黄泉路への案内人   作:楽一

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第五一話

第五一話

 

 

SIDEシャル

 

 

シャル「ごめんね。手伝ったりしてもらって」

 

葵「気にするな。好きでやってることだ」

 

 日は傾き、完全に夕方。そして、ここは一年一組。つまり、僕と葵が勉学に励む場所であるが、今はこの二人っきりである。

 

シャル「でもよかったの? 今日は一夏たちと買い物じゃなかったの?」

 

葵「別にかまわない。それにお前がいないといってもあまり意味がないからな」

 

シャル「え?」

 

 夕日のせいか、はたまた彼のほほが赤いのかはわからない。でも、いつもの冷静さはどこか行って、それでも、大好きな彼が目の前にいた。

 

葵「シャル・・・・わ、私は君が・・・・」

 

 そういって彼が僕に肩をつかんだ。男らしい大きな手の力はとても強く、痛かった。でもそれよりも大きかったのが嬉しいという感情。僕を選んでくれたという。だから、彼の唇が近づいてきた時僕は黙って受け入れると決めた。

 

 そして、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シャル「あ、・・・・あれ?」

 

 神様っているとしたらとてつもない残酷でどSだと思う。人がいいところを満喫しようとしてた時に目を覚めさせる。たとえて言うのならヒーローものの永遠のライバルと主人公が雌雄を決するいいシーンで親にチャンネルを変えられそのシーンを見逃す並に。

 

 つまり何が言いたいか。先程のは夢だということだ。あと十秒、いや、五秒でも長く見れると自分の中の自分がスタンディングオベーションで、たった一回の公演ですでにアカデミー賞総なめ決定の作品だと思うぐらいのいい作品だった。それがリアルじゃなく夢・・・

 

シャル「はぁ・・・」

 

 こうなるのもわかってほしい。その深さは多分計り知れないんじゃないのだろうか。

 

シャル(でも、葵のああいう顔見てみたいな///)

 

 恥ずかしさを押し殺して必死に好きだという思いを伝えてきてくれ彼の顔は今見てもとてもかわいく、かっこよかった。

 

シャル「彼となら、その先に進んでもよかった・・・・って僕は何を言ってるんだ!?」

 

 自分で言って自分の顔が真っ赤になるのがわかった。布団を頭からかぶりつつも、さっきの夢を思い出しながら、

 

シャル(ゆ、夢の中なんだからいいよね、その先も・・・・)

 

 時間はまだ余ってるんだがら、第二幕を見てもいいよね。

 

 

SIDEOut

 

 

 カーテンの隙間から朝の知らせを知らせるかのように眩しい光が私の目元を照らす。だが、その眼は閉じられているわけではない。むしろ私は険しい目をしている。なぜかって。だが、その問いに答えられない。

 

葵「なぜこうなっているんだ・・・・・」

 

 私もわからないのだから。

 

 右には去年一夏にせがまれ買ったかわいらしいクマがプリントされた寝巻姿ですやすやと寝ている。左にはラウラ。こいつが最もわからん。なぜ生まれた姿のままで寝ているられるんだ? というか二人ともどうやって入ってきたのかすらわからない。ここの部屋はオートロック式で解除もかなり難しいはずだ。なのになぜ?

 

ラ「ん・・・・朝か?」

 

 どうやらラウラにもカーテンの隙間から差し込んだ光で目を覚ましたようだ。

 

葵「おはよう。そして、ちょっと聞きたいんだがどうしてここにいるんだ?」

 

ラ「何をおかしなことを。夫婦というのは常に一緒にいるのではないのか?」

 

・・・・・おい。私とお前はいつから夫婦になったんだ?

