そして、以前からちょくちょく出てきた主人公の戦車が擬人化する兆しも!
他作品のキャラは、知ってる人は知ってるかも………………?
蓮斗と共にアウトレットへと遊びに出掛け、其所で知り合った、カフェ『ロイヤル・タイムズ』の店長--小日向 華琳--からの誘いを受けてバイトをした際に起きた、ロイヤル・タイムズ』におけるテロリスト立て籠り事件も無事に解決し、其所で知り合った継続高校の戦車道チーム隊長--ミカ--との一晩を経て、大洗女子学園学園艦へと戻ってきた紅夜は、自動車部のメンバーからの協力を得て、自分達のチームの戦車をとある場所へと運んでいた。
「彼処にコイツ等を持っていくのも、かなり久し振りだな………………」
一般車に混じって道路を走るISー2を操縦しながら、紅夜はそう呟いた。
「なぁ、相棒よ。お前はこれまで、良く戦ってきてくれたな。俺が達哉に無謀な運転させても、履帯切れる事無く頑張ってくれたし、試合でエンジントラブルも起こさなかった………………普通なら、何十回も試合したら、1回ぐらいはトラブってもおかしくはない。だが、お前は起こさなかった………………本当にありがとな。今日の改造は、そのご褒美だ。思いっきり誇れよ」
そう言いながら、紅夜はシフトギアを握っていた手を離して壁を撫でる。
『ご主人様、くすぐったいよ』
そうしていると、久々の声が紅夜の耳に入ってきた。
その声の主は、非常に嬉しそうな声色をしていた。
「その声を聞くのは久し振りだな………………そういやお前、プラウダとの試合では全く話し掛けてこなかったな。アンツィオ戦前とか知波単との試合とかでは話し掛けてきたのに」
『だってその時、私だって興奮してたんだもん。ご主人様がプラウダの戦車隊に向かって怒鳴った時なんて、特にね』
「へぇー…………まぁ、あの時のお前、マフラーから火ィ噴いてたもんなぁ」
『知波単との試合とかでも、何度か噴いてたよ?』
「あ、言われてみればそうだな………………って、そう言ってる間に着いちまったか………それじゃ、ご褒美を楽しめよ」
『うん♪』
嬉しそうな声がすると、それ以上は声が聞こえなくなった。
小さな窓から外を見ると、黒い車輪付きの門が2人の男によって開けられ、其所から、対向車が来ない事を確認し、道路の真ん中に出てきた筋骨隆々とした男が、その門から中に入れと、大型のバールを振って誘導しているのが見えた。
彼こそが、先程紅夜からの電話を受けていた男性--穂積 輝夫(ほづみ てるお)--だ。
「相変わらずだなぁ、輝夫のオッチャンは………バール持って交通整理する人が居るかよ………」
紅夜はそう言って微笑を浮かべると、ISー2を小刻みに蛇行させて後続の2輌に合図を送ると、左折して門を潜る。
続くパンターとイージーエイトも、ISー2に続いて入っていった。
敷地内に入った3輌は動きを止め、紅夜はキューポラを開けて上半身を乗り出し、地面に飛び降りる。
すると、輝夫が敷地内に入ってきて、2人の男が門を閉めると、3人で歩いてきた。
「ねぇ長門君、あの人達は?」
パンターのキューポラから上半身を乗り出すたナカジマが訊ねる。
「俺等レッド・フラッグが未だ現役だった頃、整備士をやってくれた人達だよ」
紅夜がそう言うと、小柄で眼鏡をかけた男が近づいてきた。
「よぉー、長門の坊っちゃん!ひっさしぶりやなぁ、元気してたか?」
「この通りにピンピンしてるよ。そっちも元気そうだな、沖(おき)兄」
紅夜がそう返すと、50代程の男も近寄ってくる。
「相変わらず背の高いモンやなぁ。輝夫と良い勝負やないのか?」
「未だ負けてるよ、山岡(やまおか)のオッチャン」
そして、輝夫が近寄ってきて、紅夜の肩を軽く叩く。
「オイオイ、俺を無視するとは酷くねぇか、長坊?」
「別に無視してねぇよ、オッチャン」
そうして4人で盛り上がっていると、パンターとイージーエイトから自動車部のメンバーが降りてきて、ナカジマがおずおずと話し掛けた。
「えっと………………長門君?この人達がそうなの?」
「ん?………………ああ、そうだよ」
「何や何や?何時から坊っちゃんはこんなハーレム野郎になったんや?」
ナカジマの質問に答えると、沖兄と呼ばれた男がニヤニヤしながら紅夜を小突く。
