黄泉路への案内人   作:楽一

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第二二話

 

第二二話

 

 

葵「【不の者】についてですか?」

 

 ガーディアンの執務室で書類整理をしていると、査察官のヴェロッサと騎士カリムからの連絡があった。

 

ヴェロ『あぁ。こっちでも調べて入るんだが対応の数が白が明らかに他の部署と比べて群を抜いてるからね』

 

 彼の名前はヴェロッサ・アコース。管理局本局で査察官をしている。クロノ経由で友人となっている。

 

カ『そこで、対応戦などを教えていただければと思いまして』

 

 対応戦ね。

 

葵「今からそちらに向かうのでそちらでお話ししましょう」

 

 車を走らせ聖王教会本部に向かった。

 

葵「お久しぶりです。カリム、それにヴェロッサ」

 

シャッハ「いえ。それより今日は制服じゃないのですか?」

 

葵「今回はこの後レジアスと話があってな」

 

カ「ゲイツ中将と?」

 

葵「うちに来てまぁ飲むだけなんですがね」

 

ヴェロ「ゲイツ中将を家に招くのか!?」

 

葵「あぁ。どうせ一人暮らしだしな。というか脱線しまくりだぞ?」

 

カ「そ、そうでしたね。それでご連絡した時にも話したと思いますが、その【不の者】に対する対処法をお教えいただけませんでしょうか?」

 

 とはいったモノの、

 

葵「一つお聞かせ願いたいのは、本局はどうやって対応しているんですか?」

 

ヴェロ「どうもこうも魔法で対応しているぐらいしかない」

 

 それでは勝てるはずもない。魔法だけで勝てるのであれば世界が零始に負けるはずがないのだから。それに、こちらの魔法は非殺傷設定という【殺さない】ということを前提で戦っている。

 だが、白は特別に殺傷設定で、【不の者】に対してだけ認可が下りている。

 

ヴェロ「葵のところは何か違う、特別な方法をしているんじゃないのか?」

 

葵「こっちは非殺傷設定ではなく殺傷設定で戦っている。大きな違いはそこと訓練だな」

 

 その言葉に二人が驚いていた。

 

葵「あのな二人とも、驚いているところ悪いが相手は人間ではないんだ。化け物なんだ。ここをまず理解しろ」

 

カ「あの、葵さんは【不の者】についてかなり知識があるようにお見受けしますのですが」

 

葵「・・・・他言無用。カリム、シャッハ、ヴェロッサ。ここいる三人は誰にも口外することを許さない。口外すれば・・・殺す」

 

 その静かな殺気にその場にいた三人が顔を青ざめさせる。

 

 

SIDEカリム

 

 

 彼の静かな殺気は本当に口外すれば容赦なく命を取るという警告だろう。

 

ヴェロ「ちなみに聞くが、知っているのは?」

 

葵「はやてたちぐらいだろう。管理局には当然話していない。信用ならんからな」

 

カ「・・・そうですか。分かりました。お約束しましょう」

 

 そういって彼は重い口を開けた過去のこと、そして【不の者】について話した。

彼が言うに【不の者】は人間の負の感情を餌に感情の赴くままに暴れまわる化け物。それだけではなく成長するに従い私たちが野菜や肉を食べるように人を餌として食べる化け物になるという。それを作ったのも人間で、狂王と呼ばれていたらしい。

彼はそれと戦い勝利した。でもその狂王は実は生きていてこちらの世界に来ている確率が大きいらしい。

 

ヴェ「世界を、敵に回した・・・」

 

カ「なぜですか!? あなたは世界を救ったいわば救世主じゃないですか!! そんな人が、そんな人がなぜ!?」

 

 そして彼のように世界を助けるためにたち、事実救った。でも、なにもしなかったその世界の国家は葵さんを恐れた。その結果がこれなんて・・・

 

カ「あなたはそれで・・・よかったのですか・・・」

 

葵「カリム。一つ言っておこう。英雄、救世主。私がそう言われる存在なら私が殺した者たちの関係者は私をどう思うだろう」

 

カ「え?」

 

葵「私は人も【不の者】も殺した。全員が全員救われたわけじゃない。奪われた者、壊された者もいる。その者たちの負の感情が私を殺すよう導いたんだ。結局私がやったことは破壊の限りを尽くしただけの鬼だよ」

 

 そう言って彼は静かに紅茶を飲む。確かに【不の者】については分かった。その対処法がまだ確立されていないが力押しでも何とかなる。ただ被害が大きくなるというデメリットを抱える。非殺傷設定では勝てないということも。

 

カ「・・・あなたがどう思うと私はその心までは分かりません。でも私はこう思います。あなたがいたことによって、あなたのいた世界は再び動き出せることができたんだと。なら、あなたの行った行為もむだではない。それだけは忘れないでください」

 

 その言葉に葵さんもヴェロッサもシャッハもかなり驚いていた。

 

葵「ククッ。そう言われたのは始めただ。・・・あぁそうだな。人の考えは人それぞれだ。まさか今さら気付かされるとは」

 

 そう言って彼は本当に楽しそうにお茶を飲んだ。

 

 

SIDE out 

 

 


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