第四三話
あの後私とシャルのペアは問題なく勝ち進んだ。
ほかの者たちはというと箒・簪ペアはセシリア・鈴ペアに敗北。やはり経験の差がものを言ったみたいだ。
だがそのペアも一夏・ラウラペアに敗北。その後この二チームは順調に障害もなくなり順調に決勝戦まで勝ち進み続けた。
葵「まぁ結果としてはこうなるわな」
トーナメント表の頂点には二つのチーム名が書かれていた。
シャル「うん。でも負ける気はないよ!」
一「ふっふっふ。シャル君。私だって負ける気はないよ!」
ラ「嫁よ。私も負ける気はない。明日は全力でぶつからさせてもらう。たとえ教導の恩があってもだ」
葵「あぁ。むしろその成果を見せてもらいたいものだ。明日は楽しまさせてもらうとしよう」
そう。決勝戦は明日。なんでも予定よりもほかの戦闘が長引き結果こうなった。
葵「〈道真。今心の世界は大丈夫か?〉」
道「〈大丈夫さねよ。それよりどうしたさねか?〉」
葵「〈ちょっとな。フリーダムを使ってみようかと思って〉」
道「〈なるほど。いつ来る予定さねか?〉」
葵「〈すぐに行く〉」
シャルとは同じ部屋。なら少しどうするか。シャルが寝静まってからにするか。
月明かりだけが部屋を照らす時刻。大体深夜の1時ぐらいか。当然シャルも寝て、そして起きて驚いたが隣ですーすーと気持ちよさそうに寝ているラウラ。おっかしいな。ここのセキュリティは厳重にしたんだがどうやって入ってきたんだ?
葵「まぁその辺はいいだろう」
とりあえず光が漏れないシャワールームで術式展開するか。・・・・なんだろすっごく嫌な予感がする。
SIDEシャル・ラウラ
ラ「・・・・起きているのだろシャルロット」
シャル「うん」
実は彼女たちは今日の試合終了後から葵の行動がどこか違和感を感じており、いつか行動を起こすのではないかと思い寝たふりをしていたのだ。
ラ「様子がおかしいと思って、いつか行動を起こすだろうと思っていたが」
シャル「まさかこんな夜遅くに遅くに起こすなんて」
二人はそのまま彼の後を追うようにあとをついてき、脱衣所のドアを静かにあけ、シャワールームのドアをしずにかに空け隙間から葵の様子をうかがう。
葵「さて、始めるか」
そういって葵はカギを一本取りだした。
シャル「どこのカギかな?」
ラ「それ以前にどこのカギだ? 金庫なんてないし、あれは机にあるカギとも違う」
シャル「・・・・ケルベロスの? でもそれならここで出す必要―――あ、落とした。え?」
ラ「・・・あ、ありえないだろ・・・・」
彼女たちが見た光景。それは明らかに異常であった。彼が落した鍵はまるで湖か池に石でも投げた石が織りなす水面のごとく波紋を広げそこから一つの扉を出してたのだ。
シャル「・・・・ど、どういうこと?」
???「それはパパが特別な力を持っているということです」
ラ「魔法か何かか?」
???「鋭いな。その通りだぜ」
シャル「ははっ、そんなファンタジー小説じゃあるまいし」
その時二人はこう思っただろう。あれ? 自分たちはだれと話しているんだろうと。
???「だがお前らが目の前にしているのは事実だろ」
ラ「そうだな。だが―――」
???「いまだに信じられませんか? でも現実です」
ラ「・・・・・なぁシャルロット」
シャル「何ラウラ?」
ラ「私たちは今さっきまで誰と話していたんだ?」
シャル「奇遇だね。僕もさっきから疑問に思ってたんだよ。そして答えにつくと背中から嫌な汗が止まらないんだ」
ラ「奇遇だな。私もだ」
???「そうか。で、お前たちはさっきまで寝たふりをしたのはこのためか?」
そして後ろには今さっきまで目の前にいたはずの人とその相棒がいた。
葵「何をしているんだこそこそと」
シャル・ラ「「あ、あはっははっ・・・・ごめんなさい」」
もう素で乾いた笑い声が出たけどすぐに謝罪の言葉が出た。それだけ今の葵の笑顔は怖いのだ。
それから小言が葵から出てしばらくすると彼もあきらめたのかこのドアの向こうへ行こうとした。
葵「今日のことは忘れろ。それがお前たちのためだ」
そういってドアをくぐろうとしたところで、
シャル「ど~ん!」
ラ「おまけだ」
葵「なっ!?」
ラウラとシャルは葵に突進をかけて無理やり中に入る。その結果扉はその後音もなく光と消えた。
シャル「うわぁ~・・・綺麗・・・・」
ラウラ「絶景・・・とはこのことを言うのか・・・・」
