私立グリモワール魔法学園~Another story   作:風飛の丘

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独自解釈、独自設定により原作を大切にされている方はご遠慮下さい。主人公はオリ主 不定期投稿
各専門用語については後書きにて補足
誤字、脱字等ありましたらご了承下さい。




グリモア 第3話 岸田 夏海編

前回の討伐クエストから毎日、放課後は訓練所で魔法訓練をしているのだが…… 上手く行かない。

 

「はぁ~ やっぱり駄目かぁ」

「誰か魔法に詳しい人に相談してみるかしかないな……」

 

全般的に魔法との相性が悪いと診断されていて、どの魔法も失敗に終わっている。

 

せめて防御魔法ぐらは使えて、自分の身を守らないと魔力による肉体強化だけじゃ、皆の足を引っ張るだけだな……

 

護身用として緊急用の【ガジェット】魔法バリア装置は常時持たされているけど、使いきりで高価な物らしい。安易に使う訳には行かないしどうしたものか……

 

訓練終了のアラームが鳴り、本日の訓練も終了だ。

 

この後の予定は、報道部へ部活見学だ。

智花の親友の岸田 夏海さんがいる事を聞いていたので最初の部活見学に選んで見たのだった。

 

□□□

報道部

「本日、部活見学にきた来栖です。よろしくお願いします」

挨拶して中に入ると、美人でショートカットのお姉さんに声を掛けられる。

 

「やぁ 初めまして、君が噂の転校生君だね」

「色々と噂は聞いているよ」

 

「え? どんな噂なのか? 気になるんですが……」

 

「それはね…… 内緒だよ」

 

凄く気になるが、初対面の相手に無理も言えず大人しくすることにした。

 

「僕の自己紹介がまだだったね。僕は報道部部長 遊佐 鳴子 これからもよろしく頼むよ」

 

その時、デバイスから緊急アラーム鳴る。

 

それと同じく、部屋のドアが意気よく開けられる!

 

「スクープ、スクープ! 大スクープだよ!」

「街に魔物が出たって!」

小柄な女の子が、部屋に飛び込んで来た。

 

「夏海、遅い! 魔物発生は15分前で確認が取れたのは3分前、皆のデバイスアラームが届いたのは今だ」

遊佐さんは的確に教える。

 

「部長、知っていたんですか!?」

「じゃあ、早くクエスト受注しなきゃ!」

 

「今回は、君だけて行って来るんだ。魔物の取材は任せたよ」

「君もそろそろ一人立ちの時期だ。僕も卒業が近い。 引退だよ」

 

「……部長、分かりました! 行ってきます!」

彼女は来た時と同じく、意気よいよく飛び出して行った。

 

「……転校生君の事には、気がつかなかったみたいだね」

「慌てん坊でね。すまない、そうだ君ちょっと届け物をしてくれないか?」

「夏海は飛び出して行ったのはいいが、確か?カメラのデータがいっぱいだったはずだ」

「メモリーとバッテリーを渡してくれないか? で、良ければだけど夏海を手伝ってもらえないか? 僕は心配性なんだよ」

優しい? 遊佐さんから依頼を受ける。

 

「智花の親友だと聞いているので、役に立てるか? 分かりませんがお手伝いしますよ」

 

「僕は君に期待してる。よろしく頼むよ」

 

何か? 含みがある笑顔で頼まれた気がするが、今は急いでクエストを受注して追いつかないと…… 荷物を受け取り走り出す。

 

□□□

風飛市内

 

何とか市内に入って、すぐに彼女に追い付く事が出来た。

「ヤッホー 転校生! どうしたの?」

 

「忘れ物を届けにと手伝いに来たんだよ」

 

「うん? 部長から? そっか…… 慌てて出てきたら…… ありがとうね。助かったわ」

「ついでに、報道部で取材させて欲しいんだ! 噂の転校生特集やりたいんだ~」

 

やはり噂の転校生の部分が気になるが、クエストを優先しなければ行けない事を伝える。

 

「……そうだね。先にクエスト片づけてからね!」

 

お互いに状況を確認する。

 

被害状況はニュースやデバイスに流れている通り、街中に魔物が現れてしまった。軍の基地はここから遠く、来るのにも時間がかかる。だから自分達にしか出来ないクエストで街を守らないと!

 

「うんとね、住民の避難は完了しているからやることは1つ! 魔物をぶってぶってブチのめすだけ!」

「張り切って行くよ。では出発!」

「あ! 私の事は夏海、呼び捨てでいいよ。あんたの事も銀河って呼ぶから」

 

テンションの高い子だと、思いながらその呼び方で問題ないと伝える。

 

移動しながら任務情報を確認。ついでに彼女のデータも確認する。

 

岸田 夏海 16歳 身長147㎝ 体重40㎏ B76 W54 H77

特技 ネタの脚色 ……駄目だ! この人に取材させてたら記事が面白、おかしく捏造されてしまう。危険だ!

