IS インフィニット・ストラトス ~天翔ける蒼い炎~   作:若谷鶏之助

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 銀髪の少女が、広場の噴水の前にいた。

 彼女の名はラウラ・ボーデヴィッヒ。彼女が一人で街にいる光景は、今となっては珍しい。

 共に行動することが多い一年専用機持ちの七人といえども、常に一緒にいるわけではない。そしてそれは、超絶ブラコンであるラウラ・ボーデヴィッヒにも当てはまる。今日は最愛の兄の元を離れ、自分を磨きに街へ繰り出しているのだ。

 ただ、ラウラが一人でいても何もできない。ラウラは現在、ファッションなどを勉強中している最中なのだから。なので、今日は助っ人を呼んでいる。

 

「あ、ラウラさーん!」

「むっ」

 

 待っていたラウラに手を振るのは、校外で唯一の女友達である五反田蘭。ラウラも蘭に手を振った。

 

「すみません、お待たせしました」

 

 ぺこりと頭を下げた蘭に、ラウラはそんなことはないぞ、と柔らかく微笑んだ。

 ラウラにとっては、この蘭という少女は女性らしさを高めるための先生で、可愛い後輩になるかもしれない存在である。来年IS学園を受験する予定の蘭は、事前の適性チェックでAを出している。素質は十分ある。

 蘭にとってもラウラは憧れの先輩であった。女の蘭から見ても、ラウラは超級の美少女で、その凛とした佇まいには憧れてやまない。

 元は翔がきっかけで出会った二人であるが、今となっては親しいメル友という関係にまでなっていた。

 

「じゃあ、行きましょうか」

「うむ」

 

 案内は蘭に任せ、ラウラはその横を歩く。

 蘭は久しぶりの買い物らしく、幾分ご機嫌だ。

 

(……今日これから、私は自らを鍛え上げる)

 

 ラウラは今日の目標を心中で確認した。

 

(全ては……お兄様と禁断の関係になるために!)

 

 それはラウラの大きな目標――否、野望であった。

 何故ラウラがそう思い立ったのか。それは、二日前に遡る。

 

 

 

 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆

 

 

 

 二日前の木曜日、ラウラは自身が所属する部隊、シュヴァルツェア・ハーゼ、通称黒ウサギ隊の副隊長、クラリッサ・ハルフォーフ大尉と連絡をとっていた。

 

「ク、クラリッサ……」

 

 ラウラは携帯電話を片手に、震えていた。

 

『いかがでしたか、隊長?』

「な、ななななんという……!」

 

 感動とも言える衝撃が、ラウラを襲った。

 今ラウラが手に持っているのは、クラリッサに薦められたとある少女マンガ。

 内容を要約すると、妹が兄を好きになってしまい、その兄もまた妹が好きで、いつしか二人は……というもの。俗に言う兄妹モノというやつである。

 ラウラは世の中にそんなものがあるとは知らず、読んだときには思わずその内容を疑った。

 

「きょ、兄妹というのは結婚できないのではなかったか!?」

『はい。現代の民法で兄妹の結婚を認めているものはありません。ですが……いえ、だからそこそ、禁じられた関係には背徳感が伴い、それがより愛を駆り立てるのです! まさに、アバンチュールッ!』

「あ、アバンチュール……!」

 

 このクラリッサ・ハルフォーフという女性は日本文化、特に二次元的な部分をこよなく愛していた。マンガやアニメなどが翻訳されるのを待てず、一刻も早く鑑賞するために日本語をマスターしたという猛者だ。

 クラリッサの知識は幅広く、あらゆるジャンルに精通している。今回ラウラに紹介したものも、彼女の数あるオススメ作の一つに過ぎない。クラリッサ・ハルフォーフ恐るべし。

 

『隊長。お考えください。もし、お兄様との禁断の関係になったら……』

「お、おおお……」

 

 ラウラの中で、さっき読んだ作品に感化された妄想が暴走し、一つの作品が出来上がった。

 

