東方混沌記   作:ヤマタケる

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優理花の場所へ行っても分からなかった指紋の主。


第98話 怪しい影

「エリュシオンに復讐、ねぇ。」

 

場所は変わって妖怪の山の何でも屋。そこでは悠岐と輝夜が九十九からエリュシオンについて話を聞いていた。

 

「悪いか!アイツはワタシからすベてを奪ったんだ!家族も、友人も、星も、世界もすべて!!」

 

強く怒鳴る九十九の目からは涙がこぼれ、手からは再び血が垂れていた。そんな中、悠岐が冷静に答える。

 

「別に輝夜はお前の復讐を悪いとは思っていねぇ。」

 

「……悪い、少し熱くなったみたいだ」

 

頭を冷やしてくる。そう言って九十九は応接室から出ていった。そんな彼女を見て輝夜が言う。

 

「九十九、大丈夫かしら・・・」

 

「相当奴の思い通りにされたのが悔しくて仕方がなかったんだな。」

 

2人がそう話していると、応接室の扉が開いた。

 

「ただいま〜っと、お客さんでしたか。あの、九十九はどこに行ったか分かりませんか?」

 

帰って来た少年、百々の言葉を聞いた悠岐が返事をする。

 

「いや、分からん。応接室を出たっきりだ。」

 

「……厠か?」

 

「頭を冷やしてくるって言っていたわ。」

 

「なら風呂か。もう少しすれば戻ってくると思いますよ。依頼でしたら、こちらの紙に詳細を書いて頂けますか?」

 

二人が紙を受け取ろうとした瞬間、突如応接室の扉が勢いおく開いた。

 

「ハァ、ハァ・・・。百々はいますか?」

 

「華扇!?どうしてここに?」

 

勢いおく扉を開けてきたのは汗だくの華扇だった。彼女を見て百々が言う。

 

「華扇じゃん。どうした、そんなに急いで?依頼の話か?」

 

「えぇ、緊急事態ですよ。人里で殺人が起こりました。」

 

「殺人!?」

 

彼女の言葉を聞いて驚く悠岐とは別に百々は冷静に華扇に言う。

 

「・・・そうか。慧音先生と妹紅には言ったのか?」

 

「これから言いますが今楓さんと魔理沙、ユニがその現場にいます。」

 

「あの三人がか?楓はともかく、死体慣れしていない二人は大丈夫なのか?」

 

「その『ゆに』って奴がどんなんだか知らないが魔理沙なら大丈夫だ」

 

悠岐の言葉に、百々は華扇の代わりに答えた。

 

「そうか。ならあいつらに任せよう。だが、何か不吉な予感がする。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう思うなら百々を連れて行ってきな。依頼は蓬莱山がいれば大丈夫だからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

頭を冷やせたのか、九十九が応接室の扉の前に立つ華扇の後ろから声をかけた。

 

「そうだな。そうさせてもらうよ。」

 

「ちょっ、悠岐!?」

 

「アンタはこっちだよ」

 

九十九は輝夜に停止の声をかける。そんな中、悠岐が百々を見ながら口を開く。

 

「んじゃあ行くか百々。」

 

「あぁ。宜しくな、悠岐」

 

そのまま二人は人里へと向かっていった。その時、木の影から何者かが二人を見て笑みを浮かべていた。

 

「予測通りってな。クックックッ・・・。」

 

「このままいけば計画通りね。」

 

「あぁ、こっちの手のひらで踊ってやがるゼ。……なぁ、このキャラ崩していいか?」

 

「まだダメよ。後からやったほうが面白いのだから。フフフ。」

 

「俺は部下じゃなくて協力者だっての・・・」

 

「なら、以前壊した幻想郷の住人の星熊九十九にやりなさい。」

 

「それならこっち側の男に使うさ。あっちにはスキがないからな。」

 

「彼は・・・そうね。いいわよ。」

 

「なら行ってくるわ―――

 

ニヤリと不敵な笑みを浮かべ、男は話し相手に振り向いた。

 

―――エリュシオンさん。」

 

「何かしら?」

 

「あの、その、頭に、栗が……」

 

「栗?」

 

そう言うと彼女は頭にあるものを手に取る。

 

『私だ。』

 

「・・・おや?栗が喋った。」

 

『・・ホントは分かってるんでしょ?エリュシオン。』

 

栗から女の声が聞こえた。それを聞いた女性、エリュシオンは呆れた表情をして言う。

 

「あぁ、そうだったわね。」

 

そう言うとエリュシオンは頭にある栗を掴み、地面に叩きつけた。

 

『無駄よ。これは声を届けるスピーカーのようなもの。あなたの攻撃は通じないわ。』

 

「……もしかして、妖怪賢者の八雲紫か?」

 

「八雲紫、ねぇ。何の用?」

 

『警告よ』

 

先程までの優しい声とは違い、冷酷な声で紫は言い放った。

 

「警告?」

 

