カッコ好いかもしれない雁夜おじさん   作:駆け出し始め

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貮続・シリアスは、歩いてこない、だから歩いてゆくんだね

 

 

 

 夜天の魔導書の半暴走に巻き込まれ、身体が激変し且つ主導権を奪われた八神はやてが時空管理局勢を圧倒している最中、突如異変が起こった。

 

 先ず、周辺を覆っていて隔離結界が突如完全に別の結界に因り崩壊した。

 掌握されたのでも内部に別の結界を展開して二重隔離されたのではなく、新たに展開された結界と結界内が圧倒的に格上の理であった為、格下の理を基に展開された結界は、宛ら子供の秘密基地が区画整理の為一方的に壊される様に崩壊した。

 

 次に、静止衛星軌道上に滞空していた戦艦アースラが、突如結界内に強制転移された。

 最高出力でないと雖も、既に戦闘態勢に移行しているのである程度の防護フィールドを展開していたにも拘らず、全く感知出来ない速度でアースラは強制転移された。

 

 最後に、中天に輝く太陽が現れ、宛ら太陽から現れるかの如く二つの影が――――――姿を変えた雁夜と玉藻が――――――降りてきた。

 降りてきた両者の格好は、雁夜は2本の蜘蛛の脚を展開させ且つ威厳が在りそうな若かりし頃のゼルレッチの姿であり、玉藻は大衣と裾という如来の服装に墨色長髪のアルクェイドの姿だった。

 

 

 神神しさも然る事乍ら、玉藻から極僅かに漏れ出る圧力は、戦闘域の全員どころか約1km離れた位置に滞空している(急に重力圏内に転移させられた為少し落下したが)アースラ内に居る者達も含む、結界内全ての者を纏めて行動不能に陥らせた。

 しかも戦闘域の数名だけでなく、離れた位置に滞空しているアースラ内でも多数が余りの圧力に死へと急速に追い遣られており、恐らく後10秒もせずに死人が出る程の圧力だった。

 だが、――――――

 

「矢張り人間とは壊れ易過ぎますね」

 

――――――雁夜に視線で注意された玉藻が、憐憫とも軽蔑とも取れる目で誰とはなしに語ると、突如魂が圧壊する程の圧力が消え失せた。

 防御のフィールドやシールドを一切無視して襲い掛かっていた圧力が消えた為、結界内の者達は何とか落ち着きを取り戻し始めた。

 

 しかし落ち着きを取り戻し切る者が現れる前に、玉藻は手元に夜天の魔導書を強制転移させた。

 そして夜天の魔導書と八神はやての繋がりを一時遮断して半暴走状態から回復させ、更に八神はやての肉体を細菌バランス等を除き、骨肉だけでなく毛髪や皮膚から血液や神経に至る迄を最高の状態に回復させた。

 

「うそ…………」

 

 誰かが信じられないという思いを代表する様に口にした。

 だが、奇跡は未だ終わっていないとばかりに、玉藻は元の姿に戻って気絶している八神はやてを宙に浮かせた儘、夜天の魔導書を黙って雁夜へ献上する様に差し出した。

 

「礼を言う。手間が省けた」

 

 そう言うと雁夜は夜天の魔導書を右手で取り、軽く数秒眺めると左掌を上に向け、掌に夜天の魔導書そっくりの半透明の本を創った。

 そして右手で持った夜天の魔導書を、左手に乗せた半透明の本へ綺麗に重ねた。

 

 その後、雁夜がゆっくりと左手を下げると、雁夜の左手には先程と違って静謐さを感じる夜天の魔導書が在った。

 対して宙に残った半透明の本は、夜天の魔導書の汚れを吸い取ったかの如く黒く滲んでいた。

 

「好きにするといい」

 

 そう言って雁夜は夜天の魔導書を八神はやてへと放り投げる。

 すると八神はやてへ激突する直前に夜天の魔導書は静止し、1m程後退した。

 そして次の瞬間、夜天の魔導書から紫紺の線が伸びて八神はやてを囲み、更に夜天の魔導書を頂点にした五箇所に魔法陣が展開され、先程激変した八神はやてだった容姿の者と、八神はやての家族である、〔剣の騎士シグナム〕と〔鉄槌の騎士ヴィータ〕と〔湖の騎士シャマル〕と〔盾の守護獣ザフィーラ〕の各四名が瞬時に出現した。