『ラウラ、すまない。もう俺は我慢が出来ない。……愛しているんだ! 誰よりも、お前を!』

『お兄様、その気持ちは嬉しい。だが、私たちは兄妹だ! それは変えようのない、事実なんだ!』

『兄弟で愛し合うことが悪いと、誰が決めた? 俺は、お前を手に入れるためなら、何だってする!』

『お兄様……』

『もし許されないというのなら、二人で逃げよう。誰にも邪魔されない、そんな場所へ――』

『ああ……っ、お兄様……!』

 

「…………」

 

 ……鼻血が出そうになった。

 禁断の関係。なんと、危険で、汚らわしくて……甘美なのだろう!

 ……実際のところ、ラウラと翔の間に血縁関係は無く、例え恋仲になったとしても何の問題も無いのだが。

 

「……いかがでしょうか、隊長」

「す、素晴らしい……! 素晴らしいなクラリッサ!」

 

 そうだ、何故気付かなかったのだろう。お兄様を独占したければ、独占出来る関係になれば良いのだ。

 ラウラは今までの自分を恥じるとともに、気付いて手遅れにならなかったことを安堵した。

 

『隊長』

「む。何だ?」

『お兄様を手に入れるため、自分を磨くというのはどうでしょう?』

「ほう。自分を磨く、とは?」

『女としての魅力は様々です。美人、スリム、小柄、それだけ男が惹かれる要素もあるということですが、隊長の場合、比較的小柄であるのと妹という立場上、可愛い属性で攻めるべきだと考えます』

「そ、それで、どうするのだ」

『その隊長の可愛らしさを引き立てるため、服というアイテムを極め、お洒落になる必要があるかと』

「ふ、服か!」

 

 ラウラは頭を抱えた。

 残念なことに、お洒落はラウラが最も苦手とする分野である。最近ではシャルロットが世話を焼いてくれるから、それなりにお洒落になったとは思うが、日本に来るまでは四六時中軍服で生活していた。

 

『隊長のお兄様は才能溢れる美男子。さぞライバルも多いことでしょう。その並いる彼らを蹴散らし、お兄様を手に入れるためには、自分を磨く必要があるのです』

「…………」

 

 ライバルと聞いて真っ先に浮かぶのは、勿論セシリア。ラウラが翔と出会う前から翔一筋で、夏には告白すらしたという、名実ともに最大のライバル。

 

「お洒落、か……」

 

 服を選ぶなら、シャルロットを誘って買い物に行くのが妥当であるが、どうやらシャルロットは明日予定があるようで無理。明後日はラウラが翔と練習をする約束をしていて無理。となると――。

 

『隊長、援軍が必要ですか?』

「……いや、必要無い」

『リーサルウェポンが、あるのですか?』

「……ああ」

 

 ラウラの狭い人脈の中で、ただ一人思い当たる人物がいた。

 ――それが、五反田蘭であった。

 

 

 

 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆

 

 

 

 そんなわけで、ラウラは蘭に約束を取り付け、今に至るのである。

 自分がいないときにセシリアが翔にアタックするのを分かっていながら、わざわざ出掛けたのは、そんな理由があった。ラウラとしては、笑っていられるのは今のうちだ、とほくそ笑んでいたくらいだ。

 実はこの日、翔は一夏ラバーズと買い物に出かけており、セシリアは最大のチャンスを逃していたのだが、それはラウラの知るところではない。

 

「蘭。今日はありがとう。助かった」

「いえいえ。この前文化祭のチケットを頂きましたから」

「一夏とは会えなかったのだろう?」

「はい……」

 

 しょんぼりする蘭。

 ちょうど生徒会の劇のときに喫茶を訪れたらしい。ラウラもその運の無さには同情した。

 

「また今度だな」

「はい!」

 

 蘭が笑顔で答えた、そのときであった。

 

