黄泉路への案内人   作:楽一

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第七話

 

第七話

 

 

 翌日 学校

 

「おはよ~」

 

「おはよう。相変わらず寝むそうだな」

 

「うみゅ~」

 

「まぁ、昨日あんなことがあったばかりだったから仕方ないか」

 

 クラスに入ると、アリサとすずかがこっちに来て、

 

「なのは、昨夜のこと聞いた?」

 

「ほぇ? 昨夜って?」

 

「昨日言った病院で、車の事故があったらしくて・・・壁が壊れちゃったんだって」

 

「あのフェレットが無事かどうか心配で」

 

「うん・・・・」

 

「あの・・・えっとねぇ~・・・・そのけんは・・・」

 

「はぁ~」

 

 葵は軽くため息をついて、なのはに話を合わせるように言って、適当にごまかした。

 

「そっか~。無事でなのはの家にいるんだ」

 

「でもすごい偶然だったね。たまたま逃げだしたあのこと道でばったり会うなんて」

 

「「ね~♪」」

 

 適当に嘘ついたことを信用してくれ何とか難を逃れた葵となのはであった。

 

「ねぇ、葵君。本当に良かったのかな・・・な、なんというか、その」

 

「嘘はついていない。多少、ちょっと脚色を加えただけだ」

 

「あ、あははは・・・・そ、それでね。なんかあのこ飼いフェレットじゃないみたいで当分家で預かることになったよ」

 

「そうなんだ~」

 

「名前つけてあげなきゃ。もう決めてる?」

 

「うん♪ ユーノ君って名前」

 

「ユーノ君?」

 

「うん。ユーノ君」

 

「へぇ~」

 

 ユーノがいない場所でユーノについて授業開始まで話し合う三人。

 

 その時葵はこんな些細なことでも話し合えるというのはやっぱり女子がお話し好きなのだからだろうかと考えていた。

 

(そう言えばリニスやルミル、エクスも些細なことで三時間ぐらい話してたっけ?)

 

 

授業中葵が黒板に集中していると、

 

「〈葵君、聞こえる?〉」

 

(ん? なのはの声が? どこから?)

 

「〈念話っていうだって。ユーノ君から教わったんだ!〉」

 

「(念話? テレパシーみたいなものか。なら)〈こうか? ユーノ、なのは。聞こえるか?〉」

 

「〈うん。聞こえるよ葵〉」

 

「〈そうか。で、どうかしたのか? 急ぎの用か?〉」

 

「〈ううん。でも、二人には知っておいてほしいことかな〉」

 

 そういってなぜ、ユーノがこう言ったことが起こってしまったのか。そして、なぜジュエルシードが海鳴市に散らばったのか。という経緯を話してきた。ジュエルシードのことについては、葵はリニスから情報を得ていたので分かっていたが知らないなのはは驚いていた。

 

 なのははユーノの話を聞いて自分自身もジュエルシードを集めるのを手伝うといってきた。

 

「〈だけど、昨日みたいに危ないことだってあるんだよ!〉」

 

「〈ユーノ。それは言い訳にしかならない〉」

 

「〈え?〉」

 

「〈話を聞いた限り君は発見しただけだ。そこまで君が責任を持つ必要はない。まじめなのもいいが君の場合は度が過ぎている〉」

 

「〈うん。でも、やっぱり僕が〉」

 

「〈話は最後まで聞け。それになのはや私も、もう無関係ではない。なら、手伝えることだけでも手伝おう。力になれることは力を貸そう。それが友というものではないのか?〉」

 

「〈いいの?〉」

 

「〈私は構わないが。なのはは?〉」

 

「〈うん! わたしもいいよ!〉」

 

「〈だそうだ。協力関係は結ばれたのだ。これ以上君が責任を負う必要はない。分かった?〉」

 

「〈ありがとう。葵〉」

 

「〈そうそう。それにユーノ君。いざとなったら葵君が護ってくれるよ♪〉」

 

「〈あぁ。全力で守らせてもらうよ〉」

 

 そういって念話を切ろうとしたら、

 