 

 出現した5名は即座に円陣を狭めて警戒態勢に移行するが、雁夜はそれに全く構う事無く、宙に浮いた儘の半透明の本を沖合いへ指で弾いて飛ばした。

 すると、宛ら夜天の魔導書に関わった者達の怨念が形に成ったキメラの様な存在が沖合いに具現した。

 

「「「「「なっっっ!?!?!?」」」」」

 

 此れを見ていた雁夜と玉藻と円陣を組んでいる者以外の全ての結界内の者が驚愕した。

 そして此れで我を取り戻した黒髪の少年が雁夜に食って掛かろうとする。

 

 だが、雁夜の邪魔をするなとばかりに、玉藻が邪魔者と邪魔者に成るだろう全ての者の行動を大幅に制限した。

 

「き、君は一体何        !?

    !?!?         !?!?!?」

 

 結果、呼吸は出来ども声を出すことは出来ず、更に雁夜達から遠ざかる様には動けても近付くことは微塵も出来ず、しかも魔導も雁夜達に干渉する類のモノは一切が発動不可能だった。

 そしてそれは他の時空管理局勢にも伝わり、差は在れども混乱状態に全員が陥った。

 

 だが、沖合いのキメラの様な存在の唸り声以外、混乱している者達が空気を掻いたりする程度の音しかしない上に近付かれもしない為、雁夜は時空管理局勢を無視して夜天の魔導書を抱える者へと問い掛けた。

 

「要るならば戻すぞ?」

 

 沖合いのキメラの様な存在を目で示す雁夜。

 対して、流していた涙が無くなった為光の反射が少なくなって朱眼に見える銀髪の者は、少しの間黙考した後、答える。

 

「戻さなくて……………………………………構わない」

 

 憐憫や後悔を湛えながらも、葛藤の末はっきりとした口調で銀髪朱眼の者はそう返した。

 しかしそんな葛藤は如何でもいいとばかりに雁夜は――――――

 

「ならば消すとしよう」

 

――――――と、まるで気にした風も無く、宛ら足元の硬貨を拾うかの如く、全く気負わず雁夜はそう言った。

 そして次の瞬間、蜘蛛の脚の一本が第三宇宙速度で伸張し且つ同じ速度で薙ぎ払われた。

 

 時間にして約0.08秒。

 たったそれだけの時間で、数多の星の文明を滅ぼした存在は消え去った。

 凄まじい再生力を誇った肉体に高い防御力を兼ね備えた複合多重障壁といった、今迄時空管理局がアルカンシェルを使う以外に対処不能だった存在が、文字通り瞬殺されたのだった。

 

 雁夜達以外が呆然とする中、雁夜はそれを一切気にせず――――――

 

「些事は任せる」

 

――――――とだけ告げて姿を消した。

 

 

 

 

 

 

Side In:玉藻の前

 

 

 

 あぁ、ご主人様が居なくなってっしまいました……。

 本当は今直ぐ後を追って御傍に居たいですけど、夫の真摯な頼みを無碍にすれば良妻は名乗れませんから、此処は確りとご主人様の期待に応えましょう。

 此の後に楽しいデートも待ってますし。

 

 ふっふっふっふっふ。…………朝昼と楽しくデートし、夕食は大人の雰囲気溢れる所で食べて、その後は以前と違って大人の時間も在りますからね♪

 本来ならご主人様と離れた上にこんな面倒臭い事をしようとすればテンションが下限突破する勢いで下がりますけど、後の事を考えるとテンションが上限突破した挙句に気合が漲ります。

 それにご主人様が、私が神霊として振舞う姿を見てドキッとしたのは桜ちゃんから確り聞いていますから、尚のこと気合が漲ります。

 ……墨色長髪アルクの身体なのが残念ですが、ご主人様は問題無く魂を捉えられますから今回は此れで良しとしましょう。

 

 さて、それでは木端にも満たない人間共に、神の格を耐えられる範囲で見せ付けるとしましょう。

 

「此の地を荒さんとする者達よ。今ならば汝等の愚挙に目を瞑りますので、早早に立ち去りなさい。

 そして恥を知るならば二度と訪れぬことです」

 

 うん。天照っぽくて如何にも女神って感じですね♪

 

「ふ、ふざけるなっ!? いきなり現れて場を引っ掻き回しといて、そんな言い分を呑むわけないだろ!!

