カッコ好いかもしれない雁夜おじさん   作:駆け出し始め

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廿壹続・カッコ好いかもしれない雁夜おじさん

 

 

 

 極東の島国と揶揄され、魔術協会や聖堂教会から長らく軽く見られていた地の端近くに在る絶海の孤島という、誰にも見向きされないだろう場所で、最強の魔法使いと最高位の英雄が対峙していた。

 何も言わずに島に上陸し、何も言わずに島の中央に移動し、何も言わずに対峙した両者だったが、唐突にギルガメッシュが安堵とも取れる声で雁夜に話し掛ける。

 

「どうやら漫然と日々を過ごしていたわけではないようだな」

「穏やかな日日を望んだんだが、半分以上はそうとは言えない日日になったがな」

 

 苦笑とも挑発とも付かない顔でそういうギルガメッシュに対し、溜息を吐く様に自嘲とも挑発とも付かない顔で雁夜は返す。

 そして更に続けて雁夜は話す。

 

「まあ、穏やかでない日日も穏やかな日日も含め、俺は精一杯生きてきたからな。不満や後悔も含め、素晴らしい日日だったと断言出来るがな」

「生に真摯であるその在り方。騎士王と名乗るあの小娘には、さぞ眩しく映ったであろうな」

「騎士王……?」

 

 その様に呼ばれる者に憶えの無い雁夜は首を傾げる。

 するとギルガメッシュは直ぐに注釈を入れる。

 

「セイバーのことだ」

「……ああ。他人の人生を勝手にリセットしろとか地雷を踏み貫いてくれた奴か」

「なんだ? あんな小娘の言うことで腹を立てるとは、存外に大人気無いな?」

 

 小馬鹿にした笑みで雁夜にそう言うギルガメッシュ。

 対して雁夜は苦笑しながら返す。

 

「まあ、大人なら笑って流すところなんだろうが、自分だけじゃなくて地球上の全ての人間を巻き込んでの遣り直しを願おうとしていたからな。無自覚に。

 しかも見た目は少女だが中身は俺より場数も年も食ってる筈なのに、どういうわけか精神が全く成熟しているように思えない。

 おまけに意固地なくせに矢鱈と土台からぐら付く精神を見てると、目の前の嫌なことから取り合えず逃げ続ける子供にしか見えないからな。

 どうしても機嫌が悪くなる」

「破滅を諦めきれず、無様に足掻く様こそが愛いのではないか。

 ヒトの領分を超えた禁忌たる悲願へ愚かにも手を伸ばし続けるという、破滅へと歩む眩しきも儚き者。

 あれ程稀有な者はそうは居らんぞ?」

 

 本人が居ないからと、言いたい放題言う両者。

 尤も、ギルガメッシュはセイバーが居ても殆ど発言は変えぬだろうし、雁夜も歯に衣着せるだけで内容は殆ど変わらないだろう為、何方も陰口という認識が零の儘更に話は進む。

 

「稀有なのは認めるが、稀有だからといって俺にとって価値があるわけじゃないからな。

 後、似合いだとは思うが、娶ったら直ぐに別人と思える程に精神崩壊しそうな気がするぞ?」

「ならばこそ我の好きに染め上げられるではないか。

 我のみを求めて我のみの色で染まる。間違いない幸せであろう」

「他の奴は判らんが、あいつはそれくらい舵取りしてくれる奴と一緒の方が良さそうだよな。

 独りで生きると破滅するタイプの最筆頭っぽそうだし」

「ほぅ? 嫌っている割には良く理解しているではないか」

 

 本人が居れば憤慨する程に好き勝手言い合う雁夜とギルガメッシュ。

 そして会話が一段落したと見、雁夜が別の話を切り出す。

 

「本題に入るが、此の島から半径10kmは海域封鎖した上、玉藻が厳重に結界で覆っているので、仮に此の島が消滅しようが、勝負の後は問題無く復元される。

 結界と結界外の対処を任せている玉藻達には、何方が死ぬとしても勝負が付く迄手を出さないことを納得させてある。

 ……此れで後のことを考える必要も無ければ邪魔が入る心配もない」

「我達の勝負の場にしては華に欠けるが、醜悪な俗世から切り離された自然の在り様は悪くないな」

 

 そう言って周囲を見回すギルガメッシュ。

 水平線の果て迄人の気配は微塵も無く、まるで世界の全てが此の小さな島だけではないかと錯覚させる程、此の島は外界と隔絶された感がが在った。

 

 暫し周囲の景色を眺めていたギルガメッシュだったが、十分堪能したのか表情を真剣なものにしつつ声を発す。

 

「さて、話を続けるのもそれはそれで中々に楽しめるが、そろそろ始めるとするか」

 

 そう言うと鍵剣を使い、いきなり乖離剣と天の鎖と創世の宝珠を取り出すギルガメッシュ。

 対して雁夜は背に八本の蜘蛛の脚を瞬間的に展開し、何時かの様に下半身にだけ黄金の鎧を纏うギルガメッシュを見ながら言葉を返す。

 

「そうだな。

 勝ち負けに興味は無いが、俺が去った後に囁かれる陰口を桜ちゃんが聞いても胸を張って俺のことを誇れる様に、そして前より俺に寄せる想いを深めた玉藻に応える為に、……何より、俺が二人に胸を張る為にも、………………あの時の続きを此処で終わらせる」

 

 雁夜のその言葉にギルガメッシュは不敵な笑みを浮かべ、周囲一面に大量の宝物を降らせて地面に突き立たせながら言葉を返す。

 

「我もあの時の結果は満足しているが、あれで終わらせるつもりは微塵も無いな」

 

 ギルガメッシュが左右に其其天の鎖と乖離剣を握り、そして創生の宝珠を静かに自身の周囲を衛星の様に旋回させる。

 それと同時に雁夜達の居る島の全てが、今迄のものとよく似た別の何かに摩り替わった。

 それを島の破壊に備えた準備なのだろうと判断したギルガメッシュは、何時でも始められると視線で雁夜に告げ、雁夜も視線で何時でも始められると返す。

 

 暫し両者は黙って見詰め合っていたが、示し合わせたかの様にほぼ同時に一度軽く目を瞑った後、又もや示し合わせた様に目を見開いた直後――――――

 

「「いくぞ!!!」」

 

――――――と同時に声を発した。

 

 瞬間、雁夜は音に迫る速度でギルガメッシュへと肉薄しつつ、蜘蛛の脚を音の数十倍の速さで三本伸ばし、唐竹と刺突と左薙をギルガメッシュへと放った。

 対してギルガメッシュは宝珠を蜘蛛の脚に負けぬ速度で雁夜へと向かわせつつ、聖剣の解放に匹敵する威力の風を互いの間を遮る面の様に放たせた。

 次の瞬間、三本の蜘蛛の脚はギルガメッシュから僅かに逸れた所を其其攻撃し、宝珠は突進を中断してその場に腰を落として雁夜の右拳で殴られ、突撃した時を超える速度でギルガメッシュの顔面へと向かった。

 が、ギルガメッシュは天の鎖で難無く受け止めた。

 

