第二六話
転移が完了し、現在時の庭園内。
目の前にいるのは、地面を覆い尽くさんがあまりの多さの傀儡兵。
「なにあれ!?」
「傀儡兵。ただ目の前にいるモノだけを殺す機械兵にすぎない。まぁ、機械というのなら。エクス」
「は~い」
「行くぞ。光の道を指し示す者、白騎士」
「シンクロイン!」
そして、白騎士になり、ジャベリンを構える。
「よく見ておけ。とくになのはな。収束魔法の本質を見せてやろう」
そういって、砲を固定化した。
《一〇〇%はやめてくださいね。下手をすれば全員落ちちゃうんで》
「了解。50でいい。収束開始と同時にライトニングアロー展開。接近してくる屑を叩け」
《イエス。マスター》
そう言うと、わたしの周りにボワッボワッと雷を纏った光りの球体が数十の単位で出てくる。
それを知らずに、傀儡兵はこちらに向かってくるが、
「葵!?」
「あぁーフェイト、多分だ大丈夫だ。あいつは」
アルフがそう言うと、フェイトが、
「え?」
唖然とする。理由は近くにいた傀儡兵は葵が展開した球体が光りの矢となって頭、脚、腕、胴体に刺さり爆発した。
「・・・・ね?」
「うん。今ようやく分かった。葵を敵に回しちゃだめだって」
「「「「「うん」」」」」
どういう意味だ。フェイトがそう言うと、ユーノとクロノ、なのは、リニス、アルフが同時に首を縦に振った。
《マスター。チャージ終了! 発射どうぞ!》
「では行きますか」
砲口に白い魔法陣を展開させる。
「光りの道は何を示す」《人の歩むべき正しき道を》
白銀に輝く球体状の光が集まりだす。
「されどその道に外れるものも在り」《神はそれを見て嘆いた》
球体はさらに大きくなり、光はさらに輝きを増す。
「神はその者に罰を下す」《人はそれ恐れ慄(おのの)いた》
球体はある程度の大きさになると、収束は終わった。しかしそれは裁きの時だった。
「ギュリーノス・ブレイカー!」
―ズガァアアアアアアアアアアアアアアアアン
その光の道はSLBクラス、いや下手すれば以上の砲撃によって周りの傀儡兵を無と化した。
直撃した傀儡兵は無に、例え直撃しなくてもかすったものはその部分が熱によって溶け、それでも安全圏と思われるモノは爆風によって吹っ飛んだ。
まぁ、要するに・・・・
「やりすぎた。40%以下でもお釣りでたな」
門まで壊してしまった。というか、
「あの門番みたいな傀儡兵はどこだ?」
「君が跡形もなく消したんだろ!!」
クロノがそう言ってきた。
『く、クロノ君! みんな無事!?』
「え、エイミィ? あぁ、無事だがどうした?」
『今さっき高エネルギー反応があって、そしたらさっきまで数百以上いた傀儡兵が数十以下になっちゃって! もう何がどうなってんのって話で!?』
「あぁ、それはさっき葵がぶっ放した砲撃の性だ・・・・」
『あれ葵君の砲撃だったの!?』
「うん。葵君の出力50%の・・・・」
『・・・・、が、がんばってね・・』
そういってエイミィからの通信が切れた。
「行くぞ」
私はそのまま置くへと進む。
すると、所々に黒い空間がいくつもあった。
「その穴。黒い空間がある場所は気をつけて」
クロノがそう警告してくるモノの、
「? なんなんだこれ?」
その質問のユーノが答える。
「虚数空間。あらゆる魔法が一切発動しなくなる場所なんだ」
「そうなのか? 試しに無に帰する刃(ルーンヴォルヴァ)を撃ってみるか」
そういって私はディゴを展開し、無に帰する刃(ルーンヴォルヴァ)を撃つと、
―シュゥゥウウウウ・・・・・
「おいクロノ」
「なんだ!!」
「虚数空間収まったぞ?」
「「はぁっ!?」」
クロノだけでなくユーノまで驚いていた。
後ろにいたアルフとリニスは今起こったことが理解できず目が点になっていた。
「魔法資質が違うからか? まぁいい。とりあえず先に行くか」
そういってみた目危険そうな場所の虚数空間は消しながら先に進んだ。
その時虚数空間というモノがどんなものかを知っている人たちは
「あり得ない」「なんなんですかあなたは!?」「葵らしいね」「もう、何も言うことがないよ」「・・・僕達の常識が通じない非常識やろうか君は!?」などと言われた。