 少なくてもさっき君達が何をしたのかは確りと聴取させてもらうからな!」 

「そうだよっ!

 あなたがいったいなにをしたのか分からないから、お話したいことがたくさんあるんだよっ!?

 だからおねがい! あなたとお話させて!!」

 

 ……黒ショタの物言いはほんっっっっっっっっっの少しだけ解らなくはないですが、衣服だけでなくて頭も白そうな痛い系の輩の言い分は意味不明ですね。

 どうしてマジカルステッキみたいなのを向けながら話し合おうという言葉が飛び出すんでしょうかね?

 若しかして痛い系でなくて電波系なんでしょうか? 

 

<失礼。私は時空管理局本局 次元航行部隊 L級8番艦アースラ艦長 リンディ・ハラオウン提督です。

 突然ですが、貴方達が先程行使した魔法やその目的、並びにそこの闇の書の関係者達との関係等、取り調べる事が山と在りますので同行願います>

「主様より事を荒立てるのを少なからず控える様仰せつかっていますので、一度だけ普遍的な人の世の理に沿って答えます。

 私は汝等の理が統べる集いには属していませんので従う道理は無く、そして従う意思も在りません」

 

 ご主人様から念入りに出来るだけ穏便にしてほしいって言われてなかったら、今頃空中戦艦から通信を入れてきたマンデイ・アライヤ~ンとかいう人型緑虫を空中戦艦毎蒸発させてましたね。

 まあ、如何にご主人様の頼みでも多分我慢は今回が限界ですね。

 

 別に礼を言われる為にしたことでないとはいえ、自分達で対処出来ない事態を穏便に解決した私達に掛ける言葉がアレなんですから、怒るのは極普通の筈ですからね。

 と言うか、〔何こいつ? 馬鹿な悪人なの?〕、って視線を向けてくる連中が凄まじく腹立たしいですね。

 序に如何いう腹立たしい言葉が飛び出してくるのかも超簡単に予想が付くだけに、面白味も無い腹立たしい言葉を聞くだけになりそうでゲンナリしますね。

 

<管理外世界の貴方が知らないのは無理もありませんが、私達時空管理局は次元世界世界の平和を守る為の組織です。

 そして私達が此の世界にその存在を知らせていないのは、私達が管理する程に魔法文明のレベルが届いていないからです。

 尤も、実際は管理外ではなく統治外と言った方が正しいのでしょうが、語感的に管理外と呼称しているだけです。

 

 つまり、我々時空管理局は貴方が知らないだけで次元世界を管理しており、この管理外世界……第97管理外世界の地球も我々時空管理局の管理下と言うわけです。

 即ち、貴方の所属していないという主張は意味を成しません。

 よって抵抗する事無くご同行下さい>

「…………」

「おねがい!言うことをきいてっ!!

 お話すればあなたも分かってくれるとおもうの!!!」

「………………」

 

 すみませんご主人様。早速ですけど我慢の限界を超えちゃいました。

 

 地球を其処に住まう全ての者をひっくるめた上で植民地として見ているとしか解釈不可能な発言を向けられるのは我慢なりません。

 デバイスとかいう失笑物の魔導補助具を構えながら言うこと聞けとほざいた挙句、話せばこっちが恭順すると思われてるのはもっと我慢なりません。

 

 組織人の矜持?子供の我儘? はっ! 知ったことじゃありません。

 つい先程存在としての格の差の一端を示したというのに、それをもう忘れる様な愚鈍な輩共には魂に思い知らせて上げるとしましょう。決して敵わない格上の者という存在を。 

 

「高高星間移動を確立した程度で増長が過ぎますよ?

 並行世界(5次元)どころか時間(4次元)の領域にすら至っていない無知蒙昧が世界の管理者を気取るなど、分際を知り身の程を痴りなさい」

<貴方の言う5次元や4次元がどの様なモノかは知りませんが、仮に貴方が単独で次元世界間の転移を成せ、更に5次元や4次元の領域に至っているのなら尚のこと身柄を厳重に拘束させてもらいます。

 管理局に属していない者がその様な力を扱えるなど危険極まりませんからね>

「……………………」

 

 ご主人様。私、凄く頑張りましたよ?