 まるで挨拶代わりの様に、先の聖杯戦争に参加したサーヴァント達ならば容易く敗退しただろう一撃を放つ雁夜とギルガメッシュ。

 実際両者とも此の程度で相手が傷を負うとは思っていなかったらしく、此処からが本番だとばかりに先を超える攻撃を始める。

 

 岩石すら瞬間蒸発する熱気、物質が崩壊する冷気、鉄すら拉げる重力、気体の更に先へと変化する烈風、光と爆音だけで人すら殺せる万雷、在りえるが存在しない力を具現化することも、在りえないが存在する力を具現化することも、全て魔法の域で発現可能にも拘らず、雁夜は愚直に八本の蜘蛛の脚のみで戦うことにした。

 それは自身の魔法に匹敵する神秘など滅多に存在しない以上、余計な小細工をせずに圧倒的神秘で以って相手の干渉を蹴散らす方が遙かに効率が良いと理解しているからであり、変化を付けるならば単純に無を否定するよりも上の神秘を再現する時だけで十分だと雁夜は判断したからであった。

 そして雁夜のその判断は正しく、無という絶対を否定する可能性の物質から一般常識で辛うじて理解出来る要素を抽出すると、如何しても規格外の神秘から凄まじい神秘に迄格が下がってしまうと、桜の護身具を作る時に雁夜は散散思い知ったのだった。

 故、自身に匹敵する神秘を持つ者と相対した時、劣化応用を行えば自身の攻撃の格を圧倒的に下げるという愚挙にしかならない為、余程特殊な状況で無い限りは応用は昇華応用以外行わないつもりだった。

 

 対してギルガメッシュは即座に天の鎖を伸張させ、地に突き立っている宝物を絡め取った。

 更に封じられると思っていた宝物庫への干渉が封じられていなかった為、罠なら食い破るという自負と挑戦心の下、展開出来る限界迄門を展開して魔弾を装填した。

 尤も、どれだけ罠を張ろうと魔弾を封印する方が遙かに益になり、仮に罠が張られていても油断さえしなければ魔弾が封じられた場合よりも状況が悪化することは無いだろう為、罠がないのはほぼ確定だとギルガメッシュは考えた。

 大方、雁夜も自分が不利になるかもしれないとしても、自負と挑戦心の下に相手の全てを超えて見せると決めたのだろうとギルガメッシュは判断した。

 それを証明するかの如く雁夜は愚直に直進して迫っており、ギルガメッシュを見据える目が、[全力を引き出させた上で勝つ]、と言わんばかりであった。

 そしてそれ対しギルガメッシュは、[ならば受け止めきってみせろ]、と目で返した。

 

 結果、茨の鞭の如き超一級の原点を絡め取った鎖の攻撃と、発射点を変え続ける宝珠から放たれる烈風だけでなく、1千を超える魔弾が同時に雁夜に襲い掛かる。

 しかも魔弾は一つの砲門から秒間2~3回発射されるだけでなく、幾つかは発射間隔を大幅に減らして弾速上昇させていた。

 しかし、茨の鞭の如き攻撃と移動しながら放たれる烈風に1千を超える魔弾が追加されてしまうと、如何しても攻撃方向は魔弾と並行するように攻撃を放たなければ圧倒的密度の魔弾自体がそれ以外の攻撃を阻害してしまう為、攻撃方向は前後のみになってしまうので予測は極めて容易になってしまった。

 更に、鎖と烈風の速度は基本的に弾速を超えており、魔弾に並行させる軌道で攻撃を行っても前方の魔弾に衝突して威力が減少してしまう為、雁夜にとって捌くのは決して難しいものではなかった。

 

 だが、そんなことは百も承知しているギルガメッシュは、魔弾を放ち続ける門をその場に残して後方に跳躍した。

 そして雁夜を足止めしている間に乖離剣に魔力を籠め始めた。

 

「さあ、どうやって切り抜けるが見せてみろ!」

 

 ギルガメッシュが高らかにそう言うと、乖離剣はギルガメッシュの魔力を貪って赤い暴風を生み出し始めた。

 そして生み出された赤い暴風は魔弾を弾きかねない猛威を振るい始めたが、宝珠が魔弾を発射する門の傍で烈風の壁を生み出し、赤い暴風から魔弾を守っていた。

 因って、乖離剣は弾幕の密度を減らす事無く出力を高めていく。

 が、宝珠が攻撃から外れたと判断した雁夜は蜘蛛の脚を2本伸張させ、魔弾を放ち続ける門を下から引っ繰り返した。

 

 通常はあれ程の弾幕の迎撃や防御手段として、神秘が圧倒的に低下してしまう空間干渉をするだけの特性を帯びさせた物質に雁夜は変化させないが、門を縦方向に180度半回転させる為ならば、攻防一体の手段として活用することに抵抗も問題も無かった。

 そして縦方向に半回転した門は宝珠が生み出す烈風と向かい合う容になり、赤い暴風から自分達を護っている烈風へと門から魔弾が次から次へと撃ち出された。

 だが、予め乖離剣が放たれる直前迄魔弾を赤い暴風から守れるだけの出力で展開されていた烈風は、凄まじい勢いで放たれる魔弾と赤い暴風を受けて尚破られることは無かった

 が――――――

 

「そっちこそな!」

 

――――――雁夜の叫びとほぼ同時に蜘蛛の脚が更に4本伸張した。

 1本は弓なりに門を超えて超えて宝珠を弾き飛ばし、もう3本は門へと突き刺さった。

 そして、あろうことか門を音を超えた速度でギルガメッシュの方へと押し出した。

 結果、完全に意表を突かれた攻撃の為、ギルガメッシュは門を消すかどうかの判断を一瞬躊躇った。

 

 門を消さずに攻撃を中断して防御用の宝物を取り出すか、門を消して素早く雁夜の迎撃に出るかがギルガメッシュの脳裏を過ぎった選択だった。

 だが、門を消さずに防御用の宝物を取り出したところで、防御用の宝物の固定が生半可ならばそれが門と一緒に自身に襲い掛かり、門を消せば防御用宝物無しで雁夜を迎え撃つことになるという、何方も不安が残る選択であった。

 更に、何方を選択しても雁夜が門の後ろに存在しているかは定かでなく、雁夜が門の後ろ側に居なければ、門を消さなかった場合は死角を大幅に残している状態になり、門を消していれば防御が手薄になるという、此の場合も何方を選択しても不安が残るものであった。

 しかも、場所が特定出来ていなければ鎖による攻撃は勘に依る一点集中攻撃か広範囲無差別攻撃か魔弾の迎撃かの三択しかなく、一点集中攻撃は外れる公算が高く、広範囲無差別攻撃は効果を期待出来ず、魔弾の迎撃に当たれば雁夜に時間を与えて大技を許してしまうという、何れを選択しても危険になる選択肢であった。

 その上、宝珠も鎖と同じく、勘頼みの一点集中攻撃か、効果が期待できない広範囲無差別攻撃か、大技の時間を許す魔弾の迎撃かの三択しかなく、他の選択と同じく何れを選択しても危険になる選択肢であった。

