カッコ好いかもしれない雁夜おじさん   作:駆け出し始め

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拾続・カッコ好いかもしれない雁夜おじさん

 

 

 

 名乗りを上げて勝負を申し込んだ直後、凄まじい怒気が籠められた視線が向けられた。

 はっきり言って城の中の大魔王や玉藻の存在感に慣れていなかったら腰を抜かしていたかもしれない。

 が、兎も角俺は向けられた凄まじい視線を怯むことなく見返すことが出来た。

 特に睨みはしなかったが、卑屈さだけは視線に宿らせずに見返し続けた。

 

 そしてその儘十数秒が経過した頃、品定めは終わったのか声が掛けられる。

 

「勘違いした馬鹿が乗り込んだのかと思ったが、どうやらそこの雑種達程度の武は有しているようだな。珍種よ」

 

 凄まじく傲慢な発言に聞こえるが、実際そう発言出来る程の存在だと解る為、特に怒りは涌いてこなかった。

 特に言い返さずに続きを待っていると、アーチャーは見下すとも試しているとも取れる眼で問い質してきた。

 

「時に珍種よ。まさか我を知らぬままに挑むなどという大言を吐いてはいまいな?」

 

 疑問系で言っているにも拘らず、知らぬという発言を決して許さんという思いが言外に籠められていると容易く解る雰囲気を纏った儘言ってきた。

 

 当然俺はあいつの真名は予想が付いている。

 付いているが――――――

 

「人の成果を掠め取られるのは嫌いなんで、英雄王と呼ばせてもらう」

 

――――――あえて真名は言わなかった。

 が、あいつは俺の発言が気に入ったのか、豪く威圧感の在る笑みを浮かべながら言う。

 

「ほう? 知らぬと言うわけではなさそうだな。

 そしてその英雄王という響きは気に入った。

 

 いいだろう。少し話をしてやろう」

 

 そう言ってあいつは尊大な態度で俺を見、何故自分に挑むか話せと顎で杓って促した。

 

「……詳しく話すと少し長いぞ?」

「構わん。言うがいい」

「解った。

 

 少し前、俺が前当主……いや、実質当主を殺した為傀儡当主が失踪し、間桐は名実共に当主を欠いた状態になった。

 その時間桐の後継権利を有す者は、俺と養子として出された子の2人しか居なかった。

 

 順当に考えれば後継者となるべく養子として迎え入れられた子が当主を継ぐべきだが、その子は碌に魔術を使えなかった。多分魔術回路の切り替えが限界という程度だ。

 そして俺は一度間桐から逃げ出した落伍者だ。

 何方が継いでも養子を出した家の奴……時臣は黙っていない。

 普通に考えれば養子に出した子をいけしゃあしゃあと連れ戻し、別の魔術師の家に放り捨てるだろう」

 

 そこまで言った時、頭上から制止と疑問の声が掛かる。

 

「待て。お前は何時至ったのだ?」

 

 話している最中に、話す必要があるのかと今更脳裏を過ぎったが、臍を曲げられて、[我に挑むならばそこらの雑種を片付けてからにしろ]、と言われると堪らないので話すことにする。

 

「魔術から背を向けていた時だ。

 ついでに言うと自滅を絶対前提にして魔力を異常励起させて吸血鬼と心中したら、気付けば至っていた。

 そして此の身体はその際に不完全ながら同化している最中に再構築したモノだ」

 

 どうせ爺さんが言うには埋葬機関で魔術のスペシャリスト(教義的に罰当たりと思うが)辺りが見たらバレるらしいし、直感で気付くだろう赤いロケットランチャーが言い触らす可能性も十分在る為、特に今更デメリットを気にするようなことじゃないから、サラッと言うことにした。 

 そして俺の言葉を聞いたギルガメッシュは一瞬眼を丸くした後、片手で顔を覆いながら笑い出した。

 

「くっくくくくく……あっはははははははははっ!