 

葵「とにかく何でもいいから服を着ろ」

 

ラ「? 嫁よ。お前は何度もおかしなことを言うのだな。夫婦とは何事も包み隠さないのではないのか?」

 

葵「それは秘密を持たないようにしようとかじゃないのか!? 裸という意味ではないと思うぞ!?」

 

 ラウラはどこか肝心な常識が欠如というかかけているというか。

 

葵「それに裸だと風邪ひくぞ」

 

ラ「私はこう見えても風邪はひいた「私の服でよかったら貸すぞ」遠慮なく借りよう」

 

 うん。それでいいんだ。目のやり場に困るからな。それにしても・・・・・

 

ラ「うむ。これにしよう」

 

 なぜにみなケルベロスの制服のYシャツや学校で毎日着るYシャツを着る? 今思えば最近の出費のランキング第一位がYシャツ代なのだが。(ちなみに葵のYシャツは楯無を最初とし一夏、箒、セシリア、鈴、シャル、簪さらには千冬、マドカ、咲夜が持って行ってます。むろん、あの人たちも持ってますよ)

 

一「ん・・・・あ、おにいちゃんだぁ~~~」

 

 一夏が目覚めたと思ったが、この子はこの子でまだ寝ぼけているようだ。

 

葵「おはよう。あと私の足に頭を乗せるのは別にいいが固いないか?」

 

 自分で言うのもなんだが結構鍛えるため固いと思うが。

 

ラ「そうなのか? では私も」

 

 そういってラウラももう一方の私の足に頭を乗せる。

 

一「ん? いまらラウラちゃんの声が・・・・って、どうしてラウラちゃんがいるの!?」

 

ラ「愚問だぞ妹よ。私が嫁のそばにいることがおかしいか?」

 

一「いろいろおかしいよ! それにお兄ちゃんの嫁って何!? 普通は夫でしょ!? あと妹にはならないし、お兄ちゃんは上げないから!」

 

 私の足元で寝ながらあーでもない、こーでもないと言い争っている二人。時間を見てもまだ余裕はある。

 

葵「はぁ、二人ともいい加減にしないと隣にいい迷惑だぞ」

 

 そういって二人の頭をなでる。ここ最近よく二人の頭をなでながら思うが女性というのはなぜこうも頭をなでられると猫のように気持ちよさそうにするんだろ?

 

エ《それが乙女というものですよ》

 

ル《だな。好きな相手ならとくにだ》

 

 そういうものか?

 

リイン「〈そういうものです〉」

 

アギト「〈兄貴は女心をもう少し勉強すべきだな〉」

 

 勉強してどうにかなるならいいが、女心と秋の空というようにころころ変わりやすくて私には予想しずらいものがある。さて、そんな私にわかるものだろうか。

 

 それからしばらくすると、静かな吐息が聞こえてきた。というかこれは、

 

葵「ははっ、また寝てしまったか」

 

 視線を下すと、そこにいたのはIS操縦者としての二人ではなく、ただ気持ちよさそうに寝るただの女の子がそこにいた。

 

葵「どの時代も酷なものだ。せめてこのひと時だけ安らかに眠ってくれ」

 

 しかし、なんというか、その・・・ね? 安息のときは長くないっていう言葉がありますよね。あれ、まさしく言いえて妙だと思いました。次の瞬間にその意味が納得できました。

 

 え? なぜかって? それは、

 

千「兄さん、起きて・・・・る・・・・ほぉ。お前らなぜここにいるんだ?」

 

 はい。千冬さん登場。

 

 その後どうなったかって? どこから取り出したのかわからないが出席簿を使って二人とも脳天からすごい音が出ましたよ。はい。そしてその後ろにいた箒も、千冬が気付く前に撤退してました。

 

 

 

 

 

 

 その後二人の痛みが引いたころで箒と合流し朝食に向かう。

 

箒「その、二人とも災難だったな」

 

 いまだにぷすぷすと頭から煙を立てている二人。

 

葵「まぁタイミングが悪いというか、自業自得というか」

 

一「それはひどいよお兄ちゃん!?」

 

ラ「そうだな。それより思ったんだがあの子たちはいいのか?」

 

葵「あぁ、それはだな」

 

 昨日の晩にチンク、ノーヴェたちから明日は早く学校に向かうとのことを言われた。何やらこちらの教職員達と理事長を交えて話があるそうで。

 