 そして、乖離剣を前方に構えて赤い暴風で魔弾を迎撃すれば前方以外は隙だらけになり、防御用宝物を弾き飛ばさない為に乖離剣を停止させても隙だらけになり、雁夜の接近に備えた構えをすれば魔弾を完全には赤い暴風で弾けないので鎖か宝珠を使用しなければならず、今迄と同じくどれを選択しても危険になる選択肢であった。

 それだけでなく、門の方向転換や魔弾を被弾する前に回収するという、逆転の一手に見えてまず間に合わない甘い罠も在り、雁夜の行動は非常に性質の悪い一手となっており、これらを一瞬の内に判断しなければならないというのがそれに拍車を掛けていた。

 

 ギルガメッシュは自身の身体と乖離剣と天の鎖と創世の宝珠と魔弾の射出という5つもの異なる攻防手段を有する為、緊急時には其其の選択が他にどの様な影響を及ぼすのかも考慮し、更に比較した上で取捨選択を瞬時に行う必要が在った。

 しかも面倒だからと迂闊に互いに及ぼす影響を考慮対象外とすると、足を引っ張るどころか自滅してしまう可能性も高い為、目の前に脅威が迫っているからと迂闊に決断することは出来なかった。

 そしてギルガメッシュは雁夜が魔弾の射出を封じていなかった狙いが魔弾の反転を狙っていたからではなく、多数の手段を持つ故の演算処理速度超過を狙っていたと気付いた。

 だが、それに気付いたからといって目の前の状況が好転する筈も無く、魔弾は直ぐにでもギルガメッシュを貫かん距離に在った。

 

 しかし、瞬き一つする間に串刺しになりかねない程に迫った魔弾を前にしながらもギルガメッシュは焦った様子も無く、全力で後方へと跳躍した。

 が、それだけで魔弾と距離を離せる程に魔弾の速度が遅いものでないのはギルガメッシュも十分承知している為、弾き飛ばされた宝珠を手元に呼び戻す為の時間を鎖で魔弾を辛うじて弾きながら稼ぐ。

 同時に、相手に利用されるだけでなく思考に枷を嵌めて咄嗟の判断を鈍らせる門の展開を解除した。

 更にギルガメッシュは後方への跳躍中に180度体勢を入れ替え、今迄の方向へ背を向ける様に着地した瞬間、全力で自身の元に戻ってくる宝珠へと疾走した。

 勿論背後から迫る魔弾は鎖と赤い暴風で弾いているがそれも全ては捌けていないのだが、大幅に数を減らされた魔弾ならばギルガメッシュは持ち前の研ぎ澄まされた五感と第六感を駆使して素手で払い、背後の魔弾を捌きながら宝珠と合流を果たす。

 

 宝珠と合流を果たしたギルガメッシュは即座に宝珠を中心に円盤状に風を展開させ、到達を遅らせるどころか鎖と赤い暴風で弾くことも出来なくなり始めた魔弾を防ぐ。

 その直後、ギルガメッシュは素早く再び半回転し、更に自身の後方へ鎖を迎撃目的ではなく探知目的で張り巡らせつつ、取り出しや使用に時間の掛かる宝物に因る援護をを行わず、自力で放てる限界迄急いで乖離剣の出力を上げる。

 そして、刹那の間に晴れた魔弾の嵐の向こう側で、外に魔力を漏らす事無く内側に魔力を籠め続けていた雁夜目掛け――――――

 

天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)!」

 

――――――自力で放てる全力で以って地獄の風を解き放った。

 だが、最強の聖剣を鼻で嗤える出力の地獄の風は――――――

 

右四脚の払い(右目の禊)!」

 

――――――穢れを祓う創世の風を纏った蜘蛛の脚の4本で払い散らされた。

 更にその直後、宝珠と鎖目掛け――――――

 

左四脚の払い(左目の禊)!」

 

――――――再び穢れを祓う創世の風を纏った蜘蛛の脚の4本が振るわれた。

 結果、鎖は核であろう両端を残して殆どが弾け散り、宝珠は自動で纏ったであろう防御の風の為無傷であったが約10km程先の海底迄弾き飛ばされた。

 

 鏖殺の一撃を瞬時に相殺され、その一瞬後には防御と回避手段を一時的にしろ瞬時に封じられ、門は視界確保と演算処理速度上昇の為に閉じており、可也無防備な状態へとギルガメッシュはなった。

 そして雁夜は此の好機を逃さぬ様に遷音速 の踏み込みでギルガメッシュへと肉薄し、渾身の左正拳逆突きをギルガメッシュの水月付近に放つ。

 が、直撃する前にギルガメッシュは拳の軌道に乖離剣を割り込ませた。

 しかし回転が殆ど停止している乖離剣で雁夜の拳を弾ける筈もなく容易く押されるが、ギルガメッシュは乖離剣が自分の胸に付く前に後方へと跳躍を開始し、雁夜の拳ごと乖離剣が胸に付く時には既にギルガメッシュの足は地を離れていた。

 結果、ギルガメッシュは乖離剣を盾にした為雁夜の拳で胸に孔を穿たれることなく、胸骨を亀裂骨折させられながら殴り飛ばされるだけで済んだ。

 だが、まるで逃さないとばかりに先に引き戻した右の蜘蛛の脚の上2本を使い、伸張し始めた鎖をある程度延ばした蜘蛛の脚の先端を刃状にして斬り刻み、ギルガメッシュの傍へ戻ろうとしている宝珠は極超音速で蜘蛛の脚を伸張させて叩き付け、今度は海底数百メートルに減り込ませた。

 そしてそれを見たギルガメッシュはそれだけでは終わらず更なる追撃が来ると判断し、自身の前に門を多重展開しながら防具を具現化させようとする。

 

 当然ギルガメッシュは防具の具現化が間に合う筈が無いのは百も承知しているが、門自体とその奥の防具を幾つも重ねて前面に配置することで盾代わりとした。

 それに一瞬遅れ――――――

 

下四脚の払い(御鼻の禊)!>

 

――――――常人では聞き取れない速さでの掛け声と共に、穢れを祓う創世の風を纏った4本の蜘蛛の脚が交差する腕の様な容で門とその奥の防具を斬り裂きながらギルガメッシュを襲う。

 最強の聖剣の一撃すら防げる盾も混じっていたが容易く3枚も切り裂かれた。

 更に4枚目も切り裂いたものの、5枚目は完全には切り裂けずにその儘ギルガメッシュの方に押し遣り始めた。

 そして6枚目以降の盾は門ごと纏めて押し遣ることになったのでギルガメッシュへ襲い掛かる蜘蛛の脚の速度は落ち、押し遣る最中に7枚目迄切り裂いたものの13枚目を押し遣れず、遂に蜘蛛の脚は停止した。

 が、次の瞬間には交差していた蜘蛛の脚の先端が花開く様に弾けた。

 瞬間、残り6枚を一気に切り裂いた4本の蜘蛛の脚がギルガメッシュに襲い掛かる。

 しかし、減速して一瞬とは雖も停止しさせて時間を稼げた為、ギルガメッシュは6枚も盾を切り裂いて威力が大幅に減衰した蜘蛛の脚を弾ける程度には乖離剣を起動させることが出来、拍子を見誤らずに一度逆風に乖離剣を振るって蜘蛛の脚を全て弾いた。