「〈そうだ葵! 君の使っていた魔法は何なんだい。あの翼のような形の剣も六本出したし、あのジャッジメントという魔法も見たことがない。さらに言うならあの背中の翼は?〉」

 

「〈そ、そうだよ! あの時は言えなかったけどなんなの!?〉」

 

「〈ふむ。そうだな。説明には時間をとる。帰りを共にするならその時に話そう。ユーノ。学校までは来れるか?〉」

 

「〈うん。なのはの魔力を辿れば何とか〉」

 

「〈ではその時に話そう。それよりなのは。授業に集中しておけ〉」

 

「〈はーい♪〉」

 

 

 

 そして昼休み

 

「葵君。そのリュックの中身って何?」

 

「ん? すずか。君が知らなくてもいいものだ。当然アリサとなのはもな」

 

「どういうこと?」

 

「いい加減毎日あの時間過ごすのも飽きた。というわけで制裁を加える道具を持ってきた」

 

「制裁?」

 

「見たければ見ていていい。途中で嫌になったらこれをつけるといい」

 

 そういって葵は三人に『完全光り遮断アイマスク』と商品名がデカデカと書かれた物を渡した。

 

「そうだ。葵君、来週の週末は暇?」

 

「ん? あぁ。そうだな、別にやることもない。どうしたんだ?」

 

 すると、アリサが、

 

「来週の週末にすずかの家でお茶会をするつもりなんだけどアンタも来ない?」

 

「お茶会?」

 

「そ、お茶会。アンタ、すずかの家に行ったことないでしょう? こういう機会でもないとアンタ行きそうにないし、どうかと思ってね」

 

「そう言えばすずかは猫を飼っているのだったな」

 

「え? うん」

 

「そうか。では参加させてもらおう! 手土産にケーキでも持っていこう」

 

 そういって目をキラキラさせながら遠足を明日に控えた子供のように気分が浮かれていた葵だった。だが、次の瞬間には、

 

「ふむ。とりあえず今日もか」

 

 溜息を少しはきながら屋上の入り口を見た。

 

「? あんた、何一人で納得したような顔してるのよ?」

 

「アリサか。なに。飽きずにまた男子達が来たなと思ってな」

 

「ふぇ?」

 

「「「「「神無月葵――――――――!!!!」」」」」

 

 そこにいたのはいつも通りクラスの男子。

 

「またか。飽きないな、君達も」

 

「ほざけ! このハーレム野郎!!」

 

「オレたちの青春を返せ!」

 

 などと、葵にとってはわけのわからないことをほざいている。

 

「はぁ~。いい加減ゆっくり昼食をしたいから、今日はお前らに、いや、貴様らに痛い目を見てもらおうか。フッ、フフフフフッフフフッ」

 

―ゾクッ

 

葵の不気味な笑いによって楽しい昼食は一気に崩壊。愉しいO☆HA☆NA☆SIの時間がやって来たようだ。

 

「な~に、一瞬にして最大のトラウマを植え付けるだけだ。私にとって憩いの時間を毎日毎日変にとられるのもいい加減あきた」

 

 そういって葵は弁当が入っていたリュックから二つのフライパンを取り出した。

 

「これは特注品のフライパンでフライパンの上にダイナマイト20本置き同時爆破しても壊れないという素晴らしいフライパンだ。これで今から貴様らとO☆HA☆NA☆SIする!!」

 

 それを聞くやいなや男子達は一気に屋上から逃げるが、

 

「逃がすと思うか? 生け贄共」

 

 その言葉と同時に葵が屋上から消え、数分後。

 

「ふぅ。やはりすごいな。ここの会社のフライパン。全員を昇天(無論生きてます)させた後にもかかわらず一切のへこみ、キズが無い。後でトマホークの爆撃にも耐えられるフライパンでも買うか」

 

「あ、あの、あ、葵君?」

 

「ん? 何だ?」

 

「だ、男子達は?」

 

「なに気にすることはない。そう、気にすることはないよ」

 

 その後、頭にマンガのようなタンコブ数段を創った男子達が発見された。なにやらフライパンだの葵怖いだの三途の川が見えただの言っていた。ただ、その後フライパンという言葉を聞くとガタガタとまるでヘビに睨まれた蛙のように震えていたとのこと。

