IS インフィニット・ストラトス ~天翔ける蒼い炎~ 作:若谷鶏之助
14日に新作『セシリア・ダイアリー』のバレンタイン編を投稿しています。よろしければそちらもどうぞ。
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ついに文化祭当日になった。IS学園の正面ゲートには学園祭、という文字が掲げられており、学園内もお祭りムードだ。
IS学園の文化祭は特殊を極める。市民に一般解放はされてはおらず、外来客は学園の生徒から渡された入場券を持たなければ入場できない。そのため、文化祭開催中のIS学園に入れるのは、生徒とその保護者、教職員、清掃員、それ以外には特別に誘致された有名企業の社員などのみしかいない。しかも、その上で入場者には入念な身体チェックが施され、学園周辺には警備員が山ほどいる。かなり大規模、というか大袈裟なほど、厳重な警備だ。
何故ここまでの厳戒態勢を敷いているかと言えば、IS学園は将来の各国の国防を担うような国家の大切な人材が集まっており、一歩間違えばテロの絶好の的ともなってしまうからという理由に他ならない。万が一にでもテロが起こってしまった場合、国際問題になるのは避けられず、最悪、戦争になる。
と、こう説明すると、IS学園の文化祭はえらく大層なものに思えるが(いや実際大層なものなのだが)、中身自体は普通の文化祭だ。各クラスの出し物の模擬店、大型制作物、演劇その他だ。やっていることは女子校の文化祭と何ら変わりはない。
が、今年は少し違う。
何故か? それは簡単だ。俺と、一夏。つまり、男子が生徒として存在しているからだ。
加えて、今年は投票によって一夏を強制入部させるという特別ルールが存在し、全校生徒はやる気に燃えていた。
――が、残念ながら一夏は生徒会へ入るのがほぼ決まったようなものだ。生徒たちが投票する形式を取った時点で、もう結果は決まっているのだ。
閑話休題。
とにかく今現在問題なのは……。
「一夏~! 次あっちの席行って!」
「了解!」
「織斑くーん! 織斑くーん!」
「お、おう分かった!」
「遅いぞ一夏っ!」
「おりむー! 次だよぉー!」
「だああーっ!? 全部はムリに決まってんだろおおお!?」
聞こえてくる声だけで、てんてこ舞いになる一夏を簡単に想像できてしまった。
それだけ一夏が必死こいて働いている中、俺は何をしているかといえば……。
「天羽くん!」
カッシャカッシャカッシャ……!
これは俺が高速でボウルをかき混ぜている音。
「天羽くーん!」
ガタガタっ、ばたんっ!
これは俺が高速で冷蔵庫へと向かい、食材を取り出して扉を閉める音。
「あもー!」
シュー……ペタンっ!
