カッコ好いかもしれない雁夜おじさん   作:駆け出し始め

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參続・シリアスは、歩いてこない、だから歩いてゆくんだね

 

 

 

(うーん……アルクェイドと出逢っても単に凄い美形としか思わなかったけど、中身が玉藻だと知ってると軽く流せないなんて、我ながら現金だよな~)

 

 音すら置き去りにする速度で結界外のビルの屋上に移動した雁夜は、思考の余韻に浸る様に振り返り、先程居た位相のずれた結界内を眺めやる。

 

 墨色長髪のアルクェイドという容姿に成った玉藻を、極普通に10km以上離れ且つ位相のずれた結界外から見ながらそんなことを考える雁夜。

 そんな雁夜に、転移してきたのか高速移動したのかも分からない速度で現れたことを特に驚きもせずに空中へ音声付で映し出されている玉藻の居る現場を見ているアリサが横目で声を掛けた。

 

「顔、緩んでますよ」

「っとと」

 

 別に悪いこととは思っていないが場の雰囲気的に不謹慎かと思い、雁夜は慌てて表情を引き締める。

 そして直ぐに精神を落ち着け、雁夜はアリサ達に話し掛ける。

 

「ところで、俺としては子供に悪影響がありそうな現場を見続けるより、家に帰ってゆっくり休んでほしいから、今からでも帰る気はないかい?」

「心配してくれてありがとうございます。

 ですけど、今後の為にも見ておかなきゃいけないんで此処で見ています」

「私もアリサちゃんと同じです」

「……ふぅ」

 

 好奇心よりも義務感と心配が混ざった声で返された雁夜は、仕方ないとばかりに溜息を吐いた。

 雁夜としては好奇心や不安を満たしたり解消したりする為だけに見ていたのなら襟首を掴んで強制送還するつもりだったが、友人が心配ということと同じ程に情報収集という打算に近い義務感を持っていた為、雁夜は自分の見識を増やして選択肢を増やそうとしている両者を無理矢理連れ帰るのは諦めたのだった。

 そしてそんな両者を見ながら、財閥や大企業の娘だけあって年齢より遙かに処世術を会得しているのだと、雁夜は呆れとも関心とも取れる感想を抱いていた。

 

 だが、そんな暢気な感想は、玉藻が神どころか人間としてすら舐められている発言を浴びせられ捲くる事態を見、一気に消し飛んだ。

 

(おいおいおい!? 何言ってくれてんのあの二人!!?

 仮に結界や威圧感も俺が原因と思ってるにしても、同格かもしれない関係者の堪忍袋を何で初っ端から破ろうとする様な言葉を放つんだよ!!!?

 虎の威を借る狐かどうかも確かめたわけでもないのに、舐め腐りきった発言かますなんて本当に頭の悪い馬鹿なのかこいつ等!!!?)

 

 玉藻の堪忍袋を暴言のマシンガンで破壊しに掛かる二人を見、雁夜は頬を引き攣らせながら内心で叫んでいた。

 そして雁夜と違って虚空に浮かぶ映像を見ていたアリサとすずかは――――――

 

「ちょっ!? 怪しげなギミックの付いた杖構えてナニ言ってんのあの子!?!?」

「な、なんだかなのはちゃんの残念な感じが凄いことになってるよ!!??」

 

――――――内心ではなく確り声に出して叫んでいた。

 何しろ、先程なのは達が杖(の様な物)から破壊光線等を発射していたことから、なのはが構えた杖がマシンガンとロケットランチャーを足した様な物だという認識をしているアリサとすずかは、なのはの支離滅裂としか解釈出来ない発言にツッコミを入れずにはいられなかった。

 

 そして、そんな届かないツッコミをアリサ達がしている最中にも状況は進んでいた。

 緑の髪をしたリンディ・ハラオウンが、如何解釈しても、〔お前の住む所もお前達も纏めて私達の管轄だから黙って従えや。そして私達の都合に馬車馬の如く貢献しろ〕、としか解釈出来ない台詞を炸裂させていた。

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおいぃぃぃっっっ!?!?!?

 千載一遇の好機をなぁんで死亡フラグに書き換えてんのおおおおおおおおおおっっっ!?!?!?