 

 余談だがこの日以降男子達は昼食に屋上に現れなくなったとか。

 

 そして放課後、ユーノと合流したが、さすがにアリサ達と一緒なのでリュックの中(後でなぜフライパンが入っていたのか聞かれたがスルー)に入れ、アリサとすずかと別れ、リュックからユーノを取り出すと、ユーノは授業中にした質問をしてきた。

 

「〈それで、葵。君の魔法は何なんだい?〉」

 

「〈あぁ。その前に私はこの世界の住人じゃないんだ〉」

 

「〈うにゃ? どういうこと〉」

 

「〈簡単に言うと平行世界の住人。可能性の世界から来たということだ〉」

 

 なのはの方を見ると頭の上にまだ?マークが浮かんでいた。

 

「〈簡単に言うとこの世界にはいくつものに多様な世界がある。その世界には例えばなのはが魔法と出会わなかった世界。また、なのはと私が出会わなかった世界。はたまた海鳴市という存在そのものがない世界という物があるんだよ〉」

 

「エェ―――――!!!」

 

「声が大きなのは」

 

 そういって葵は急いでなのはの口をふさぐ。

 

「〈でも、それと君が魔法を使えるという意味にはつながらないと思うけど〉」

 

「〈ユーノ。さっきも言ったが私は可能性の一つの世界から来た。私のいた世界は、魔法が一般化された世界。つまり日常いたるところに魔法があるという世界からこっちに来た。とすれば私が魔法を使えるのも納得するのでは〉」

 

「〈なるほど。そう考えれば納得できる。それなら僕がいた世界とは全く異なる魔法というのもうなずける〉」

 

「〈ご納得いただけたかな?〉」

 

「〈うん!〉」

 

「う、うにゃ~~~~~」

 

 なのはは納得できていないどころかのうない処理が追い付かず頭から煙をふかしていた。

 

「〈ユーノ。なのはに後でかみ砕いて説明してやってくれ〉」

 

「〈わ、わかった〉」

 

 すると、何か時が止まった感じを察知し、

 

「〈ユーノ君これって!?〉」

 

「〈新しいジュエルシードが発動している!〉」

 

「〈方角は・・・神社の方だ。急ごう!〉」

 

「「〈うん!〉」」

 

 神社の階段を駆け上り、そこで見たのは、

 

「犬? いや、地獄の番犬といった方が合うな。今回はエクス。白騎士!」

 

《はーい! いきます!》

 

「光の道を指し示す者、白騎士!」《シンクロイン!》

 

 すると、葵の姿は白い光に包まれそこから現れたのは白銀の髪をし、白い全身鎧に包まれ、右手には白を基調としたアドミック・ジャベリンと呼ばれる砲が、左手には魔力によって形成されるビームソード内蔵のシールドに、さらにアルヴォPD11と言われる白を基調としたハンドトガンを内蔵している。

 

「飼い主を安全な場所に避難させる。エクス、アルヴォに魔力弾セット」

 

《魔力弾セット、いつでもどうぞ!》」

 

「ファイヤ!」

 

 ―ダンッ ダンッ ダンッ

 

 すると、白色の魔力弾が犬めがけ数発発射され、多少の時間を稼いでいる間に葵は、加速魔法を使い一瞬にして飼い主の場所まで行き、比較的安全な場所においてきた。

 

「なのは! 時間は私が稼ぐ! その間にジュエルシードを封印してくれ!」

 

 そういってアドミック・ジャベリンをしまいもう一つアルヴォを取り出し、連射して足止めする。

 

(くっ、思った以上に固い! それに速度もなかなか・・・)

 

 そういって少しすきを見せたのがいけなかった。犬(?)はその一瞬のすきをついてなのはの方に向かった。

 

「しまった!? なのは、逃げろ!!」

 

「こっちに来る! なのは! レイジングハーとの軌道を!」

 

「え!?・・起動ってなんだっけ?」

 

「【我は使命を~】から始まる起動パスワードだよ!」

 

「ええ~!? あんな長いのおぼえてないよ~」

 