 尤も、最速で一定出力にする為に消耗率を完全度外視したので、一瞬だけとはいえ自身の限界出力を超えて乖離剣に魔力を流し込んだことに因り、ギルガメッシュは少なからず消耗することになった。

 とは言え、ギルガメッシュが門の一部と宝物の破壊と少なくない消耗だけで先の状態を切り抜けられたのは、此れより上を望めない程の出来と言えた。

 

 辛うじて雁夜の怒涛の反撃をギルガメッシュは捌ききり、此れで仕切り直しになるかと思われた。

 だが、仕切り直しにはまだ早いとばかりに雁夜は再びギルガメッシュへと肉薄し、左の上から2番目の蜘蛛の脚で袈裟に斬り掛かる。

 が、それをギルガメッシュは左斬り上げ気味に乖離剣を振るって容易く弾く。

 しかし右手に持った乖離剣を振り上げた為に出来たがら空きの右脇腹へ、雁夜は更に半歩踏み込みながら左フックを斜め上から放つが、それに対してギルガメッシュは左掌底を放って雁夜の左拳を防ぐ。

 尤も、雁夜とギルガメッシュの筋力は倍以上離れているので手加減されなければ受け止められないのだが、ギルガメッシュは雁夜の拳を自分の背の方に弾いてなんとか捌く。

 

 水平や下方向からの攻撃ならば跳躍して威力を逃せるが、上方向からの攻撃は流石に場所や体勢や時間的に出来ぬので、ギルガメッシュは止む無く左手も使って雁夜の攻撃を捌いた為、一時的に両腕が技後硬直状態に陥り、胸元から顔面がら空きになった。

 そしてがら空きの顎目掛けて雁夜はアッパーを放とうとするが、ギルガメッシュは膝蹴りを雁夜の腹に放つことでアッパーを放とうとしていた右腕を防御に充てさせて雁夜の攻撃を防ぐ。

 しかし、まだだと言わんばかりに雁夜は先程門や盾を斬り裂いた後に乖離剣で弾かれた蜘蛛の脚四本を、弾かれた勢いを利用した円運動で以ってギルガメッシュへと攻撃を放つ。

 宛ら×という記号を描く様に迫る蜘蛛の脚だったが、ギルガメッシュは2本は途中で他の蜘蛛の脚に激突して停止停止乃至軌道が逸れると判断したが、即座にその考えを破棄して4本全てを迎撃するように意識を切り替えた。

 直後、他の蜘蛛の脚と激突する筈だった2本の蜘蛛の脚は、まるで其処に何も無い様に蜘蛛の脚を透過した。

 だが、寸でのところでそれに気付いたギルガメッシュは片足のみで何とか後方に跳躍して雁夜と距離を取り、先程よりも赤い暴風を撒き散らしている乖離剣を右回りの弧を描く様に振るって左上と右上と右下の3方向から襲い掛かる蜘蛛の脚を弾き、左下の蜘蛛の脚は鎖を巻き付けた左手で弾いた。

 鮮やかなギルガメッシュの迎撃を見た雁夜は、状況が拮抗状態になったと判断した。

 

 ギルガメッシュの右手で力強く起動している乖離剣は一薙ぎで蜘蛛の脚を3本は弾け、ギルガメッシュの元に戻るのではなく雁夜の邪魔をする様に動き出した宝珠は蜘蛛の脚2本を抑え、鎖はギルガメッシュの左腕を手甲の様に覆いながらも伸張し続けることで蜘蛛の脚1本を釘付けにし、右腕を除くギルガメッシュの身体能力と戦闘技能や技術で蜘蛛の脚1本と雁夜の猛攻を捌ける為、状況は拮抗していると言えた。

 尤も、雁夜は蜘蛛の脚の残り1本と特攻魔術を残しているが、それはギルガメッシュの切札や魔弾に対する備えであるのでそう簡単に使用するわけにもいかず、ギルガメッシュも強引に門を展開したり何かしらの切札を切ろうものなら後の先を取られて敗北しかねないと解っている為、何方も思い切った行動に出れなかった。

 少なくとも、絶殺を前提にした殺し合いならば余力が有る内に博打は張ることはあるかもしれないが、互いに相手を超えんとする勝負で運頼みの要素が強い博打を序盤の内に張る気は双方無かった。

 因って、此の辺りが仕切り直し時だと判断した双方は後方に跳躍し、距離を取った。

 

 20m弱の距離を取り、雁夜は全ての蜘蛛の脚を引き戻して臨戦態勢を解き、ギルガメッシュは宝珠を傍に戻し且つある程度鎖を伸張させた後に乖離剣を停止させて臨戦態勢を解いた。

 暫し無言で互いを見詰めていた両者だったが、ギルガメッシュが愉快気に雁夜へ声を掛ける。

 

「いや、驚いたぞ。

 まさか我が宝物の弾幕をあの様な手段で対処するとはな」

 

 賞賛ではなく感嘆が籠められたギルガメッシュの言葉に対し、雁夜は苦笑混じりの声を返す。

 

「驚いたの俺の方だ。

 まさかあれだけの攻勢を掛けても捌かれるなんてな」

 

 雁夜のその言葉を聞き、ギルガメッシュは不敵な笑みを浮かべながら言葉を返す。

 

「おまえ自身の性能は確かに我よりも遙かに優れているだろうし、機転や判断力は我と同等か超えているやもしれん。

 だがな、経験や知識や戦闘技術や財に関しては我が遙かに優れている」

「だろうな。俺の戦い方は圧倒的性能任せの力押しだからな。

 打ち合えなくても逸らせるだけの性能を相手が保有していたら途端に鍍金が剥がれるからな」

 

 苦笑混じりにそう返す雁夜。

 だが、ギルガメッシュはそんな雁夜の発言を感心した表情で聞きながら言葉を返す。

 

「小手先の技法に走らず、己の性能を引き出すことに終始したのは間違い無く正解だぞ。

 以前の様に1本しか自在に振るえぬ状態でどれだけ技法を習得しようが、以前よりも圧倒的な神秘を纏って8本自在に動かす今の状態には遠く及ばん。

 小賢しさを身に付けた程度では我が至極の3宝の前に空しく散るだけだからな」

「ああ。そう思ったから技法ではなく性能の上昇や引き出し方に終始した。

 まあ、俺の基本性能的に剣術とかの相手になる奴がいなかったってのもあるけどな」

「だろうな。仮に騎士王に師事したところで、お前がある程度力を籠めて素振りをすれば目で追いきれずに指導自体が成立たんだろうからな。

 かといってお前の伴侶はお前に輪を掛けて性能や異能で相手を圧倒する類だからな。

 どちらにしろ独力で道無き道を歩むしかないならば、先ずは自身の扱い方を優先するのは当然だからな」

 

 正鵠を射た考察を述べるギルガメッシュ。

 だが、それに対して雁夜は内心の動揺を出来る限り隠しながら言葉を返す。

 

「伴侶とは一体全体何処の誰のことだ?」

 

 噛まずに極普通に言えた自分を内心で褒める雁夜だったが、ギルガメッシュは呆れた顔をしながら呆れた声音で答える。

 