 まさかこの我が初見で看破しきれんとは何時振りだ!?

 しかも宝物の類でなく生きている者で看破しきれなかった者など、我が朋友以来ではないか!」

 

 心底愉快そうに片手で顔を覆いながら夜空を仰ぎつつ笑うギルガメッシュ。

 ……街路灯の上でアレだけバランスの悪い格好で笑えるバランス感覚は普通に凄いと思う。

 と、俺が変な方向での感心をしていると、唐突にギルガメッシュは街路灯から跳躍し、俺の前に着地した。

 

 何と無く掴んだ人格と、今迄の会話の流れ的に攻撃されるということはないだろうと思い、自分でも驚く程警戒せずに接近を許す。

 

「喜べ珍種……いや、単一種。

 王たる我がお前の価値を認め、わざわざ見定めるべく高き所より降り立ったのだ。

 泣いて喜ぶがいい」

「生憎と俺は未だ勝負を挑んでいるんだ。

 自分を安売りして時臣に舐められるわけにはいかない」

「はっ。王たる俺の賛辞を受け取らぬとは不敬だが、まあいい。

 

 ふむ……一見すると唯一つの希少を掘り当てただけの存在に見えるが…………なるほど、お前の身体は……いや、お前という存在は唯一つの希少を使うことに特化した存在ということか。

 ふっ。これでは魔法を使うことに関しては我の時代でも並ぶ者はいまいが、代わりに魔術は碌に使えまい?」

「正解だ。

 俺はあらゆる魔術を暴発させてしまい、暗示すら魔法で代用しなければ使えない、魔術師と呼べるかどうかすら怪しい存在だ。

 俺が使えると言える様な魔術は、対象を術式毎破壊か崩壊させることだけで、特攻魔術とか揶揄されている。

 そして魔力操作等の能力は俺の特性の付随品に過ぎないらしい」

 

 ギルガメッシュ自身が魔術を使えるかは解らないが、魔導元帥と呼ばれるバルトメロイですら俺の身体を弄くって漸く解ったことをアッサリ看破するとは、矢張り矢鱈と宝物を集め捲った神代の王様の目は伊達じゃないってことか。

 

「なるほど。良いぞ。俄然お前に興味が涌いてきた。

 そら、話が逸れていたので再び話しを続けろ。

 少なくても凡俗な話は飛び出してくることはなかろうから、暇潰しにはなるだろう」

「生憎と何処にでも在る有り触れた話だから、暇潰しにもならんと思うから期待しないことを進める」

「構わん。それを決めるのは我だ。

 それに我は、幸福を謳歌している奴よりも幸福を求めたり苦難に喘ぐ奴の生き様を愛でるのが娯楽なのだ。

 お前からは我を楽しませそうな匂いが立ち上っているぞ?」

「凄い感覚恐れ入る。

 

 ……話を戻すが、俺は養子として出された子を連れ戻させる気は無い。

 なぜなら俺は魔術師なんて人種は塵だと思っているからだ。

 厳密には神秘に目が眩んで人の営みをゴミと断じ、更には神秘を秘匿する為に人命をゴミにも劣る扱いをし、その上根源の渦とやらに至る為に全てを賭してその機会を掴むとか吹聴する癖に自刃して至れる可能性から目を逸らすという、卑怯者の人でなしが嫌いなだけだ。

 

 至りたいなら自分で至れ!

 力不足で至れない癖に、勝手な理屈で望んですらいない我が子に押し付けるな!

 しかも他人に押し付けさせるな!

 況してや押し付けさせる他人の魔術を知りもしないで放り捨てるな!!

 何より!捨てた者を身勝手な自論だけで無理矢理拾おうとするのは認めない!!!

