第九話
さて、今は私は執務室で積み上げられた白い巨塔(書類の山)を攻略するため奮闘しています。
葵「はぁ~。しかしやってもやっても減らないな・・・・」
積み上げらえれた巨塔(書類)は減ることはなく、むしろ成長しているような気がします。
ドゥ「失礼します総統」
葵「ドゥーエか。どうかしたか?」
ドゥ「はい。『ゴースト』の隊長から連絡です」
ゴースト。正式名称非正規対管理局及び違法施設・組織掃討部隊の通称名。つまりあって無いような存在。亡霊ということからゴーストと呼んでいます。で、仕事内容はいまだはびこる管理局の膿の除去、違法組織や、違法実験を繰り返す施設の掃討です。バックには三提督、レジアス、そして私がついてます。
葵「分かりました。ではいつも通りに」
そういってドゥーエを退室させる。それと入れ違いに、一つのモニターが展開した。そこには、
???「やっほ~♪ お久しぶり~」
黒髪に黒い瞳。そして大人の女性という妖艶さ。だが、まだ少年のようなあどけさなさを持ったどこか矛盾している女性がいた。
葵「はい。お久しぶりですね。カレン・フッケバイン」
カレン「頼まれていた仕事終わったよ」
葵「申し訳ありませんね。辛い仕事を押し付けて」
カレン「いやいや。あんたに負けて生きてることを条件にあんたの駒になることになったんだからね。まぁ~まだ不満持ってる子もいるけど、あたしらはあんたを信用してるよ」
あどけさの中の殺意。矛盾していますがそれが彼女だ。
カレン「で、次のお仕事「今はありませんよ」え?」
私がそう彼女に告げると彼女は鳩が豆鉄砲を喰らったかのような目をしていた。
カレン「え? え? どういうこと?」
葵「今まで働き詰めでしょう。少しは休息をとってください」
カレン「駒には死なれては困るから?」
葵「はぁ。命ある者の命を粗末にしません。とくに価値のある命はね。あなた方にやっているのは人の皮をかぶったゴミ。それの排除を依頼しているんです。異臭漂う中にいてはストレスもたまるでしょ。少し休んでください」
カレン「ほぉ~い」
そういって彼女は通信を斬ろうとしたところで、
葵「あぁ、そうそう。君の家族(ファミリー)に必要な物を送っておきました。ご自由にお使いくださいと」
カレン「本当かい? いやぁ~いつも悪いね」
それを最後に通信が切れた。
葵「・・・・・彼女たちには彼女たちの歩む道がある。肯定も否定もしない。だが、だからといって他人の未来を奪っていいわけではない。未来を奪って(殺して)いいのは奪った者から奪うだけだ(殺した物を殺すだけだ)」
勝手な持論。勝手すぎる。それは分かってる。だが、どうしても彼女には私と同じ過ちを繰り返してほしくないだけなんだろ。
SIDEフッケバイン
カレン「かえったよ~~~」
フッケバインの長女。カレンが帰ると、一早く出迎えたのは、トテトテと走ってきた子供。ステラである。
ステラ「♪」
ステラは何も言わず、カレンのそばについて歩いた。
カレン「ただいま~。あれ? 他の奴らは?」
そういって居住区の方に向かうカレンとステラ。そして、
???「お! ふぁれんふぇ(カレン姉)!」
口いっぱいにものを詰めてしゃべる明るい子。アルナージ。
カレン「アル。ちゃんと口にあるモノなくしてから言ってね」
アル「ごっくん♪ カレン姉お帰り!」
すると、入口の方から、落ち着きのある青年と、体つきのいい上半身裸になった男性、そして褐色肌の女性が入ってきた。
カレン「あんたらもいたの? フォル?」
フォル「えぇ。というか今日は早いですね?」
彼の名はフォルティス。フッケバインの頭脳である。
サイ「今日は用事があったんじゃないのか?」
褐色の肌女性の名はサイファー。右目にした眼帯が特徴である。
ドゥビ「・・・・・速いな」
そして、上半身裸で科目の男性。ドゥビル。
カレン「ん~。ちょっとね。あれ? ヴェイロンは?」
ヴェ「呼んだか姉貴?」
そういって入ってきたのは明らかに不良っぽい男性。
カレン「全員いるね。何と今日は葵からお土産をもらってきました!」
全員「お~~~~」
そこに小さな拍手が鳴る。
ヴェ「というかあいつ本当に管理局のトップか?」
フォル「まぁ、何を考えているかはわかりませんがかなり恩をもらっていることは事実ですよ?」
サイ「そうだな。あいつなら私たちを殺されていたんだ。だが、命を預けたばかりかECウィルスの抗体を作りさらに殺人衝動をなくすとはな」
ドゥビ「それだけではなく。殺人衝動をなくしたまま、力はそのまま。ディバイダーを使えるんだからな」
カレン「うんうん。まっ、その代わり管理局総統直轄部隊であり、非公式部隊ゴーストを任されちゃったけどね」
そう。彼らは一回葵に徹底的につぶされたのだ。それこそ感染者を兵器と成すECウィルスに感染している彼らでも歯が立たなかった。だが、彼らは零始事件解決の際彼がこういったことを思い出した。
――創造神
つまり在ることを無に帰すことも、無いことを在ることにすることも彼の意思次第なのだと。彼の攻撃は通じ、こちら側の攻撃が通じない。このチート的な内容も彼的にはありなのだ。だから殺すことも簡単だった。だが、彼は。
葵『なら生きてみろ。手は貸す』
そういって彼らを生かしたのだ。まぁ、当然彼のもとで働くことにはなったが。
アル「それで葵からのお土産!!」
アルナージが待ちきれなくなったのかお土産を催促する。で、送られてきた箱を開けると。
アル「うわぁあああああ!!! 葵兄の食べ物だ!!!!!!!!」
と、葵の調理済みの料理をいれていた。
で、他の者たちにも。
ヴェ「ほぉ。地球の酒か」
フォル「へぇ、この書物は知りませんね。感謝しますよ」
サイ「む。新作の眼帯か」
ドゥビ「・・・・Tシャツ。不要なのだが」
ステラ「! ♪」
ステラが受け取ったのは動くぬいぐるみで、彼女たちがいる移動戦艦の補佐もしてくれるというおまけ付きだ。
で、カレンには、
カレン「あたしには・・・・おっ! これ前ほしいって言った刀! えぇ~、でもこれは無いな~」
そういって出した紙は。
フォル「いや、それは無いでよ。彼はもう妻子持ちですよ?」
そう。婚姻届である。ちゃんとカレンの名前と印鑑も押されている。だが葵はそれをちゃんと謝罪文同封で変換したのだ。
サイ「彼もちゃんと謝罪文を毎回書いて返してくるとは・・・・」
ドゥビ「律義なもんだ」
SIDEout
葵「ヘックチ」
ドゥ「風邪ですか?」
葵「さぁ? あ、それでノーヴェ。話とは?」
あの後、カレンとの通信を終え仕事を再開した直後ノーヴェから通信が入った。
ノーヴェ『葵兄。来週時間大丈夫か?』
葵「来週? あぁ。ちょうど来週なら大丈夫だが?」
ノーヴェ『えっと、実はな』
その内容によると来週アインハルトとヴィヴィオがもう一度戦うことになったらしい。今度はスパーではなく、模擬戦で。
葵「なるほど。大体分かった。良いだろ。参加するよ」
ノーヴェ『本当か!? 助かるぜ』
そういって通信を終え、私は再び白い巨塔と戦うことになるのであった。