黄泉路への案内人   作:楽一

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第三一話

第三一話

 

 

 あれから約1年がたった。もう子供も葵一人だ。知識も言葉も全てが大人びている。だが、それには違和感がある。まだ一ケタの年齢の子供が普通に大人と同様のセリフを吐けるのだ。

 

零「今回は移植実験を行うよ」

 

 そういって取り出されたのは一本の注射。だが、その中身はおそらく血液だろう。

 

葵子供「・・・・・それは?」

 

零「精霊の血だよ。人間が耐えれる魔力には限界がある。ならそこに精霊の血を混ぜれば限界制限は無くなる。理論上は可能だよ」

 

 だが、ここで葵はあることに気付いた。精霊とは人間で言う死という概念がない。人間で言う死は精霊においては一回精霊界に戻り、体力などを回復したのち再びこちらに誕生する。だが、そこに精霊の血がある。つまり殺した。実質上この世から消したのだ。

 

葵子供「・・・・精霊を殺したというのか」

 

零「あぁ、そうだよ? 何がいけない。人を殺すのも精霊を殺すのも一緒だろ」

 

葵子供「精霊は魔法理論上においては全てにおける基! それを殺したということは神聖領域を汚すにも等しいということだぞ!?」

 

零「そうだね。だけど必要な犠牲というものは何においても付き物だ。当然魔法実験においても、何においても。精霊もそのまた一つにすぎない」

 

 狂っている。いつも感じていたが人以外の領域にまで足を突っ込むとはあまりにも予想外だった。

 

零「まぁいい。始めようか。おい」

 

研究員「はい。悪く思うなよ」

 

 ここにいるせいか葵もだんだん抵抗が無くなってきた。いや、助けなど来ない。そう腹をくくったとも言えるだろう。

 

 そして、血液が葵の体に注がれると、

 

葵「がっ・・・・あぁっ・・・ぐっ」

 

 猛烈な痛みと共に、血管が浮かび上がり、さらに魔力回路も点滅しつつ異常を知らせる。

 

研究員「適合率2%」

 

零「はぁ、失敗「!? 主任! 適合率上昇!!50・・・60・・・80!?」な、何だと!?」

 

研究員「あ、安全領域に入ります」

 

 その場にいた研究員は葵の方を見ると、

 

葵「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

 あちこちから血が出ているものの確実に息はしている。

 

零「す、素晴らしい・・・・成功だ・・・人間と精霊の融合・・・私たちの成果は確実に進んでいるぞ!!!」

 

 威力検査は当然人間が使われ耐久力検査に入るとさらに驚くべきことに、再生能力が異常値を示していた。

 

男「な、なんだよこのガキ!?」

 

男2「か、確実に心臓刺したぞ!?」

 

男3「う、腕が再生してやがる!?」

 

葵「(あ、頭が・・・こ・・・この力を・・・・)アァアアアアアアア!!!」

 

 急にでた叫び声に男達はむろん、研究者も驚いていた。

 

 葵は切り落とされた腕を取り、

 

葵「ブリュフェング!!」

 

 すると、腕は真っ赤な、まるで血に染まった槍に変わり、

 

男「な、なんだよあれ!?」

 

男2「ま、魔法!? お、おい、さっさとやる・・・・あれ、あいつは?」

 

 隣にいたもう一人の男。そう。この場には葵を除けば三人しかいない。だが、もうその男は。

 

男「・・どうやっ―――」

 

 だが、その間に一人殺され、残りもまた同じようになった。再構築と体の武器化(ブリュフェング)。人にも精霊にも不可能な領域。それに終にたどり着いたのが、葵だ。

 

零「予想外だ。あまりにも良い意味での予想外だ!! 君はどこまで私を愉しませてくれる!! いい、いいぞ! 実に良い!! 君のためにもっとモルモットを用意しよう!! 存分に殺ってくれ!!!」

 

 

 

 

エリ「・・・まるで、僕が受けた実験がかすんで見える」

 

フェ「人のすることじゃないよ」

 

ジェ「・・・・私もあの時は悪だと称していたが、これはそれ以上だ。いや、あいつを人と呼んでいいのかすらわからない」

 

カ「悪魔、鬼、それらすら生易しく感じます・・・」

 

 

 

 

 その後も身体強化、魔力強化、属性増加など様々な訓練を行っていた。その理由を零始本人から語られた。

 

葵子供「・・・・世界ゼロ計画?」

 

零「そうさ。この世界は完全に腐りきっている。だから一から作り直すために全てを破壊するんだよ」

 

葵子供「なら、なぜ僕が必要なんだ」

 

零「決まっている。そのための究極の戦力だよ。S.L.P.など所詮は言葉だけ。実際はこの計画と同時にⅫfamily計画の遂行だよ。そして君はその栄えある十番目神無月の称号を手にする子供になったのだよ!!!」

 

 そういって零始が見せたのは二つのイヤリング。一つは白、もう一つは黒だ。

 

零「これは神姫と呼ばれる物だ」

 

葵子供「人工魔法補助具・・・・」

 

零「さすがだね。だがこれは違う。これは補助具じゃない。ドイツの占星術師にして、錬金術師であるゲオルク・ファウストが創ったものでね。ゲオルクは熱心なキリスト教徒だった。だが、はやり病によって父や母、そして愛する妹まで失った。その怒りは病気ではなく祈りをささげていた神に向けられた」

 

葵「・・・・やつあたりだな」

 

零「まぁ、仕方ないさ。当時の医療技術は現在ほど進歩していなかったし、魔法技術も進歩していなかった。だからこそ怒りをぶつけるものがなく最終的に行きついたのが神だったというわけ。そしてその神にぶつける怒りがこれだ」

 

 そういって神姫を葵の耳につける。すると、体中にものすごい魔力が流れ込んでくる。だが、その量は子供が制御するには無理がある。

 

葵「アァ・・・・・アァアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

 

研究員「す、すごい・・・・・主任! 今までの最高記録をもうすでに抜いています!!」

 

零「あくまでも量がだろ?」

 

研究員「確かにそれもあります! ですが、適合率が・・・40・・・50・・70!」

 

零「お、おぉ! それは素晴らしいじゃないか!!」

 

 そして、適合率が100に達した。つまり神姫をモノにしたのだ。

 

零「予想外だよ。君には毎回驚かされる。さて、君には早速実験を行ってもらう。白、黒、青この三種類の騎士モードを展開してもらう」

 

葵「・・・・分かった」

 

 そして、今の黒騎士、白騎士、青騎士と展開していく。そして、再び殺戮を繰り返す。

 

 その日の日程をクリアすると、再び牢屋に入れられる。

 

葵「・・・・寝よう」

 

 そう思うと、イヤリングが光りそこから二人の少女が出てくる。

 

葵「!? お、お前らは?」

 

 片方は白い肌に金色の髪。片方は少し焦げた肌に、水色の髪。

 

???「私は・・・神姫です」

 

???「あなたがマスターか?」

 

葵「そうだな。所有者ではある。それよりお前らの名を教えてもらえないか?」

 

???「名はありません」

 

葵「え?」

 

???「なら、マスターがつけてくれ」

 

葵「・・・分かった。お前がエクス、お前がルミルだ」

 

エ「認証終了。以後よろしくお願いしますね。マスタ―」

 

ル「認証終了。以後頼む。マスター」

 

葵「あぁ」

 

 エクスとルミルと出会い。心の余裕を持てた。多少なりと変化が訪れた。それは何より幸せだった。

 


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