 ですから、もうそろそろ、イイですよね?

 

<管理外世界の出身でデバイスも用いず未知の魔法体系を操り、更に闇の書を主から問題無く一時的に切り離し、しかもこの結界を維持しているだろう貴方は、管理局に来られればバラ色の人生は確約されています。

 闇の書との関係疑惑だけでなく、不敬罪や侮辱罪に公務執行妨害が積算されるでしょうが、貴方程のの魔導師なら保護観察下で短期間管理局へ奉仕するだけで直ぐにエリート街道を歩む事が出来ます。

 其の上管理外世界の地球と違って思う存分魔法を行使して平和に貢献することも出来、それに見合うだけの賞賛も受けられます。

 ですので、どうか貴方だけでなく先程の方にもご連絡し、管理局に投降して下さい。

 

 我々は貴方達が理性的な判断の下に誠意有る行動を示されれば決して無碍には扱わず、貴方達により良い未来を提供することを約束します>

「リンディさんの言うことをきいて!

 そうしないとあなたたちと戦わなきゃいけなくなっちゃうから、そしたらお話できなくなっちゃう!

 そんな悲しいのはいやだからおねがい、言うことをきいて!

 お話ならあとでたくさんできるから!」

「…………………………」

 

 ご主人様。私、ちょっとだけ、……ほんのちょっとだけ、怒りますね。

 

「身の程を痴りなさいと言った筈ですが、聞こえなかったのですか?」

 

 少なくても屑1と屑2は一遍死ね。

 …………用事が在る八神はやて達以外の周囲が巻き添え食おうと知りません。

 即死出来ない程度に圧力を解放しますから、苦しみに喘いで藻掻いて沈んで溺れ死ねばいいと思いますよ。

 

「今の汝等は、宛ら私から漏れ出る体温で焼死仕掛けている状態です。

 

 理解能いますか?

 意識を向けるだけで魂が加速度的に自壊する域の存在を?」

 

 うわ。もう死にそうとか、本当に屑ですね。

 と言うか、大河ーでもマジビビリする程度しか解放してないのに、もう死にそうとか屑どころか塵屑ですね。

 

「並行世界間の移動、完全な死者蘇生、時間旅行。何れも汝等が夢物語と断じる類ですが、私にとっては自らの理の内です。

 しかし、その程度は人の身でも到達可能な程度の域にすぎません」

「「   !?   !?!?!?」」

「「「<       >」」」

 

 茶髪ショタとさっきの黒ショタは喋れないだけで元気ですね。

 対して塵屑改め塵屑滓1と2と、後巻き添え食ったホムンクルス擬きのスク水と犬耳尻尾の女はもう直ぐ死にますね。如何でも構わないですけど。

 

「本来ならば神の怒りを落とし、汝等の縁者として増長甚だしい名の集まりに属す輩共を消し去るところなのですが、それは現時点で主様の御意向から逸脱が過ぎるので示威行為に留めるとします」

 

 取り合えずは空中戦艦からアルカンシェルとやらを私目掛けて発射させる……っと。

 次に炸裂したアルカンシェルが私以外に危害を齎さない様、私と一緒に結界で隔離……っと。

 

「「!?!?!?        !?             !?!?!?!?!?!?」」

 

 ツインショタの顔が中中に愉快ですね。

 まあ、地球人的には核爆発の直撃を受け続けて無傷って感じですから、顔芸に走るのも無理はないですね。

 

 っと、バルカンジュルリとやらの効果も終わりましたね。

 なら次は……もう面倒ですから纏めてやりましょう。

 

 先ずは駄目人間を増殖させそうなデバイスとか言うのと空中戦艦の機能休止。

 次にツインショタ以外の死んだ塵屑滓と其の他を空中戦艦に纏めて転移。

 最後に空中戦艦を時空管理局の首都とか言われているミッドチルダ近辺の海上数kmに転移。

 おまけで塵屑滓と其の他を蘇生。

 

 これで空中戦艦は船首から海底に突き刺さった愉快な格好になりますし、塵屑滓達は口元と下半身が愉快なっているという恥を生きた儘晒せるという大団円ですね。

 あ、後日塵屑滓1と2の今の状況を写真にして自宅に送ってやりましょう。受取人を苗字だけにして。

 