「往生際が悪いぞ。お前達の日常生活はあそこの娘から聞いている。

 何でも、抱き合って眠るのは間々あることらしいではないか?」

「おおおおおおおおおおおおいいいいいいいいいいいい!!!桜ちゃああああああああああああああん!!!???」

 

 ギルガメッシュが顎で杓った方の数百メートル先、邪魔にならない為と結界外を監視する為に虚空(雁夜達の居る島の頭頂部とほぼ同じ高度)に佇んでいる桜の方を見遣りながら問い掛ける雁夜。

 だが、桜は苦笑いしながら両手を軽く顔の前で合わせて詫びた後、聞か猿の様に耳を塞いで明後日の方向を向いた。

 そしてそんな雁夜と桜を愉快気に眺めながらギルガメッシュは更に続ける。

 

「あの娘は存外に話せる奴なのでな、我だけでなく若返った我ともそこそこ話すことがあってな、共に夕餉を作り、共に寛ぎ、共に寝たりしている癖に、未だに自分に遠慮して契りを交わしていないと愚痴っていたぞ」

「ぶっ!?」

「まあ、水着姿を見て赤面したり、ふとした拍子に視線が合うと赤面したりと、子供の様に純情な様は見ていて楽しいとも言っていたがな」

「ぶはっっ!!??」

「あれだけの器量良しと9年も暮らして手を出さないでいられるのは表彰モノの意思とヘタレさか、特殊性癖の持ち主かのどっちかだと思うとも言っていたぞ」

「ぶぁっはっっっ!?!?!?」

 

 雁夜は長年一緒に暮らしてきた桜から、自分に構わず肉体関係を持ってほしいと思われていたのも堪えたが、自分と玉藻の関係を微笑ましく見られていたということが更に堪え、況してやヘタレは兎も角特殊性癖持ちと思われているらしいというのは首を吊りたくなる程に堪えた。

 そして、今にも膝が崩れ落ちそうな雁夜だったが、辛うじて堪えながらギルガメッシュへ反論を試みた。

 

「いや、俺もあいつもガキじゃないんだから、ガッツク必要は無いだろ?」

「それで9年間進展無しは寧ろ待たせすぎだぞ?

 焦らしてるのではなく待たせ過ぎなのは、女子男子に関わらず褒められたものではないぞ?」

 

 その言葉に桜だけでなく玉藻も力強く頷いているのが雁夜の目に映った。

 だが、ヘタレだけでなく考えがあって待たせ過ぎている雁夜としては、理由を話していないギルガメッシュと桜の反応は兎も角、理由を話した玉藻の反応は凄まじく納得がいかなかった。

 が、だからといって自分達の将来設計を大大的に話すつもりは微塵も無いので雁夜は反論を飲み込み、代わりに話題を逸らすだけでなく意趣返しも含めてギルガメッシュへと問い掛ける。

 

「俺が9年進展させないのが大概なら、9年待つのも大概だと思うぞ?」

「はっ。正確には9年経ても興味が薄れていないだけだ。

 如何にセイバーが我の妻に相応しいと言えども、それだけを思って9年過ごすほど我も暇ではないぞ。

 まあ、流石に女子の身で男子を待たせすぎだとは思うがな」

「なら朗報を一つ。

 四次は聖杯が完成しても使用されずに終わったらしいから、五次は後9~12ヶ月後らしいぞ」

 

 諸事情で冬木どころか那須の山すら離れて(家出)いたので、玉藻から軽く聞かされただけの第四次聖杯戦争という身の丈に合わない奇跡に集った者達の結末を思い出したが、雁夜は割と如何でも構わないことだと切り捨てながら玉藻に聞かされた内容をギルガメッシュに告げる。

 そしてそれを聞いたギルガメッシュは獰猛な笑みを浮かべながら言葉を返す。

 

「くくくくく。確かに朗報だな」

「尤も、四次のセイバーが召喚されるかどうかは判らないけどな」

「問題無い。あれは我の妻だ。

 我のものはどれほどの時を経ようと、再び我が許に戻る定めにある」

 

 セイバーの召喚を微塵も疑う事無く、独自の理論を当然の如く語るギルガメッシュ。

 対して雁夜は苦笑しながら言葉を返す。

 

「なら確り鎖で繋いでてくれ。

 さっきも言ったが、ああいう手合いは不動の大樹の様に全てを俯瞰する者か、自分より遙かに地に足が付いていない上に身の程を弁えない極大の馬鹿かの何方かしか制御出来ないだろうからな。

 それに、そいつの願いが叶うとしたら、少なくとも現代の地球上に存在する人類どころか幻想種すら含めて鏖殺し尽くした後に望んだ過去を再現するという阿鼻叫喚が訪れるだろうから、是非とも手綱を握ってほしい」

「無論、言われるまでもない。

 この勝負に勝つという偉業を刻んでセイバーを娶るとしよう」

「残念ながら偉業の内容は、俺に惜敗したという内容になるけどな」

 

 乖離剣をゆっくりと起動させながらそういうギルガメッシュに対し、雁夜はゆっくりと蜘蛛の脚に力を注ぎ込み始めながらそう返す。

 そして雁夜は鎖を静かに伸張させ始めたギルガメッシュへと告げる。

 

「お互い馬鹿話で小休止も出来たし、そろそろ続きを始めるとするか」

「そうだな。

 だが、1分そこらであそこまで力を使うとは思いもしなかったぞ」

 

 実際ギルガメッシュの消耗度はライダーと戦った時に匹敵しており、恐らく雁夜と玉藻を除く四次聖杯戦争のメンバー全員と戦っても此処迄消耗しない程の勢いで消耗していた。

 そして此のことがギルガメッシュは痛快なのか、獰猛さと清清しさが同居する笑みと声を更に雁夜へと向ける。

 

「我が朋友との勝負は三日三晩に及び、力と技法を力と直感に叩き付け合い続け、我が技法が我が朋友の直感を上回れるかを競い続けた。

 だがお前との勝負は、我の力と技法がお前の力と機転を食い破れるか屈するかという、早ければ数分で終わってしまうという短期勝負だ」

「相性的にも長丁場になんてならないからな。

 思考が過ぎれば隙を晒し、浅薄ならば躯を晒す。

 おまけに天秤の針の動きは激しいくせに、針がある程度傾けば後はその儘針が振り切れて終りだからな」

 

 伸張した鎖の先端を宝珠に絡ませているギルガメッシュに雁夜は苦笑しながら返し、更に続ける。

 

「ま、お互い悠長な気質じゃないから、此れくらいの速さで丁度良いだろう」

「我としてはもう無いだろう此の機会を長く味わいたいところだが、存分に味わうには短期勝負が一番ならば是非も無い」

 

 撒き散らしていた赤い風が暴風に変わり始めた乖離剣へ、宝珠に絡ませた鎖の端とは逆の方の端を絡ませながらギルガメッシュは言葉を返す。

 それに対し、小出しに扱える限界迄力を溜めながら雁夜は告げる。

 

「さて、それじゃあ再開するとしようか」

 