これは俺がフライパンのホットケーキをひっくり返す音だ。
「天羽くん!」
「分かっている!」
あまりの忙しさに、ついに怒鳴ってしまった。だが許して欲しい。俺は今三人分の仕事を一人でこなしているのだから。正直、一夏の状況を冷静に分析している場合ではない。
我らが一組の出し物は、『ご奉仕喫茶』という名の喫茶店だ。要はメイド喫茶であるが、ただのメイド喫茶ではない。お客様へと奉仕するのは、メイドと、執事だ。その執事とはすなわち、俺と一夏である。
そして俺たちの影響か、喫茶店は既に大盛況であった。だからこうして忙しく働いているわけだ。
一時男子であったシャルロットにも執事になってもらうよう、俺と一夏、そして他のクラスメイトたちも頼んだのだが、本人は断固拒否した。それはもう、絶対に嫌だと言わんばかりに。シャルロットは準備の段階で多大な貢献をしてくれた上、何よりあのシャルロットが本気で嫌がるので、俺たちは引き下がるしかなかった。
理由は、ラウラが言うには、バイト先で散々執事をやらされているから、今回は何としてもメイドになりたかった、ということらしい。
残念ながらシャルロットの協力は得られなかったわけだが、やはりもう一人くらいは欲しかった。
「翔! 交代の時間だぞ!」
厨房に入ってきたのは、やけに機嫌の良い箒。
常時仏頂面の箒はメイドに向かないと思っていたが、開始前に一夏が似合ってる、と褒めたからか、それなりにいい顔で接客に臨んでいるようだ。
が、今はそんなことはどうでもいい。交代の時間が来た。それが問題である。
「……行くしかないのか?」
「仕方あるまい。翔を所望するお客様はたくさんいる」
「…………」
はあ、とため息が出る。
「確かにそろそろ潮時か……。一夏ももう限界だろう?」
箒は頷いた。
俺たち執事二人は、一定時間毎に接客と厨房で交互に入れ替わることになっている。交互に表に出すことで希少価値を高めるという戦略的理由と、永遠接客では流石にきついだろう、という女子たちの配慮によるものだが、厨房と入れ替わるようにしたのは絶対にミスだと思う。厨房に移されるのでは、神経をすり減らす接客が終わっても、次に待っているのはハードな肉体労働。これではただの二重苦だ。
「それでも、ずっと接客よりはマシだろう」
「……確かにな……」
特に、女性が苦手な俺にとっては。
「あああー! 疲れたー……!」
明らかに疲労困憊、と言った様子の一夏。この先に待ち受けているのが肉体労働だと考えると、やっていられないな。
「翔、交代……」
「……了解した」
パシン、と一夏と手を合わせた俺は、ポケットの伊達眼鏡を取り出して掛けた。掛けた眼鏡は細い銀縁のもの。
この伊達眼鏡の装着は、女子たちの強烈な依頼によるもので、曰く、これを着けることで俺は「クール系執事」なるものになれるらしいが……どうなるかは分からん。
憂鬱だ。これから先は間違いなく、地獄の時間になる。
「やるしかないな……」
意を決して、俺は綺麗に内装された店内に躍り出た。
店内のテーブルや食器などはセシリアが手配したもので、流石英国貴族というべきか、セシリアが用意したものの中には目が飛び出るほど高価なものも存在していて、カップ一つ運ぶのに本気でビビり倒す生徒もいた。まさか客もそんな高価なものを使っているとは思うまい。
食器といい、メイド服といい、つまるところ俺たちの出し物はコネのカタマリでしかないのだが……。まあ、別に悪いことではないだろう。
俺が現れると、店内からおおーっと声が上がった。そこまで興奮するようなものでもないだろうに。
それと同時に、外の行列も慌ただしくなった。どうやら俺目当てのお客様がいらっしゃるというのも本当らしい。畜生め。
「お兄様ー!」
接客の合間にラウラがこっちにやって来た。開店前に千冬さんにしこたま笑われ、かなりへこんでいたが、何とか復活したようだ。
「お、お兄様、その眼鏡は……!」
なんだ、眼鏡が気になるのか?
「ああ。みんながどうしても、と言うから着けた。似合うか?」
「あ、ああ、よく似合っている! 思わず抱きつきたくなったぞ!」
それはいつもだろう。
「で、では、早速だがお兄様。三番の客へ行ってほしい」
「……了解した」
仕方ない、そう割り切って席に向かったが、すぐに後悔する羽目になった。
「――やあ、翔くん。今朝ぶりだね」
「か、会長!?」
三番の席に座っていたお客様は、なんと我らが生徒会長、更識楯無であった。
「な、何故ここにいるんですか!?」
「あら、私はれっきとしたこの学園の生徒よ? いても悪いことなんてないでしょ?」
「…………」
言い返せない。これが会長の伝家の宝刀、理詰め。
くそ、こんな時間くらいは会長から解放されると思っていたのに……!