箒「あの四人を預ける予定なのか? 葵の目の届く場所に預けるか」

 

一「で、残りの二人は学園でアルバイト? お兄ちゃん学生だからお給料でないし」

 

 どうなのだろう? 決してそういうわけではなさそうな雰囲気だったんだが。

 

ラ「そ、それよりも嫁よ///」

 

葵「ん? どうした?」

 

ラ「わ、私もそろそろお、お、お前の・・・・こ、子供が欲しいんだが「んぐっ!?」大丈夫か?」

 

 ラウラの突然の子作りしようよ宣言に食べていたご飯をのどに詰まらせた。いやだよ今度の死因が彼女の子づくり宣言が原因なんて。

 

箒「ら、ララララララライラ!?」

 

ラ「私はラウラだ。ライラではない」

 

一「そんなことよりその発言はダメだよ!?」

 

 そこでラウラが「なぜ?」と聞き、そこからさきなぜか私の所有権をめぐって激しい討論が始まった。

 

葵「はぁ・・・・・もう少し慎ましさを持ったら完璧なんだが(ぼそっ)」

 

三人「「「!?」」」

 

 その言葉を聞いた三人はなぜか急におとなしくなり、黙々とご飯を食べ始めた。あれ? もしかして聞こえてた? しかも周りも黙々と食べ始めてるし!?

 

???「うわぁ~~~~! やっちゃったよ~~~~!!」

 

 声の主は何やら急いで食堂で簡単なものだけを注文した。あれは・・・・

 

葵「シャル! ここが開いてるからここで座って食べるといい」

 

 そういってシャルを誘うとシャルは手に持ったプレートをもって急いでこっちに来た。

 

シャル「葵~、助かったよ」

 

 そういうと、急いでものを口に含むが、

 

葵「そう急ぐな、のどに詰まらせるぞ」

 

 そういって彼女の飲み物を見るが、なぜこう急いでる時に限ってホットティーを?

 

シャル「んぐっ!?」

 

 そして案の定こうなった。渡した急いで水を渡す。

 

シャル「たびたびごめんね・・・(あれ? これって・・・・)」

 

 シャルはなぜかこっちのプレートを見ている。

 

葵「ん? 何か欲しいものでもあったか?」

 

シャル「ち、違うよ! じゃなくて、これもしかして葵の?」

 

葵「そうだが?」

 

シャル「口つけた?」

 

葵「あぁ。あ、すまん悪かったな。きゅうだったもので」

 

シャル「い、いやいいよ(あ、葵と間接キス///)」

 

 そういって時計を見ると、

 

葵「うむ。そろそろまずいか」

 

 時間的にまずい。

 

葵「三人とも移動はどうするつもりだ?」

 

 と聞こうとしたときにはすでにいなかった。

 

葵「こういう時の移動はすごいな。魔法で移動するか?」

 

 いや、やめておこう。ということは。

 

 寮から教室(・・)まで直線で結べば最短で10分もかからない。

 

葵「急ぎますか」

 

 そういってダッシュをする。障害物は木々ぐらいだろうがこれぐらい問題ない。

 

 

 

 

 

 ちなみに

 

 

 

 

 

生徒3年「今そこに忍者が!?」

 

生徒3年「え?! ほんと!? 日本に来てまだ3人しか見てないんだ!」

 

生徒3年「外人ってホント信じてるんだ・・・・って三人も見たの!?」

 

 

 

 

 

 ほかにも

 

 

 

 

教師「そうなんです。里山から猿が」

 

警察『ISで対応してください』

 

教師「動物保護法違反でしょ!? というかそんなんでISを!?」

 

警察『日本の警察が入ったらまずいんですって』

 

 

 などなどと葵の知らないところで騒動に。

 

 

 

 ある程度近くなってくると、先に何やら見たことのある生徒が、

 

葵「シャルか?」

 

シャル「葵!? は、早いね・・・・」

 

 見たところだいぶもう疲れているのか?

