黄泉路への案内人   作:楽一

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第二八話

 

第二八話

 

 

 あれから時間は過ぎ放課後。私、一夏、箒は剣道場に来ている。途中でどこからかともなく「セシリアフラグ来た―――――!!」とかいう声が聞こえた。フラグ? 何だ? どこに何がたったんだ?

 

 まぁそれはともかく現在は一夏の特訓となった。まぁ一夏の専用ISが来ていないこともあってとりあえず体力作りに励もうということになった。

 

 だが、

 

葵「何なんだこのギャラリーは?」

 

 剣道部の部員はわかる。だが、その外を一周、いや数周にわたりぐるりと囲む人間は何だ? 部長も「部始まって以来の観客数だわ!!」とか言ってたし。後千冬、お前も何気に竹刀を持っているがなぜだ?

 

千「保険だ」

 

 何の!!?

 

葵「・・・・とりあえず一夏、中学の時部活は?」

 

一「う~ん。あんまりしてないかな。バイトで生活費稼いでたし」

 

葵「生活費? 足りなかったか? 口座には私の給料が振り込まれていただろ? あそこから自由に使えと」

 

一「あれはお兄ちゃんの分! あとお姉ちゃんも言ってたけど自分の分は自分で稼ぎます!!」

 

 良くできた子だな。私にはもったいないよ。

 

葵「さてでは始めるか。ISは本人のまぁ操縦者の動き、志向を読み取りその通りに動く。これは宇宙活動で支障なく行動するためだ。そのためここで剣道を学んでも損ではない。基本の体力作りから始めるぞ」

 

 

SIDE楯無

 

 

 あの後葵君が一夏ちゃんに指導をしていると聞きモニターで確認した。竹刀で振り、捌き、足の動きなど細かなところまで指導した。体力はもともとあるみたいであまり問題はなかった。

 

葵「考えるな、感じろ。視覚に頼るな! 聴覚、嗅覚で相手の位置を探れ! 闘技場の地面は砂だ。煙も上がる。視覚情報に頼るな! センサーは補助だと思っておけ!」

 

 だけど彼の指導は一言で言うとスパルタ。でも言ってることは正しい。ハイパーセンサーとはいえ所詮は機械。高速演算で機能しても人の直感、野生の感みたいなものにはどこか劣る部分もある。彼はまるでそれを教えているみたいだ。

 

楯「まぁ実力じゃあ無理があるわね。でも賭けに出ることは誰にでもできる」

 

 対戦相手はイギリス代表候補生セシリア・オルコット。勝利数で予想せよというのであれば1勝1敗。このうちの1勝は一夏ちゃん。1敗は葵。もうこれは確定ね。

 

楯「さぁって。今度の一組代表決定者(・・・)戦。誰が優勝するかな―――といっても葵なんだろうけどね」

 

 

SIDEout

 

 

SIDE一夏

 

 

一「はぁ・・・はぁ・・・んぐっ」

 

葵「一夏。ほら」

 

 お兄ちゃんからスポーツドリンクを受け取りそれを口に含み喉へと流す。

 

一「き、キツイ・・・・・」

 

 箒ちゃんにも言われたけど動き自体は回数をこなしていくうちにだんだんよくなってきているといわれた。でもこの場合は【良く】ではなく【取り戻してきている】と言うべきだろう。

 

 それでもお兄ちゃんには一撃も与えられなかった。全てをギリギリでかわし指示を行う。どこがどういけないのか、どのようにすれば当たるのかを。例え改善されてもあたることはなかったけど・・・・・。

 

リイン「お疲れ様です一夏ちゃん」

 

アギト「ほれタオルだ」

 

 リインちゃんとアギトちゃんがふわふわ飛んで持ってきたタオルを私に渡してくれた。

 

一「ふぅ。き、きつかった」

 

リイン「そうですか?」

 

アギト「あれぐらい普通じゃないのか?」

 

 えぇ!? そうなの!?

 

リイン「ドイツの時はもっときつかったですよ?」

 

アギト「アメリカもな。でもその分結果はついて来てんだ。それにお前は幸せもんだぜ」

 

一「どうして?」

 

リイン「パパとワンツーマンで教えてもらっているからです」

 

アギト「教える者は教えられるものより上であれ。って言ってたし兄貴と一夏じゃ実力はわかりきってるよな?」

 

一「うん」

 

 お兄ちゃんと私を比べるじたい間違ってる。明らかに私を一とすればお兄ちゃんは万を行っている。

 

アギト「つまりだ。普通それだけの実力を持ってればここの教師だってなれる。でもそうすればお前とこうやって一対一で教えることはなんだぜ?」

 

リイン「つまりこれは一夏ちゃんの特権ですね」

 

 そ、そうなんだ! 初めて知ったよ!!? でもお兄ちゃんと一対一か・・・なんかいい響きかも///

 

葵「・・・なぁ箒? い、一夏がどこかへスリップしたぞ?」

 

箒「・・・・気にする必要はないと思う・・・・うん。なぁ、兄さん。ちょっとやりすぎじゃないのか?」

 

葵「それぐらいがちょうどいいだろ。オルコットの場合かなりの努力家だ」

 

一「そ、そうなの?」

 

 息も絶え絶えながらお兄ちゃんにそう聞く。だってあの傲慢お嬢様からは想像もできない。あ、ちゃんと別世界から帰ってきましたよ。

 

葵「仕事の関係上あいつに与えられたISを見てみた。ブルー・ティアーズ。自立稼働兵器を有している。だがそれを扱うには相当の訓練が必要だ。動かすにしても数を扱うか、質を扱うかのどちらかになる」

 

箒「質?」

 

葵「質を扱うなら数を捨て、数を扱うなら質を捨てる。質と言うのは動きのことだ。数が多ければ動きが単調になり撃墜しやすくなる。逆に少なければ複雑な動きは可能だが2、3機が限界だろ。だが、あいつは相当な数をこなしている」

 

 お兄ちゃんがそういうってことはあのオルコットさんは強いんだろうな。大丈夫かな?

 

一「あれ? でもなんでお兄ちゃんがそのことを知ってるの? えらく詳しいみたいだけど?」

 

 ちょ~っとその辺聞きたいな~。笑顔でそうお兄ちゃんに迫ると、お兄ちゃんはむろん、箒ちゃんや周りの剣道部員さんまでかを真っ青にして一歩、また一歩と距離をとる。

 

葵「た、戦いにおいて情報は鮮度が命だろ? 知っていた方が得な情報だってありますよ一夏さん」

 

 そうなのかな? でもお兄ちゃんがそういうなら間違いないね。

 

葵(今の顔、絶対着実になのは達(不倫関係断罪者)に着実に近づいている)

 

 

SIDEout

 

 


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