「そんな嫌そうな顔しないの。愛すべき我らが副会長くんの勇姿を見に来ただけじゃない」
「余計なお世話です」
「もう、相変わらずいけずね~」
「いけずで結構です。……それでは、お嬢様。ご注文は?」
女性にはこうして尋ねるのがこの喫茶店の執事のルールだ。恥ずいが仕方ない。
「いやーん、お嬢様なんて。照れちゃう」
「あなたは言われ慣れてるでしょう」
「まあそうだけど。でも、翔くんに言われるのは……ト・ク・ベ・ツ・な・の」
「いいからさっさと注文をしろ!」
「むぅー、ほんとにいけずぅー!」
軽く言葉でジャブを交わしつつ、俺は会長に注文を迫る。
「じゃあ、『執事の愛のスプーン』で」
「……かしこまりました。『執事の愛のスプーンセット』でございますね」
テンションは下がるが、会長のチョイスにしてはまだマシだ。もっとヤバいのが来るかと身構えていたのだが。
すぐそこに畳まれているメニューの最後の方には、もっとエグいのがある。名前を言うのもキツイくらい、えげつないやつが。
会長がそれに気づいたかは分からないが、注文されなかったのは僥倖としか言いようがない。
「お待たせしました」
数分後、小さなパフェが運ばれてきた。持って来たパフェをテーブルの上に置いてもらった俺は、スプーンを片手にとると、そのパフェを一口すくって、会長の口へと移動させる。
「それでは。……あーん」
こんな屈辱的な言葉と共に。
会長も何をされるかは分かったようで、素直に口を開けた。「あーん」という余計な言葉と共に。
そんなことを言わんでいいものを、この人は……!
相変わらずの会長に呆れつつ、俺はスプーンを会長の口の中へと放り込んだ。
「うん、美味しい」
ペロリと唇についたクリームを舐めとって、会長は感想を漏らした。
この調子で何回か同じことをして、パフェは残り一口になった。
「待って」
「……はい?」
最後の一口を運ぼうとしたところで、会長が待ったをかける。
「翔くんはもう充分奉仕してくれたから、今度は私がして上げる」
「結構です」
いたずらっぽい顔で言う会長。それに即答する俺。
「えー、いいじゃん! そんなこと言わないでさぁ!」
「結構です!」
俺はシャシャシャッと連続で放たれるスプーンの突きを紙一重で躱す。俺はそんな悪意に溢れたスプーンには屈しない!
傍から見れば、女が男の顔面にスプーンを繰り出し、それを男が必死に躱すという珍景が広がっていているだろう。そのためか、客の視線が俺たちのテーブルに集中していた。
だが、この不毛な戦いにも終わりが訪れた。
「そこまでですわ」
突然、俺と会長の間にメニューが差し込まれ、会長のスプーンが止まる。
セシリアだった。
「申し訳ありませんがお客様、それは当サービスの対象外ですので。お控え願います」
鋭い目つきで、セシリアは会長を睨みつけた。
「……そうね。ごめんなさい」
少しの沈黙の後、会長がそう言った。
セシリアはその一言を聞くと、すぐに持ち場に戻ってしまった。
「セシリア……」
俺が呼んでも、セシリアは反応しなかった。当日になっても、この有様だった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ふうっ、一区切りだな!」
「ああ」
ついに、待ちに待った休み時間になった。二時間ほどの時間だが、俺たちにとっては貴重な休憩時間だ。