 というか喧嘩売ってるのかっ!!!!!!??????」

 

 リンディ達は与り知らないが、雁夜(自分)の故郷の世界では、協会が取引のテーブルに座ってもらう為だけに3兆円以上詰む程に超貴重な機会を只で得ているにも拘らず、自ら死亡フラグへと変化させているリンディに対し、雁夜は叫び声を上げた。

 そんな雁夜の叫びが轟く中、更になのはが武力で脅しながら和平の使者気取りの台詞を炸裂させており、其んな様子を見たアリサ達は――――――

 

「本気であの子と縁斬りしたくなり始めたんだけどおおおっっっ!!!???」

「電波系ヒドインとか誰得なのっっっ!?!?!?」

 

――――――と叫んでしまう程、なのはの行動に対して深刻なレベルで拒否感を抱き始めていた。

 尤も、なのは自身に対しては未だ深刻なレベルでの拒否感は抱いていないが、先程のなのはの行動が演技ではなく自身の価値観や行動理念の現われだとしたならば、アリサとすずかがなのは自身に対して深刻なレベルで拒否感を抱き始めるのは時間の問題であった。

 そしてソレを理解しているだけにアリサとすずかは、遠くない未来に友情が壊れていくのを幻視して頭を痛めていた。

 

 だが、叫び声が轟く最中にも状況は進み続け、遂にリンディ達の暴言が玉藻の我慢の限界を超えた量と質を吐き出した。

 そして我慢の限界を超えた玉藻が逃げ帰ったり罵詈雑言を吐き出すだけで済むなどという展開になる筈もなく、玉藻は普段結界で押さえ込んでいる神気の圧力を僅かだが解放することにした。

 当然僅かだけ解放したのが相手を殺さないようにギリギリのところで玉藻がが踏み止まっているから等という理由である筈もなく、単に苦しんで死なせる為に僅かだけ開放したのだということは、現在百年の恋も一瞬で冷めそうな状態になのはとリンディが陥っているのを見た雁夜達は一瞬で理解した。

 

「ちょっとちょっとちょっとおっっっ!!! 怒るのは分かるけど遣り過ぎよ!!! あの子死んじゃうわよっ!?!?!?」

「あー……心肺蘇生とかで蘇れる感じの範囲でしか死なせない筈だから多分大丈夫。

 と言うか、俺が制止の声を掛けようとしたらその前に鏖殺するだろうから、説得なんて無茶無理無謀の三拍子」

「蘇生って、死ぬこと前提ですか!?

 というか蘇生されても動く死体みたいに成りそうなんですけど!!!???」

「玉藻的には耳元で飛び回る蚊を叩き潰す以下の認識と手間だろうから、死なさないって選択肢は多分初めから無いね。アレは。

 後、玉藻なら彼処の奴等程度は問題無く蘇生出来る筈だけど…………変な細工をして蘇生させる可能性は否めないな」

 

 アリサとすずかと違い、雁夜は既に玉藻の怒りの発露は止められないレベルに在ると理解し、最早慌てる気も消失した為、冷静さと虚脱さが混じった状態で返答していた。

 少なくとも、今巻き込まれている者の中に雁夜か桜の大事な存在でもない限り、今の玉藻が怒りを納めたりしようとしないのを雁夜は十分に理解していた。

 他にも、人知を超えた存在が人間の価値観で括れば碌な事に成らないのは理解している為、仮に蘇生させなかったとしても諦めるしかないと雁夜は思っていた。

 尤も、人外の在り方以前に時空管理局勢の対応が、未知の格上の存在に対する対応を完全に間違えていなければ雁夜は流石に玉藻を止めようと足掻いただろうが、礼を尽くすどころか武力を背景にした対話を飛び越え、脅迫による隷属化を迫ってきた存在を助けようと思う程雁夜は馬鹿なお人好しではなかった。

 

 一応子供が混じっていたのは知っているが、雁夜は遠くの国で戦争に巻き込まれて困窮する子供達へ可哀相の一言で済ませる感覚で切り捨てた。

 眼前で助けを求められたなら巻き込まれていた者だけは助けたかもしれないが、そうでないならばあれ程馬鹿にされた玉藻に怒りを抑えろと言うつもりは雁夜に無かった。

 何より、〔より良い未来を提供する〕、などという言葉は、玉藻だけでなく雁夜にとっても相手を幸せにしきれていないと言われているのと同義であり、今は違う世界に居る桜以外に言われることを両者は決して許すつもりは無かった。