 乖離剣が回転の勢いを強めて巻き付いた鎖に赤い暴風を纏わせ、更に跳ね回るはずの鎖を宝珠の操作能力を鎖に迄拡大して制御しながらギルガメッシュも告げる。

 

「名残惜しくも楽しみな、最後の激突をな」

 

 そう告げ終えると、宝珠が創世の風という清浄さだけでなく神聖さも併せ持つ風を発し始め、更に神聖さに反応して鎖の強度が飛躍的に上昇し、乖離剣との摩擦や赤い暴風にすら問題無く耐え得る強度と成った。

 更にその均衡の儘宝珠と乖離剣の出力を爆発的に高め、地獄の風を纏う規格外の強度を持った鎖を鞭の如く自在に振るい且つ先端からは創世の風という砲撃を放てる、ギルガメッシュが此処9年で確立した最強の状態で以って雁夜を見遣る。

 対する雁夜は8本の蜘蛛の脚だけでなく全身に隈なく力を漲らせ、更に小出しに使用可能な限界迄力を溜め込み、其の上その状態を維持し続ける為に自身の生命力を呼び水にして魔力を根源から汲み上げ続け、最強の聖剣の一撃すら容易く腕で払える程に自身へ魔力を焼べて強化するという、単純故に極めて破り難い最強の状態でギルガメッシュを見遣った。

 

 視線の交差は数秒。

 その後、示し合わせたかの如く、何の脈絡も無く両者は臨戦態勢に移行した。

 ギルガメッシュは鎖で乖離剣と宝珠を繋いだ物を、宛ら朝星棒(モーニング・スター)の如く踊らせ始めた。

 対する雁夜は、先ずは小細工無しで即座に攻めると言わんばかりの構えを取った。

 

 再び視線が数秒交差した後、雁夜は音すら引き裂く速度でギルガメッシュへと突撃し、ギルガメッシュは空間を切り刻むかの様に朝星棒を振るった。

 

 

 







  桜とバルトメロイとウェイバーが渡された物の詳細、及び雁夜とギルガメッシュの大体の強さ関連(可也の長さ且つ可也の厨二要素が含まれておりますので、それらが御嫌いな方は読まれない事を全力で御勧めします)


【無銘(試作品):A+】

 ショール(少し短めの純白の羽衣)型の礼装(宝具)。

 効果は強化のみ。
 但し、存在だけでなく抽象的な概念すら強化が可能。
 即ち、〔走る〕、〔隠れる〕、〔命令する〕、といったことすら強化が可能。
 強化はB以上迄高めることが可能だが、確固とした概念が在り且つ瞬間的な類ならばA+迄強化が可能。
 尚、布術の様に操って攻撃することも可能だが、操作する技術は礼装ではなく使用者の技術や魔術に依存する。


【無銘(試験品):A+】

 ネックレス型(黒曜石の様な勾玉が一つ付いた首飾り)の礼装

 効果は魔術回路の破壊のみ。
 方法はマナに魔術回路を破壊する要素を混ぜ込み、それを相手に吸収させて魔術回路を変質させるか、使用者の肉体乃至装備に魔術回路を破壊する物質を纏わせ、直接相手に送り込むかの2通り。
 魔術回路変質物質を魔術回路に取り込んでしまった相手は、その後魔力を流せばそれに応じて魔術回路が自壊してしまう。

 B以下の守りしか持たぬ者には防御不可能であり、試作品に魔術回路変質物質を纏わせる若しくは試験品を直接相手に接触させればA迄の防御手段を無効化する。
 変質した魔術回路を回復させるにはA+以上の干渉が必要。
 尚、魔術回路でさえあれば種族を問わずに作用するが、逆に魔術回路でなければ種族を問わず効果を発揮せず、貴い魔術回路という特殊な魔術回路を持つバルトメロイには全く効果が無い。


【無銘(完成品):A++(A+++)】

 無形の礼装(宝具)であり、通常時は使用者に融合している。
 待機状態時は使用者に融合しているが、起動させると使用者の望む形へと変化する(融合状態の儘起動させることも可能)。

 試作品と試験品の能力が1ランク上がっただけでなく、待機状態でもA以下の魔術干渉を完全に遮断するが、起動させればA+以下の魔術干渉を完全に遮断し(対魔力A+相当)、更にA++の魔術干渉も判定次第で遮断する(遮断できなければ軽減する)。
 試作品と試験品を融合させることで+判定が一つ追加されるが(融合解除可能)、融合させる為には体外で形にする必要が在る。
 尚、魔術干渉の遮断の効果を広義に拡大強化すればあらゆる干渉の遮断すら可能になる(魔術干渉遮断に比べてランクが下がる上に使用者の意思が必要になる)。
 又、3部作は全て使用者若しくは認められた者以外が触れれば(魔術干渉含む)、魔術回路を焼き切るか変質させるだけでなく脳神経すらその対象になる(使用者権限の移譲は可能)。


【玉桜夜:EX】

 雁夜の身体を素材とし、更に玉藻の神気を大量に取り込んで精製された、桜の為の究極礼装(宝具)。
 形状は黒の勾玉に白い紐を通した装飾品と、と白の勾玉に黒い紐を通した装飾品で、巻き付け方次第で腕にも首にも着けられます。

 基本効果は無銘(完成品)のA+++版と言えますが、此方は魔術干渉ではなく干渉自体を遮断するので遙かに高性能です。
 更に二つの勾玉と紐を融合させて大極図へと変化させると、無の否定や神霊魔術は出来ませんが、魔法の域すら可能とする空想具現化が可能になります。

 但し、空想具現化を使用した際はその後マナではなくオドを使用して自然を回復させなければなりません(自分のオドを使用する必要は無く、他者のオドの魔力を霊脈に回収させたりしても可)。
 更に回復させる自然は空想具現化の規模により増大します。
 尚、回復させる自然の規模は、使用した空想具現化に費やされた魔力が暴走した際の被害規模の150%となっており(ガイアから魔力を借りれば200%)、詳しくは使用者の脳に具体的に思い浮かぶ仕様になっており、1年を超えても自然の回復が為されなければ使用者から魔力が奪われます。
 が、それを周囲に押し付けることは可能です(しかも回収を早めることも可能)。
 又、空想具現化で自然を破壊しようがしまいが回復させる自然の規模に変化は無いです。
 他にも神霊(玉藻縁の者)との交信や降臨を行う触媒にもなり、サーヴァント級の者ならば5体までは従えることすら可能です。

 使用者権限を与えることは可能ですが、桜が直接認めた者か桜直系の者のみとなっています。
 ですが、使用者権限を与えようとも、桜だけは常に最高位の使用者権限を有し且つ手元へ召喚可能です。
 尚、普通の魔術回路の者が認証されて使用した場合、使用者の魔術回路が破壊されない様常に性能の一部を制限する必要がある為、その際にはランクがA++となり、空想具現化の限界もA++になります。

 因みに、魔法という現代常識を超えている技術を使われている以前に、生態礼装と言える代物なので、士郎が投影出来るかは可也怪しいです。
 又、仮に投影出来たとしても、〔桜以外が使う際には桜の承認か、桜に認められた者の譲渡承認が必須〕、という基本構造がある為、投影した瞬間に士郎の魔術回路や神経系が破壊され尽くされて廃人になります。


