黄泉路への案内人   作:楽一

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第一六話

第一六話

 

 

葵「〈アギト! ユニゾン!〉」

 

 私はアギトを呼びだしユニゾンをする。黒い部分はすべてが赤く染まり、白銀だった神も深紅になった。

 

 

SIDE千冬

 

 

 ラウラが叫んだたと思えばみたことのある姿に変わった。あれはたしか・・・・

 

クロ「何故・・・なぜVTSが搭載されているんだ!? あれは条約で禁止されているはずだ!」

 

 なるほど。VTSか。なら納得だ。だが、兄さんは冷静だな。本当に驚くことが少ない。

 

 だがこちらが驚くことは多い。

 

葵「さて、行くか」

 

 なにせ、あれからすぐに黒色が特徴だった黒騎士はその名に反し赤色に変化した。

 

千「セカンドシフトだと・・・・」

 

 その翼の剣は朱雀の翼のごとく真っ赤に燃えていた。

 

葵「助け出して、屑を殴り殺すか。さぁ、始めようか。黄泉路への案内私が勤めよう」

 

 あの言葉蒼騎士も言っていた! だ、だが兄さんと青騎士では年齢が違いすぎる。何かの合言葉みたいなものか?

 

 そして、始まったのはワンサイドゲーム。確かにあの動きだが、それを上回っている兄さんに届くことは無い。

 

千(いまのわたしならどこまで届くだろう)

 

 少しでもそばにいたい。後ろから追いかけるのもいいが、どうせなら隣にいたい。

 

葵「良い筋だ。だが、しょせん機械じみている。本物はもっと生き生きしているぞ? そして鋭い、そして何より舞のようにきれいだ。だがお前のは所詮コピーだ。何も感じないしなにも打たれる物も無い」

 

 ・・・・・それはつまり、私の件をほめてくれていると考えていいんだよな///? 兄さんがそう思ってくれているのは、その、と、とてもうれしい///。

 

葵「さて、退屈なお遊びもこれで終わりにするとしよう」

 

 炎を纏った剣を腹部めがけ切り裂く。すると肉が焼けるような音共に、腹の中からラウラが出てきた。

 

 

SIDEout

 

SIDEラウラ

 

 

 強さとはなんだ? 私はそんな疑問を持っていた。そして二つの答えにたどり着いた。一つはブリュンヒルデと名高き織斑教官。確かに彼女は強い。剣一本で優勝した彼女は比類なき強さだろう。

 

 もう一つは神無月葵。男でありながらISを装備したクラリッサを何も装備しないで倒した。その強さは織斑教官を教えるほどだ。つまり無類の強さ。比べる者が無い。それなのに何故彼は強さを否定するのだ?

 

――否定するんじゃない。恐いんだ。

 

 何故怖い?

 

――強さを持てば持つほど護りたいと思う者たちが増える。それが怖い。その一つでも失えば私が壊れそうで。

 

 それだけの力を持ってもできないことがあるのか?

 

――あるさ。だが護りたい者を失いたくないからその怖さを乗り越えて、その恐怖を無理やり抑えてでも力を手に入れたい。そして強くなりたいんだよ。

 

 ・・・・私はお前みたいになれるか?

 

――私にはなれないさ。

 

 じゃあ私はどうすればいいだ!?

 

――ラウラ、お前はラウラ・ボーデヴィッヒだ。それ以上でもそれ以下でもない。私はお前になれないし私もお前にはなれない。お前のしたいことはお前で見つけろ。

 

 私がしたいこと?

 

――そうだ。お前が成そうとすることが見つけたなら私はお前を守ってやる。そして、それを成就させてやる。

 

 本当か? 護ってくれるのか? 私の目標を支えてくれるのか!?

 

――あぁ。そのために力を得たいなら教えてやるさ。

 

 救われた。その言葉にどれだけ救われたか。最強の座から引きずり落とされ、心の支えを失った。でも再び見つけた。

 

 ありがとう。

 

 そう私はつぶやいた。それと同時に顔が赤くなるのがわかる。そして気付く。これが【恋】と言うモノなのだろうかと。

 

 

SIDEout

 

 

 あの後、ラウラを医務室に運び今日のことを私の部屋で千冬と話していた。

 

葵「まさかドイツ軍がVTSを使っていたとは」

 

千「・・・そうだな。だが兄さん、あれは一体何だったんだ?」

 

 あれ? ・・・あぁ。

 

葵「セカンドシフトのことか?」

 

千「あぁ。あのセカンドシフトは異常だ。剣に炎が纏い、まるで属性がついたかのように見えた」

 

 まぁ、アギトの炎熱が付与されたんだ。当然と言えば当然だがこのことを言えるわけがない。

 

葵「黒騎士のセカンドシフトだが詳しいことが分かっていないんだ。当の道実も不明としか言ってないからな」

 

千「そうなのか」

 

 まぁ、そういって理解はできていないようだが納得はしたようだ。すると、

 

――コンコン

 

葵「開いている。誰だ?」

 

 扉が開くとラウラとハルフォーフが入ってきた。

 

ラ「ラウラ・ボーデヴィッヒ入ります!」

 

クラ「クラリッサ・ハルフォーフ入ります!」

 

 敬礼をしつつ部屋に入る。

 

葵「お前らか。適当に座るといい。長話になるか?」

 

ラ「はっ! 申し訳ありませんが」

 

 なるほど。そうなるか。

 

葵「コーヒーと紅茶どちらが良いか?」

 

クラ「え? い、いえ!? 私がいれます!」

 

