろヴァン・グレイダー。奴のスペルカードを思い出すんだ。努力の消滅・・・力が消える・・・能力の抹消・・・能力、削除・・・!!)

 

と、何かを思いついたヴァンが目を見開きながら再び心の中で語る。

 

(わ、分かったぞ。何てことだ、これ以外考えられない。は、早く、陛下やセコンド様に伝えなくては・・・皆が、負けてしまう!!)

 

と、ビオラがエリュシオンに向かって言う。

 

「よくもヴァンを!!許しません!!」

 

「許す許さないはアンタ達の自由。好きになさい。」

 

そう言うとエリュシオンは右手にスライムを持ち、スライムを銃へ変化させた。と、セコンドが口を開く。

 

「其の方のその笑み、すぐに消し去ってやろう!!」

 

「ククク、出来るものならやってみなさい。所詮アンタ達には無理なことよ。」

 

三人が話している中、ヴァンは心臓部分に負担を掛けないようにゆっくりと体を起こす。

 

「ガハッ!!」

 

だが彼の心臓に負担が掛かってしまい、その場で吐血する。

 

「ハァ、ハァ。」

 

息が荒くなりながらもヴァンは無理矢理でも体を起こす。そんな中、エリュシオンがビオラとセコンドに向かって言う。

 

「ビオラ・ハイラルド、セコンド。死ね!!」

 

そう言うと彼女は銃を二人に向け、発砲しようとした。その瞬間、無理矢理体を起こしたヴァンはエリュシオンに向かってナイフを投げつけた。

 

「なっ!!」

 

ナイフに対応出来なかったエリュシオンは声を上げる。そのまま彼女の左目にナイフが刺さり、血が飛び散る。そのままエリュシオンは倒れる。そんな彼女とは別にビオラとセコンドはヴァンの元へ向かう。彼は力尽きたように地面に仰向けに倒れていた。

 

「陛下、セコ・・・ンド様・・・。」

 

彼の言葉は弱々しくなっていた。ビオラはそんな彼の手を優しく握る。と、セコンドが口を開く。

 

「ヴァン、無茶したな。」

 

「私は・・・もう、な・・・長く、は・・・持ちません。」

 

「ヴァン、あなたは十分活躍しました。ですがお願いです。私の元から、離れないでください!!」

 

そう言うと彼女は強く冷たくなる彼の手を涙を流しながら握った。そんな彼女にヴァンは微笑みを浮かべ、言う。

 

「陛、下・・・。あなたに、伝えた、いこと・・・が、あります・・・。」

 

「なんです?ヴァン。言ってください。」

 

「や、奴は、危険です・・・。奴の、能力は・・・・です。」

 

ヴァンの声が途切れ途切れになってしまうため、二人はその部分を聞き取ることが出来なかった。そんな彼にビオラが口を開く。

 

「ヴァン、今なんと言ったのです!?」

 

「気を、つけ・・て・・・下さい。生き残って下さぃ・・・。」

 

その瞬間、ビオラの手を握っていたヴァンの手の力が緩み、そのまま彼は目を閉じてしまった。

 

「・・・ヴァン?何をしているのです?目を開けてください。ヴァン!!」

 

ビオラの目から溜まっていた涙が一斉に流れ始めた。それを見たセコンドが口を開く。

 

「ヴァン・・・すまない。」

そんな彼の目にはビオラ同様、涙が流れていた。




エリュシオンとの戦いで命を落としてしまったヴァン。
次作もお楽しみに!

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