 

 

 髪の色は変わり果て、表情どころか目から生気が抜け落ち、積極性どころか自発性すら殆ど失われ、人間扱いどころか魔術師としてすら扱われず、ただ、爺を受け入れる器になるべく生きた人形になるよう扱われ、嘗ての面影が顔や体付き程度にしか残っていなかったのを見た時、せめてその子が望む道を歩む為、全力で力に成りたいと思った。

 そしてその為には時臣に連れ戻させるわけにはいかないんだ」

 

 興奮して桜ちゃんの事情を殆ど話してしまったのが桜ちゃんに申し訳ないが、此処を時臣が見聞きしていると思うと自制しきれなかった。

 そして途中からギルガメッシュではなく、ギルガメッシュの向こう側に居る時臣へと言葉を叩きつけていた。

 

 凄まじく内容を端折った上に感情的に話してしまったが、ギルガメッシュは然して気にした素振りも見せずに問い質してきた。

 

「つまりお前はその養子を守る為に我に戦いを挑んだというのか?

 我が時臣の従者としてその養子を拾い直すの防ぐ為に挑むというのか?」

 

 不安を掻き立てる怒気を発し、言外に時臣の従者と見做しているのかと問われるが、俺はそれに臆することなく答えた。

 

「まさか。

 どう考えてもお前はそんなことに手を貸しはしない。

 貸すとしても時臣に褒美をやろうとする時に申し出られた時くらいだろう。

 況してやお前が従者だなんてタチの悪い冗談だ

 

 どう時臣を買い被った挙句お前を侮っても、お前が時臣の下に就くとは思えない。

 お前は誰かの下に降るくらいなら、王の矜持を汚さぬ為に戦死するのを選ぶ類だ。

 況してや令呪をひけらかしてマスターなどと吹聴したら、次の瞬間には時臣の首は落ちてる筈だ。

 しかもお前は1画くらいなら令呪を跳ね除けるだろうし、お前の手の内には令呪を中和や肩代わりさせる様な物も在る筈だから、尚更時臣の下に就くわけがない」

「ほう?我を見る目と我が宝物に対する見識といい、そこの雑種共より遥かに見所があるな」

 

 自分をある程度理解された上で高く評価されて機嫌が良いのか、若干威圧感が減った笑みを浮かべるギルガメッシュ。

 だけど、玉藻と一緒にアサシンがやられるのを見ていた俺としてはツッコミを入れずにはいられない台詞だった為、我慢しきれずツッコミを入れる。

 

「いや、自作自演のアサシン撃退を見てたら、そこそこの教育を受けた奴なら真名はほぼ確実に解るし、宝具の定義をある程度理解していればそこから宝具の概要も楽に検討が付く筈だ。

 寧ろ解らん方が馬鹿だ。

 

 均整の取れた容貌、王者を体現した威容、絶対者としての言動、無数の財宝、にも拘らず神霊ではない。

 これだけヒントが在って解らなければ、そいつらは歴史を碌に学んでいない奴か、物事を関連付けて考えることの出来ない無能だ」

「はははははっ。その通りだ。全く以ってその通りだ!

 我が面貌がたとえ後世に伝わっておらずとも、あれだけ我を示すモノを拝見させたのだ。

 物を知らぬ幼子でもなければ、我だと解らぬ輩は正しく蒙昧なのだ。

 

 ふむ。お前との会話が存外に愉快な為又脇道に逸れたな。

 で、結局お前は何故我に挑む?」

 

 その問いを聞き、俺の期待に応える為に遇いたくもない時臣に遭おうと勇気を振り絞ろうとし、だけどそれが出来ずに俺に我儘だと思って遠慮しながらも助けを求めてくれた、申し訳無さと不安と期待が混じった目の桜ちゃんと、一抹の不安を抱いているだろうに俺の為に危険な見せ場を作り、自分と俺の不安を消し飛ばす信頼を湛えた笑みを浮かべる玉藻の二人が脳裏に浮かんだ。

 そしてその脳裏に浮かんだ二人に後押しされる様に言葉が口を衝いて出る。

 