「ねえねえ、カーノジョ!」

「今ヒマー?」

 

 いかにもチャラ男という風貌の男二人組が、時代錯誤も甚だしい文句でラウラと蘭をナンパした。

 妖精のように可憐な容姿のラウラと、店の看板娘でファンもいる蘭。可愛らしく華奢な二人は、男たちには絶好のターゲットに見えただろう。

 咄嗟に背中に隠れた蘭を庇い、ラウラは鋭い目つきで男たちを威圧する。

 ラウラは基本的に排他的である。初対面の人間には警戒を怠らない。

 

「……何の用だ?」

「だからさあ、俺たちと遊ばねえ?」

 

 男たちの誠実さの欠片も感じられないセリフと、ニヤニヤとした笑みがラウラの神経を逆撫でした。

 本当は今すぐにでもISを呼び出してぶちのめしてやりたい気持ちだったが、流石のラウラもその程度の常識は弁えている。

 

「貴様らに構っている時間は無い。行くぞ、蘭」

「は、はいっ」

 

 ラウラがすたすたと歩いて行くのに、蘭が慌ててついて行く。

 男たちはラウラの素っ気ない態度が面白くなかったのか、その中の一人が顔をしかめて去るラウラの手を強引に取った。

 

「まあまあ、そう言わずにさ――あぁっ!?」

 

 ラウラは手を掴まれた瞬間、慣れた動きで男の手を外し、腕を極めた。

 

「い、いででででっ!?」

 

 情けない悲鳴を上げる男を、ラウラが絶対零度の冷たさを持った視線で射殺す。

 その様子は、『ドイツの冷氷』と呼ばれた姿さながらであった。

 

「……貴様に選択肢をやろう。今すぐに立ち去るか、それともこのまま腕を折られるか……」

「ひいっ!? ご、ごご、ごめんなさぁいっ!」

 

 ラウラが手を放すと、男たちは恐れをなして逃げて行った。

 

「ふん、下衆が。……私に触れていい男は、お兄様だけだ……」

 

 ラウラはパンパンと手で叩くと、不機嫌な顔で歩き出した。

 

「……ごい」

「……どうした?」

 

 ラウラが振り返ると、そこには呆然とする蘭が。

 

「……っこ……たです……」

「何だ?」

「……ラウラさん、すっごく、かっこよかったですっ!」

 

 蘭は目をキラキラさせて言った。

 

「ラウラさん、本当にお強いんですね! 憧れちゃいます!」

「む? そ、そうか?」

 

 ラウラはかっこいいと言われたのは初めてで、照れてしまった。

 

「……い、行くか」

 

 ラウラが足早に歩き出すと、蘭は笑顔でついて行った。

 

「ラウラさん、羨ましいです」

「……羨ましい? 私が?」

「はい。だって、綺麗ですし、強いですし、あんな素敵なお兄さんがいて……」

「確かにお兄様は素敵だと思うが、弾も捨てたものではないと思うぞ?」

「ダメですよ、あんなバカ兄なんて! 天羽さんと比べたら……」

 

 口ではそう言うが、蘭が自分の兄をそれほど嫌っているわけではないということは、ラウラも知っていた。

 

「だから、本当に羨ましいです。神様ってすごく不公平だと思いますっ」

「……不公平、か」

 

 ラウラは今まで、こんなに純粋に慕われたことは無かった。過去の自分に向けられていた視線は、恐怖、憎悪、軽蔑……負の感情に満ちたもので、その中に、尊敬などというものは存在しなかった。それを変えてくれたのは、他でもない、今では兄になったあの人。

 ――天羽翔。

 織斑教官以外、誰も寄せ付けないハリネズミだった自分を、その針ごと包み込んでくれた。

 兄が救ってくれたお陰で、今はやかましくも頼もしい仲間たちと、可愛い後輩と過ごすことが出来る。どんなに感謝しても、尽きることは無い。

 

(――ああ、そうか)

 