 尤も、玉藻と違って雁夜は元とは言え同属を殺そうと思う程の怒りでなかった為行動はしなかったが、先程玉藻から自分が人間に対して甘過ぎると言われたばかりなので、少し元同属に対して甘さを取り払おうとした結果、恐らく殆どノーリスクで助けられるかもしれない者達をノーリターンなるだろうという理由で放置するという選択を採ったのだった。

 

 だが、雁夜と違ってアリサとすずかは、友人であるなのは達がマジビビリとドン引きする容貌と状態になっているのは許容出来ないらしく、声を荒げて雁夜に話し掛ける。

 

「説得が駄目なら力尽くで何とか出来ないの!?」

「玉藻が本腰入れたら意味が無いから、やるだけ無駄だよ」

「それでいいですから早――――――」

「もう死んだよ?」

「――――――くお願……い………………」

「………………」

 

 特に感慨も無さそうにあっさり告げる雁夜。

 その言葉を聞き、呆気に取られた表情をして言葉を失くすすずかとアリサ。

 対して雁夜は、なのはだけでなく追随する様に其の他の者が死んでいくのを知覚しつつも、特に感慨も湧かないことに若干驚きながらも、ぼんやりと玉藻の神気を浴びて死んでいく者達のことを考えた。

 

 

(将来が心配な金髪の子は見るからに意志薄弱そうだし、魂に至っては肉体に残った魂の残滓を肉体を複製する際に訳も解らない上に知らぬ間に劣化複製したみたいな感じだし、もう直ぐ死ぬな。

 牝犬は…………もとい、犬女は将来が心配な金髪の子と一連托生っぽそうだし、そうでなくても恐ろしいくらいに不自然で希薄な魂が不安定だから結局直ぐ死ぬな。

 後、戦艦の中の緑の奴と其の他諸諸は個別認識出来ないから後どれくらい持つかは判らないけど、近場の奴で生き残りそうなのは男の子二人か……。

 

 黒いのは何かに打ち込んできた熱血少年みたいだから、自分が打ち込んできたことを強く見据えてれば増幅した精神防壁で一時的に魂への負担を減らせるから何とか持ち堪えられる……かな? 体力的に半時間が限界だろうけどな。

 茶色いのはどうも神への耐性が微妙にだけど初めから微妙にだけど有ったみたいだから、気合次第で6時間くらい持ちそうだけど……変なギミックというかマジカルステッキ無しに魔術(寧ろねずみ擬きが使う科法?)を使ってるから、やっぱり黒いのと同じく精精半時間くらいが限界だろうな。

 だけど、…………こういう事態を見ると改めて一般人の筈の大河さんの規格外さを強く思い知るよな。

 

 魔術防壁を展開していなかったらバルトメロイすら行動不能になる程の圧力の中、マジビビリするだけで普通に振舞えるって、寧ろ全然普通じゃないよな(ていうか、雷蔵さんも同じ事出来そうな気がする)。

 肉体スペックは一般人なのに、精神とか魂のスペックは英霊級って、何か凄いアンバランスだよな。

 玉藻なんか鍛えた後に頑丈な礼装(武器)を持たせればセイバーと互角に戦えそうって言ってたし、本人も武道の適正が並外れて高いのは理解してたみたいだけど、遣りたいことじゃないからってその分野じゃ頂点を狙える稀有な才能を放り捨てて夢を追うって、素直に尊敬出来るよな。

 やっぱり大人は大河さんみたいに確り地に足が付いて自分を理解してないとな。俺も見習って自分を才能の下に置かないように気をつけないとな。

 そしてそんな大河さんが桜ちゃんの傍に居てくれるってのは、在り難いし心強いし安心だよな。

 ……普段は豪く色色とアレだけど)

 

 

 最後は望郷の念が混じった思考で、雁夜は嘗ての日常を思い返していた。

 だが、1秒弱(雁夜的に凄くのんびりと)考えていた間に状況は動き、戦艦からアルカンシェルという特殊兵装が発射された。

 