「精一杯の勇気を振り絞って時臣と対峙しようとしても、俺が不甲斐無いから自分が時臣と遇った為に俺が討たれるという未来を考えて踏み出せないその子を、ほんの少しでも安心させる為。

 そして俺には勿体無さ過ぎる信頼を湛えて送り出してくれたあの笑みに応える為。

 ……それだけだ」

 

 多分、この先これ以上桜ちゃんの力になれる時は来ない。

 今回の件を乗り越えたなら、後は桜ちゃん自身が覚束無いながらも自分で歩き出す。

 そしてその時俺が出来ることは少しばかり魔力の扱いを教えたり生活援助をするくらいが限界だ。

 逆に乗り越えられられなければ、最悪桜ちゃんはずっと引き篭もった儘で、一生時臣の影に怯えて生きていくことになってしまう。

 そんなのは嫌だ。認められない。我慢ならない。承服出来ない。

 

 それに玉藻のあの無上の信頼に応えれないのも嫌だ。

 俺を見る目が変わり、今の生活が崩れるのが嫌だ。

 短い間だけど、既に俺にとって今のあいつとの遣り取りは日常の一部なんだ。 

 平凡だけど何より得難い平和な日常なんだ。

 それを失うのが堪らなく怖い。

 

 結局、嫌なことと怖いことを晴らす為に戦うだけ。

 逃げ出した方が状況悪化するから戦うだけ。

 ……勇敢とは程遠いと厭になる程に自覚出来るけど、目的を果たせるなら他人に何と言われようと構わないし、俺の自己評価がどれだけ下がろうとも構わない。

 

 

 俺が改めて自分の心を見据え、そして受け入れるだけの時間を黙って俺を見ていたギルガメッシュだったが、俺の心が決まったのを見計らったのか唐突に告げる。

 

「余りにも平凡で在り来たりで愚かしい理由だな。

 まさかこの我に挑む理由が、幼子の不安を取り除くことと信頼に応えることとはな。

 念の為訊いておくが、正気か?」

「多分、とっくに狂ってるだろうな。

 誰かの為…………いや、自分の矜持でなく感情を理由にして自分の命を使うなんて正気じゃない。

 どんな美辞麗句を並べ立てたところで、自分を他者より低くするなんて狂行以外の何ものでもない」

「解っているではないか。

 で、にも拘らず我に挑むというのか?」

「当然だ。

 狂っているからといって止める理由は何処にも無い」

「ふむ……」

 

 俺の返事にギルガメッシュは暫し考え込む様に沈黙した。

 

 そして何かしらの考えに至ったのか不敵な顔をし――――――

 

「喜べ。我に挑むという大言壮語を吐くに値するかか否か、我自らが試してやろう」

 

――――――背後に10もの刃物の先端を現し、釣瓶打ちしてきた。

 が、瞬時に魔力で身体能力をそこのセイバーの倍以上にした俺は、圧倒的な身体能力に任せて全て素手で払い、傷一つ負う事無く捌ききってみせた。

 

 展開されてしまえば初動無しで撃ち出される魔弾は近距離では対処が困難だが、10くらいの音速前後の釣瓶打ちなら、爺さんの多重次元屈折の同時攻撃の嵐(軽く100回は手足や腹が消し飛んで死に掛けた)に比べればまだ余裕を持って対処可能な為、慌てず冷静に対処しきれた。

 そして表情に焦りすら見せずに捌ききった俺に満足したのか、ギルガメッシュは今迄に無い獰猛な笑みを浮かべながら声を上げる。

 

「人でありながら神々にすら劣らぬ身に成れる可能性を秘める者よ。

 平凡で取り立てる程の動機も無いが、そこまでの力を持ちながらもあらゆる欲の誘いを振り切って純粋にそう(●●)在り続ける様は、正しく人を超越しようとする者に相応しい。

 