「そうじゃないよ沖兄。この4人は、大洗女子学園で俺等の戦車の整備をしてくれてる人達だよ」
そう言って、紅夜はナカジマ達を紹介していくのであった。
「んじゃ改めて………………俺は沖海 祐介(おきうみ ゆうすけ)や。2丁目のコンビニでバイトしとる。宜しくな」
そう言って、祐介は軽く右手を上げて会釈した。
「山岡 次郎(やまおか じろう)じゃ。この解体所で働いてる」
次郎が言うと、ナカジマ達は首を傾げた。
「解体所?」
「ん?何だ、知らなかったのか?此処は元々、解体所だったんだよ………………ホラ、向こうに廃車となった車が山積みになっとるだろ?」
次郎はそう言い、奥の方で山積みになっている廃車の山を見た。
それを見たナカジマ達は、納得したように頷いた。
「んで、その土地を買い取った山岡のダンナや輝夫のオヤジが、廃車の中でもまだ使えそうなのを製錬所に売っ払ってある程度のスペースを作って、そっから坊っちゃん等の戦車を整備するための建物を建てたって訳なんやわ」
そう言って、祐介が言葉をつけ足す。
「そんで、俺が穂積 輝夫(ほづみ てるお)だ。長坊とは親戚とかの関係じゃねえが、付き合いは長ぇから、もうコイツの叔父みてぇな感じだな」
そう言って豪快に笑いながら、輝夫は紅夜の肩をバシバシと叩いた。
「痛ぇよオッチャン。まァた何処かで鍛えてきたな?」
「へッへッへッ!最近は向こうにある廃車を持ち上げてトレーニングしてたぜ」
「はぁ………………やっぱオッチャンには敵わねえな」
紅夜がそう言って肩を落とすと、祐介が笑いながら言った。
「何言うてるんや坊っちゃん。新聞で見たけど、大洗市のカフェでバイトしてた時に、入ってきたテロリスト全員ぶちのめしたらしいやんか。流石に輝夫のオヤジでも其処までは出来んって」
「全くその通りじゃ………………それにしても、ワシ等の知らん間に、紅夜は化け物と化してたんだなぁ」
祐介の言葉に続けて、次郎がしみじみと言う。
「浸るのも良いが、時間は有限なんだ、さっさと作業始めるぞ!」
其処へ、何時の間にか工具箱を持ってきていた輝夫が呼び掛ける。
「おっと、確かにな………………良し、それじゃ早速始めるか」
そう言って、次郎は工具箱からスパナを取り出そうとする。
「それじゃ、私達はこれで失礼します」
「何や、もう帰るんか?どうせやから作業とか見てってもええのに」
「そうしたいのは山々ですが、此方の戦車の整備もしなければならないので」
ナカジマはすまさそうに言うと、祐介は仕方無いかと頷く。
「そっか………………んじゃ、学校まで送ったるわ。家から車取ってくるから待っとき」
「その必要は無いわよ、兄さん」
解体所の壁に作られたドアを開けながら祐介が言うと、開けられたドアから茶髪の女性が入ってきた。
「何や神子(みこ)、聞いてたんかいな」
「神子姉、久し振り~」
祐介に続いて、紅夜が右手を上げながら近づく。
「ええ、久し振りね紅夜君。大きくなったわね」
「………………」
そんな3人の会話を、ナカジマ達自動車部のメンバーは呆然と眺めていた。
「あの子は沖海 神子(おきうみ みこ)、祐介の妹でな、今のところは浪人生じゃ」
メンバーの隣に来た次郎が、神子を紹介する。
「因みに、君等の先輩でもある」
次郎がそう言うと、神子は自動車部のメンバーの元に近づいてきた。
「沖上神子です。何時も紅夜君達がお世話になっているようで」
「い、いえ!此方こそ長門君にはお世話になりっぱなしで………………」
「いや、俺何もしてねえぞ?」
ナカジマの言葉に、紅夜が場違いな発言をして、輝夫にツッコミを入れられる。
「失礼だけど、話はドア越しに聞かせてもらったわ。今から車取ってくるから、ちょっと待ってて」
そう言って、神子はドアの向こうへと立ち去り、暫くすると、7人乗りの商用バンに乗って解体所に入ってきた。
「さあ、早く乗りなさい。行くわよ」
「あ、はい!」
そうして、自動車部のメンバーは次々にバンに乗り込んでいった。
「そんじゃ長門君、また戦車道の授業で!」
「おう、今日はありがとな」
そんな会話を交わし、4人を乗せたバンは大洗女子学園へと向かった。
「よーし、それじゃ早速始めるか!」
「「「おー!」」」
輝夫の呼び掛けに、3人は返事を返し、内緒のパワーアップ計画が始まるのであった。