「事切れた者達は軍船(いくさぶね)へ、そして軍船は汝等がミッドチルダと呼ぶ場所の近海へ転移させました。

 事切れた者達の塵埃の命は蘇生させたので死人はいません」

 

 塵屑滓1と2の顔と下半身は社会人と言うか女として死んだ儘ですけどね。

 まあ、他の面面に関してはせめてもの情けで下半身の諸諸は処理してログは書き換えてやりましたけどね。

 

「「  !?     !!!          !!!」」

「但し、汝の術式を発動若しくは補佐する媒体だけは、私の意を不完全ながらも伝える為、機能へは干渉していません。

 因って汝等には我が意を伝える役を賜します。

 褒美として幾つか汝等の問いに答えますので、申してみなさい」

「「        !!!        !!!!!!」」

 

 元気そうだから喋れるかと思いましたけど、飛行術式と防護服みたいな術式と生命維持で精一杯みたいですね。

 まあ、茶髪ショタは術式を自力で維持している分黒ショタより霊的なレベルが高そうですから、術式維持を放棄すれば喋れるくらいは出来そうですね。

 とは言え、教えるのも面倒ですし気付く迄待つのはもっと面倒なんで、空間と世界の資源を無駄遣いしている2つを退場させたんで此の辺で怒りを抑えて封印を閉め直しますか。

 

「序に回復を施した。

 之で問題無く話せることでしょう」

「「!!!???」」

 

 ……矢鱈とシンクロしてて気味悪いですね。

 別にBLを否定はしませんけど、単なる性倒錯は見てて心がザラッとする感じがして嫌いなんですよね。

 

「「すぅ……はぁ……すぅぅ…………はぁぁ…………すぅぅぅ………………はぁぁぁ………………すぅぅぅぅ……………………はぁぁぁぁ…………すぅぅっ…………よしっ」」

「…………」

 

 落ち着くまで深呼吸するのは中中良い判断ですけど、本当に気味悪いシンクロ率ですね。

 阿吽の呼吸どころか同じ呼吸のツインショタって、はっきり言って気味悪いを通り越して気持ち悪いですね。

 特に当然の様に同じタイミングで目で会話して話す順番も決めるとか、最早気持ち悪いだけじゃなくてキモさも混じり始めましたよ。

 正直、男なら目で会話せずに背中で語る……って、どっちも背中で語ってたら背中合わせになりますし、預けた背中の呼吸で意思疎通したらBL要素が加速しますね。

 となると、やっぱり男同士は信じあって不言実行が一番ですね。しっくりきますし。

 まあ、どれであろうとさっきの塵屑滓2つに比べれば全然マシですけどね。

 

「御見苦しい様を晒してしまいすみませんでした。

 私は時空管理局本局 次元航行部隊 L級8番艦アースラ所属 クロノ・ハラオウン執務官と申します。

 失礼ですが御名前を――――――」

「此方の者が大変失礼を致しました。

 後で厳しく言い聞かせますので平に御容赦下さい」《君の話し方はなってない! 代わりに僕が話すから黙っててくれ!》

「――――――伺い…………」《分かった。 だけど最低限のことは訊いてくれよ?》

「…………」

 

 どうやら黒ショタは絶対的な格上というか目上の者と話したことは無さそうですね。

 とは言え、さっきの2つに比べれば誠意を感じるので余裕でスルー出来る範囲ですけどね。

 

「御初御目に掛かります。

 自分は時空管理局への民間協力者であるユーノ・スクライアと申します。

 此の度は貴女様への拝謁の栄に()くせ、光栄の窮みで御座います」

 

 神職の者じゃないですから可也変な言葉遣いですけど、本職じゃない事を考えれば十分に合格点ですね。

 確り畏敬の念も篭ってますし。

 

「しかし我等は無知故に貴女様の御偉業や御神名を存知ておりません。

 ですので、大変恐れ多いのですが、貴女様から御拝聴賜りたく存じます」

「私は無限宇宙を総該する全一と、太陽の化身と、万物の徳の現れ等と、崇め謳われる者。

 私はमहावैरोचन(大日)、天照、डऔकिनआ(荼枳尼)等と、幾つもの名を有す者。

 其其が私の表情であり、其其の表情に名が在ります。

 