 カタログスペック通りならば、文字通り天変地異を引き起こす規模での破壊を振り撒く筈だったが、ソレは呆気無く玉藻が完全に押さえ込んだ。暴れる蟻を人が押さえ付ける程度の労力を払って。

 そしてソレを見た雁夜は、――――――

 

(神秘云云抜きにしても、俺だとあれ程鮮やかに被害を押さえ込むのは難しいな。

 いや、多分4~5発くらい迄は不恰好な力技で出来るだろうけど、ソレを超えると多分抑え込む力の余波で周りに被害が出るだろうから、素直に広域の結界でも展開して防御した方が無難になるな。

 

 後、仮に直撃しても何時の間にか…………ホントウニイツノマニカ高次元存在になってるから、先ず死にはしないな。

 ていうか、起爆してからでも防御は余裕で間に合うし、防御は秒間数千発を年単位で耐えられるから問題ないな。

 玉藻に至ってはどれだけ防御しても、標高が1mm上がった時に下がる呼吸効率程度の影響も無いだろうから、心配する必要は全く無いな)

 

――――――と、特に驚きもせずに暢気な事を考えていた。

 だが、大まかな攻撃方法と被害規模を聞いていたアリサとすずかは表情が驚愕で固まっていた。

 

 一応玉藻が語ったカタログスペックが玉藻か時空管理局の何方か若しくは両方の意図で誇張されている可能性は在ったが、それでも戦艦から放たれた攻撃を単独で平然と無効化する様は、改めて規格外の存在だと認識し直した。

 更にそんな玉藻を見ても特に驚いていない雁夜も、玉藻に次ぐ規格外な存在なのだろうとアリサとすずかは認識し直した。

 

 そして、アリサとすずかが自分達が出会った者がどのような存在か認識し直した数秒後、突如何の兆候も無くなのはやその周囲の者達だけでなく戦艦すらも消え去った。

 アリサとすずかには時間から切り取られたかの様に突然消え去ったとしか認識できなかったが、雁夜は何とか転移する様を知覚する事が出来、落雷に前後する速度で一から転移させた玉藻の出鱈目さに感心を通り越して呆れていた。

 

 更に状況は進み、玉藻が何とか生き残っている二人へ、なのは達だった死骸を転移させた後に蘇生させたと説明した直後、アリサとすずかは常人には真似出来ない速度で雁夜へと顔を向けて確認してきた。

 

「へ、変な身体じゃないわよね?」

「さ、再殺とかしないですよね?」

「…………」

 

 相手の発言や契約等に関して隙が無いのか、それとも単純に玉藻の信用度の低さの表れなのか、若しくは両方が高いレベルで纏まった結果なのか、雁夜は子供らしくない両者を若干引き攣った笑みで暫し見た後に言葉を返す。

 

「再殺するくらいなら転移させずにその場で再殺し続けるだろうから大丈夫だと思う。

 まあ、怪我はしてないけどMP0でHP1の上に手の施しようが無い(バッドステータスのコンプリート)状態で蘇生させてる可能性は高いけど、それでも安定期に入る迄は死なせない細工を施してるから肉体的には大丈夫だと思う。

 それに変な身体で蘇生させるなら、態態転移させずに周囲のリアクションが分かるあの場所にのこした儘だろうから、その心配は要らないと思う。

 まあ、元元自分の体が蛆虫とか思う様に精神操作されてる可能性は在るし、単純に精神崩壊して正しく自分の身体を認識出来ていない可能性も在るから、玉藻の介入抜きでもちょっとマズイ要素はあるけど、取り合えず見た目的に問題は無いと思う」

「「………………」」

 

 何処を如何安心していいのか判らないアリサとすずかは、白い眼と引き攣った笑みで雁夜を黙って見返した。

 そして針の莚に包まれた気分になった雁夜は苦笑いしながらもアリサとすずかが安心出来る言葉を選んで告げる。

 

「大丈夫だよ。俺だけじゃなくて玉藻も、君達が願った、【幸せな結末(ハッピーエンド)で収束する】、っていう願いから大きく逸脱した結果に成らない様にするから、事態が収束する時には取り合えず如何しようもない不幸な状態には成ってない筈だよ。