【無銘(量産型):A+】

 ウェイバーが雁夜から受け取った身体融合型の礼装(宝具)で、バルトメロイの無銘(完成品)の汎用型です。
 一般的な魔術回路持ちが使用可能にする為に性能が+判定一つ分落ちていますが、それ以外はバルトメロイが持つ物と同性能です。
 尚、使用者権限を委譲するには煩雑な儀式を行い、更に現使用者権限を持つ者が死亡した後に後継が可能になります。
 

【無銘(次世代試作品):A+】

 ウェイバーが雁夜から受け取った粒子状の礼装(宝具)で、通常は使用者の身体の温度躍層辺りに滞留しています(透明体且つ分子級の大きさの為、視認は基本的に不可能)。
 仕様は他者の魔術回路の強制使用で、A以下の守りしか持たない者の魔術回路を一方的に利用し、使用者の外部魔術回路と言うべき存在にすることです。
 範囲は半径3000mの真球空間ですが、使用者の意図で同体積で収まる範囲ならば変形可能です。
 尚、外部魔術回路なった者の魔術回路が焼き切れても使用者は何ら傷を負いません。
 又、複数人の魔術回路の性能は使用者以外の者で収束させ、フラガラックの様なかカウンター型の宝具に対する備えとすることも可能です。
 但し、魔術回路を持たない者にとってはまるで意味を持たない礼装ですが、先の礼装で効果対象の幅を広げれば魔術回路持ち以外にも通用します(礼装の効果を強化すればÅ+迄対象となります)。

 雁夜の魔術師嫌いが前面に押し出された、魔術師にとっての悪夢が具現された礼装Ver.02αです。


【無銘(次世代試作品):A+】

 ウェイバーが雁夜から受け取った変形寄生型の礼装(宝具)で、通常は使用者の身体内に潜んでいます。
 仕様は他者の魔術回路の変質で、使用者の身体より魔術回路汚染物質を散布し、汚染された者の魔術回路で成された魔術全般に対する究極耐性の会得です。
 汚染自体はA~A+ランクの干渉で防げますが、一度汚染されれば復元は魔法級の神秘が必要となりますので、事実上現代の魔術師では回復が敵いません。
 又、汚染された魔術回路に根付いた魔術刻印ならば魔法級の神秘に護られていない限り引き剥がして自身の物とすることも可能ですが、その際は相手の魔術回路は使用者に取り込む為の触媒として使用されて完全に燃え尽きますので、相手の魔術師生命は完全に断たれます。

 雁夜の魔術師嫌いが前面に押し出された、魔術師にとっての悪夢が具現された礼装Ver.02βです。


【雁夜とギルガメッシュの位階】

 雁夜のスペックは、神霊の中位(凄まじく下位寄り)。
 宝具無しのギルガメッシュのスペックは、精霊の下位。
 宝具ありのギルガメッシュは神霊の中位(凄まじく下位寄り)。
 雁夜と宝具無しギルガメッシュの総合スペックは可也の開きが在りますが、宝具有りギルガメッシュだとほぼ同数値です。

 具体的にはプライミッツマーダーと正面から戦っても勝ちを狙える程の強さに設定しています(分は悪いですが)。
 尚、絶対殺害権が魂も人外になった元人間の雁夜と、半神半人のギルガメッシュに効くかどうかで勝率は下がりますが。

 因みに此のSSのギルガメッシュの別格宝具の乖離剣と宝珠と鎖ですが、乖離剣 > 鎖 > 宝 珠 > 乖離剣、と、三竦みになっています。
 宝珠は清浄さとセットで神聖さも発生させるので鎖に弱く、鎖は神に関連する要素が無い乖離剣に弱く、乖離剣は地獄を祓うことに特化した宝珠に弱いです。
 後、起動している乖離剣に鎖が絡んでも壊れない理由は、宝珠の出力に反応して鎖が強化されているからです。


【桜の強さ】

 第五次キャスターと魔術や呪術のみで勝負すれば、勝率は10%前後です(互いに礼装や地形効果等のバックアップ無し)。
 宝具有りの凜セイバーと何でも有りで勝負すれば、勝率は50%前後です(桜は礼装や地形効果等のバックアップ無し)。

 玉藻から伝授された、〔呪層・黒天洞〕、のおかげで特殊効果無しの単純な高出力一発勝負とは相性が極めて高いです(ダメージ軽減率は玉藻と同等ですが、魔力吸収率は玉藻の30%前後です)。
 戦闘が始まって空迄移動出来るかどうかが最大の分かれ目になりますので、移動出来ればほぼ桜の勝ちで、移動出来なければ勝ち目は可也低いです(約10%)。
 しかし一度距離を離せば滞空攻撃が単発しかないセイバーではまず勝てませんし、呪術は対魔力では防げませんのでセイバーやランサーを一方的に屠れます。
 ですが、滞空攻撃を連打出来るアーチャーは天敵です。

 まあ、原作ライダーが前衛で頑張るか、礼装や地形効果のバックアップを桜が受ければ、流石の赤アーチャーもアッサリやられますが(恒常的にA++を遮断するので赤アーチャーでは傷付けられませんし)。
 但し、ギルガメッシュだけは別格です。
 此のSSのギルガメッシュが油断しなければ桜の勝率は1%前後です(バックアップ込み)。

 因みに桜の魔術回路は雁夜の不思議物質と玉藻の神気で、本数や属性どころか性質から変質しています。
 喩えるなら、人外雁夜と神霊玉藻の子供の様な感じで、間違い無く強キャラです。
 しかも属性が架空元素の虚だけでなく、水と架空元素の無も追加されています。
 其の上、治療されたお蔭で歪む事無く生来以上の質で三属性を兼ね備えており、魔術回路の質は規格外で量は規格外半歩手前という、知識や技術は兎も角基本性能ならば五次キャスターを超えています。

 まあ、出番が無いので完全に無駄設定ですけどね。
 ですが、個人的に桜はお姫様的ポジションが似合うと思っていますので、強キャラになって無双する場面を描写しなくていいのは一安心です。
 某マリオカートの様に、毒キノコを投げる姫様にジョブチェンジするのもアリな気はしますが。


【雁夜は何が出来て何が出来ないのか?】(作者の強烈な自己設定が多量にに盛り込まれていますので、そういうのが御嫌いな方は本当に読まれないことを御勧めします)

 はっきり意って雁夜は規模を問わないのならば、潜在能力的には何でも出来ます。
 逆に顕在能力的に出来ることは規模こそ違うものの、殆ど魔術の範疇です。若干の例外を抜かせばですが。

 雁夜が殆ど何でも可能な理由は、【無というあらゆる可能性が無い状態を否定する物質には、あらゆる事象に成れる可能性が含まれている】、為です。←当然独自設定です。
 言ってしまえば、【超小規模の劣化根源】、であり、過去現在未来の情報は無いですが、雁夜の理解力と魔力次第では全能に限り無く近付けます。←当然独自設定です。
 つまり、「両儀式」、が一番近いです(戦闘能力の開きは凄いですが)。←当然独自設定です。
 後、不思議物質で礼装(宝具)創造するには最低でも魔術師数千人分の魔力が要りますので本来は激しく消耗するのですが、常時エリクサーと万能薬が使われ続けている様な間桐低では数時間で快復しました(桜の礼装だけは快復迄半月を要しましたが)。