 ラウラは、自分の本心に気付いた。

 

(私は、お兄様の妹でいたい)

 

 それは、確かな想いだった。

 ついさっきまで望んでいた、兄との進んだ関係。やはりそれは魅力的であるし、誰にも邪魔されなくなるというのも事実。

 しかし、ラウラにとって一番大切なことは、兄を独占することではない。一番大切なのは、兄が傍にいてくれること。夫婦や恋人という関係でなくても、兄はラウラを捨てたりしない。それを信じていれば、独占しなくても、兄は傍にいてくれる。

 だから、いつでも甘えられる妹でいたい。お兄様が帰れる家族でいたい。誰にも許されない関係になるより、誰にも許してもらう必要が無い関係でいたい。

 そして、それが兄が自分に望んだことでもあると思った。同じ天涯孤独の翔が求めたのも、ラウラと同じ。家族だ。お洒落をするのだって、兄がただ一言「似合ってる、可愛い」と言ってくれれば、それでいい。兄が傍にいて、髪を撫でて、笑いかけてくれればそれでいい。

 ただ、ラウラはセシリアに最愛の兄をやすやすとくれてやるつもりはない。もし兄がセシリアを愛するようになれば、それは認めてやろう。だが、そうならない内は精一杯の邪魔させてもらう。私の兄を恋人にするのなら、それくらいは乗り越えてもらわなければ困る。

 

「――蘭」

「何ですか?」

「帰りに、寄り道をしてもいいだろうか」

「はい。全然大丈夫です!」

「……ありがとう」

 

 たまには、お土産を持って帰ろう。

 ――いつもありがとう。

 その気持ちを兄に届けても、罰は当たらないはずだ。

 

 

 

 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆

 

 

 

「ふいー、大変だったあ」

 

 更識楯無は少々疲れた様子で自室、もとい一夏の部屋に戻ってきた。

 普段ならば生徒会の業務は翔に丸投げできるのだが、生憎翔は日中学園にいなかった。それで仕方なく自ら仕事をしていたのだった。

 

「あ、お帰りなさい」

 

 中から声をかけた一夏は、珍しく教科書を広げて机に座っていた。

 

「珍しいわね、勉強なんて」

「いや、今日はみんないなかったから暇だったんですよ。だから、溜まってた宿題でもやろうかと思って」

 

 真面目に勉強をする一夏を見て、楯無はふーんと呟くと、ぴたりと足を止めた。

 

(いいこと思い付いた)

 

 楯無は口元をにーっと吊り上げ、制服の上着を脱いだ。そして一夏の後ろに立つと、机を覗き込む。

 

「ねえ、一夏くん。おねーさんが勉強教えてあげよっか?」

「なっ!?」

 

 一夏が驚くのも無理はない。何せ、楯無の胸がむにゅり、と背中に押し当てられているのだから。

 

「たっ、楯無さんっ! あ、当たってますって!」

「ん~? 何のこと?」

 

 とぼけて見せる楯無。

 

「実は私、二年の首席なのよね。そんなおねーさんの個人レッスンは、あまり成績がよろしくない一夏くんには嬉しいことなんじゃないかなあ?」

「…………」

 

 誤解の無いように説明するが、一夏は決して成績が悪いわけではない。ただ、良くはないというだけで。

 各国のエリートである代表候補生たちが優秀な成績を収めているのは勿論のこと、そうではない箒も学業は優秀であるし、翔に至っては学年の首席である。それと比べれば、一夏は成績が悪い。比べる対象が高すぎる気はするが。

 

「どう?」

「ど、どうと言われても……」

 

 胸が当たっているせいで、一夏はおろおろとしている。それを見て機嫌が良くなるあたり、楯無はイイ性格をしていると言わざるを得ない。

 

「で、どうする? 教えてもらう? やめとく?」

 

 一夏は耳にふぅーっと息を吹きかけられ、びくりと震えた。

 