 まあ、相手が馬鹿な真似すればどんどん取り返しの付かない不幸寸前の不幸が叩き付けられるけれど、そこら辺は2つ分の願いと雖も曖昧な願いの限界として割り切ってもらうよ」

「まあ……あたし達の願いが叶うなら…………文句は無いわね。

 徒…………」

 

 雁夜の言葉に不承不承納得するアリサ。

 そしてアリサの途切れた言葉をすずかが受け継いで雁夜に告げる。

 

「なのはちゃん達……って言うかずばりなのはちゃんですけど、起きたら絶対暴れると思います……と言うか暴れますから、その辺りに融通は利きませんかね?」

「残念だけど利かない。

 八神はやてって子達と話が終わった後、君達の事が済めば願いは叶え終った事になるから、その後に場を荒らそうとしたらサクッと対処させてもらうよ。

 当然場を荒らさなくても、当人達が勝手にバッドエンドに向かって走り出しても基本ノータッチだから」

「「………………」」

 

 願い事を告げた時は此れで誰もが傷付かずに終わると思っていたアリサとすずかだったが、予想を遙かに超えてなのはとリンディに問題が在った為、早速願い事が無駄に終りそうな未来が見え始め黙り込んでしまった。

 特になのはは良識どころか常識を疑う思考をしていると知ったアリサとすずかは、後日確実に自分達に絡むと確信を通り越して予知のレベルで理解出来てしまった為頭を悩ませていた。

 

 だが、何だかんだ言って甘い雁夜は、一応対外的に言い訳が付くレベルでのフォローはするべきだと思い、アリサとすずかに話し掛ける。

 

「……と言いたいところだけど、まあ、あの色色と白くて困る君達の友達(?)が如何行動するかは目に見えてるし、此処で後後の対応を放棄するのは願いを叶えていないと言えなくもないと思うから、あの色色と白くて困る君達の友達(?)にだけは、5~6年間は転移させたり昏倒させたり意識を逸らしたりとか出来る便利アイテムを渡すから、それで納得してくれ。

 其の頃には君達も自衛出来るように成ってると思うし、おまけの期間としては妥当だと思うしね」

「……分かったわ」

「……分かりました」

 

 妥協点としてはその辺が限界だろうと判断したアリサとすずかは渋渋ながらも納得し、了承の返事をした。

 

 愉快でない未来を幻視してテンションが大幅に下がっているアリサとすずか。

 しかし、予想通り早くに玉藻と八神はやて達の話が終りそうだと察した雁夜はアリサとすずかに注意喚起する。

 

「もう直ぐ君達の出番だから、シャンとしといてくれ」

「「……はい」」

「玉藻相手に話すわけじゃないから余り話し方は気にしなくていいけど、それでも玉藻を指す言葉には十分気をつけてね?」

「「はい」」

 

 年に見合わない凜とした声で返事をするアリサとすずか。

 

 

 

 其の後、改めて事態の推移を見守っていたが、1分も経たない内にアリサとすずかは玉藻に召喚された。

 そして残った雁夜は、一足早くアリサとすずかの保護者を一箇所に集めて話が出来る状態にするべく動き始めた。

 

 

 

 

 

 

Side In:玉藻の前

 

 

 

 さてさて、私が話してる間に目を覚まして黒の騎士団と言うか5レンジャーに説明を受けてましたし、前置き無しで話すとしますかね。

 

「人の子よ。現況の理解は能いますか?」

「はっ、はいぃっ!」

「では用件を告げましょう。

 我が神子と成り、我が意を代行するか否かを問います」

「……………………………………………………は?」

 

 見事な間抜け面ですね。

 余りに愉快で見事な間抜け面ですから、聞き返すという面倒臭い真似は不問にして話を薦めるとしましょうか。

 

「私の神子であり汝の友である者達の切なる願いを受け、我が主と私は今回の事態収拾を其の願いに近付ける容へすることにしました。

 其れに当たり、汝が此の星を荒らしに湧き出でた者達に集られ、其の生を貪られる未来を回避する選択肢を与える為、私は汝に先の問いを投げ掛けました。

 