 

葵「ふむ。時間がないし最終手段と行くか」

 

シャル「ISはダメだよ!?」

 

葵「使わん。ちょっとつかまっておけ」

 

シャル「え? う、うん///(うわ、お姫様抱っこ二回目だ/// あれ? でもこの時ってたしか・・・・・)」

 

葵「考えてることは正しいがその逆だ」

 

 そういって壁をけり上って、そして、

 

葵「到着だ」

 

シャル「は、ははは・・・ははは・・・・・」

 

 シャルは顔を真っ青にしていた。うん。なんかごめん。

 

 

 スパァーーーン

 

 

葵「うむ。痛い」

 

千「たたかれそれだけか葵?」

 

 後ろにいたのはまさにおn「実の姉に向かって何を言おうとした?」ではなく、姉こと千冬でした。

 

真「ま、窓から入らずちゃんと入口から入ってください!」

 

葵「ですが校則違反はしてないはずですが? ISも使ってませんし」

 

ナ「そうね。でもまず窓から入るというのが校則うんぬんよりも常識、マナーとしてどうなのかを考えるべきね」

 

 ふむ。確かに。

 

葵「これからきちんと下ばきと上履きを「そこじゃないと思うよ葵」そうか?」

 

 結構重要だと思ったんだが、シャルに否定された。

 

千「(少々危険だがやむえんか・・・)デュノアと葵は放課後に教室掃除をしておくように」

 

シャル「え!?」

 

葵「ふむ。わかった」

 

一「お姉ちゃん!?」

 

――ガスッ

 

一「っ~~~~~~!!?!?!?」

 

 うん。いまたたく音というより振り落して刺さる音だったな。

 

一「お、おねえ・・・・い、いえ、せ、せんせい・・・い、今のは本当にまずいと・・・・おもいます・・・・」

 

千「お前だからあの力だ。大丈夫だ流血にも何もなっていない」

 

一「り、理不尽だ・・・・・」

 

 結局決定は覆らず教室掃除は決定となった。

 

 ちなみにこの学校の清掃は基本許可を得た業者が行っている。

 

千「たくっ・・・・今日は通常の授業だったな」

 

 通常授業とは国数英理社などの普通の高校で行われている授業形態のことだ。授業数自体は少ないが、決してしなくていいというわけでもない。全員が全員IS関連の就職につくわけではない。

 

千「IS学園の生徒とはいえお前らは高校生だ。むろん中間、期末試験はあるが、赤点などと決してとるな。いいな?」

 

真「では、織斑先生、ファイルス先生あとのことはよろしくお願いしますね」

 

 そういって山田教諭は廊下に向かっていった。

 

本「あれ~、やまやはどこに?」

 

ナ「山田教諭はね来週から始まる臨海学校の最終調整をしに行ったの」

 

 

 

全員『えぇえええええええええええええええええ!!!?』

 

 

 

 

葵「あぁ年間行事にそう書いてあったな」

 

 確か初日は自由だったな。

 

 水着は・・・・適当に持っていくか。

 

鈴「って考えたらだめだからね! な、何なら一緒に買いに行く///?」

 

葵「そうだな。どうせ私が買うと本当にどうでもいいものを買いそうで「り、リンさん! それならわたくしも行きますわ!」といっているが?」

 

鈴「なっ!?」

 

一「私も行く!」

 

箒「むっ。なら私も!」

 

ラ「私も行きたいが今日はやめておこう」

 

 ん? 珍しいな。一歩ラウラさが「何せ今日は嫁は掃除だ」あぁ。

 

全員『そうだったね』

 

千「それよりもお前ら。私がいる前でよくそうやって騒げたな?」

 

全員『!?』

 

 その後全員に千冬から出席簿の洗礼が下された。むろん私も例外ではなかったが、音がなぜか、

 

―――ぽむっ

 

 そして次の人が、

 

―――SUPAaaaaaaaaaaa

 

 何でたたいたらそんな音が出るんだといわんばかりの音だった。

 

 


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