私立グリモワール魔法学園~Another story   作:風飛の丘

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独自解釈、独自設定により原作を大切にされている方はご遠慮下さい。主人公はオリ主 不定期投稿
各専門用語については後書きにて補足
誤字、脱字等ありましたらご了承下さい。
時系列は原作とは違います。

奪還作戦編は前編、後編の2部構成となる予定です。



グリモア 第26話 北海道奪還作戦 前編

今月に入ってから学園全体の雰囲気が、いつもと違っていた。緊張感からなのか高揚感なのか? 生徒達のそれぞれの思いが交差していた。

 

理由は【北海道奪還】大規模クエストが発動がされ、その作戦に向けて準備が始まっている為だった。

 

現在、先行している国軍とPMCが軸となり、北海道全域で奪還作戦が既に進められていた。そして学園の任務は札幌市内の制圧が目標となっている。

今だ、市内には沢山の魔物がいると想定されいて、困難を極める高難易度クエストになっていた。

 

そんな中、自分は屋上に呼ばれ待ち合わせをしていた。

 

「少年、待たせたな。色々と大変じゃったぞ」

夕方、人気のない場所へ。屋上に来いと言うことで師匠(アイラ)に呼び出されていたのだった。

 

「さっそくじゃが、本題の話じゃ」

「今、確認してきたが北海道奪還作戦時、お主の役割は第7次大規模侵攻と同じで、遊撃部隊として各チームへの魔力供給と流れて来た魔物の討伐じゃ」

「そこでじゃ、タイミングを見てあれを試すぞ!」

 

北海道奪還作戦…… 大規模の戦いになるのでもしやと思っていたが……

 

「お主は、妾と一緒に行動出来るように話はつけてきた」

「どこまでやれるか? 期待するぞ!」

 

「はい、頑張ります!」

不安よりも、高鳴る高揚感で一杯になっている自分がいた。

 

□□□

駐屯所

 

未明、北海道に上陸した学園生徒は生徒会長の武田虎千代から激が飛ばされる。

「学園生諸君、出発前に説明した通り我々の目標は札幌市内の奪還だ!」

「1週間前から各地で戦い、戦果を挙げている国軍、PCM、それを支援する者達に胸を張れるよう。我々も仕事をしようじゃないか! いざ出撃!」

 

「さて少年、我々も行くぞ! 最初は皆の支援からじゃ」

 

「了解!」

 

遂に北海道奪還作戦が火蓋を切って始まった。

 

□□□

市外付近

 

幾度も鳴るデバイスを横目に、位置情報を素早く確認しながら魔力供給の為、師匠と一緒に戦場を駆け抜ける。

 

「雑魚は妾に任せろ! その間に魔力供給と体制の立て直しをするんじゃ」

 

「一旦、全員後方へ! 前衛はすぐに出れる準備を!」

戦場の状況を確認しながら、全員同時に魔力供給する。

 

「よし、今だ! 前衛は前に、出過ぎないように注意!後衛はそのまま遠距離攻撃を維持して。みんな、無理はしないように!」

矢継ぎ早しに指示を出していく。

 

「それ、次じゃ」

「中々、忙しいではないか! それにエレンの教えが役にたっているようじゃな」

 

「みっちり、しごかれましたからね!」

 

前線で疲弊している各チームに魔力供給しながら討伐に漏れた魔物を撃破して行く。そして魔物の数が多い市内中心部へ足を向ける。

 

その時、デバイスがいつもと違うアラームで鳴る。

「……ッ 最優先の補給依頼! 急ぎましょう」

緊急の補給依頼は、札幌時計台の場所から発せられていた。

 

「例のあれか? 気を引き締めて行くぞ」

師匠の言うあれとは、ましろ達の料理部から連絡あった際には緊急事態。優先して支援する様にと生徒会長と料理部部長の里中 花梨から頼まれていたのだった。

 

□□□

札幌時計台

 

「待たせた!」

声をかけると同時に料理部のみんなに魔力供給をする。

 

「遅いアル! でも助かったアル!」

肩で息をしている雀 明鈴が手近な魔物に蹴りを入れ霧散させる。

 

「な、なんじゃ? あ、あれは……」

「……っ ありえん。人があんなにたくさん、氷浸けにされているじゃと……」

師匠が喘ぐように1本の巨大な氷の柱を見ていた。

その氷の柱の中には、沢山の人が閉じ込められていたのだった。

 

「んだぁ、あれに近寄ろうとしたら、わらわらと魔物が沸いて出てきたんだぁ」

それを横で話を聞いていた里中 花梨が教えてくれる。

 

「魔物がわざわざ、人を集めて氷の柱に閉じ込めた…… 知性の持ってる魔物がいるじゃと……」

 