やっていて思ったが、接客の方が裏方の何倍もきつい。例え裏方が重労働であっても、だ。後半開始時には一夏と本気のじゃんけん勝負をすることになりそうだ。
「じゃ、俺は弾と数馬迎えに行ってくるけど……」
「いや、俺はやめておく。後で合流するから、弾にはよろしく言っておいてくれ」
「オッケー、分かってる。……セシリアと仲直り、するんだろ?」
「…………」
何だ、ばれていたいたか。他人のこととなると鋭いな、お前は。
「じゃあな。……がんばれよ」
「……ああ」
言われるまでもない。
俺はセシリアを探した。さっきはタイミングを逃したが、今度は、必ず。
……いた。
「セシリア!」
「…………」
店を出ようとしていたセシリアを、呼び止める。それをセシリアは聞かないフリでやり過ごした。
だが、俺は止めない。聞かないつもりならば、引き止めて聞かせる。
俺は走ってセシリアに追いつくと、セシリアの左手をとった。
「――え、えっ!?」
突然のことで驚いているセシリアだが、俺はそのまま外の誰もいない場所へとセシリアを連れて行く。
体温鼓動がどうだとは言っていられない。誰かが俺たちを見て指差すのも何も気にしない。
目的の場所につくと、俺はセシリアの手を放して、セシリアの前に立つ。
「セシリア、すまなかった」
俺は頭を下げた。
「あのときは誤解を招くようなことをしてすまなかった。あと、謝るのが遅くなってすまない。それと、さっきはありがとう。助かった」
ぽろぽろと言いたいことが口から出てくる。取り留めない言葉かもしれないがそれでも良かった。
「あ、あの……」
セシリアはまだ混乱しているようだったが、俺はお構いなしに続ける。
「早く謝りたかったんだが、なかなか言えなくて。本当に、すまなかった」
拙かったかもしれない。だが、言いたいことは言った。
恐る恐る目線を上げたら、ほっとしたような、まだ困惑したような眼差しで俺を見るセシリアがいた。
「……あの、その、顔を上げてください」
セシリアの声が聞こえた。こうして話しかけられるのも、久しぶりな気がする。言われた通り、俺は顔を上げた。
「こちらこそ、すみませんでした。ずっと意地を張ってしまって」
セシリアはぺこりと頭を下げた。
「そ、そんなことはない! あれは俺が悪いんだ。ちゃんとした説明もせずに……」
最終的に俺が会長との同居をすることにしたのは、きちんとした理由がある。あれは正直に話さなかった俺が悪かったのだ。だから、今日は正直に話そうと思う。
「実は……」
かくかくしかじかで、と考察をセシリアに伝えた。
「そ、そうだったんですの……」
「本当に、すまなかった」
「も、もう結構ですわ! 充分、伝わりましたから」
また謝った俺に、セシリアは慌ててそう言う。
「もう、怒っていませんから」
「……はあ」
俺は胸を撫で下ろした。セシリアと話すのがいつの間にか当たり前になっていて、どこか穴の空いたみたいな空虚感があった。欠けたパズルのピースが埋まるような、そんな安心感を覚える
「で、でも、ずっと同居だなんて許せまんわよっ!」
「俺も困るからそれは無い! 断言する!」
これからずっと会長と同居など、もはや終身刑を宣告されたに等しい。思わず、全身に悪寒が走った。
くっ、先日の『アレ』のダメージが蘇る……!