「……お、お願いします……」

 

 一夏の返答を聞いて、楯無はにっこり笑顔になった。

 すなわち、作戦成功である。

 

「オッケー! じゃあ代わりに、おねーさんに食事を作ってね?」

「何でですかっ! 自分で作ればいいでしょうが!」

「だって、誰かが作ったのを食べたいじゃない? 一夏くんの料理、美味しいって聞いたし」

「……誰にですか?」

「翔くん♪」

 

 一夏はがくりと肩を落とした。親友に売られた気分だった。

 ただ一言言っておくとすれば、その情報は翔が自分の命を守るために差し出した情報であるということ。さしもの翔も命は惜しかったようである。

 

「……ったくもう……分かりましたよ」

「はーい、じゃあ交渉成立! ビシバシ行くから覚悟しなさいね」

 

 思わず身構える一夏。楯無の『ビシバシ』はとんでもなくきついからだ。

 

「そ、その前に、そこからどいてくださいよ」

「んー? イヤ」

「何で……」

「だって一夏くんをからかうの面白いんだもーん」

 

 一夏はげんなりして、はあと重いため息をついた。

 

「ふふふ……」

 

 イタズラをする手口が増えた、とほくそ笑む楯無だった。

 

 

 

 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆

 

 

 サアアア……。

 シャワーから溢れる湯が、簪へと降り注ぐ。

 シャワーを浴びるという行為は特段好きというわけではないが、最近は――というよりは昨日から長く浴びるようにしている。その理由は当然――。

 

(……天羽、くん……)

 

 この名を、昨日から何度呟いたことだろう。暇さえあればいつでも彼を思い出す。

 初めてだった。友達だと言ってくれたのは。

 嬉しかった。一人じゃないと言ってくれたのが。

 

(私は、一人じゃない。私には、いつでも支えてくれる幼馴染がいる……)

 

 それを思い出させてくれたのは、翔だ。

 簪は昔からヒーローが大好きだった。危機の瀕した瞬間、颯爽と現れてヒロインを救ってくれる。強く、逞しく、優しく、完全無欠な正義の味方。いつかそんな人が現れないかなぁ、と幼い簪はずっと憧れてきた。

 だが簪も高校生になり、ヒーローなどという幻想にいつまでも浸っていてはいけない年齢になった。そんな人は絶対に現れないと割り切ったが、それでも長年の憧れを捨て去ることはできず、未だにこっそりヒーローのアニメを見ているのは秘密だ。

 ところが、今気になる彼は、憧れていたヒーローとは少し違った存在だった。決して明るい性格でも、正義の味方というわけでもない。むしろ皮肉屋で、曲者で、嘘つきで、狡猾な部分も見られるくらいである。

 

(――でも……)

 

 優しかった。何も言わずに片付けを手伝ってくれたり、ちょっとしたことにも気を配ってくれる。憧れのヒーローとは違って目立つわけではないけれど、さりげないからこそ打算を感じない、真っ直ぐで優しさ。

 そして何よりも……格好良かった。立ち居振る舞いはヒーローとは程遠いのに、ピンチのときはヒーローのように助けてくれた。――傷つくことも厭わず、身を挺して。

 あの蒼い翼に包まれたとき、心の動悸を抑えることができなかった。どきどきして、熱くて、翔しか見れなかった。それなのに抱き上げて降りるのだから、心臓が爆発するかと思った。

 王子様のような人だと、誰かが言っていた。言い得て妙だ、と簪は感心する。

 ただ格好良いだけじゃない。王になって政治をするための暗い部分も併せ持った、誰よりも強くてクールで優しい、王子様。

 とくん、とくん……。

 心臓の音が大き過ぎて、外に聞えてしまいそうだ。

 

(――天羽くん……)

 

 この心臓の音は、止まりそうになかった。 

 




以上で第十一章終了となります。なお今回に限り第十二章もこのまま継続して投稿します。お楽しみに。

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