 此の國で最も人間の口に上る私の名は天照。

 其の名の尊称は、天照大神(あまてらすおおみかみ)大日孁貴神(おおひるめのむちのかみ)天照皇大神(あまてらすすめおおかみ)皇大御神(すめおおみかみ)天照坐皇大御神(あまてらしますすめおおみかみ)です。

 言い難いならば大日の尊称である大日如来、若しくは尊称無しで呼ばれている荼枳尼や荼枳尼天と呼んで構いません」

 

 他に山程表情が在りますけど、私的に譲れないのは此の3つですかね。

 後、私的には肩肘張っていないダキニ天が一番なんですけどね。

 とは言え、〔大日如来→如来→魚雷→魚雷女〕、〔天照→別名アマテル→照る照る坊主→照る坊〕、〔ダキニ天→ダーキニー→伝承じゃ基本全裸→裸族〕、とか、アルクと遠野志貴とコハッキーの考えた渾名級にふざけてなければ如何呼んでも構わないんですけどね。

 …………思い出しただけでコハッキーへの怒りが蘇りますけど、万が一怒りが漏れて目の前の相手達を威圧してしまえば徒の八つ当たりという見っとも無さ過ぎる醜態を晒しますから、気合で平常心へ回帰しましょう。

 

「御拝聴に預かれ光栄の窮みで御座います。

 そして之より貴女様を、天照大神と御呼びさせて頂きます」

「…………」

 

 神の威厳を出す為に沈黙で話を進めるのを許すって、面倒で仕方ないですね。

 でもまぁ、此れもご主人様をギャップ萌えさせる為だと思えば全然平気ですけどね。

 

 …………尊大な態度の私に粛粛と奉仕するご主人様………………アリですね。

 いえ、そりゃ普段は精一杯誠心誠意真心籠めて御奉仕させて頂きたいですけど、1回くらいはそういうシチュエーションもアリだと思うんですよ。

 

「天照大神よ。私は先の二名が無礼窮まる振る舞いに御気分を著しく害されたのは卑小な身なれど理解しております。

 ですが、当初より御気分を害されていたことに関しては無知故に拝察が適いません。

 ですので、謝罪をさせて頂く為にも、何卒御教え願えないでしょうか?」

 

 子供ながらに訳も分からず謝らないのは良い気構えですね。

 それに、狙ってやったのかは微妙ですけど、事情を推察出来ないけれど関わってはいるという立場なのが絶妙ですね。

 

 現状知り得ている情報だけじゃ答えに至るのは極めて困難で、だけど関係者として事情を知って詫びれる位置に居るから尋ねる事が出来る。

 おまけに神というか人間よりも格上の存在に対する接し方を少なからず心得ていますから、此処に居た時空管理局とか言うのの関係者の中じゃあ、間違い無く一番私との会話に向いていますね。

 コレが資源リサイクルが出来るかも怪しい2つのどっちかと話してれば、今頃時空管理局を完全壊滅するか屈服させて顎で使うかのどっちかでしょうね。

 

 とは言え、今でもそうしたいところですが、面倒なのも事実。

 しかも、今殲滅か支配宣言をすれば明日のデートが潰れるのはほぼ確実。

 こんな何時でも如何とでも出来るのを片付ける為、ご主人様との初大人デートを潰すとか断じて御免です。

 

 大体明日だけじゃなくて、熱い夜を過ごした後の清清しい朝日の中でご主人様の寝顔を少し早く起きて眺め、目の覚めたご主人様と触れ合う程度にイチャイチャしてマッタリと朝を満喫。

 そして朝の時間を満喫したら一緒にお風呂でイチャイチャニチョグチョの洗いっこをして、その後はホテルをチェックアウト。

 それから直ぐに不動産屋で静かな所の家を買って面倒な手続きをしたら、次は家財道具や生活必需品や食料とかを大量購入して家に運んでもらう。

 そして朝食を兼ねた遅めの昼食をお洒落なお店で食べて、その後は新居で陣地構築を含む整理開始。

 夜も深けた頃に一段落するだろうからその時中断して、手作り料理を食べてもらった後は又一緒にお風呂できゃっきゃウフフ♥

 そして整理中だからソファで一緒に抱き合って眠るっと★

 明くる日は整理を完遂させて念願の新婚生活に突入♪

 お仕事はご主人様と一緒にデイトレーダーとか内職でもして出来るだけ一緒に居て、永遠に幸せを堪能し続けるという夢が私には在ります。

 