 我に挑むという理由が副次的な理由であるのが気に入らぬが、いいだろう。認めよう。

 お前は我に勝負を挑むに足る相手だ。

 存分に己を示し、我を示させてみせるがいい」

 

 そう言うと背を向けて距離を取ろうとするギルガメッシュ。

 だが――――――

 

「あー……ちょいと待ってくれんかのぉ?」

 

――――――恐らくライダーと思われる奴が待ったを掛けた。

 

 ……はっきり言って水を注された容になった俺は頗る機嫌が悪く、胡乱且つ棘を含み捲った視線を向けた。

 対してギルガメッシュは背後に20もの武器の先端を覗かせながら怒りに満ちた声を叩きつける。

 

「何だ雑種?

 下らん用で水を注したというなら、即座に死に処すぞ?」

 

 常人なら精神崩壊かショック死かしそうな怒気を叩きつけられる雑種ライダー(仮)だったが、気にした様子も無く戦車から飛び降り、此方に近付きながら話し出す。

 

「なに、一つはそこの雁夜というマスターのサーヴァントが何処に居るのかということだ。

 姿が見えぬし聞き覚えの無い名のクラス名の上、余の呼びかけにも応じなかった臆病者だ。

 己が身可愛さにどんな――――――」

「最後の令呪を持って命じる」

「――――――横槍を……む?」

 

 悪い奴じゃなさそうだが、愉快でないその口上を封じる為、迷い無く令呪の刻まれた腕を掲げながら最後の令呪を使用する。

 

「英雄王との勝負が終わる迄、一切の援護を禁止する。

 但し、横槍を入れる者は排除せよ」

 

 言葉を終えると同時に令呪が弾けて消える。

 どうせ効きはしないし、マスター権を放棄したからといって玉藻との関係が変わるわけでもないと確信している為、雑種ライダーを黙らせる為に躊躇せず最後の令呪を使用した。

 

 全ての令呪が消えた腕を静かに下ろし、不敵ながらも何処か好感を憶える笑みを浮かべるギルガメッシュを視界の端に収めながら雑種ライダーに告げる。

 

「消されたくなければ下がってろ。

 勝負前でも話し掛けるだけで横槍と見做されて消し飛ばされるかもしれないぞ。

 

 あと、あいつの名誉の為に言っとくが、あいつは英雄王以外じゃどれだけ宝具を乱発しても倒せるような相手じゃない。

 恐れたんじゃなく、単に相手にされなかっただけだろう。

 

 ……俺には過ぎた奴だが、俺の願いの為に俺を案じながらも、俺では受け止めきれそうにもない信頼を寄せながら送り出してくれたんだ。

 身の程知らずが調子に乗って侮辱するな」

 

 とりあえず言いたいことを言い終えると、俺は英雄王と距離を取るべく背を向けて歩き出す。

 が、そこに雑種ライダーが声を掛ける。

 

「いや、すまんな。

 事情も知らんでお前さんのサーヴァント……いや、相方を侮辱してしまったようだな。

 

 お前さんが言う相方の強さには納得いかんが、お前さんほどの奴がそう言うなら、此方から赴くことにしよう」

 

 歩みを止めず、しかし謝罪を受け入れたと示す為に片手を軽く挙げながら歩き続ける。

 

 

 挙げた手を下ろしてから十数秒程歩き続けた辺りで足を止めて振り返る。

 距離は……ざっと80m強か。

 そしてギルガメッシュも丁度振り返った為、眼が合う。

 

 離れていても圧倒的な威圧感を感じる。

 だが、送り出される際に桜ちゃんと玉藻が浮かべていた表情や雰囲気を思い出せる限り、どれだけ威圧されようとも恐れることはないと確信出来た。

 

 