 

 

街での戦いと言うこともあり、多くの生徒も任務を受け参加している様なので、自分の担当する地区のスライムを殲滅すればよいらしい。

 

夏海はデバイスの地図データを確認しながら

「うーん…… けっこう大きく支配地域を増やしているわね…… ちょっとまずいかも」

 

「不味いの?」

 

「色々あるけど、支配地域の広さイコール強さかな」

 

そういえば、授業で習った気がする。魔物は時間がたつほどに強くなる。それにつれて支配地域も拡大して行くと。

 

「多分、下水とかでゆーっくりと力を蓄えていったのね」

「女の子対スライムなんて、嫌な予感しかしないけど…… あたしは女の子である前に真実の探求者だから!」

「何もかも激写してやるわ! ふふふ、覚悟してなさい」

「あ! 噂をすれば影だよ。あそこにちょっと山みたいな…… でかいスライムが動いている!」

 

その方角を見てみると、想像してたよりかなり大きい……ちょっとしたビルぐらいある。

 

「行くわよ。銀河! 突撃取材開始!」

叫びながら彼女はスライムに近づき、光の魔力を帯びた右足で飛び蹴りを食らわしていく。

 

どうやら夏海の攻撃スタイルは、魔力を帯びた蹴りを主体に、片手で光球(サッカーボール位の大きさ)をぶつけて、スライムにダメージを与えている。

 

……なぜ蹴り? なぜ片手? それは言うまでも無く、夏海は戦いながら写真を撮っているのだ!

 

両手使えば…… 写真撮らなければ、もっと早く倒せるのではないかと思ってしまった。

 

1匹目のスライムを難なく無事に倒した後、戦闘スタイルの件を聞いてみる。

 

「報道に携わる者として、そこは譲れないの!」

「写真も撮る! 敵も倒す! 両立してこそのパパラッチよ! スクープの為なら例え火の中、スライムの中……」

 

おおぉ~! 凄いジャーナリスト魂だ。尊敬の眼差して見つめると……

 

「いや~ さすがにスライム中は…… は、入るわよ! 入ってやろうじゃないの!」

「報道部ゴシップネタ班 副班長の実力を見せてやるわよ!」

 

なぜ、そこで意地になる必要があるのか…… 全くもって理解出来ないが、報道部への入部は無いなと思ってしまった。

 

その後、夏海に魔力供給をしながらスライムを5体ほど倒して行く。

 

「うわ~ ベトベト、攻撃する度に破裂するのやめて欲しいわ」

「ええっと…… カメラは…… 大丈夫! 大丈夫! 死守してるから濡れて無い! スライムと戦いながら写真撮るのは、大変なんだからね!」

 

確かにカメラは濡れて無い様だけど、スライムの体液には、強い酸性みたいな物が含まれている様で、夏海の姿を見ると戦闘服が所々、溶けている。

 

本人は気付いていないようだが元々、動き易い感じの戦闘服でショートパンツにお腹が見える位の短いタンクトップ、そして同じくらい短いジャケットを着ているのだが、今はその一部が溶けていて、お尻の部分や胸の部分があらわになっている。

 

思わず見つめていると、夏海も気が付いたようで慌てて隠すが、しっかり見てしまった後だった。

 

夏海は顔を真っ赤にしながら

「見物料! とは言わないけどスクープネタ提供しなさいよ!」

無理難題を言って来た。

 

戦闘服はミストファイバー製なので、魔力を込めると戦闘服は自動修復される。なるべく見ないように魔力供給をしてあげる。

 

そして誤魔化すようにデバイスを取り出し、支配地域を確認する。地図を見ると後少しで討伐完了になるようだった。

 

「残りわずか! 頑張って行こう……」

 

「何か? 誤魔化しているみたいだけど、忘れないからね! スクープネタ」

誤魔化すことが出来ず、更には釘を刺される。

 

その後、魔物を探して辺りを巡回していると1匹のスライムを見つけたが!?

 

おかしい…… さっきのスライムの5倍は大きいぞ。

どうやらあれがボスの様だった。

 

「あれに? 攻撃効くかな……」

夏海も余りの大きさに怯んでいた。

 

大きさで言えば6メートルぐらいはあるかも知れない。

 

「やるしかない! 近距離の撮影は諦めて、両手で魔力を溜めて撃ってみて! 魔力供給はするから」

 

「了解、やるしか無いわね! 駄目なら逃げるわよ」

 

夏海はこの戦闘で初めて、両手で魔力溜め始める。魔力球が通常の何倍も大きくなって行く。

 

「今だ! 撃て!」

 

「とりぁぁぁ~」

叫びながら、夏海は巨大な魔力球をスライムに投げつける。物凄い爆発音と共に、大きなスライムを一撃で粉砕した。

 

「やった! これでクエスト完了よ」

 

デバイスで他のエリアも確認する。他のエリアも、どうやら無事に討伐完了しているようだった。

そして、街に被害はあるものの死亡者0人で、街の人達に被害は無かった。

 

「お疲れさま~ ほい、スポーツドリンクでいいよね? 」

 

「サンキュー どうしたのこれ?」

 

「そこの壊れた自動販売機からもらってきたの、これぐらいいいでしょ?」

 

苦笑いで返事する。

 

「倒した後は、すっきりするよね」

「あたしも人の役にたってるんだって思える」

 

「ああ、まったくその通りだな」

 

「しかも今回は街の人に、死者が出なかったし万々歳だよね」

「それじゃ、一休みしたら帰ろっか!」

 

確かに気づくと魔力は十分にあるが、街中を走り回ってヘトヘトだった。

 

「学園に戻ったらよろしく! 独占密着取材~」

「え? そんな約束あったかな?」

 

「今夜は帰らせてあげないからね!」

夏海は満面の笑顔だった。

 

本気で、学園に帰りたくないと思ってしまった。

 

END

 

 




何とか一気に3話投稿。これから掲載ペースが落ちると思いますがよろしくお願いします。

2016/10/17 一部修正完了済み

用語集
ガジェット
対魔物用に開発されている兵器。
普通の人でも使用出来るように設計されているが、高価な代物で主に軍などが使用している。

風飛市
埼玉県にある街 過去、幾度も魔物に襲われている街。それにより、住民も魔物発生時にどうしたらいいのか?などは慣れている。
一説には東京に向かう要所に位置するとも言われている

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