「くっ、残念じゃが中の人は氷漬けにされた瞬間に死んでる…… 死んだ当時のままを今も保っているのじゃ」

 

「理由は簡単じゃな…… 【罠】じゃ。助けに来た人間を待ち構えて襲うと言う訳じゃが……」

 

「殺して、尚も死者を愚弄するか! 流石の妾も頭に来たぞ!お主ら全員下がれ!」

 

そして、師匠は詠唱を紡ぐ。

「……アルカス・クルタス・エイギアス。疾風なりし天神、今導きのもと撃ちかかれ! バルエル・ザルエル・ブラウゼル。Photon Lancer Phalanx Shift 撃ち砕け!」

 

師匠の周辺に無数の魔方陣が現れる。その魔方陣から雷槍が無限と思われる程に撃ちだされ、周囲の魔物を全て串刺にする。

 

流石、師匠の広域殲滅魔法はいつ見ても凄い! 前方にいた魔物は全て霧散していった。

 

「では、私も! 銀河さん、魔力の供給をよろしくお願いします」

雪白 ましろはそう言うと、後方から押し寄せて来る魔物達に向かって魔法を唱える。

 

「永久なる凍土よ、凍てつく棺のうちにて永遠の眠りを与えよ。凍てつきなさい!」

放たれた魔法は、周囲を全て凍らせながら魔物達を永久の氷の中に閉じ込める…… それが魔物の棺となる。

後方から来た魔物を一瞬で、すべて氷漬けにしてしまった。

 

「はぁ、はぁ…… やりました」

大規模の魔法を行使した反動で、ましろはかなり疲弊していた。

 

「レナ? どうしたネ?」

李 小蓮が普段と様子が違う? 相馬 レナの様子に気付き声をかけるが、レナは時計台の隣の大きな建物に向かってずっと睨み唸っていた。

 

突然、建物が上から崩れ壊れた? と思っていたら中から巨大な魔物が1体現れた。

 

「え? ムサシ?!」

ましろが悲鳴に近い声をあげる。

 

「違うな、ムサシ級ならもっと大きい! しかしタイコンデロガよりは、明らかにでかいではないか!」

「札幌で、あそこまで育った新種じゃな……」

 

「しかも建物の中に隠れているとはな…… 通りで空からの目にも映らん訳じゃ……」

 

監視衛星から地上の状況が、リアルタイムに連絡されているが、大型種はいないと連絡を受けていたのだった。

 

「ともかく、あれを何とかしないと!」

巨大な魔物の足元からわらわらと、小型の魔物が現れて来た。

 

「一筋縄ではいかんじゃろうが…… ましろ、やれるか?」

 

「ええ、ここで仇を討ちたいです!」

 

10年前、札幌を中心として起きた第6次大規模侵攻の際、家族全員が魔物に殺され運良く生き残ったはましろだけだった。

家族の仇を討ちたいと言う強い想いが、そこにいる全員に伝わる。

 

「なら決まりだ! 会長のいる司令部には連絡した」

「援軍が来るまで、何とかするぞ!」

みんなに向けて気合いを入れる。

 

「よし、決まったネ。こちらも援軍を頼むネ」

小蓮はデバイスでどこかに連絡して、座標らしき数字を伝えていた。

 

「援軍? 会長達以外にも?」

この周辺にいる学園の生徒は、自分達しか居ないはずだが……

 

「……なるほど、周万姫か? それなら届くはずじゃ。妾も実物は見た事は無いがな」

「お主ら、急いで防御障壁を張るんじゃ」

師匠に言われ、花梨が土の障壁をましろはその上に氷の障壁を重ねて張る。

 

「仕上げは妾じゃな」

さらに透明な魔法障壁を重ねがけして、防壁をさらに強化させる。

 

障壁が完成たした瞬間、物凄い轟音と共に大きな隕石が空から降って来た! それが続けて何度も繰り返される。

轟音が止み、辺りの土煙が晴れると同時に周囲を確認する…… 複数の大きな隕石がクレーターを作り出していた。

 

周万姫の大規模魔法【ハルマゲドン】の威力を目の当たりにした瞬間だった。

 

例の魔物は? 現れた雑魚の魔物は見当たらなかったが…… あのデカイ魔物は相当のダメージを受けて、弱っている様だったが顕在していた。

 

「待たせた!」

虎千代がビルとビルの間を八艘飛びをしながら、こちらに向かって来た。

 

「会長も来た! みんな、あと少しだ! あれだけダメージを受けていれば倒せる!」

残りの気力を振り絞り声をかける。

 

「少年よ、お主は全力でみんなに魔力供給をするんじゃ」

 

「はい! 分かりました」

 

「銀河さん。わたくし、ここで死んでも構いませんから決して魔力供給を止めないで下さい。全力で行きますわ!」

「それでは…… 終わらせましょう!」

ましろの瞳には覚悟の炎が灯っていた。

 