 そう言って備え付けのキッチンに向かおうとするが、

 

葵「これはわたしの趣味みたいなものだ。気にするな」

 

クラ「は、はぁ・・・」

 

千「諦めろ。にい・・・葵はこういうことは自分でしないと気が済まない性質なんだ」

 

 千冬はいつもの癖のまま呼びそうになったがすぐに修正した。

 

ラ「で、では、私はコーヒーを」

 

クラ「私も同じ物を」

 

葵「千冬姉さんもコーヒーでいいか?」

 

千「あぁ。(久しぶりに姉と呼ばれるのもいいな///)」

 

 しばらくしてコーヒーを三つ入れた。千冬は頻繁に訪れるのでマグカップを買っておいた。

 

葵「千冬はこれで、二人はブラックでいいか?」

 

ラ「少し・・・ミルクを///」

 

クラ「私は・・・お砂糖を///」

 

葵「了解」

 

 そういって頬笑みモノを取りに入った。

 

 

SIDEラウラ

 

 

 何か必要な者は無いかと言われたので恥ずかしながらミルクをもらった。そして微笑み返された時のあの頬笑みは正直卑怯だと思う。あれで堕ちない女性はいないだろ。

 

葵「これでいいか?」

 

ラ・クラ「「ありがとうございます」」

 

 そう言って彼は私とクラリッサ、織斑教官にコーヒーを手渡した。

 

葵「さて、何か用でもあるのか?」

 

ラ「はい。まずは申し訳ありませんでした!」

 

 そう私が言うと、クラリッサも同時に頭を下げる。

 

葵「・・・は?」

 

 すると彼は何が言いたいのかわけがわからないといった表情をしていた。

 

千「・・・・葵、何を呆けているんだ?」

 

葵「いや、謝られる要因が無いんで何を謝っているのか分からないんだが?」

 

三人「「「え?」」」

 

 その後、今まで教えてもらう側にもかかわらず敬礼はおろか、敬うこともしなかったこと、差別的な目で見たことを言うと、

 

葵「あはははは!! それは仕方ないだろ! お前たちが悪いんじゃない。それに関してどうこう言うつもりはないよ」

 

 彼は大爆笑をしながらそういった。

 

クラ「な、なぜですか!?」

 

葵「いまの社会風潮は女尊男卑。ならそういう態度をとることも納得する。だから別に怒っても無いし、憤りも感じてない。気にするな」

 

ラ・クラ「「・・・・・」」

 

 この言葉に私は驚いた。いまの男性は少なからずISの登場によって立場がかなり追いやられている。実質国家の上層部も女性が占める割合が大きい。だが、それなりに蒼騎士という希望がある以上男性も立場を保っている者もいる。だが、やはりといっていいほど男性はどこかで女性に根に持っている部分が大きい。

しかしそれでもやはり女尊男卑の社会と言う風になってしまった。だが、彼はそれをものともしていない。それどころかどこふく風と言った感じで我関せずを通している。

 

 そしてコーヒーを彼は一口口に含み、

 

葵「それにいずれはこうなる。速かれ遅かれ社会は何らかの形に変わる。それが女性が主導権を握るか男性が握るか、はたまた大人が握るか若者が握るか。人間がいる以上何らかの変化がある。それが人間社会だ」

 

 彼はこの社会をいずれ起こると思い、そして起きたことにとやかく言わず受け入れるべきだといった。

 

 そして、ここに来た本命を言う。これを言いに来たのだ。

 

ラ「あの神無月教官!」

 

葵「ん? 後教官はいらんぞ」

 

ラ「いえそういうわけにはいきません! お願いがあります!」

 

葵「何だ?」

 

ラ「私を、私を強くしてください!」

 

 すると、彼は何かをしばらく考え、

 

葵「何故強くなりたい?」

 

ラ「それを知るためです」

 

 すると、彼もそして織斑教官も驚いていた。

 

葵「(まさかこんな回答をしてくるやつがいるとは)良いだろ。だが私の訓練は甘くは無いぞ? やるからには徹底的にやる。部隊最強で止まると思うな?」

 

ラ「どこまで行くんですか?」

 

葵「決まってるだろ。最強だ。その意味する言葉をお前が捉えろ。ドイツ最強か、欧州最強かユーラシア最強かはたまた―――世界最強かを」

 

 私は考えた。軍人であるなら世界最強がいい。だが、

 

ラ「あなたの隣に立つぐらいの強さを求めたい!」

 

 彼はわずかに笑みをこぼし、

 

葵「いいだろ。その言葉に後悔は無いな?」

 

ラ「はい!」

 

葵「ならそれにふさわしい力をお前に与える。明日から覚悟しておけ。今日はもう休め。明日からは安眠できないぐらいきつい訓練になるかも知れんからな」

 

ラ「はい! 後私のことはラウラでいいので!」

 

 そう言って私はコーヒーを飲みほし部屋を後にした。

 

 

SIDEout

 

 

 私の部屋に残されたのは私と千冬、そしてクラリッサだった。

 

クラ「神無月教官! 私もお願いしたいのですが!」

 

葵「覚悟はあるな?」

 

クラ「無論です!」

 

葵「ならラウラと同じだ。休んでおけ」

 

クラ「はっ! 私もクラリッサでいいです!」

 

 そういってクラリッサも部屋を後にした。

 

千「・・・・兄さんはモテるな」

 

葵「ん? どうした千冬?」

 

千「なんでもない!」

 

 声が聞きとれなかったので聞いたが彼女はすぐにプイッと違う方向を見た。

 

 なんだったんだ?

 

 


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