 神子と成りて私の意を代行するならば、汝には神たる私の加護が与えられます。

 さすれば汝は先程の戦艦と此の場に居た者達の3倍を超える相手と比して尚上回る存在と成ります。

 無論、私の意に逆らえば加護は失われ、反逆の度合いに因れば死にも至ります」

 

 私的にはそんなことより、万が一ご主人様に色目を使ったら年中発情中の牝犬に変化させて大自然に放り出される呪いを掛けたいですけどね。

 

「当然選択ですので拒否も可能です。

 

 神の意志に縛られる神子か、人の欲と法に縛られる走狗か。

 神の加護と呪詛を身に宿すか、人の法と倫理への逃避か。

 神という明確なものへの所属か、人の都合という不確かなものへの所属か。

 

 汝が何方を選ぼうとも私は構いませんし、新たな選択を切り開いても構いません。

 ですが、詮議して決める事柄ではありませんので直ちに答えを出すべきでしょう。

 魂の声を理性で押し殺した者の苦悩は見苦しく、吐き出される苦悶の声は聞き苦しいものですから」

「………………」

 

 悩んで出す答えじゃないでしょうに。

 此処は私やご主人様に迷惑が及ばないように何処かへ逃避し、其の後ひっそりと暮らして生涯に幕を下ろすの一択でしょうが。

 仮に其れに思い至らなくても、償いとか何とか適当な勘違いを炸裂させて、ビクン★感じちゃうとかで食材にでもなって脂ギッシュな親父に食べられる道を選ぶべきです。

 成り行きで将来危険なコンビを神子にする破目に陥りましたけど、ご主人様に色目を使いそうなのが4つも憑いてくる奴なんて全力で拒否です。

 

 っと、如何やらあっさり答えが出たみたいですね。

 

「あたしは……………………あたしの家族がやったことを償う為にも、…………………………管理局というところで………………………………償っていくつもりです。

 だから…………お誘いは断らせてもらいます」

 

 よぉっしっっっ! 此れで邪魔蟲5匹増加の芽は潰れました!

 

 それじゃあ後は神子の紹介と釘刺しだけ…………って、あー……神子の家族への説明が在ったんでしたね。

 分際を弁えずに喚きそうですけど、優しいご主人様の手前、一度は頭を弄くるという平和的な解決で手を打つとしますか。

 

「ならば話は終わりです。

 

 神子達よ。今生になるやも知れぬ故、代行の前に言葉を交わすとよいでしょう」

 

 一瞬、仁王像の様に布切れ一枚で召喚しようかと思いましたが、後で絶対にご主人様から怒られますし、若しご主人様の眼に留まってロリに目覚められるのも気分が悪いですから止めるべきですね。

 いや、ロリ玉藻ちゃんと逞しいご主人様との背徳的な絡みは…………微妙ですね。

 やっぱりロリ玉藻ちゃんの時はショタご主人様じゃないと駄目ですね。

 

「「…………」」

「私が強制召喚した場合に於いて拝礼は不要です」

「「はっ。至らぬ未熟を御許し下さい」」

「非礼ではありませんので謝罪は不要です。

 尤も、汝等が未熟なのは事実ですので、後程然るべき者に習いて神子の何たるかを学びなさい」

「「はっ。蛍雪の限りを尽くし、次は御気分と御手を煩わせぬように致します」」

「神子とは神と俗世を繋ぐ架け橋です。

 神子の責を忘れぬならば、俗世で行動することを咎めはしません。

 故、健やかに過ごしなさい」

「「はっ。在り難き御言葉を賜れ恐悦の極みで御座います」」

 

 …………寸劇ってイライラしますね。

 とっとと済ませてご主人様の胸に転移(飛び込み)しましょう。

 

「それでは私は去りますので、仔細は任せます」

「「はっ。尊名と威光を汚さず且つ全霊を以って挑みます」」

「先に述べましたが、私の意を代行する前に友と語らうとよいでしょう。

 次に会う時は敵として排除しなければならぬやもしれませんからね」

 

 返事を待たずに光の粒と化しつつ、神神しく転移。

 目指すは愛しいご主人様の腕の中!