「も、もう一度言うからそれを繰り返して!」

 

「う、うん!」

 

起動パスワードを言おうとするなのはだったが、敵がそれを待つわけもなく、なのはに向かって跳躍する。犬に向かって威嚇射撃をしようとした時、レイジングハートが光りだした。

 

「レ、レイジングハート!?」

 

《standby,ready set up》

 

 光が収まると杖は持っていたが、なのはは制服のままであった。

 

「(まずい!)シールド展開! アルヴォ収納。ジャベリン起動後魔法エネルギー8%で収束砲セット」

 

《イエス マスター》

 

 急いでなのはの前にいき、楯を前に出し、魔力でエネルギーシールドを展開した。

 

「私が全力でなのはを護る! その間に防護服を着ろ!」

 

「う、うん!」

 

「ユーノ! やり方を教えてやれ!」

 

「わ、分かった!」

 

 葵が時間を稼いでいる間にユーノが説明をしていると、レイジングハーとが、

 

《barrier jacket》

 

 バリアジャケットが展開された。

 

(オートモードでもあるのか?)

 

《マスター! チャージ終了! いつでもどうぞ!》

 

「分かった!」

 

 そう言って照準を犬の脳天めがけ、

 

「その一筋の光は道」《闇夜を切り裂く一途》

 

 すると、砲口の前に魔法陣が展開された。

 

「光りの道は何を示す」《人の歩むべき正しき道を》

 

 白銀に輝く球体状の光が集まりだす。

 

「されどその道に外れるものも在り」《神はそれを見て嘆いた》

 

 球体はさらに大きくなり、光はさらに輝きを増す。

 

「神はその者に罰を下す」《人はそれ恐れ慄(おのの)いた》

 

 球体はある程度の大きさになると、収束は終わった。しかしそれは裁きの時だった。

 

「ギュリーノス・ブレイカー!」

 

 そして裁きは下された。

 

―キィイイイイイイイイイイイイン

 

 甲高い音と共に、魔物はその砲撃をゼロ距離から暗い数メートル飛ばされた。

 

「「・・・・・・・」」

 

「エクス。冷却モードへ移行。その後アルヴォを頼む」

 

《りょ~か~い♪》

 

 久々の活躍なのかエクスはかなり上機嫌であった。

 

「なのは、封印を頼む」

 

「・・・・・」

 

「なのは?」

 

「え、な、なに!?」

 

「封印を頼む」

 

「わ、わかったの! レイジングハート」

 

《イ、 yes MyMaster sealing mode set up》

 

 あのレイジングハートがどもった!?

 

(少し黙ろうか?)

 

 サーイエッサー!

 

さ、さて・・・・魔物に向けたレイジングハートから桜色のリボンが放たれ、魔物を包み込む。

 

《standby ready》

 

「リリカル、マジカル! ジュエルシードシリアルⅩⅥ封印!」

 

《sealing》

 

 封印されたジュエルシードは吸い込まれるようにレイジングハートの中に入っていた。

 

《Receipt No.XVI》

 

「これでいいのかな?」

 

「うん。これ以上ないくらいに・・・・」

 

 ユーノがそう言うとなのははほほを染め少し照れくさそうにしていた。

 

(なのはは魔法の才能がある。だが、出来れば私と同じ道を歩んではほしくない。そのためにも・・・・いや、余計な御世話だな)

 

 そういって葵はなのはのそばにより。

 

「お疲れ様」

 

「ううん。葵君もサポートありがとうね。でも、あれはやりすぎじゃないの?」

 

「大丈夫。出力は抑えてあるし殺さないようにしてある」

 

「非殺傷設定のこと?」

 

「あぁ。ユーノの世界にもあるのか」

 

「うん。でも葵はなんで攻防に徹していたの?」

 

「私の魔法は封印ではなく対人専用の兵器だ。封印や相手の封ずるのを目的ではなく殺すのを目的として設計されている。だが今までの攻撃はあくまでも訓練用にプログラムされたものだからダメージだけで済んでいる」

 

「「葵(君)は何者なの!?」」

 

「秘密だ」

 

 そう言って葵達は帰路についた。

 

 


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