まぁ、アルフ、リニス、フェイト、ユーノ、クロノの順に言われた。なのははというと、
「にゃ、にゃははっ・・・・」
と、笑ってごまかされた。
「? どうしたお前」
私はある壁の一部分を見た。良く見るとフェイトによく似た人物だった。
「どうしたの? 葵君」
なのはがそう言ってくるので、試しに、
「なのは、あそこには何がある」
そう言って指差すと、
「なにもないよ? 壁ぐらいかな」
なのはには見えていない。つまりあれは世間一般で言う幽霊か。
「え!? 何か見えたの!?」
「いや、気のせいだろう。それより行くぞ。〈君は、君の身体があるポットのそばにいろ。そしたら助けられる〉」
すると、少女はコクリとうなずいて消えて行った。
(絶対に助けないと、すべてを)
すると、道が二手に分かれていた。
「なのはとフェイト達は駆動路を、葵は僕と一緒にプレシアの救出を」
「わかった」
「急ごう。時間がない」
そういって二手に分かれた。
まぁ、すぐ目の前に大きな扉がある。おそらくここが玉座の間だろう。
え? 今までどうやって来たか? 簡単だ。アルヴォとソードで切り裂いたり、四肢を撃ちおとしたりした。
「君を敵に回した彼らに少し憐みを覚えるよ・・・」
とりあえず、作戦を開始しよう。
「エクス。シンクロパ―ジ。ルミル。シンクロイン 」
《《イエス、マスター》》
黒騎士を纏い、目の前の扉を両翼刀で切り裂き中に入る。
「・・・・来たようね」
目の前にはプレシア、そしてポットに入ったアリシアがいた。
「時空管理局執務官クロノ・ハラウオンだ! プレシア・テスタロッサ、大人しく投降してください」
「さっきの振動で分かったろ。駆動路も、次元震もこちらが抑えた。後いつまでその者をしばりつけておくつもりだ?」
「私は、取り戻すの! こんなはずじゃなかった。幸せな世界を!」
すると、クロノが一歩前に出た。
「世界はいつだってこんなはずじゃなかったことばっかりだ! いつだって、誰だって、ずっと昔からそうだったんだ!」
そうだな。だから人は後悔しないように生きてきた。後悔しても未来がある。明日がある。それを私が、つぶしてしまった。
上を見ると、フェイトやなのはたちが降りてきた。どうやら駆動路は制圧したようだ。
「こんなはずじゃない世界で逃げるか、戦うかは個人の自由だ。だけど、自分勝手な悲しみに無関係な人を巻き込んでいい権利は誰にもありはしない!」
「葵・・・」
「伝えるんだろ。お前の思いを、全てを。解放してやれ。お前の母親を、あの【不の者】から」
「うん!」
―ごほっ、ごほっ!?
プレシアの方を見ると、せき込み、そして吐血した。
「母さん」
「・・・・ふぇ、いと?」
「お願い! 母さんを! 私の大切な母さんを返して!」
「う、に、・・・げ・・・・・・・て」
「私にとってどんなに酷いことをされても、母さんは、わたしにとって大切な人なの! だから返して!!」
「うぁああああああああああああああ!?!!!」
すると、黒い影がプレシアから分離する。
「(いまだ!)邪悪なる影よ! 聖なる矢を持って彼者から離れよ! ホーリーアロー!!」
一筋の光の矢を【不の者】目がけ放つ。すると、【不の者】は完全にプレシアから離れ、プレシアと【不の者】は完全に分離した。
まぁ簡単言ううと神姫の武器なら人に寄生した【不の者】でも分離ができるという理論をそのまま利用した。それだけ。
「フェイト! プレシアをこっちに! クロノはあのカプセルを回収しろ! なのはは二人の援護を」
「うん!」
「分かった」
「任せて!」
矢を喰らった【不の者】はゆっくりと立ち上がり、
―ナゼ、ジャマヲスル
―ワタシタチノ、ミライヲ
―カノウセイヲ
―カエセ! ワタシタチノ、カノウセイヲ
「!? 逃げろフェイト、なのは!」
そういって三人がいる場所に向かって突進してくる。
「(!? 目的はこっちじゃないのか!?)エクス、ルミル。あまり使いたくはないがやむえない。Wシンクロ!」
《《Wシンクロ。起動を確認!》》
「我が体は大切な者を護るための盾、我が剣は我が大切な者に牙を剥いた者を討つために在り。故に我に敗走も敗北も許されない! 蒼騎士!!」
あたり一面にまばゆい水色の光が輝いた。