場所は変わって現世。そこは幻想郷とは違い、辺りが暗くなっていた。そんな夜の中、帝の御所では現世を支配する帝のセコンドがいつものように仕事をしていた。
「失礼します、セコンド様。中に入ってもよろしいでしょうか?」
扉のノックがなったのと同時に男の声が聞こえた。それを聞いたセコンドは扉の反対側にいる男に声をかける。
「入るがよい。」
「失礼します。」
部屋に入ってきたのは白い肌に整った目鼻立ち、赤い瞳に長い銀髪を黒いリボンで束ねている男だった。男を見たセコンドが彼に言う。
「ヴァンか、何の用だ?」
「先程連絡があったのですが、月の都が神霊達から奇襲を受けたようです。」
「神霊達?つまりは純狐達のことか。戦いは起こったのか?」
「起こったのですがすぐに終わりました。いいえ、言い方を間違えました。強制的に終わらされたのです。」
「終わらされた?どういうことだ?」
「エリュシオンが戦いに乱入し、神霊達も月の都の者達も全員その力には敵わなかったようです。」
「エリュシオン?グランチやアラヤ殿が危機意識を持っていたあの存在か?」
「はい。影舷隊のウロボロス・サーカリアスによるとここへ侵入している可能性があるとのことです。」
「エリュシオンがか?ならばすぐに行かなければならんな。ヴァン、ビオラにこのことを伝え、奴を捜索そして撃破するぞ。」
「はっ!」
そう言うと彼は部屋を出ていった。それを見たセコンドは電話機を使い、番号を打った。そして受話器を耳にあてる。プルルルという音が聞こえた瞬間、ガチャという音が響いた。
「もしもし?グランチか?」
「・・・もしもし?」
受話器から聞こえたのは女性の優しげな声だった。それを聞いたセコンドはすぐに口を開く。
「その声は、優理花か?優理花、グランチはいるか?」
「はい、いらっしゃいます。」
「彼に変わって貰えるか?」
「申し訳ございません。グランチさんは今来客の方と会談をしておりますのでそちらへいけないのよ。」
「そうか。ならば伝言を残して欲しい。グランチに兵を出兵させることを伝えてくれ。世界を滅ぼす者が現世にやって来た。」
「世界を滅ぼす者!?・・・分かりました、伝えておきます。」
「ありがとう、優理花。」
「それでは失礼します。」
そう言った瞬間、優理花は電話を切った。その瞬間、ビオラとヴァンがセコンドの部屋に入ってきた。そしてビオラが口を開く。
「セコンド様、ヴァンから話は聞いています。先程準備を終わらせてきたので行きましょう!」
「あぁ、行こう。」
そう言うと三人は部屋を出ていった。
場所は変わって帝王城。そこでは先程セコンドと電話をしていた女性、優理花がある部屋へと向かっていた。そして部屋の前に着いた彼女は扉をノックし、中へと入った。中では現世では帝王と呼ばれた男、メルト・グランチがとある人物と会談をしていた。
「失礼します、グランチさん。」
「優理花かね?どうかしたのかな?」
「セコンドさんからあなたへ伝えたいことがあって先程電話がかかってきました。」
「帝から?こんな時間に何用かね?」
「世界を滅ぼす者、エリュシオンがここへ侵入している可能性があるので兵の出兵を依頼してきました。」
「兵の出兵か。分かった、この会談が終わり次第出兵命令を下す。すまないが優理花、リナと小太郎にこのことを小宝軍やモルト、マーグルに伝えてくれないか?」
「分かりました。伝えておきます。」
そう言うと彼女は部屋を出ていった。その瞬間、メルト・グランチは前に座っている男を見ながら口を開く。
「・・・ということだそうだが、卿の予想が当たったそうだなアラヤ殿。」
彼の目の前にいるのは黒いコートを羽織っている男、アラヤだった。彼はメルト・グランチを見て笑みを浮かべながら言う。
「私の言った通りだ。やはりここへ攻めてきた。」
「卿が両儀式との戦いで奇跡的に生き延び、ここへ来る途中にこの出来事を予言していたのだからねぇ。」
「奴が来ることは世界の終わりを示す。故にグランチ殿、一体何をしているのだ?」
アラヤが話している中、メルト・グランチはスマートフォンの画面を上下左右に指で動かしていた。彼の言葉を聞いたメルト・グランチは口を開く。