『この幻想郷を星熊九十九の幻想郷のように滅ぼすなら私は、容赦しないわよ。』

 

彼女の言葉を聞いてエリュシオンは笑みを浮かべて言う。

 

「ほう、この神を越えた私に歯向かうと?」

 

『神?だから何よ。私はこの世界を守るわ。それが無謀な戦いだとしても、ね。』

 

じゃあね。そう言って紫の妖力が栗から離れ、そこにはただの栗が残った。栗を見たエリュシオンはそれを再び手に取り、言う。

 

「八雲紫の処理は後にするわ。後は琥珀・イーグナーウスをいかに早く殺せるかにかかってくる。」

 

そう言うとエリュシオンは手に持っていた栗を握り潰した。彼女の手からは血が垂れる。

 

「そろそろ俺は人里に向かう。アンタもしっかり動いてくれよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピロリ、ピロリ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如辺りに謎の音が響いた。それを聞いたエリュシオンは手に持っていたスライムを肩に乗せる。その瞬間、スライムが彼女の顔にくっつき、そのまま通信機になった。と、何か嬉しい知らせを聞いたのか、エリュシオンは笑みを浮かべて口を開く。

 

「・・・フフフ。いい知らせが入ったわ、寳。」

 

「・・・なんだ?(また出鼻くじかれた・・・)」

 

「どうやら月の都に神霊達が奇襲しているとカルマから連絡が入ったわ。だから私は月の都に行ってくるから幻想郷はあんたに任せるわ。やばいと思ったらすぐに撤退すること、いいね?」

 

「了解。・・・まぁ、問題無いと思うが、気をつけろよ。」

 

「ありがとう、じゃあまたね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって人里。そこでは殺人事件の起こった場所には悠岐と百々がいた。

 

「・・・なんか、この死体変じゃないか?」

 

「変って、何が?」

 

「こんな内臓をえぐり出す奴が幻想郷にいるか?少なくとも俺の知っている範囲ではいない。」

 

「殺人に快楽を感じてしまった妖怪が現れたのかもしれねぇ。結構前にそんな鬼を殺したことがある。」

 

「そんな奴がいたのか?」

 

「あぁ。……あんまり思い出したくないんだ。同族を殺したことにかわりはないからな……」

 

両手を強く握りしめ、地面に赤い液体が滴る。

 

「……たがいまは関係ないんだ。」

 

「お前、なんか九十九に似ているな。」

 

「そりゃあそうだ。九十九は俺だからな。」

 

「そうか・・・(九十九も百々も互いに同じだってこと知っていたのか?)」

 

その時だった。突如一人の少女が百々に向かって突進してきた。

 

「なっ!?」

 

「ゲヴァ!?」

 

「よぉ百々!こんなところで何してるんだ?」

 

「魔理沙!?」

 

魔理沙の突撃により、地面に倒れ込んだ百々が魔理沙を見上げながら答えた。

 

「い、依頼だ、よ……。コフッ」

 

「へぇ、久しぶりにお前の顔見たぜ。」

 

「き、基本は九十九に任せてるからな。俺はお前を除く努力の人たちに嫌われてるからな。」

 

魔理沙が上からどき、起き上がりながら百々は答えた。

 

「そういや、百々の能力って何なんだ?」

 

「『天命を全うする程度の能力』と、『すべてを再現する程度の能力』だよ……」

 

「なんだその能力は!?五大王と戦って勝てるかもしれなさそうな能力じゃねぇか!!」

 

悠岐の言葉に、百々はため息をついた。

 

「そんな便利な能力でもねぇよ。『再現する』には『再現できる』元の誰かが必要だからな。」

 

「素材が必要ってことか。」

 

悠岐が言った瞬間、魔理沙が百々の肩に腕を乗せて言う。

 

「本当に面倒な能力だよなー、私がすごく努力して作った魔法もすぐにマネされるんだぜ?」

 

「悪かったっての……。それに、『天命を全うする程度』の方で俺は寿命以外で死ぬことなんて無いからな。どんな無理なことでも出来るんだよ」

 

その瞬間、悠岐は一つの可能性を見いだした。そしてそれを百々に言う。

 

「なぁ、百々。お前は寿命以外では死なないんだろ?」

 

「……?あ、あぁ」

 

「もしかしたらだが・・・お前ならエリュシオンを倒せるのかもしれない!!」

 

「え、エリュシオン?誰だ、それ?」

 

「そうか、お前は知らないんだったな・・・。」

 

「あれ?百々って確か昔に腐れ縁っぽい人いたよな?」

 

「そんな奴いた……か?……ん?なぁ、悠岐、魔理沙。あの人集りはなんだ?」

 

百々の指差す先には鈴奈庵に集まる人混みがあった。

 

「行ってみるか?」

 

「そうだな。」

 

「なにがあるんだろうな」

 

「さぁ、見てみなきゃ分からない。」

 

 




鈴奈庵に集まる民衆。一体何があるのか!?
次作もお楽しみに!

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