 なので、当然その幸せな時間に水を差す無粋な面倒事は回避しなければなりませんから、甘さからじゃなくて理由が在って武力行使一歩手前の示威行為をしたと理解させた方がいいですね。

 少なくても、夢の結婚生活が軌道に乗る迄にちょっかいを出されるのは真っ平ですからね。

 

「先程転移させた軍船は、積まれていた絡繰兵器を其処の者目掛けて撃ち放つ算段でした。

 吹聴している通りの性能ならば、大地は地球が溶岩を蓄えている深さ迄抉られ、地球誕生時に迫る地動と噴火が此の近辺に起こり、此の星の半分は地動と噴火の噴煙で生物の存在を拒絶する環境へと変貌します。

 更に生き残った人間が無事な地を求めて争いを引き起こし、未知の技術が炸裂した此の國は非難と略奪に晒されての滅亡を皮切りに此の星全ての生物を巻き込んだ争いへと発展し、此の星を死の星へと変えるのは自明の理。

 如何に其の事態を回避する事が可能と雖も、星と人間の双方を破滅に追い遣る行動を殊更放置したりなどしません。

 

 ですが、主様が人間の歴史は人間が紡ぐべきと御考えになられており、明確に敵対されない限り殲滅等に関しては控える様に仰せ付かっています。

 ですので、私は一度だけ示威行為と共に警告することにしました。

 此の星を汝らの都合で荒らし滅ぼそうとするならば、次は警告では済まないと」

「「………………」」

「私達は人間の発展に貢献するという考え等持ち合わせておらず、私達が人間の為に動く時は人間が滅びに瀕している時だけです。

 そしてそれは文明の衰滅と同義ではありません。

 此の星には現在十桁の人間が居ますが、仮に残りが七桁を下回ったとしても滅びはしませんので、私達が動くことはありません。

 

 ですが、汝等が私達に干渉しようと此の星を荒らすならば、主様の考えにも触れますので私達は当然動きます。

 そして其の時は少なくとも十一桁の人間を滅ぼすでしょう。

 当然一度は警告を発していますので、対象を区別したりなどせずに汝らの住まう星星に神の怒りを落とします」

「「……………………」」

 

 12~13桁程度は滅ぼすつもりですが、多分此方が突如何の脈絡無く且つ事前通告無しで一方的に攻撃してきたとかでっち上げて敵愾心を煽りに煽って大人数で三度干渉しそうですが、其の時は面倒ですけど干渉の意欲が消え去る迄時空管理局とかいう輩達のトップから順に滅ぼすとしましょう。

 …………本当は滅尽滅相したいところなんですけど、それだとアラヤとの全面戦争に突入しますから、滅尽滅相したい時は自滅する様に知識や技術をコントロールして放出するしかないですね。

 面倒だからするつもり在りませんけど。

 

「私が汝等を介して伝えることはそれだけです」

「御言葉確と賜りました。

 必ずや不足無く伝えてみせます。

 

 それと、貴女様の御用が終わったにも拘らず留まり続けるのは無礼と百も承知ですが、私達は貴女様の左方に控えている方達に用が在るのですが、貴女様の御用が終わった後に私達が会うことは可能で御座いましょうか?」

「私の用が済んだ後に此の者達が如何するかは制限しません。

 又、汝等が己が法を掲げて連行しようと、それが先程警告した内容に抵触せぬ限り私は干渉するつもりは現在在りません。

 

 此の者達に用向きが在るならば、其の場で待っていて構いません」

「在り難き御言葉を賜れ感謝の窮みで御座います。

 それでは貴女様の御話を盗み聞く事がない位置迄下がって待たせて頂きます」《クロノ、急いで右手側に100~200m程離れるよ。あ、喋らなくていいけど絶対に深く御辞儀してから移動してくれよ?》

「……」《分かった》

 

 最後の質問は減点ですけど、それでもギリギリ合格点ですかね。

 差し詰め畏敬と義理の板挟みって感じでしたし、神職の者じゃないなら目溢ししても構わないってレベルでしたし。

 

