第三話
葵と人型の形態をとっているルミルとエクスはとある病院の一室に来ていた。
そこに書かれてあるプレートには『高町士朗』と書かれていた。
「マスター。まさかとは思いますが本当に?」
「助ける価値のある人は助ける。殺す価値しかない者は殺す。私はそういう人間です。いえ、もう人ではありませんでしたね」
「マスター。我等はマスターのためにある。いつ、いかなる時も共に」
「ありがとうございます」
そういって病室に入ると、酸素マスクに隣の機械が規則正しく電子音で彼が生きていることを表していた。
「・・・これは、なんというか」
葵が驚くのも仕方がない。あちこちに包帯が巻かれて、まだ血がにじむ場所がある。普通の人間なら死んでもおかしくないはずの重傷だ。だが、それでも彼は生きようとしていた。
「家族のため・・・か」
そういうと彼は士朗のベッドの上にいる『何か』に向け、視線を向けた。
「家族のために生きようとしている人にお前は似つかわない。去れ」
だが、一向に『それ』は消えようとしない。『それ』は人型を模しているが明らかに人ではない。黒紫の身体に赤い目。明らかに人間ではない者がそこにいた。
「警告はした。ルミル。シンクロ、モード黒騎士」
「了解だ。マスター」
「漆黒の闇夜への誘(いざな)う者、黒騎士!」
「シンクロイン!」
そういうと彼を包むように青黒い光が広がり子供バージョンの黒騎士の姿になった葵がいた。
「警告はした。無に還ってもらおう。【不の者】よ」
そういって両翼刀をかまえ、彼が【不の者】と呼んだものに向け斬りつけた。すると、【不の者】はそれを避け、逃げようとした。だが、
「逃がすと思うか?」
――ヒュッ ドスッ
葵はすかさず黒翼を投擲し、黒翼刀は【不の者】の腹部を貫通し【不の者】ごと壁に突き刺さった。
そして、
「お前に生きる権利もなければ存在を有する意味もない。無に還れ」
そういって白翼刀で【不の者】の首と胴体を切り離した。
すると、【不の者】の首はゴロンと床に落ちたかと思ったら次の瞬間には粒子になり胴体も首同様になった。
「マスター。【不の者】がいると言うことは、もしかして」
「えぇ。イレギュラーは奴でしょう。どこまでも腹の立つ」
そういって彼はギリっという嫌な音を立てていた。
「・・・んっ」
するとベットの方から声が漏れたのを聞き葵はそっちへ駆け寄った。
「お目覚めですか? 高町士朗殿」
「君は? 死神かい?」
「いえ。黄泉路への案内人です」
「?」
「まぁ、今は知らなくていいことです。それよりも、あなたは生きなければならない。奥さんや娘さんたち、息子を悲しませるのが一家の大黒柱の役目ですか?」
「ち、がう」
「なら、早く元気になってあげてください。なのはさんは笑顔の方が似合いますからね。私も心から笑う彼女の顔が見てみたいですから」
「なのはを、知っているのかい?」
「えぇ。泣いてましたよ」
そういって今までの経緯を士朗に話した。
「なるほど。すまないね」
「いえ。ではこれで私は失礼しますね」
SIDE士朗
「いえ。ではこれで私は失礼しますね」
そういうと彼の足もとに青色の何かが光り次の瞬間には彼はもういなかった。
「そうだな。一家の大黒柱が家族を悲しませてはいけないな」
そういって彼は天井を見た。
「早く元気にならないとな!」
そして徘徊に来た看護士が士朗の姿を見て急いで医者を呼んだ。何でもその時に「119番! 119番通報!!」といっていたらしい。
いや、病院はここですよ? 看護師さん。
SIDE out
士朗いた病院から帰宅後、葵はすぐにリニスにあることを相談した。
「何かに取りつかれたようにですか?」
「えぇ。些細なことでもいいんです」
「そう言えば」
「?」
「性格がいきなり変わったように思えました」
「性格が?」
「はい」
リニスの話によるとある実験中の時に事故にあいリニスの主の娘が事故に巻き込まれ死亡。その後、まるで性格がコロコロと変わるようになったという。
「間違いないか。でも確証はない。しばらくは様子見だな」
「「「はい」」」