東方混沌記   作:ヤマタケる

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幻想郷で起こった殺人事件。真相を暴くために悠岐、百々、魔理沙がゆく。


第99話 九十九の異変

「なぁ、ここでなにしてるんだ?」

 

悠岐が鈴奈庵に集まる民衆の一人に話しかけた。

 

「なにって、あれ見てみろよ兄ちゃんたち……」

 

男の指さした先には本居小鈴が貼り付けられており、彼女の後ろには赤い文字で『天誅』と書かれていた。

 

「誰だか知らねぇが、ひでぇ事するよな……。あんないい子によ。」

 

それを見た魔理沙が口を開く。

 

「天誅?」

 

「誰があいつにあんなことを・・・。」

 

「っ!お、おい、あれ見てみろ!」

 

百々が指さした所には『天誅』と同じように赤い文字で

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『伊吹百々、次はお前だ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう書かれていた。それを見た瞬間、悠岐が少し焦ったような口調で口を開く。

 

「あれって、お前に予告されてるってことじゃないのか!?」

 

「気をつけろ百々。敵がどこから来るか分からない!」

 

魔理沙の言葉を受け取った百々は顔を歪ませた。

 

「……俺だけに来るなら何も言わねぇよ。だけどよ、関係ない誰かを巻き込むってのは許せねぇ。」

 

「安心しな百々。俺は人を傷つけるような奴は昔から嫌いでな、そういう奴は懲らしめたくなるんだ。」

 

そう言った悠岐の目は赤く染まっており、既に刀を抜く準備をしていた。

 

「そう思うのはいいけどよ、こんな人の多い場所で刀なんて抜くなよ。」

 

そう言う百々も、両手に妖力を纏わせていた。それを見た悠岐は笑みを浮かべて言う。

 

「抜くつもりはないが、お前も妖力を漂わせてるじゃねぇか。お互い様だ。」

 

「はっ!違いねぇ。」

 

「・・・?」

 

突然何かの気配を感じた魔理沙がある方向を見つめる。それに気づいた悠岐が彼女に言う。

 

「どうした魔理沙?何かいるのか?」

 

「あいつ、いつからいたんだ?」

 

そう言うと魔理沙は民衆のいる場所とは逆の方向を指差した。それを見た百々が口を開く。

 

「……九十九、か?にしても、なんかいつもと違うような……。それに、輝夜は?」

 

「・・・!?百々、あいつに気をつけろ!!」

 

「は?何言って―――っ!?」

 

彼の言葉を止めるように九十九が百々へ向けて、弓を放った。それを見た百々が言う。

 

「九十九、まだ冗談で済ませられるぞ……」

 

「いいや、百々。あいつはお前の知るいつもの九十九じゃない。あいつ、まるで何かに操られているような感じがする。」

 

悠岐が言った瞬間、彼女は新たな矢を弓に番えた。

 

「……『祈りの弓(イー・バウ)』」

 

「っ!ぜ、全員逃げろ!!」

 

「ゲッ!」

 

百々の台詞と同時に悠岐と魔理沙は別方向に逃げた。放たれた矢は彼らの立っていた場所に着弾した。すると、その場からナニカが吹き出た。

 

「絶対に吸うなよ!イチイの毒だ!!」

 

百々の言葉を耳にした二人は毒の広がる空間から素早く離脱した。

 

「チッ、毒系の攻撃を使う奴は苦手なんだよなぁ。」

 

そう言うと悠岐は矢を放った九十九を睨む。

 

「毒だけじゃ無い。」

 

悠岐の言葉に百々は否定を示した。彼の言葉に魔理沙がすぐにくらいつく。

 

「何かまた面倒な効果があるのか!?」

 

「アイツの能力は千変万化だ。引き出しはあれだけじゃない。」

 

「なるほど、様々な効果の矢を打ってくるってことか!!」

 

そう言った瞬間、悠岐の頭の中に一つの疑問が浮かんだ。

 

(そういえば九十九は誰に操られているんだ?近くにそいつがいる筈!)

 

何かを閃いた悠岐が魔理沙と百々に言う。

 

「百々!お前は俺と九十九を惹き付けてくれ。魔理沙は近くに怪しい奴がいないか見てくれ!」

 

「なっ、わ、分かったぜ!」

 

「了解したが九十九の能力はそうじゃない!アイツの能力は『fateを使う程度の能力』だ!」

 

「fate?なら話は早い。俺はfate知っているからな!!」

 

「fateを使う程度の能力!?」

 

「あぁ。」

 

「どんな能力なんだ?」

 

チラリ、と百々は九十九に視線を送った。彼女は何もせずにただこちらを眺めるだけだった。彼女を見ながら百々は魔理沙に言う。

 

「九十九の世界には様々な英雄を記録する『座』ってのがあるらしい。あいつはその『座』にアクセスして英雄の力をその身に宿す。そんな能力だ。」

 

「なんだそりゃ・・・」

 

「英雄の力を使える奴だ。これはかなりめんどくせぇ。」

 

「でもアイツは鬼としての誇りを持ってる。普段は能力を使おうとしねぇ。だから俺もどんな能力があるか分からねぇ。」

 

「注意していくぞ百々。その間に魔理沙は頼むぜ。」

 

「あぁ、分かったぜ!」

 

九十九の瞳は光を宿さず、ただ百々を写していた。

 

「……こい」

 

「いくぞ!」

 

百々の台詞と同時に悠岐は刀を抜き、九十九に振り下ろす。

 

「甘い……」

 

悠岐の振り下ろした刀を九十九は軽やかに躱し、代わりに矢を1発悠岐に向けて放った。

 

「それはお互い様だぜ。」

 

九十九の放った矢は悠岐の顔の横を過ぎていった。そんな彼の顔には笑みが浮かんでいた。

 

「かすりも、しない。」

 

「俺のこの目が避けるタイミングを教えてくれるんだぜ!」

 

そう言うと彼は九十九の腹を蹴りつけた。

 

「……『静謐』」

 

九十九の言葉に、百々は驚いたように声を上げた。

 

「悠岐ぃ!その足を退けろ!!」

 

「ッ!!」

 

百々の言葉を聞いた悠岐がはすぐさま足を退けた。しかし、遅かったのだろうか。彼女に触れていた彼の靴は毒によって溶けていた。

 

「大丈夫か!?」

 

「クソッ!二万円もした靴が毒で溶けちまった。魔理沙の奴、まだ見つからないのか?」

 

「気をつけろ。今のアイツは『静謐のハサン』になってる。アイツの身体はすべて毒だ。触れたら死ぬぞ。」

 

「本来なら燃やし尽くしたいところだが仲間だ。そんなことは出来ない。」

 

そんな中、箒に乗って空から敵を探していた魔理沙があるものを見つける。

 

「な、なんだあいつは。屋根の上で百々達を見てやがるぜ。」

 

そう言うと魔理沙はスペルカードを発動した。

 

「彗星ブレイジングスター!」

 

「うおっと!?きゅ、急に何をするんだ!?最近の女の子は暴力的ってか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そこかぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう言った瞬間、悠岐は屋根の上にいた者の足を掴んだ。

 

「おっと、不味った!!」

 

「感謝するぜ魔理沙!!」

 

そう言うと彼は男を無理矢理屋根から降ろし、そのまま地面に叩きつけた。




遂に九十九を操っていた正体を見つけた悠岐。一体誰なのか!?
次作もお楽しみに!

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