 

 ご主人様~♪直ぐにその胸に飛び込みますから、優しく抱きとめて下さいね~♥

 

 

 

Side Out:玉藻の前

 

 

 







 【アリサとすずかのプロフィール(洒落)】

 真名 :アリサ・バニングス

 クラス:3-A(オリジナル設定)

 職業 :神子(仮免状態)

 戦闘力:防御力だけ某ターミネーター状態(幸運激高)

 スキル

・神託:A++(EX)
 神(玉藻)の意思を受け取り理解する能力。
 本来ならば神直直に指名され且つ其の神の神気を魂が大量に取り込んでいるのでEXランクの筈なのだが、神の意思が人の意思と方向性が違う為理解しきれずランクダウンしている。

 恩恵として常時精神干渉系を神託と同ランク迄無効化が存在する。
 更に神託に沿った行動中は全パラメーターが積算される。
 但し、神託に反した行動をした場合は全パラメーターが減算され、基のパラメーターが低ければ死に至る。
 尚、積算と減算の幅はどれだけ神託に沿う若しくは反しているかで決まり、最大で神託のランクと同等の積算と減算が付加される。


・カリスマ:B++(A++ ~ EX)
 五次セイバー準拠。
 但し、特定の男女層に対して凄まじいカリスマを発揮する。
 又、神子としての技量が高まれば神託スキルランク迄上昇させることも可能だが、其の場合神託に反した場合の揺り返しが存在する。


・アリサ・バニングス:C(EX)
 破損した肉体を雁夜の不思議物質で60%以上補填され、更に其の肉体に玉藻の神気を大量に注ぎ込まれて癒された魂を封入して生き長らえた存在。
 雁夜と玉藻がアリサに気づいた時には既に魂が消滅寸前であり、取り合えず死なせた後に完全な死者蘇生を行った方が手間が掛からなかったのだが雁夜がソレを良しとせず、蘇生の域に止める為に全力を尽くした結果、半神造兵器と化してしまう。
 当然神性も有しているが、アリサ自身が玉藻との繋がりを強く否定している為大幅にランクダウンしており、神性のランクもEとなっている。

 基本的に自身の存在を受け入れる程にパラメーターだけでなくスキルも強化され、更に特殊スキルも取得可能となる。


・第一魔法(真)
 玉藻との蜜月で第一魔法(殆ど別物)から第一魔法擬き(神霊魔術)へと変わった雁夜と違い、正真正銘の第一魔法。
 アリサ自身に自覚は全く無く、訳も解らず辿り着いている状態。
 当然雁夜が元第一の魔法使いで在った事が強く起因しているが、アリサの生来の素質がなければ不可能な為、運と実力で獲得した奇跡と言える。
 但し、アリサは訳も解らず辿り着いている状態な上、辿り着いている事すら碌に自覚していない為魔法の行使はほぼ不可能。


 真名 :月村 すずか

 クラス:3-A(オリジナル設定)

 職業 :神子(仮免状態)

 戦闘力:防御力だけ某ターミネーター状態(幸運激高)

 スキル

・神託:A++(EX)
 アリサの設定と大差無し。

・王佐の才:B(A++ ~ EX)
 特定の対象を補佐する才能で、主にカリスマ持ちが対象となる。
 対象になった相手は此のスキル持ちの内政系スキルを此のスキルのランク迄自在に行使する事が可能と成る(上限を超えて行使することは出来ない)。
 但し、対象が此のスキル保持者と同等以上の存在でなければ対象は篭絡され傀儡と化す。


・月村 すずか:C(EX)
 アリサ・バニングス:C(EX)と大差無し。


・神霊魔術
 玉藻との親和性が桁外れに高かった為に獲得したスキル。
 神託のスキルの有無に拘らず超一級宝具に匹敵するレベルでの行使が可能であり、神託の後押しが在れば更に出力は跳ね上がる。
 但し、生来のスキルではないのでスキルの存在すら自覚しておらず、現在は使用不可能状態。


   ~~~~~~~~~~


 寝不足と酔いの勢いで書いた洒落ですが、お蔵入りするには勿体無かったので載せましたけど、十中八九無駄設定になると思いますので、軽く流し読みして下されば幸いです。



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