エリュシオンの圧倒的な力を受けた純狐達、そして月の都の者達は皆膝をついていた。と、エリュシオンは膝をつく純狐達を素通りして都へと歩いていった。
「ま、待て・・・。都には・・・。」
サグメが彼女を止めようとするが先程の攻撃により立ち上がることが出来なかった。
月の都の中へと侵入したエリュシオンはとある部屋を目指していた。と、彼女は独り言を呟く。
「さぁ、貰っていくわよ。数千年前にちゃんと予告しておいたのだからねぇ、蓬莱山輝夜。」
そして目指していた部屋の前にたどり着いたエリュシオンは鍵がかかっているような硬い扉を容易く開けた。そして中に入る。
「さぁ~て、蓬莱の薬はどこにあるのかしらね~?」
呑気にエリュシオンは部屋の中を見て回る。と、何かに気づいたのか、突如彼女の高かったテンションが一気に下がった。と、エリュシオンは口を開いた。
「・・・ない。何処にもない!!おかしい、確かに数千年前まではここにあった筈・・・。」
エリュシオンは部屋にあったテーブルを叩き割った。叩き割った彼女の拳からは血が垂れる。と、エリュシオンは何かを思いついたのか、口を開く。
「月の都なら月の都の者が知っている筈。聞き出すしか方法はないようね。」
そう言うと彼女は部屋を出ていった。
その頃、純狐達はようやく体力が回復したのか、立ち上がることが出来た。と、純狐がヘカーティアに言う。
「一体あれはどういうこと?まさかエリュシオンが此処へ来るなんて・・・。」
「分からないわ。まさかこのタイミングで来るなんて思わないわよ。」
二人が話している中、再びエリュシオンが純狐達の前に現れた。それを見た純狐が彼女に言う。
「エリュシオン!!覚悟しろ!!」
「停止ザ・ワールド」
エリュシオンがスペルカードを発動した瞬間、純狐とヘカーティアの体から大量の血が飛び散った。
「なっにっ?」
「うそ・・・。」
そのまま二人は再び倒れてしまった。それを見た月の都者達は目を見開くことしか出来なかった。そんな中、エリュシオンはサグメの元へ歩み寄る。そして彼女の前に立つとそのままエリュシオンはサグメの胸ぐらを掴み、無理矢理立ち上がらせた。そしてエリュシオンは口を開いた。
「蓬莱の薬はどこにあるのかしら?数千年前まではあった筈だけれど?」
「何の、ことだ・・・。」
「惚けるんじゃないわよ。八意永琳と関わりのあるアンタなら知っている筈よ。」
「薬は・・・薬は、八意様と輝夜様、嬢娥様が食べ、他は地上へ消えた。」
「・・・なるほど、やはりあの子は薬を食べたのね。まぁ食べちゃったり消えちゃったならいいわ。コレクションに出来なかったのは残念だけれどね。嬢娥は数百年前に封印しておいたからもうあの子は驚異じゃない。」
そう言うと彼女は軽くサグメを突き倒した。と、エリュシオンの言葉を聞いた純狐が口を開く。
「嬢娥を封印、だと?エリュシオン、それはどういうことよ?」
「そのままの通りよ?私にとって面倒な子だったから封印しておいたのよ。」
「貴様ァ!!」
「私を恨むのはよしなさいよ。不倶戴天の敵がもう出てこなくなるのよ?嬉しいことじゃない。」
「嬢娥を倒すのは私だ。なのにお前はその嬢娥を封印した!!」
「ま、あんたの恨みとかはどうでもいいけれどね。」
ピロリ、ピロリ
突然エリュシオンの服の中から何かの音が響いた。それを聞いた彼女は服の中から通信機のようなものを取りだした。それを耳につけると彼女は話始めた。
「もしもし?あら、ドゥームじゃない。どうかしたの?え、寳が・・・。そう、分かったわ。じゃあまた後でね。」
そう言うと彼女は頭を掻きながら通信機を外し、それを服の中にしまった。そしてエリュシオンは純狐を見ながら口を開いた。
「これから私は可愛い子供達である闘神達を連れて地上を攻めるわ。」
「闘神だと!?」
「フフフ、どうやら知っているようね純狐。彼らが一度世界を滅したことをね。」
「エリュシオン、まさかお前・・・。」
「そう、いずれこの月の都も滅ぼす。私の望む世界を作り上げるわ。じゃあね、純狐。」
そう言った瞬間、エリュシオンは霧のように消えていった。純狐達はそれをただ黙って見ていた。
場所は変わって幻想郷の無縁塚。そこでは多くの死神達がパニックに陥っていた。それを見た幻想郷最強の
「お前ら落ち着け!!一体何があったんだ!?」
と、彼の元へ一人の少女がやって来た。彼女を見た篁はすぐに彼女に声をかける。
「小町か、これは一体どういうことだ?」
「聞いてくれ兄さん。さっき映姫様から聞いたんだけれどどうやら罪人が一人脱走したみたいなんだよ!」
「罪人が脱走だと!?小町、その罪人はどの場所から脱走したんだ?」
「北方向だよ。」
「北方向?確かそこは俺が唯一担当しない場所じゃなかったか?まさか、その脱走した罪人はそれを狙ったというのか!?」
「恐らくね。他の罪人達は北方向担当の死神達が食い止めてる。」
「ということは俺達も行かなきゃならないな。妹子がいねぇが俺達も食い止めるぞ小町!!」
「勿論だよ兄さん!」
そう言うと二人は無縁塚の北方向へと走っていった。
エリュシオンの驚異に無縁塚から脱走する罪人。今後どうなるのか!?
次作もお楽しみに!