がくっと崩れ落ちそうになる俺をセシリアは心配そうに寄ってくるが、それを手で制する。
こんなことをしている場合ではない。呼吸を整えて、これから言う言葉を整理する。
「セシリア」
「はい?」
「もし良かったら、これから一緒に回らないか?」
「まあっ! 本当ですの!?」
俺がそう言うと 、セシリアはぱあっと顔を綻ばせた。
俺は覚悟を決めて、セシリアの手をもう一度取った。
「きゃ……っ」
セシリアはびくっと体を震わせた。
セシリアの肌の感触が掌に広がって、俺の心臓はいつものように馬鹿正直に反応したが、それを必死に隠して、用意したセリフを言う。
「と、殿方が誘うデートでは、殿方がエスコートするものなんだろう?」
動悸を出来るだけ出さないように、こう言ってやった。これは、夏のデートのときのセシリアの言葉だ。あのときはやらされたが、やり返してやった。
セシリアは赤くなるが、すぐに笑顔になって「ええ、そうですわね」と答えた。
「……そ、それでは参りましょうか、お嬢様」
「ええ、参りましょう。……顔が真っ赤ですわよ、執事さん?」
「う、うるさい。これでも精一杯なんだ」
俺はセシリアは手の引いて、歩き出した。
――振り向いたときのセシリアの笑顔に、癒されながら。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
(あいつら、もう来てんのかな……)
招待した友人を迎えに行くべく、一夏は待ち合わせ場所まで歩く。
外来客からは、IS学園の制服を着た男子が目に入るのがよほど珍しいのか、一夏が前を通れば必ず噂された。
(生徒からはなくなったんだけどな……)
一夏は心の中で苦笑した。入学当初に戻った感じだ。
それも仕方ない、と一夏は自身を納得させた。自分はそれだけ特別な存在なのだから。
「すみません、少しお時間よろしいですか?」
「はい?」
階段の踊り場で、一夏は知らない女性に話しかけられた。ロングヘアーがよく似合う、美人な大人の女性であった。まさにキャリアウーマン、という言葉がぴったりな印象だ。
「失礼しました。私、こういうものです」
そう言って差し出された名刺には、案の定『IS装備開発企業みつるぎ渉外担当・巻紙礼子』と書かれていた。
「織斑さんに是非我が社の装備を使って頂きたいと思いまして」
一夏はそれを聞いて、しまったと唇を噛んだ。
白式への追加装備の提供を申し出る企業は後を絶たない。男性IS操縦者である一夏に装備を使ってもらえると、絶大な広告効果をもたらすからだ。元々それを目的にすり寄ってくる組織が多いのに、白式の開発元である倉持技研が未だに後付装備を開発できていないのがそれに拍車をかけていた。
一夏の夏休みの半分はこういう交渉のために費やされてしまった。翔に断り方をレクチャーしてもらわなかったら、もっと多くの時間を割くことになっていただろう。
(って、まあ白式が嫌がるから無理なんだけど……)
白式は一切の後付武装を受け付けない。後付武装を使用するための拡張領域が、白式場合は零落白夜のために空きがないというのもあるが、それ以前にコアが装備を拒絶してしまうのだ。ISのコアにも好みというものがあるらしく、コアに嫌がられれば装備できない。白式の場合、格闘特化の癖に雪片弐型以外の格闘装備もダメ、射撃武装は論外だ。とんだワガママ機体だ、と一夏と翔が二人して呆れたのだが、それは別の話。
一夏は油断した自分を叱責しつつ、交渉の際の断り方を思い出す。
「申し訳ありませんが、お断りします」
こちらに交渉する意思が全く無いのなら、まずは正面から、丁寧に、しかししっかり断る。とにかく、主導権を握られないようにするのが大事だ。
「そう言わずに、話だけでも!」
「すみません、こちらも急いでいるので」
交渉する側は、出来るだけ時間を延ばしてこちらの意思を変えようとしてくる。故に、さっさと話を終わらせるのが吉。
「では、失礼します」
「あっ!」
不意をついて、一夏はさーっとその場から去った。
ちょっと時間取られたなー、時計を見つつ、一夏は待ち合わせ場所に急いだ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「…………」
一方、巻紙礼子は、走り去った一夏を追いかけるわけでもなく、ポケットから携帯電話を取り出して、とある相手にコールした。
「――こちらオータム」
先程までとは全く違う声色で、巻紙礼子――オータムは会話する。
「織斑一夏と接触した。まあ、平和ボケしたクソガキかと思ったが、案外しっかりした部分もあったな。天羽翔の入知恵かもしれねえが。……ああ、強さまでは流石にわかんねえよ。そこまで強いわけじゃねえだろうけどな」
まあいいや、とオータムは続ける。
「――どうせ戦うことになるんだ、すぐ分かるだろ」
オータムの口元に、邪悪な笑みが浮かんだ。