ラウラとシャルがくぐった扉の先は一面桜が咲き誇り、散り誇る何とも言えない絶景。少し先には平安京の公家屋敷風に作られた屋敷。そしてその先には点にまで届く勢いの一つの塔。
葵「・・・・お前らな」
シャル「あははは。ご、ごめんね。でもどうしても気になって」
ラ「あれで気にならないほうが不思議だろ」
二人は悪びれた顔をしているものの、何やら好奇心のほうが上回っていた。
葵「お前らはこういうことわざを知っているか?」
シャル・ラ「「?」」
葵「好奇心は猫をも殺す」
その言葉に二人はさらに?を浮かべていた。
葵「ただでは返す予定はないよ。とことん付き合ってもらおうか。まずは来るといい」
葵はそのまま屋敷にへと案内する。
葵「上がるといい。あ。ただし靴は脱げよ」
シャル「うん。ってそこまで馬鹿じゃないよ!?」
ラ「! そ、そうだ!」
葵「ラウラ。ならその片足を上げて上がろうとしている格好は何だ?」
ラ「・・・・・こ、これは悪い例を!」
と、言いながらひともんちゃくあったがまぁ、上り一室へと案内される。その部屋は人家族の居間としては最適の広さぐらいの畳の和室だ。そこに再起に入っていたのは、
???「あ~~~~ちゃ~~~~ん~~~~~!!!」
――――ごすっ
葵「ぐへっ・・・・・」
彼の鳩尾に見事に決まった頭からのタックル。そのタックルは彼の耐久力役100あったものを一気にゼロにする勢いがった。
ラ「嫁!?」
シャル「葵!?」
道「邪魔するさねよ。って何さね。このわけのわからん空間は?」
一人は腹を押さえて顔を真っ青にしてぴくぴくと震えている男、片やその男性に抱き付いて嬉々として頭にウサギ耳を生やしている女性。そしてそれを心配そうに治療だの、救急車だのとわめいている金と銀の髪をした女性二人。
その後、事情を説明すると、
道「なるほどさね。というか束、あれほど走るなといったさねよ」
葵「そんなに研究に明け暮れているのか?」
道「実際は違うさね。まぁISのブラックボックス解明をしているのが束さね。で、葵。これが今回の結果と異端児の結果」
葵に道真が何かを手渡す。ざっと見ただけでもA4用紙30枚はある。
シャル(ねぇ、ラウラ。あの人たちって)
ラ(間違いない。篠ノ之式ISの製作者の篠ノ之束博士と秋山式の秋山道真博士だ。だがどうしてここに?)
シャル(確か篠ノ之さん、箒さんと一夏ちゃんって幼馴染だよね。だったら)
ラ(なるほど。で、一夏の兄である葵とも――――か。なら納得だな)
なぜこの二人がいるかわからなかったがその絡まった糸は簡単にも解けた。
葵「・・・・・」
彼は道真が渡した書類をパラパラ漫画を見るかのように流して、
葵「了解だ」
そういってどこからか取り出したかわからないがライターで書類を燃やす。
ラ「おい嫁!? 今ので分かったのか!?」
葵「わかるだろふつう」
シャル「わからないよふつうは!?」
葵「そういうものか?」
すると、道真は一つため息をついて、
道「一つだけ言っとくさねよ。葵の常識はうちらでも逸脱しているさね。うちや束を天才というのであれば葵は鬼才さね」
束「鬼才? 奇才じゃなくて?」
道「奇才は世にまれなな才能を持ったもののこと。鬼才は人間離れした才能を持つ者。葵はどちらかというと後者さね」
それを聞いた三人は何か納得した様子だった。
葵「さて。道真準備はどうだ?」
道「いつでもOKさねよ。で、誰を持ってくるさね? 一応ガジェットはいくつか持ってきたさねが?」
葵「安心しろ。こいつらがやってくれる」
葵はそういってラウラ、シャルを指さす。
シャル「? 何をするの?」
葵「なに実験だ」
ラ「実験?」
束「何の? 束さんも気になるね~」
葵「まぁ見ればわかる」
その場にいた人間は何もわからず、いや、葵と道真以外はわからずローマのコロッセオをモチーフにしたアリーナに来た。
ラ「嫁よ。いい加減教えてくれ」
葵「これからこいつの稼働実験を行う。それに付き合ってくれ」
そういって葵はエターナル・フリーダムを取り出した。それはすなわちISは違えど葵と戦うということだ。それを知った二人は、
ラ・シャル「「えぇええええええええええ!!!?」」
驚きの声ととこれからの末路を予感した悲鳴が上がった。
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