 さて、残るは八神はやてと愉快な仲間達ですね。

 私的には暴走した愉快な仲間達が襲い掛かってきてくれれば、纏めて全員威圧した挙句アースラだかヒーコラだかに転移させて時間短縮と厄介事の種を始末出来たんですけど、一声も掛けずに沈黙し続けていたから叶いませんでしたね。

 

 正直、将来世界を背負うツンデレとそのお供に成るだろうマッドヤンデレの二人の願いを叶えるにしても、此の上で未だ何かするのは大盤振る舞いが過ぎると思うんですけどね。

 それに下手したら返答次第でご主人様に余計な女が集る事態に成りそうですし。

 

 アルクどころか、大河ーやコハッキーや家庭教師其の1や錬金術師や鬼妹やカレーやロリヤスフィールの誰かに対しても一切目移りせず、一途に私を想ってくれ続けたのは嬉しいですし誇らしいですしご主人様の愛を疑ったりはしませんけど、やっぱりご主人様の周りに木端女が居るのは良い気分はしません。

 とは言えご主人様達ての頼みを無碍にするのは気が引けますから、やっぱり成るように任せるしかないでしょうねぇ……。

 

 

 

Side Out:玉藻の前

 

 

 







 【ダキニ天のサンスクリット語表記】

 間違っています。
 アレだと読み方が、〔ダアーキニイー〕、になります(〔ダー〕と〔ニー〕が打てなかったので、〔アー〕と〔イー〕で代用しました)。
 ですので、アレで憶えないで下さい。お願いします。


   ~~~~~~~~~~



 【次元世界云云に関して】

 少なくても此のSSでは、単一宇宙内の人間が活動(≠生活)可能なを惑星を指して、時空管理局が次元世界と呼称しているとしています。
 一応根拠ですが、どれだけ闇の書が暴走しても一つの宇宙を滅ぼすのは不可能と思われるからです。時間的にも破壊能力的にも。
 夜天の魔導書(闇の書)やジェルシードが原因で地球の文明がどころか地球そのものが消し飛んでも、宇宙全体から見れば太陽サイズの塊から水素原子が一つ消えた程度ですから、如何考えても宇宙が崩壊するには無理があるとしか思えません。人間で言えば素粒子が一つ消滅した程度ですし。

 他にも幾つも理由は在りますが、面倒ですのでスッパリ省かせていただきます(笑)。


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 【原作キャラ達って神秘云云抜きでどれくらい強いのか?】

 飽く迄私見ですが、原作で9歳時(此のSSの現在話)では、
・なのは :必殺技が型月で言うC~B-ランク程度で、雀程度の速さで空を飛び回れる、戦闘と戦闘技術のど素人。
・フェイト:必殺技がC~C+ランク程度で、基本が成っていない小手先の万能型で、戦闘ど素人。
・はやて :直前迄半身不随の衰弱した一般人の為、徒の魔力炉状態。但し最大出力はA+以上。
といった感じです。
 嫌な書き方をすればなのはが神様転生で特典貰って調子乗ってる奴で、フェイトが当たらなければ如何とでもないとちょっと速い速度で動きながら言うど素人で、はやてが人間魔力タンクです。

 …………歴戦の強者が子供のゴリ押しで拮抗若しくは不利に陥るという、スペック万歳の悲しい世界ですから仕方ないですが、恐らく三ヒロインは総じて戦闘の技術や思考が低過ぎると思われます。
 フェイトとはやては将来執務官と指揮官に成り、余り其れ等を磨く必要が無いので仕方ないと言えば仕方ないですが、なのはは戦技教導官にも拘らず…………。

 まあ、身も蓋もない言い方をするなら、空で可愛い女性がピカピカ光線放てば様になるアニメに戦闘技術や戦闘思考は不要とカットされただけなんでしょうけど、カットし過ぎと自分は思います。
 お蔭で自分の好きなキャラもゴリ押しか猪突猛進な部類になってしまい、SSでは高頻度で雑魚扱いされて悲しいです。
 …………厨二病が極まれば技術どころか数すら纏めて粉砕出来る神様シリーズに比べればまだ救いはありますけどね(苦笑)。



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