 尚、9年の間雁夜が自ら動いた時以外、99.9%以上は玉藻が外敵を処理しており(具体的に敵意を持ち且つ武装した者が冬木に到来した時点で神隠しに合わせています)、雁夜が処理するのは交渉(と言っている強請りや集り)が決裂した際に逆切れして襲い掛かってきた時程度です。


【雁夜の蜘蛛の脚が良く解らない件について】

 雁夜が自覚して人外に成った時、背から生えた8本のナニカを蜘蛛の脚と呼称しています。

 蜘蛛の脚の根元は不可視で、雁夜の背中から少し離れた所から棒が若干放射状に生え、其処から触手の様なものが生え、更にその先端に薙刀の刀身の様な刃が付いています(解らなければ某Diesの主人公の終曲の時の脚が離れた所から発生していて、先端の刃を鎌でなく長刀の刃にした感じだと思って下さい)。
 雁夜の意思で消したり出したりが可能であり、更に形状変化や部分展開、更には自身だけでなく自身以外も透過することもも可能です(意識しない限りは基本的に雁夜や蜘蛛の脚を透過します。後、雁夜自身も透過が出来ます(恥ずかしさの余りに地中へ隠れる際に出来ることに気付きました))。
 尚、髪や爪と違って破壊されればダメージを負います。

 背から生えるなら翼や羽ですが、雁夜は玉藻を象徴する9という数字の隣に居たいと無意識で強く想った結果、8本の蜘蛛の脚が生えることになりました。
 尚、10本でない理由は、人外に成る時雁夜が玉藻に敵わないと思っていたことが原因です。
 因って、形状変化で枝分かれは出来ても根元から増やすことは現在不可能です。
 後、桜にその辺りを玉藻の前で全て言い当てられてしまった為、玉藻は雁夜の蜘蛛の脚を凄まじく好意的に捉えています。

 それと雁夜が言っていた、左目や右目や御鼻の禊は、創世の風を纏わせた蜘蛛の脚の払い攻撃です。
 気付いている方も多いでしょうが、左目が天照、右目が月読、鼻が須佐之男を示しています。
 ですので、其其の攻撃は其其の特性が色濃く反映されています。
 左目は日が照っている時間(特に晴れ)だと威力が増し、更に神や神地や神器を律することに長けます。
 右目は月が照っている時間(特に晴れ)だと威力が増し、更に神殺しの属性が附加されています。
 御鼻は海原と神地以外の場所だと威力が増し、更に蛇と龍殺しと耐火の属性が附加されています。
 尚、払いと祓いを掛けていますので、払い以外の行動だと威力が低下します。
 又、別に掛け声が必要と言うわけではなく、言えば集中し易いので言っているだけです。
 更に、4本でなく2本でも可能です。

 因みに、創生の風を纏った攻撃で幻想種や宝具を攻撃しても、余程構造を破壊しない限りは殺害や消滅は出来ません。
 何故なら、〔マホイミとベホマとザオリクを足して2で割ったモノ、凍てつく波動、ニフラム、トラマナ、ホーリー、エスナ〕、を一緒にして攻撃している感じだからです。
 烈風という容でなければザコ以外は普通に回復しますが、英霊でも大体ザコの括りの為、人にとっては劇薬状態です。
 後、厳密には特定要素を附加した攻撃ではなく、それらの反対要素を消し去った攻撃です。
 要するに、100のプラス要素と100のマイナス要素が合わさって0状態で拮抗しているのが通常状態ならば、具現化したい要素の対極要素を消すことで望んだ要素を具現化している状態が応用使用状態です(その際の神秘は具現化した要素に準じて加減されます)。
 それと創世の風はエアの地獄の概念を理解した上で不思議物質から地獄の要素を消し去り、更に相性の良い要素を組み合わせた結果完成したものです(エアの地獄の概念以外に、殺生石やマキリの魔術という怨念や穢れに触れ、更に浄化された姿であろう玉藻や間桐邸敷地内に触れていたのが要因です)。

 尚、創世の風でどれだけ破壊活動を行おうと、破壊される自然よりも星の寿命や体力(マナ)が回復します。
 つまりガイアにとっては最高の御褒美です(笑)。
 因って、完全にガイア側の存在が雁夜を殺そうとすると凄まじ過ぎる制限が掛かります(元が人間である為、死後アラヤに取られる可能性が否定出来ないですし、雁夜が死後を渡さないように死ぬ可能性も在りますし)。


【登場人物達の総合戦闘能力早見表(ほぼネタ)】

  ~ ランク:現代常識の域 ~

・SN最初期士郎     :001 (強い一般人)
・SN宝石無し凜     :005 (灰色熊級)
・SN後期士郎      :010 (印度象級)
・切嗣          :015 (阿弗利加象級)
・SN宝石有り凜     :015   同上
・綺礼          :020 (マンモス級)
・ケイネス        :025 (サーベルタイガー級)

  ~ ランク:常識を投げ捨てました ~

・現時点の凜       :050 (ケツァルコアトルス級)
・四次ランサー      :070 (トリケラトブス級)
・鞘無し士郎セイバー   :070   同上
・五次キャスター     :075 (ティラノサウルス・レックス級)
・凜セイバー       :075   同上
・五次バーサーカー    :085 (亜米利加ゴジラ級)
・鞘有り士郎セイバー   :085   同上
・四次アーチャー     :095 (日本ゴジラ級)
・ギルガメッシュネイキッド:100 (日本ゴジラ(VSデストロイヤー状態)級)

  ~ ランク:作品を間違えました ~

・現時点の桜       :130 (破の第03使徒級)
・現時点のギルガメッシュ :160 (破の第06使徒級)
・現時点の雁夜      :160   同上
・現時点の信仰補正無し玉藻:190 (破の第10使徒級)
・現時点の信仰補正有り玉藻:220 (第二シン化状態の初号機級)

 ……なんかもう色色とあらゆる方向にごめんなさいです。

 後、凜は霊脈の魔力を宝石に溜め込める技能を修得していますので、手持ちの宝石全てがSNの10の宝石級に魔力を溜め込んでいる上、10の宝石はSNの形見の宝石よりも魔力を溜め込んでおり、形見の宝石はサーヴァント1騎分以上の魔力を溜め込んでいます。
 此れによって原作よりも聖杯に焼べられた過剰魔力分を霊脈から奪っていますので、聖杯降臨の時期が原作と同時期になります。
 尚、宝石に籠められる魔力は原作を超えている凜ですが、家計が苦しいのは相変わらずです。
 見栄を張って雁夜が斡旋する高収入バイトを断り捲くりましたから。
 因みに戦闘力は、バックアップ(宝石と刻印有り)の凜 < バックアップ無しの桜、ですが、魔術の腕前自体は殆ど同格です。
 具体的にはバルトメロイ以外のロードに匹敵するくらいは双方有ります。
 まあ、桜は魔術より呪術に嵌っていますが。



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