 全身に魔力を纏って擬似強化……魔力放出を行い、祖の上位とすらある程度戦える身体能力へ押し上げる。

 今迄に無い勢いで噴き上がる魔力に、過去最高の魔力放出だと確信出来た。

 魔力も今噴き上がり続けている魔力補うべく、凄まじい速度で生成されていっているのを感じる。

 ……自分が一般とは離れていくことに酷い忌避感が生まれるが、自分が何をする為にに此処に立っているのかを思うだけで、忌避感が噴き上がる魔力に乗って消え去る様に無くなった。

 

 万全な状態……いや、万全を越えているのを実感して改めてギルガメッシュに眼を向けると、自身の背後に横幅約30m縦幅約10mの範囲に宝具を大体200程展開して俺を見ていた。

 僅かな間視線が交錯した後、俺は両腕の肘辺りから指先迄と足首辺りから指先迄を文字通り魔法の物質で覆った。

 

 最後の確認をする様にお互いに視線を合わせると、ギルガメッシュは不適な笑みを浮かべ、俺は硬い表情の儘軽く頷いた。

 そして開始の合図を告げる様に俺は両拳を打ち合わせ、ギルガメッシュは片腕を挙げた。

 

 次の瞬間、俺は全力で地を蹴り、ギルガメッシュは指揮者の様に腕を振り下ろした。

 

 

 







  雁夜とギルガメッシュの遣り取りを見ていた者達の心境


・玉藻
 啖呵を切るご主人様カッコ好いです!惚れ直しました!
 後、ご主人様の中で私の好感度が急上昇なのが凄く嬉しいです!100万の軍勢を生み出してパレードをしたいくらい嬉しいです!

・桜
 ……頑張って。
 でも……死んじゃいや。

・ウェイバー
 殆ど一般人が魔法に至るって、どんなブラックジョークなんだよ!?
 後、…………あいつが勝ったら魔法の目撃者ってことで聖杯戦争の後殺されるんだろうか?

・ライダー
 まさかサーヴァント以外にあれ程の者がいようとはな。
 うむ、あの者の相方を含め、是非とも我が軍門に降ってほしいものだ。

・ケイネス
 魔術の崇高さを理解できぬ者が魔法に至るとは……何たる不条理!
 ふん、身の程知らずにあのサーヴァントに挑み、即座に道を空けるがいい。

・ランサー
 まさかこの時代の者がサーヴァントに匹敵するとは見事だな。
 しかも聖杯ではなく幼子のために強敵に挑むとは素晴らしい人物だ。

・綺礼
 とんだ大番狂わせだな。
 間桐邸に進入したアサシンが即死したのを考えれば、現場での暗殺も出来そうにあるまい。

・アサシン
 魔力を纏っている限り殺害はまず出来んな。
 しかもあいつのサーヴァントが見張っているなら、隙を付くのもまず無理だろう。

・時臣
 まさか雁夜が第一の魔法使いとは…………何たる屈辱!!!
 何故魔道に背を向けた落伍者が至れるのだ!しかも死ぬだけで至れるのだ!?!?!?

・セイバー
 マーリンと違って実に素晴らしい人物だ。ええ、マーリンと違って実に素晴らしい人物だ。
 あれ程の実力と気概と心根を持って挑む者が現代にいるとは、やはり世界は広い。

・アイリスフィール
 子を持つ母親として凄く共感出来るわね……。
 迷い無くマスター権を放棄したのを考えると、聖杯そのものが全く眼中に無いみたいだし、切嗣と戦わずに済んでくれたらいいのだけど……。

・舞弥
 恐らく戦闘中の殺害は間桐雁夜自身の防御力と対応力を考えると不可能でしょう。
 戦闘後も彼とサーヴァントの信頼関係が伺える台詞を考えると殺害不可能でしょう。

・切嗣
 急遽呼び戻された俄かマスターだと思ったが、まさか魔法使いとはな。
 しかも銃弾に対応出来るだろう戦闘力に加え、魔法で防がれると起源弾が効果を発揮するか全く判らないのが痛過ぎる。



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