ここで必ず決着をつけるつもりだ。

 

「いくぞ! ホワイトプラズマ!!」

虎千代に魔力供給を開始すると同時に、白い砲撃が一直線に伸びて行き魔物の体を突き抜ける。

 

「転校生! ワタシにも魔力をよこすネ!」

「会長ほとでは無いガ、ワタシだってやれば出来るネ!」

小蓮に言われ魔力供給をする。

 

「行くネ! ホワイトプラズマ!」

会長の砲撃より格段に砲撃の線が細かったが、紛れも無いホワイトプラズマが魔物に向かって放たれた。

「アイタタ…… これはキツいネ……もう無理ネ……」

流石にぶっつけ本番では無理があり、小蓮はその場で膝をついて倒れる。

 

「若いものどもに負けとられん!」

言わずとも師匠へ魔力を供給する。

 

「アルカス・クルタス・エイギアス。煌めきたる天神よ。今導きのもと降り来たれ。撃つは雷、響くは轟雷!」

突如、辺りが暗くなり空が暗雲で包まれる。そして、幾つもの落雷が魔物に降りかかりその存在を消し去ろうとしていた。

 

「ググォォォォォォォ!!」

魔物は自分の存在を確かめるように咆哮しながら、巨大な腕を次々に振り降ろしてくる。

 

「あんなのに当たったら大変アル!」

振り下ろされた先の地面は粉々になり大きな穴が空いていた。

 

「一旦、全員距離を取れ!」

虎千代から指示が出される。

 

「下手には近寄れんな。どうするんじゃ」

 

「……私に考えがあります。敵の注意を引きつけてもらえれば……」

ましろは、皆を危険な目には会わせたくないようだったが、ここに居るメンバーは既に覚悟を決めていた。

 

「なら先程と同じく、魔物の攻撃に注意しながら攻撃するぞ!」

「絶対に当たるな!!」

虎千代はそう言うと駆け出していった。自ら先陣を努めるつもりらしい。

料理部の面々もそれを見て走り出して行く。

 

「先程も言いましたが、魔力供給を止めないで下さいね」

 

「行きます!」

 

急にましろの背中に氷の双翼が現れたかと思うと、羽をはばたかせ空に向かって一直線に舞い上がって行く。

 

天使の羽にそっくりな氷の羽がとても綺麗だった。

 

会長達は何とか攻撃を避けて、魔物の意識を足元に向けさせていた。

 

「今だ! ましろ!」

全力で魔力を供給する。

 

魔物の頭上まで上がった彼女は詠唱を奏でる。

「白銀の王よ、銀の翼を以て眼下の大地を白銀に染めよ! 氷結の息吹き!」

 

彼女の周囲に4個の立方体が現れ、それぞれから氷の魔法が放たれる。

存在が薄れている魔物を端から端まで、全て氷で閉じ込めて行く。

まるで消えるのを許さない様に…… 全身が凍った魔物は、最後に氷が砕け散ると同時に粉々になって霧散していく。

 

「や、やりました! これで家族に……」

2度の大規模魔法を使い無理を重ねた結果なのか? 突然、彼女は空から落下して来る。

 

「まずい!」

急いで落下地点に向い魔力で身体強化を重ねる。

落下して来た彼女を何とか無事に、受け止める事が出来た。

 

「大丈夫か?!」

声をかけて確認すると、ましろの綺麗な顔は戦いで薄汚れていたがすごく穏やかな顔をして眠っていた。

 

遂に10年来の想いが叶ったのだった。

 

「花梨、後は頼む!」

抱き抱えたましろを近くにいた花梨に預け、急いでその場を離れる事にした。

 

「銀河君、どこさ行くんだぁ? 少しは休んだらぁいいさ」

 

「まだ、やることがあるんだ!」

戦いの終わった花梨達を残し、市外へ走り出す。

 

「少年よ、大丈夫かえ? 大分、頑張ったようじゃからな」

隣を走る師匠も額から汗を流していた。

 

「最後のミッションが終わるまでは!」

 

END

 




いつもお読みいただきありがとうございますm(__)m

用語説明
料理部メンバー
里中花梨・雪白ましろ・雀明鈴・李小蓮

飼育委員メンバー
里中花梨・相馬レナ
上記メンバーの詳細はメインストーリーの方で補足していきます。

周万姫
始祖十家の一人。中国大陸の住んでいて今回の攻撃も中国大陸からの魔法となる。
□□□□
ついに小説を書き初めて1年を迎えました。
時が経つのは早いですが、投稿は早く無いです……
引続きよろしくお願いします。

この後は後編を投稿したら、各話をメンテナンスしますので投稿はいつもより遅れます。

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