「優理花から教えてもらったパ○ドラというパズルゲームなのだが私には難しくてね・・・あ、1コンボしか出来なかった。」
そう言った瞬間、彼のスマホの画面にはGAMEOVERという文字が浮かび上がった。そんな中、アラヤが口を開く。
「パ○ドラをやっている場合ではないだろうグランチ殿。今は奴に対する対策を考えなければならない。」
「基本的に対策法などない。突拍子に現れる者をどうやって対策するのだね?」
「それを対策するのも王の役目だろう?」
「そうだな。我々五大王で務めなければならぬな。」
メルト・グランチが言った瞬間、アラヤは立ち上がり、口を開いた。
「
「ほう、問題とは?」
「一応あいつも守護者だ、他の守護者と力比べをしようとしてしまう癖がある。」
「他の守護者。というとモルトの
「直接出会ったことはないが、恐らくそうだろうな。それでは私は失礼させてもらおう。」
そう言うとアラヤは部屋を出ていった。彼が出ていったのを見たメルト・グランチはあるスイッチを押した。その瞬間、帝王城全体にサイレンの音が響いた。そして彼は口を開く。
「帝王城に告ぐ。帝の命令により諸君らに出兵命令が下された。医療班と突撃班は早急に出兵準備を行いたまえ。」
場所は変わって現世の街中心部。そこでは一人の女性、エリュシオンが一般人に紛れて街中を歩いていた。と、彼女はあるものを見つけ、口を開く。
「自動車ねぇ。中々いいタイプのヤツね。私がいた時代は鉱物すら無かった。」
と、突然エリュシオンの右肩を明らかに野蛮な男が掴んだ。そして男は口を開く。
「おい姉ちゃん、何触ってんだよ。宇在伍吏羅さんの車だぞ。目ん玉からゲロ吐きてぇのか!!」
そう言った瞬間、エリュシオンは男の手首を掴んだ。
「?」
男が首を傾げた瞬間、エリュシオンは男の腕をあらぬ方向に折れ曲げた。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
声を上げる男とは別にエリュシオンは笑みを浮かべて口を開く。
「ごめんなさいね、お兄さん。アンタの言っている意味がちっとも分からなかったわ。」
そう言うと彼女は車、男を放置して何処かへ歩いていってしまった。
一方、セコンド達はビオラの運転のもと、車に乗ってエリュシオンを探していた。助手席にはセコンドが、後部座席にはヴァンが乗っている。と、セコンドがヴァンに言う。
「ヴァン、一度外を見回してみてくれ。奴が何処かにいるのかもしれない。」
「はい、分かりました。」
「ハハハ、そう不安な顔をするな。この車のガラスはマジックガラス、外側から見ればただの鏡で内側からは窓になっている。奴に気づかれることはないだろう。」
それを聞いたヴァンは外を眺め始めた。その時だった。窓の外から一人の女性が車に向かって光線を放ってきたのだ。
「!?」
それに気づいたヴァンは咄嗟に身を屈める。その瞬間、ガラスが割れ、光線が彼の上を通りすぎていった。
「ヴァン、何があったのです!?」
ガラスが割れた音を聞いたビオラが口を開いた。彼女に続いてセコンドが口を開く。
「大丈夫かヴァン!其の方はまさか、エリュシオンを見たのか?」
「えぇ、信じがたいことですが私は間違いなく奴だと断言出来る者を見ました。エリュシオンは恐らく、我々の想像を絶する能力を持っています。ですが、いくつか分かったことがあります。」
一旦一呼吸置き、再びヴァンは口を開く。
「エリュシオンは女性で背丈は優理花様よりやや高め、光線を放ってきたことや服の膨らみ具合により銃や剣などといった武器は持っていない。恐らく、弾幕等を得意とする攻撃を仕掛けてくると考えられます。」
「なるほど、幻想郷の者達と似たような戦法を持つ方ですか。ですが油断は出来ませんよヴァン。何かしらの方法で武器を生み出すかもしれません。」
「ビオラにヴァン、一度車から降りよ。直接奴と戦うぞ。」
「はっ!!」
遂に現世にやって来たエリュシオン。セコンド達はエリュシオンの計画を阻止出来るのか!?
次作もお楽しみに!